【イタリア次世代のDFリーダー】アレッサンドロ・バストーニのプレースタイルを徹底解剖!

【イタリア次世代のDFリーダー】アレッサンドロ・バストーニのプレースタイルを徹底解剖!

2022年6月12日 2 投稿者: マツシタ
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2022年6月1日に行われた欧州王者と南米王者が戦う一戦「フィナリッシマ」を最後に、ジョルジョ・キエッリーニがイタリア代表を引退した。

17年間にわたってアッズーリの最終ラインを支えてきた重鎮は、昨夏のEURO制覇にも主力として貢献するなど37歳にして最前線でプレーしてきた。息の長い選手であっただけに、アッズーリにとって彼の後継者探しは困難を要するだろう。

そんなキエッリーニの後継者として長く注目されてきた選手がいる。インテルでプレーする23歳の若手CB、アレッサンドロ・バストーニだ。

 

育成の名門アタランタのユース出身のバストーニは2017年1月にトップチームデビュー。同年8月31日にはインテルが保有権を獲得し、17‐18シーズンはアタランタに、18-19シーズンはパルマにレンタルされて経験を積んだ。

そしていよいよインテルでの挑戦を決意した19‐20シーズン、バストーニは徐々にコンテ監督の信頼をつかんで出場機会を伸ばすと、シーズン終盤には名手ディエゴ・ゴディンから定位置奪取に成功し一躍注目を浴びることになる。

翌年には完全に3バックの左を自分のものにしたバストーニはクラブの11年ぶりのスクデット獲得に主力として貢献。監督がコンテからシモーネ・インザーギに交替した今季も公式戦44試合に出場しスーペルコッパとコッパイタリアの2冠に貢献するなど、ここまで順調にキャリアを積んできている印象だ。

イタリアの若手CB陣の中でもひとつ抜きんでた存在であるバストーニ。彼は一体どんなプレーヤーなのか、徹底的に掘り下げていきたい。




バストーニのプレースタイル

 

高精度の左足

近年のサッカー界では後方からのビルドアップを重視しており、その流れの中でCBに対しても足元のテクニックが求められるようになってきている。特に、左サイドに置かれたときにスムーズにプレーできる左利きCBは希少価値が高く、とても重宝される傾向にある。

バストーニはその左利きCBの中でも特に優れた資質を持ったプレーヤーのひとりだ。

左足から繰り出すキックは非常に高精度であり、またレンジも広い。左サイドから攻撃を組み立てられるセンスを持つ、稀有なCBだ。

 

ここからはFBref.comよりデータを引用し、同じサイドCBとして起用されるシュクリニアル、ダンブロージオとバストーニを比較してみよう(ディマルコはWBとしてプレーした試合も多かったので割愛。彼についてはまた別途記事を執筆する予定)。

 

様々な項目があるのだが、その中でも特にバストーニの特徴をよく表している項目がロングパスだ。

 

〈ロングパス比率〉

  • バストーニ  :17.7%
  • シュクリニアル:14.6%
  • ダンブロージオ:16.8%

〈90分あたりロングパス数〉

  • バストーニ  :12.37
  • シュクリニアル:8.86
  • ダンブロージオ:11.17

 

と、ロングパスの比率と絶対数のいずれもバストーニが最も高い数値となっている。特に、90分あたりの絶対数をシュクリニアルと比較するとバストーニがおよそ1.5倍になっており、右のシュクリニアルと比較すると左のバストーニは遠くも使いながら試合を組み立てているといえる。

 

 

結果として、

 

〈スイングパス(サイドチェンジのこと。カッコ内は90分平均値)〉

  • バストーニ  :66(2.57)
  • シュクリニアル:60(1.71)
  • ダンブロージオ:25(2.25)

〈ファイナルサードに届けたパス(カッコ内は90分平均値)〉

  • バストーニ  :111(4.32)
  • シュクリニアル:84(2.40)
  • ダンブロージオ:37(3.33)

 

