【トリノのディフェンスリーダー】グレイソン・ブレーメルのプレースタイルを徹底解剖!

【トリノのディフェンスリーダー】グレイソン・ブレーメルのプレースタイルを徹底解剖!

2022年3月16日 0 投稿者: マツシタ
Pocket

21-22シーズンも終盤戦を迎え、移籍関連のニュースがにぎわう時期になってきた。そのシーズンに活躍した選手、特に中位・下位クラブの選手たちにはビッグクラブからの熱視線が注がれ、ステップアップの噂がさかんに報じられるのはサッカー界の常である。

今年のセリエAでプレーするディフェンダーにおいて、ステップアップ候補として取り沙汰されている最もホットな名前はグレイソン・ブレーメルである。

 

母国ブラジルのアトレチコ・ミネイロでプロデビューを果たしたブレーメルは、翌シーズンにはイタリアのセリエAに所属するトリノFCに引き抜かれる。

初年度となった18‐19シーズンこそ適応に苦しんだものの、翌季からは主力のひとりとして最終ラインに定着した。特に圧巻なのは今シーズン。ユリッチ監督に戦術の核に指名されると、その期待に応えるようにハイパフォーマンスを継続しており、いまやセリエA屈指のセンターバックとの呼び声も高い

この活躍が評価されて2022年2月2日にトリノとの契約を延長したものの、これは移籍に向けた布石であると見られている。

実際、ブレーメルは引く手あまただ。現在のところ最も移籍の可能性が高いとされるインテルをはじめ、ミランユベントス、ナポリとイタリアの強豪はこぞって獲得を画策している。そればかりか、バイエルン・ミュンヘン(特に熱心と言われている)やリバプールを筆頭とするプレミアリーグの強豪クラブなど、国外のメガクラブもこぞって獲得を狙っているとされている。いまセリエAで、いやヨーロッパで最も熱視線を浴びているディフェンダーなのだ。

そんなブレーメルは一体どんなプレーヤーなのか。徹底的に掘り下げていきたい。




ブレーメルのプレースタイル

 

最強の対人

ブレーメルの最大の武器、それは圧倒的な対人守備の強さである。これはデータが雄弁に物語っている。

  • インターセプト総数 99(セリエAトップ
  • プレッシャー成功率 41.8%(セリエA3位
  • ボールブロック総数 63(セリエAトップ
  • クリア総数 147(セリエAトップ

このように、あらゆる守備スタッツにおいてセリエAトップクラスの数値を記録している。

 

トリノFCを率いるのはアタランタを強豪に引き上げた名将ジャンピエロ・ガスペリーニの弟子筋にあたるイバン・ユリッチ。彼もまたマンツーマン基準で高い位置からプレスをかける戦術を志向しており、それは3バック中央に位置するブレーメルも同じ。特に、最終ラインの最後のひとりとなるブレーメルには目の前の相手に絶対に負けないことが求められている。

それは逆に言えば、目の前の相手との勝負にだけに集中できる環境が整っているともいえる。これは、対人モンスターであるブレーメルにとって自らの持ち味を存分に発揮する環境が整っているといえるのだ。

彼の特徴は常に相手との距離を詰めていること。いつでもインターセプトができる距離と言ってもいいだろう。相手と近い距離を保っておき、常に圧力をかける。そうして自分のマークにボールが入ってくれば、素早く寄せて自由を奪う。

インターセプトやボールブロックなど、相手との距離を詰めなければ発生しない守備アクションが非常に多いことが、彼のスタイルを端的に表してくれている。

読みと出足の鋭さで彼の右に出るCBは今のセリエAにおらず、インターセプトの第一人者と言っていい。

 

また、前に出てカットできず、相手にボールを収められたときの対応も素晴らしい。

ブレーメルのプレーを見ていて非常にうまいなと感じるのが腕の使い方だ。これはぜひ注目してみてほしい。強すぎず弱すぎない、ファウルにならないギリギリの強さで相手の上半身を押してバランスを崩させ、それからタックルを行っている。

