【ウディネの新たなキング】ジェラール・デウロフェウのプレースタイルを徹底解剖!

【ウディネの新たなキング】ジェラール・デウロフェウのプレースタイルを徹底解剖!

2022年6月8日 1 投稿者: マツシタ
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21‐22シーズンを12位で終えたウディネーゼは攻撃力の高さが光った。シーズン通算の得点数は61で、ユベントスやローマをも上回る成績だ。

2021年夏にはそれまで絶対的な中心選手として君臨していたデパウルが退団し、今季は降格も心配されていたウディネーゼ。だが、ふたを開けてみれば前年を上回る順位でシーズンを終えている。

そんなデパウルなきあとのウディネーゼにおいて攻撃の絶対的中心に君臨していたのがジェラール・デウロフェウだ。

 

バルセロナの下部組織出身のデウロフェウは、バルセロナBでプロデビューを果たす。その後トップチームでもデビューしたが主力として定着するには至らず、2015年にはエバートンに完全移籍。初年度からシーズン19アシストを記録するなど大活躍する。

翌年にはミランへの半年のレンタル、その後バルセロナへの復帰などビッグクラブに挑戦するが主力定着には至らず、2018年にワトフォードへ加入する。ここで3年半にわたって活躍したデウロフェウは、オーナーが同じであるウディネーゼに加入することになる。2020年のことだった。

セリエA再挑戦初年度は主力定着には至らなかったものの完全移籍を勝ち取ったデウロフェウは、デパウルが退団したチームにおいて瞬く間に主力に定着。21‐22シーズンを13ゴール5アシストという成績で終え、すでにイタリアの強豪SSCナポリへのステップアップが濃厚とされている。

紆余曲折を経てついに才能が完全開花した感があるデウロフェウ。今季のセリエAのベストプレーヤーのひとりでもある彼は一体どんなプレーヤーなのか、徹底的に掘り下げていきたい。




デウロフェウのプレースタイル

 

ドリブルによる仕掛け

デウロフェウの最大の魅力がドリブルによる仕掛けだ。

常に足元にボールを置きながら相手の重心を観察し、タイミングをズラして相手をかわすのがデウロフェウ流。ボールが足元から離れないテクニックと、相手を観察できるメンタル的な余裕が彼のドリブルを下支えしている。

  • 右足使用率:92%

と、ほとんど右足でプレーするデウロフェウだが、それでいてボールを大きく左右にズラして相手を揺さぶれるところがおもしろい。

右足アウトサイドでボールに触りながら大きく持ち出し、相手に足を出させてひょいと逆をとる。この揺さぶりの幅の大きさがデウロフェウの重心逆取りをさらに引き立てている

ここらへんは実際に映像を見てもらえば言いたいことがわかってもらえると思う。

 

↓ デウロフェウのドリブル突破集

 

 

データで見ても、

  • ドリブル突破でかわした人数:56(セリエA8位
  • 縦方向のキャリー数:262(セリエA2位
  • 縦方向のキャリー距離:4968フィート(セリエA10位
  • ドリブルによるファイナルサード侵入:85(セリエA5位
  • ドリブルによるペナルティエリア侵入:76(セリエAトップ

ドリブルに関するスタッツで軒並みセリエAトップ10に入っており、中でもドリブルによるペナルティエリア侵入数はセリエAトップの数字だ。彼がボールを持つと飛び込めないことがよく表れた数字だと思う。

今季のデウロフェウはまさにドリブルキングっぷりを存分に発揮していたわけだ。




高いチャンスメイク能力

さらに、この仕掛けをにおわせながら冷静に味方を使うプレーも織り交ぜてくるのがデウロフェウのいやらしいところ。足元にボールを置き、いつでも仕掛けられる状態を作っておきながら、そちらの方がいいとなれば迷わず味方を使って局面を打開できる。

ここでも視野の広さと観察眼が発揮されている印象だ。

 

↓ 仕掛けをにおわせながら見方を使い局面を打開した場面

 

結果として、

  • アシスト期待値:7.0(セリエA6位
  • 枠内シュート数:33(セリエA9位
  • キーパス数:79(セリエA2位
  • ペナルティエリア内へ届けたパス:80(セリエAトップ
  • クロス数:89(セリエA5位
  • シュート・クリエイティング・アクション:137(セリエA3位

と、チャンスメイクに関するスタッツでも軒並みセリエAトップ10に名を連ねている。ペナルティエリア内へ届けたパスではセリエAトップだ。

自らボールを運び、そこからラストパスまで供給する。まさに攻撃の全権を握る、ウディネーゼのキングだったわけだ。




得点力も兼ね備える

リーグ屈指のチャンスメーカーであるデウロフェウだが、彼の凄みはそれだけにとどまらない。今季のデウロフェウはチームトップかつリーグ10位タイとなる13ゴールを挙げているのだ。

注目すべきは

  • 実得点-ゴール期待値:+4.5(セリエA7位)

と期待値を大幅に上回る得点数を記録していること。つまり、難易度が高いシュートを何本も決めているということだ(ちなみに同スタッツトップは、今季でナポリ退団が濃厚となっているメルテンス)。

特にうまいのがミドルシュート。目の前に相手が立っていてもわずかなシュートコースを見出して正確に射抜いてしまう。その観察眼とテクニックには脱帽だ。

 

↓ デウロフェウのミドルシュート集

 

↓ フリーキックもお手の物だ。

 

このように難易度が高いシュートが多いデウロフェウだが、エリア内に入ってくるセンスも持ち合わせている。サイドに流れていたところからするするとエリア内に侵入し足元にボールを引き出す。