サイドチェンジやファイナルサードに直接届けたパスでもバストーニが最多となっている。

この長短使い分けながらの組み立てこそバストーニの武器。シンプルに味方を使う場面もあれば、持ち前のフィード力を活かして展開を変えることもできる。

それを実現できるだけの左足のテクニック、広い視野、戦術眼を兼ね備えているという点において、バストーニは左利きCBの中でも特に組み立て能力が高いプレーヤーだと評価できるだろう。

 

↓ 左足からのロングフィードでルカク宇の得点をアシストした場面。

 

さらに、相手が左足からのフィードを警戒して飛び込んできたとき、これを冷静に観察してドリブルでかわせるのもバストーニの素晴らしいところだ。

相手がプレスに出てくればその勢いを利用してスッと持ち出し、完全に置き去りにして持ち運んでしまう。この運ぶドリブルのうまさもバストーニの魅力だ。

昨季のデータにはなるが、

 

〈20‐21シーズンのデータ〉

  • キャリー数::1786(セリエA7位
  • キャリー総距離:9934(セリエA5位
  • 縦方向のキャリー距離:6299(セリエA5位

 

キャリー(突破をともなわない運ぶドリブルのこと)に関するスタッツでセリエA全ポジションの中でもトップ10に入る数値を残している。彼がいかに運ぶドリブルに長けているかがよくわかるんじゃないだろうか。

前方が空いていればドリブルで持ち運び、味方が動き出すタイミングを作ってあげてからロングパスを出すなど、周囲の状況を見ながら最適なプレーを選択できる選手であるバストーニ。その優れた戦術眼こそ彼が若くして優れた才能をは利き出来ているゆえんだと感じる。

 

↓ ドリブルによる持ち上がりからの高精度ロングスルーパスでバレッラのゴールをアシストした場面。バストーニの良さがよく表れた場面だ。




機動力とポジショナルなセンス

バストーニの戦術眼の鋭さはポジショニングにも表れる。

彼は味方の立ち位置を見ながら内外を使い分け、チームに対して最適な配置を提供できるのだ。

SofaScore.comより、今季のバストーニのヒートマップ。左サイドのハーフスペースとアウトサイドレーン、2つのレーンにまんべんなくヒートマップが分布していることがよくわかる。

インテルはビルドアップ時に最終ラインが4バックのような形に可変することが多い。この可変4バックの左CBと左SB、いずれのンポジションに立ってもバストーニは機能できる。そればかりか、相手や味方の状況を観察しながらその立ち位置を適宜入れ替えられる。こうしたポジショナルなセンス、内外の使い分けもバストーニの持ち味だといえる。

さらに、ここにバストーニん思うひとつの特徴である機動力が欠け合わさることで、CBとは思えない攻撃性能を発揮するのがバストーニのもうひとつの魅力だ。

 

〈アシスト期待値〉

  • バストーニ  :1.4(セリエAのCBで2位
  • シュクリニアル:0.6
  • ダンブロージオ:0.1

 

〈ペナルティエリア内へ届けたパス数〉

  • バストーニ  :17(セリエAのCBでトップタイ
  • シュクリニアル:12
  • ダンブロージオ:3

 

〈クロス数〉

  • バストーニ  :21(セリエAのCBで3位タイ
  • ダンブロージオ:5
  • シュクリニアル:2

 

 

と、データで見ても特に崩しの局面に関するスタッツでバストーニが際立った数字を残していることがよくわかる。

ここらへんは3バックも積極的に攻撃参加させる得意な戦術を採用するアタランタのユースで育成されたことと無関係ではないように思う。

 

ここからは実際の試合画像で見てみよう。味方にパスを出すなり、前線へランニングを見せるバストーニ。

ボールがアウトサイドを経由する間にハーフスペースを走り抜けたバストーニは相手サイドバックの死角に入り、フリーでボールを受ける。この形はまさにアタランタでよくみられるパターンだ。

ポケットを取ったバストーニは左足でクロスボールを供給。この流れから相手のハンドを誘ったインテルはPK獲得に成功している。

↓ 当該場面の動画

 