ブレーメルのこのやり方は、まず相手の体や足元にタックルを仕掛けるやり方に比べてクリーンに見え、余計なカードを避けられる。

 

ここで、ブレーメルと同じくガスペリーニ式3バック中央という特殊なポジションを務めるデミラル(今季)とロメロ(昨季)の2人と、カード数/ファウル数の数値を比較してみよう。

〈カード数/ファウル数〉

このように、カード1枚もらうまでのファウルの数はブレーメルが圧倒的に多くなっている。これは、危険なファウルの少なさを表している。

腕を使ったコンタクト、それによって相手とボールの間に距離ができてからつついて奪う技術と駆け引き。これらを駆使してブレーメルは攻撃の芽を摘みまくるのだ。

 

これらはすべて相手との距離を詰めているからこそ成立するプレーなのだが、普通CBの選手は過剰に相手との距離を縮めることを嫌う。裏を取られてしまうからだ。

対して、恵まれた身体能力を持つブレーメルは、たとえ裏に抜け出されそうになっても無理がきく。スプリント能力にアジリティと、相手に裏に走られてもとっさに反応してカバーできる能力があるからこそ、勇気を持って前に出られる。彼のスタイルを支えているのは恵まれたフィジカル能力だ。

実際、ブレーメルが裏を取られて失点したシーンは今のところない。どんどん前に出ていくスタイルながら、裏のスペースを管理する能力も極めて高いといえるだろう。

 

↓ セリエA最強ストライカー、ヴラホヴィッチを完封した試合のタッチ集。




 

空中戦も非常に強い

また、ブレーメルは空中戦にも非常に強い

  • 空中戦勝利数 120(セリエA3位

とリーグ屈指のエアバトラーっぷりを見せつけている。

勝率で見れば54.1%と特別いい数字には見えないが、これはマンツーマンディフェンスが立ち位置の主導権を相手に渡す守備方法であることと関係していると思う。実際、昨季の空中戦勝率は60.5%、一昨季のそれは59.3%であり、実際に試合を見ていて感じるイメージは昨季までの数字の方に近い。今季の数値が少し低くなっているのは、守備戦術の大きな変更によるものとみていいだろう。

 

ブレーメルは188cmという身長以上に驚異的な跳躍力によって相手をねじ伏せる。垂直飛びでも非常に高い打点を出せるバネは超人的だ。

ただ、ブレーメルは相手よりも少し早いタイミングでジャンプし、上から抑え込むようにして相手にジャンプさせないプレーを得意としており、決して身体能力だけに頼っているわけではない。細かい駆け引きの技術を習得しているため、相手の背後からでもボールを弾き返せるのだ。

 

空中戦の強さはセットプレーでも活かされる。セットプレーで格好のターゲットになるブレーメルは、貴重な得点源としてゴールを陥れる。

トリノはサイドからどんどん中央に放り込む攻撃戦術を採用していて、スローインの場面ではロングスローを用いることも。この時にもブレーメルは前線に駆け上がってターゲットになる。

  • シュート数:25(セリエAのCBの中ではトップ

と、今季のセリエAで最もシュートを打っているCBはブレーメルだ。

決定力も高く、直近の3シーズンで11ゴールを挙げていてその得点能力はCBとしては非常に高いといえる。特に5ゴールを上げた昨シーズンは圧巻だった。

守備だけでなく、攻撃面でも頼りになるブレーメルはトリノの大黒柱として君臨している。

 

↓ サレルニターナ戦で決めた今季初ゴール。

 

まとめると、

  • 相手との距離を詰めて常にインターセプトを狙い、
  • 相手に収められたら腕を使ってじわじわ圧力をかけてバランスを崩させ、
  • 背後に走られても恵まれた身体能力でカバーし、
  • 空中戦にも非常に強く、
  • セットプレーからの得点能力も高い