ディフェンダーの視野の外から入ってくるため、相手からすれば捕まえるのは容易ではない。

こうしたストライカー的なゴールも挙げており、得点パターンは豊富といえる。そこにデウロフェウの得点量産の秘訣があるのだろう。

understat.comより、デウロフェウのゴールについてシュートを打った位置をピッチ上にプロットしたもの。円の大きさはゴール期待値の大きさを表している。

上のデータを見ても、エリア外からの期待値が小さいシュートとエリア内からの比較的期待値が大きいシュートとのバランスがよく、デウロフェウのゴールパターンの豊富さがよく表れている。

 

さらに憎いのがエリア内でもボールをトラップし、そこから相手を観察できるところ。ここまで何度も言及している観察眼と冷静さだ。これこそデウロフェウの特徴なのだ。

 

↓ エリア内での冷静さ、入っていく巧さ

 

↓ エリア内での冷静さがよく表れたワトフォード時代のゴール。




守備意識の高さ

ドリブル、パス、得点と攻撃に関してはすべてのソツがないデウロフェウ。こうした王様的なプレーヤーが守備に参加しないというのはよくある話だ。

だが、デウロフェウは違う。むしろ先陣を切って積極的にプレスをかけ、チームに貢献している

 

  • プレッシャー数:491(チーム内2位

〈エリアごとのプレス数〉

 

と、データもそれを裏付けている、アタッキングサード、ミドルサードではチームトップクラスのプレス数を記録しており、ウディネーゼのプレッシングにおいてスイッチ役になっていたことがうかがえる。

攻守両面においてウディネーゼの絶対的王様だった今季のデウロフェウ。そのパフォーマンスは圧巻のひとことだ。

 

↓ 自らのプレッシングが起点となった得点シーン。

 

↓ 結果的に失点になってしまったとは言え、デウロフェウの献身的なプレスバックが光った場面だ。

 

まとめると、

  • 幅のあるゆさぶりとタイミングをずらして重心の逆をとる独特のドリブルのキレ味が抜群で、
  • 冷静に味方を使うチャンスメーカーとしての一面も兼ね備え、
  • 豊富な得点パターンでゴールを量産し、
  • 献身的なプレッシングでチームを助ける

まさにチームの全権を担うキングとして君臨したデウロフェウ。彼の強みは何度も触れている観察眼と冷静さだ。結果を残し続けることで得たメンタル面の充実度と自信がこれに拍車をかけたことでキャリアハイのパフォーマンスにつながったのではないだろうか。




デウロフェウの伸びしろ

それでは、そんなデウロフェウの伸びしろはどこにあるのか。

濃厚とされているナポリ移籍が実現した場合、焦点になってくるのは戦術に適応できるかどうかだろう。

というのも、今季のデウロフェウは2トップの一角で起用されたものの実際にはポジションレスのような状態。最前線から自由に動き回ることが許容されており、こと攻撃時に関しては戦術的な縛りがほぼないようなものだった。

20-21シーズンのデウロフェウのヒートマップ。基本的には最も得意な左サイドでのみプレーしていることがうかがえる。SofaScore.comより。

一方、今季のヒートマップ。スタートポジションが中央になったことで、そこから両サイドに動きボールを触っていることがわかる。同じくSofaScore.comより。

2トップの一角に起用されたデウロフェウは、そこからサイドに流れてきてボールを受ける。そこからドリブルでボールを運び、パスを供給して攻撃を組み立てていた。

前述のとおり、ペナルティエリア内へのドリブル侵入およびエリア内へ届けたパスにおいてともにセリエAトップの数字を残したデウロフェウ。サイドに流れてボールを引き取り、そこからボールをペナルティエリアへ運ぶ局面を全面的に引き受けていたわけだ。

ボールがあるサイドにはデウロフェウがいる。だからこそ、今季のヒートマップは両サイドに分布しているわけだ。

このゼロトップ的なフリーロールこそがデウロフェウの神出鬼没さを引き出したと同時に、相手につかまりにくい状態も作り出していたといえる。

 

一方、今季のナポリは両ウイングにアウトサイドに大きく張っておくことを求めていた。1トップのオシメンに広大なスペースを与えるためだ(詳しくはSSCナポリの攻撃戦術徹底詳解を参照)。

デウロフェウがナポリに加入した場合、ウイングでの起用は十分に考えられること。特にインシーニェが退団する左サイドにデウロフェウが収まる展開は十分に考えられる。

こうなったとき、最初から外に張っておくことが求められた場合、デウロフェウは窮屈に感じる可能性がある。

いずれにしても、ウディネーゼ時代ほど自由を謳歌することはできないはずだ。

こうなったときにプレー面でも、メンタル面でも適応できるか。これがナポリでの成功のカギを握るのではないだろうか。

 

 

あとがき

20-21までウディネーゼのキングに君臨していたロドリゴ・デ・パウル。

  • 18-19:9ゴール9アシスト
  • 19-20:7ゴール6アシスト
  • 20-21:9ゴール9アシスト

とMFながら圧倒的な成績を見せていたのと比べると、アトレティコ・マドリード挑戦初年度となった今季の3ゴール1アシストというのは物足りなさが残る数字だといえるだろう。

環境が変われば、誰しも適応に苦しむ可能性がある。デウロフェウはどうだろうか。しっかりと適応し、ビッグクラブでキャリアの最盛期を過ごすことができるだろうか。

彼の挑戦から目が離せない。

 

 

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