↓ 同じようにインナーラップから決定機をつくり出した場面。

 

別の場面では、バストーニはハーフスペース高い位置に陣取り、2トップの一角、WBとともに5レーンを埋める立ち位置をとっている。これにより相手の右CB、右SBに対して3対2の数的優位を創出している。

ボールを受けたバストーニは前を向き、危険な場面をつくり出した。とてもCBの選手のプレーとは思えないが、バストーニにかかればこうした高い位置でのプレーもお手の物だ。

上に紹介した2つの場面のように、フリーランニングでもポジショニングでも組織的に相手を崩すためのプレーを的確に選択できるのがバストーニという選手の素晴らしいところだ。まさに戦術眼に優れたモダンなディフェンダーだといえる。

こうして高い位置をとってからのクロスボールもバストーニの大きな武器。左足のフィードの正確さは前述の通りで、これを活かしてアウトサイドレーンからチャンスを生み出す。そのプレーぶりはまるでサイドバックのようだ。

 

↓ 高精度クロスからのアシスト

 

このように、運ぶ局面だけでなく崩す局面でも絶大な貢献を見せるバストーニ。その攻撃性能の高さは従来のCBのそれとは一線を画している。

これを活かせるという意味で、3バックの左というポジションはバストーニにとって理想的と言えるのではないだろうか。




守備対応にもソツがない

さて、CBとしては極めて攻撃性能の高いバストーニだが、本分である守備面での能力も非常に高い。

 

 

FBref.comよりデータを引用してみると、

 

〈タックル数〉

  • バストーニ  :50
  • シュクリニアル:41
  • ダンブロージオ:29

 

〈タックル勝利数〉

  • バストーニ  :35
  • シュクリニアル:25
  • ダンブロージオ:18

 

〈プレッシャー数〉

  • バストーニ  :293
  • シュクリニアル:241
  • ダンブロージオ:114

 

〈プレッシャー成功数〉

  • バストーニ  :116
  • シュクリニアル:89
  • ダンブロージオ:45

 

と、多くの守備アクションにおいてインテルのCB陣の中でもトップの数値を記録していることがわかる。

とはいえ、こうした単純な守備アクション数には戦術的な要素が多分に影響してくる。選手個々のパフォーマンスを表す指標としてより注目すべきなのがアクションの成功率の高さだ。

バストーニはボールを持った相手が向かってきた場合、まずは相手に置き去りにされないよう距離を置いて対応する。そうして徐々に距離を詰めて圧力をかけ、相手のボールタッチが乱れた瞬間に一気に距離を詰めてボールを刈り取る

相手の状態が乱れるまで待てる落ち着きと、それを見逃さない判断力一瞬でボールにアタックするアジリティ。これらがすべてハイレベルだからこそ、バストーニはそれぞれの守備アクションで確実にボールを奪える。

 

データもこれを裏付けていて、

 

〈プレッシャー成功率〉

  • バストーニ  :39.6%セリエA7位
  • ダンブロージオ:39.5%
  • シュクリニアル:36.9%

 

〈タックル勝率〉

  • バストーニ  :70‘%
  • シュクリニアル:61%
  • ダンブロージオ:62%

 

〈ドリブラーに対するタックル勝率〉

  • バストーニ  :57.7%
  • シュクリニアル:54.5%
  • ダンブロージオ:40.0%

 

〈プレッシャー成功率〉

  • バストーニ  :39.6%
  • ダンブロージオ:39.5%
  • シュクリニアル:36.9%

 

〈空中戦勝率〉

  • バストーニ  :63.3%
  • シュクリニアル:58.8%
  • ダンブロージオ:57.1%

 

と、いずれの守備アクションの成功率でもバストーニがトップの数字をたたき出している。

彼が勝てる状況で的確に守備アクションを仕掛けていることがわかるだろう。

 

