【リーグ屈指のアグレッシブプレス】ACミランの守備戦術を徹底解剖!

【リーグ屈指のアグレッシブプレス】ACミランの守備戦術を徹底解剖!

2022年5月15日 0 投稿者: マツシタ
Pocket

いよいよ佳境を迎えたセリエA。現在首位を走るACミランは、早ければ次節にも11年ぶりのスクデットが決まる。

そんなミランの強さを支えているのがリーグ最少失点の堅守だ。特にクリーンシート率は44.4%とセリエAトップであり、ミランがセリエAでも屈指の堅守を誇っていることに異論はないだろう。

セリエAでは、07-08シーズン以来の14シーズンのうち、実に13シーズンで最少失点チームがそのままスクデットを獲得しており、安定した守備が非常に重要であることは間違いない。今季のミランはその条件を満たしているわけだ。

今回は、そんなミランについて、6局面分析のスキームのうちボール非保持を中心に3つの局面について掘り下げてみていきたい。




データで探る

まずはミランのボール非保持について、FBref.comから引用したデータで見てみよう。

 

  • プレッシャー数:5816(セリエA2位
  • タックル数:701(セリエA2位

 

と、まず目につくのはそもそもの守備アクションの多さだ。タックル、プレッシャーともにセリエA第2位になっている。

ちなみに、タックルとプレッシャーともにセリエA最多になっているのは降格圏のジェノア。ボールを握れない試合展開が多いため、守備アクションが多くなるのも当然だろう。

 

〈ボール支配率、SofaScoreより〉

  • ジェノア:44.0%
  • ミラン :54.6%

 

と、ジェノアと比較するとミランはボールを持つ時間がかなり長いといえる。つまり、ボール非保持の局面は相対的に小さいはずなのだ。

その短い時間に多くの守備アクションが記録されている。ここから、ミランが非常に積極的にボールハントを行っていることがわかる。このアグレッシブなディフェンスこそ、ヤングミランの武器だ。

 

 

続いて各アクションをそれが行われたエリアごとに分けてみると、

 

〈プレッシャー〉

〈タックル〉

 

プレッシャーに関してはミドルサード/アタッキングサードでセリエA最多の数字を記録している一方、ディフェンシブサードではボトムハーフとなっている。

一方、タックルではどのエリアでもセリエAで3位となっており、オールコートハントの様相を呈している。これはミランがマンツーマン色が強い守備戦術を採用していることと関係している。

これらを合わせてみていくと、ミランは高い位置からプレスをかけてボールを追い込み、相手に雑に蹴らせた上でボールが出てきた先で積極的にボールを奪いに行くスタイルであるといえるだろう。

このデータ分析は実際にミランの試合を見た印象と合致するものだ。

 

 

さらに注目したいのは

 

  • ファウル数:494(セリエA14位
  • イエローカード数:72(セリエA17位

 

と、守備アクションの多さのわりにファウルやイエローカードが非常に少ないことだ。

ハイプレスによって的確にボールを追い込み、クリーンにボールを奪えていることがうかがえる。ミランの非保持の完成度の高さはデータからも読み取れるといえるだろう。




奪う局面

続いて、実際にミランがピッチ上でどのようにふるまうのか具体的に見ていこう。

4-2-3-1を基本フォーメーションとするミランは、ジルーを相手の左CBにマークにつかせる(もしく左CBを背中で消しながらプレッシャーをかける)ことで相手の右CBにボールを誘導する。そうしたうえで、左ウイングのレオンに外切りでプレスをかけさせることでプレスのスイッチを入れる構造をとっている。

レオンはプレスバック意識があまり高くなく、テオやケシエといった左ユニットに高い負荷がかかってしまうという問題があった(CLリバプール戦1stレグはこれが明確に出た試合だった。詳しくはミランvsリバプールのミニレビューを参照)。

レオンにプレスのスイッチを入れさせるこのプレス構造は、レオンのプレスバック意識の低さという問題を覆い隠すとともに、ボールを奪った瞬間に相手にとってより危険な場所にレオンを突き付けられるという一石二鳥な修正となっている。

たとえば、インテル戦のこの場面。ジルーが右方向のパスコースを切るようにプレスをかけてプレッシングのスイッチを入れる。

これにレオンが連動し、相手に縦パスを強いる。

パスの受け手に対してマンツーマンでついていたクルニッチがこれに反応、相手にミスをさせてサーレマーケルスが回収している。左を切って右で回収するのがミランのプレッシングの狙いだ。