最教の対人と攻撃性能。センターバックに求められる能力を




ブレーメルの伸びしろ

ブレーメルのディフェンダーとしての個人能力が非常に高いことはここまでの説明でおわかりいただけただろう。

そんな彼に伸びしろがあるとしたら、戦術面ということになるだろう。

 

ブレーメルの悪い癖として、ボールウォッチャーになりがちな点が挙げられる。これは攻守両面においてだ。

攻撃時では、味方がボールを持っているときにパスコースの提供をサボってしまい、歩いている場面がみられる。ブレーメルが適切なパスコースを作ってあげれば雑に蹴らずに済んだのにな、と思うような場面は多くある。

だが、もっと問題なのは守備時だ。ここでも、ブレーメルはボールウォッチャーになってしまう場面が散見される。

 

↓ 例えばこの場面。ブレーメルのマークはエイブラハムなのだが、後退しているとき一度も背後を確認していない。ブレーメル以外の3人は背後を確認していることもわかる。これがブレーメルの悪癖である。

 

常に相手を自分の前に置くマンツーマンディフェンスでは、この悪癖は出にくいだろう。ところが、ゾーンディフェンスを採用するチーム(多くのチームはそうだ)では、背後をよりこまめに確認しなければマークを外してしまう場面が出てくるかもしれない。

 

また、クロスボールが上がってくるときのポジショニングも感覚的なところがある。

サイドからクロスボールが上がってくる場面、ブレーメルは前に出ることを選択したのだが、それによって空いたGKとの間のスペースにボールが入ってきて危険なシーンとなった。

その後の場面、ブレーメルはボールウォッチャーになり棒立ちに。GKが弾いたセカンドボールに反応できず、相手にシュートを許すことになった。ここでも悪癖が出てしまっている。

↓ 当該場面の動画

 

ボールウォッチャーになりがちなこと、サイドからクロスが入ってくるとき(つまりゾーンディフェンスに移行したとき)のポジショニングが甘いこと。これらの要素はマンツーマンでない戦術、いわゆるオーソドックスな守備戦術を採用するチームに移籍したときには改善しなければならないポイントだろう。

 

また、ビルドアップ面についても今後の課題だろう。

トリノの戦術上、CBに対してボールを動かしながら縦パスのコースを見出し、鋭いくさびで相手のプレスを無効化するといった高度なビルドアップ能力は求められていない。ゆえに、そうした能力はここまで発揮されていない。シンプルに味方につなぐ場面が多くなっている。また先ほど指摘した通り、サポートポジションがよくない場面も多く見受けられる

ただ、プレーを見ている限り足元の稚拙さは感じられない。となると問題はテクニックよりも戦術眼の方で、ここは後天的に鍛えられる側面だ。移籍先では加入当初は苦労するだろうが、慣れていけば問題なく機能できるようになるのではないだろうか。

ブラジル人プレーヤーということからも足元のテクニックには期待してしまうところだが、慎重に見てみなたいところだ。

 

このように、いわゆる現代サッカーのオーソドックスな戦術に適応するときネックになりそうな部分が見られているブレーメル。移籍先でいかに素早く適応できるかどうか、問われるのは戦術眼だろう。

逆に言えば、ここを問題なく消化できれば世界でも屈指のCBになれるポテンシャルを持っている。将来的に王国ブラジルのディフェンスリーダーに君臨していても驚かないほど、そのポテンシャルは高い。

まだ24歳と将来性も備えるブレーメル。彼の今後の成長も楽しみだ。




あとがき

現在、ブレーメルはインテル・ミラノへの移籍が濃厚とされている。

個人的には、マンツーマン基準でハイプレスをかけ、ビルドアップもそこまで高度なものが求められないACミランが戦術的な相性がいいように思えるが…。はたして、来季のブレーメルは一体どこでどのようなプレーを見せているのか。ピッチ内外で目が離せないプレーヤーだ。