さらに、もうひとつバストーニの特徴として挙げなければならないのがカバーエリアの広さだ。

前述のとおり、バストーニは非常に機動力があるプレーヤー。それゆえ、カバー範囲が非常に広いのも彼の持ち味だ。

中盤と最終ラインの間にポジションする選手は3バックの両脇が飛び出して捕まえる約束事になっているインテル。この場面でもバストーニが飛び出し、相手のアタッカーを捕まえようとしている。

ところが相手がサイドチェンジのボールを蹴ってきた。これに対応するため左WBのペリシッチが飛び出し、バストーニはその背後のカバーリングに切り替える。

ペリシッチの背後にボールを落とされたが、バストーニが素早くカバーリングに入ったことで事なきを得た。彼の機動力が生きた場面だ。

この場面のように、今季からハイプレスを導入したインテルにあってバストーニ(とシュクリニアル)は前に出て相手を捕まえ、プレスを剥がされたら背走して空いたスペースのカバーリングと、非常に広いエリアをカバーすることを求められていた。これを難なくこなせてしまうのは、バストーニの優れた機動力あってのことだろう。

190cmながら非常に広い行動半径を持つバストーニ。個の対人能力だけでなく、味方のカバーリングもそつがない。守備者としても穴のないプレーヤーだと評価していいんじゃないだろうか。

 

まとめると、

  • 正確な左足を活かして長短使い分けながら試合を組み立て、
  • 内外使い分けるポジショニングも巧みで、
  • 正確なクロスボールはじめアタッキングサードでの貢献度も非常に高く、
  • 対人守備では相手の状況を観察しながらここぞのタイミングでタックルを仕掛け、
  • 機動力を生かしたカバー範囲の広さも魅力

正確なテクニック、優れた戦術眼、CB離れした機動力。これらがバストーニの能力の根底にある要素だ。これらすべて、現代サッカーで重要だとされている能力である。

これらをまんべんなく備えているバストーニは、間違いなく現代サッカーにおいて理想のCBだ。

それでいてまだ23歳、末恐ろしいプレーヤーだ。セリエAの若手CBの中でもトップクラスの実力者だと断言していいだろう。




バストーニの伸びしろ

そんなバストーニの伸びしろはどこにあるのだろうか。

個人的に指摘したいのは経験値のただ一点だ。CLや代表レベルの国際大会など、ハイレベルな戦いを積み重ねていく中でトップクラスのアタッカーと対峙し、駆け引きを習得していけるか。そして、タイトルなどの実績を積み重ねていけるか。それがバストーニのキャリアを振り返った時の評価につながってくるだろう。

現在は3バックの一角として攻撃面でも鳴らしているバストーニ。その姿は、若かりし頃に攻撃的左サイドバックとして台頭してきたキエッリーニと重なる部分がある。

やがて世界屈指のCBとなったキエッリーニも、やはりユベントスで継続的に欧州最高峰の舞台でプレーしてきたからこそあそこまでたどり着けたのだと思う。バストーニもその道をたどれるはずだ。

アタランタにインテルと、これまで3バックのチームでプレーしてきているバストーニ。いずれはキエッリーニのように、4バックのCBとして相手のエースを封じまくる老練な守備者になってもらいたい。そのために必要なのは経験値ただそれだけだ。素材は間違いなくワールドクラスなのだから。




あとがき

オフシーズンになり、今年も移籍の噂に踊らされる季節がやってきた。

インテルの主力選手の中でも特に移籍の噂が立っていたのがバストーニだ。すでにペリシッチを引き抜いたトッテナムが獲得を熱望しているという。現在トッテナムを率いているのは、バストーニをブレイクに導いた恩師アントニオ・コンテだ。

現在はバストーニが代理人を通して残留希望を表明して鎮静化しているが、インテルは今夏の移籍市場で大幅な黒字を出す必要があるとされており、市場閉幕まで何位があるかはわからないだろう。

いずれにしても、バストーニがインテルの選手の中でも特に高い移籍金を見込まれていること、それだけ注目されているタレントだということは間違いない。

ピッチの内外でバストーニから目が離せない。

 

 

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