 

ヴェネツィア戦のこの場面も原則は同じ。1トップ(ここではレビッチ)が相手の左CBを消したうえで、レオンが外から内へプレス。

相手に雑なロングボールを蹴らせたうえで最終ラインの選手が積極的に飛び出してボールをカットしている。高い位置からプレスをかけて、出た先で積極的にボールをハントする、これがミランのボール非保持の原則だ。

 

ジルーとレオンが相手に対して外切りのプレスをかけることで、ミランはボールを中央に追い込もうとする。一方、相手からすればレオンが出てきたことで空く左サイドのスペースにボールを展開しようとする。この攻防がミラン戦のみどころとなるので覚えておいてほしい。

この空いた左サイドのカバーリングを行っているのが、ケシエ(べナセル出場時はトナーリ)、テオトモリの左ユニットだ。

 

〈ボール回収数〉

  1. トナーリ :256
  2. ケシエ  :234
  3. トモリ  :228
  4. テオ   :209
  5. カラブリア:197

 

彼ら3人はともに機動力があって守備範囲が広く、テオとトモリに関してはスプリント能力も非常に高いためオープンスペースでの走りあいにも強い。

相手が足元でつないでいこうとすれば最終ラインからも積極的に飛び出して相手に自由を与えず、相手が背後にボールを送ってくれば自慢の走力で回収する。3人の連携も素晴らしく、誰かが飛び出せば誰かがバランスをとるというシンプルな連携を忠実にこなす。その連動性は極めて高い

彼らがレオンなき左サイドの広範囲を分担して守ることでミランのプレッシングは成立しているのだ。




守る局面

相手にプレッシングを回避され、守る局面に移行したときのふるまいについても見てみよう。

データを見てもわかるように、ミランはオールコートハントスタイル。敵陣と同じように、自陣でも積極的にタックルを仕掛けてボールを奪おうとする。

これは、自陣深い位置でもマンツーマンを崩さないという独特な守備戦術と関連している。タックル数が高い位置でも低い位置でも変わらず多いことは、ピッチのどのエリアでもマンツーマンの原則が変わらないことと連動していると思ってもらっていいだろう。

たとえば、この場面。相手の2トップの一角デウロフェウが中盤へ下がっていく。彼をマークしていたのはCBのロマニョーリだ。

祖のデウロフェウにボールが渡る。通常、低い位置まで下りた相手FWは中盤の選手に受け渡すものだが、ミランではこれをあまり行わない。この場面のように、本来のマーク担当であったCBロマニョーリが飛び出し、空いたスペースをボランチのケシエが埋める形をとる。ミランが自陣でもマンツーマンを基準としていることがよくわかる場面だ。

この場面のように、ボランチが下がる動きを多く見せるのはミランの守る局面のもうひとつの特徴と言える。

サイドにボールが出た場面は典型的で、ボランチが最終ラインに吸収されるくらいまで下りることゴール前に厚みを出して跳ね返しに備える。

たとえばこの場面。サイドにボールが渡ってクロスボールに備えるミランの面々。ダブルボランチのトナーリとケシエが最終ラインに吸収されるくらいまで低い位置をとっていることがわかる。

こうなるといわゆるバイタルエリアがガラガラになってしまうため、ここにボールが出てきたときに誰が飛び出すかを明確にするのがポイントとなる。

ここで生きるのがマンツーマンの原則。先ほどのロマニョーリのように、ボールを持ったのが自分のマーク担当であれば迷いなく飛び出してボールホルダーにアタックできる。

フィジカル的な負荷が高い代わりに思考を単純化できる。マンツーマン守備のメリットを生かした守備設計だ。

 

 

と、ここまで戦術的な側面に触れてきたが、これと並んで言及すべきなのが守護神マイク・メニャンの存在だ。

いかにミランの守備が戦術的に優れているとはいえど、必ずピンチは訪れる。そうなった時に最後に構えるメニャンのパフォーマンスが、ミランの堅守のキーになっていることはまず間違いない。

 

〈メニャンに関するデータ〉

  • セーブ率:76.9%(セリエA2位
  • 失点期待値-失点数:+6.7(セリエAトップ) ※ゴールキーパーのセーブしやすさをもとに算出

 

セーブ率は2位、期待値と実失点の差(つまり、難易度の高いセーブの多さはセリエAトップだ。これらのデータがメニャンのハイパフォーマンスを雄弁に物語る。

メニャンはゴールを守る能力だけでなくビルドアップの起点リーダーシップと、実に多くの側面からミランにプラスアルファをもたらしている。彼の存在が今季のミランをもうワンランク上のチームに押し上げたといっても過言ではないだろう。

リーグ全体で見ても今季最高の補強だ。




守→攻の局面

さて、ボール非保持の局面でボールを奪った瞬間の局面、守→攻の局面についてもみてみよう。

ハイプレス+マンツーマンで再現性高くボールを奪えているミラン。そこから繰り出すカウンターこそ、彼らの最大の武器だ。

敵陣だけでなく自陣でも、ボールを奪った場所に関わらず鋭いカウンターを繰り出す。それを可能にするのは、長距離を持ち運べる走力を持つアタッカー陣だ。

 

 

ここで、ミランのドリブルに関するデータを見てみよう。

 

  • ドリブル総数:721(セリエAトップ
  • ドリブル成功数:419(セリエAトップ
  • ドリブル成功率:58.1%(セリエAトップ

 

と、ミランはセリエAの中で最もドリブルによるチャンスメイクを志向するチームとなっている。

チーム内でドリブル成功数のランキングを見てみると、

 

〈ドリブル成功数〉

  1. レオン :91
  2. サレマ :50
  3. テオ  :42
  4. ブラヒム:40

 

と2列目の選手たちが並んでいる。

さらに、そこに加わっている左SBのテオ・エルナンデスは最終ラインから一気に飛び出しカウンターに厚みをつける飛び道具だ。自らドリブルで運ぶこともできるテオはカウンターの申し子のようなサイドバックだ。

しかしながら、やはりミランの最大のチャンスメーカーはレオンであると言わざるを得ない。ドリブル成功数は2位サーレマーケルスの倍近く、今季のミランはレオンのチームと言っても大げさではない。

そんなレオンをプレスのスイッチ役とすることでボールを奪った瞬間により高い位置にレオンを置くことができるのだった。このピオーリの戦術変更もまたミランのカウンターの鋭さに寄与しているのだ。

低い位置でボールを奪った場面。ここから一気に人が湧き出してくる。

ケシエからボールを受けたテオがドリブルでボールを運ぶ。1トップのイブラヒモビッチとともに高い位置に残っているレオン。ミランのカウンターを象徴するような場面だ。

 

↓ ミドルゾーンで奪ってのカウンター

 

↓ 自陣深い位置で奪ってカウンター

 

↓ リバプールにも通用したミランのロングカウンター。

 

 

あとがき

完成度の高いプレッシング+マンツーマンの原則を利用したアグレッシブなボール奪取で再現性高くボールを奪い、そこから鋭いカウンターを繰り出す。この一連の流れの完成度の高さが今季のミランの強さと言えるだろう。

引いた相手をどう崩すかに課題が残るとはいえ、メインウェポンの鋭さでいえばかなりハイレベルにあるといえる。

さらに、ピオーリはチームマネジメントにも長けている。若手選手たちのメンタルをうまくコントロールし、ピッチ上でも難しい縛りを設けるのではなく、個性の足し算で自然体にチームが組み上がるように配慮する。

前線からのアグレッシブなディフェンスとそこからのロングカウンターもそうで、フィジカル的な負荷が高いこのスタイルはミランの若手中心のスカッドと相性がいい。

これをイブラヒモビッチらベテラン陣が助け、チームはメンタル的に非常に充実した状態にあるといえる。

彼らがスクデットに値するチームかと言われれば、間違いなくYESと答える。今季のミランは、強い

今夜、歴史に名を刻めるか。注目だ。

 

 

あわせて読みたい 関連記事

ミラン関連の記事一覧はこちらから

【サンシーロ男】オリビエ・ジルーのプレースタイルを徹底解剖!

【逸材マルチバック】ピエール・カルルのプレースタイルを徹底解剖!

【ピッチの統治者】フランク・ケシエのプレースタイルを徹底解剖!

【アグレッシブレジスタ】イスマエル・べナセルのプレースタイルを徹底解剖!

【最強デュエリスト、ミランに見参】フィカヨ・トモリのプレースタイルを徹底解剖!

【欧州最高の右SBへ】ダビデ・カラブリアのプレースタイルを徹底解剖!

【ミランのDFリーダー】シモン・ケアのプレースタイルを徹底解剖!