【悪童プリンス】ニコロ・ザニオーロのプレースタイルを徹底解剖!

【悪童プリンス】ニコロ・ザニオーロのプレースタイルを徹底解剖!

2022年3月1日 6 投稿者: マツシタ
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昨年行われたEUROで欧州制覇を実現したイタリア代表。ボヌッチやキエッリーニといったベテラン、ジョルジーニョやヴェッラッティといった脂ののった中堅とともに、多くの若手プレーヤーが主力を担い、将来性ある新星アッズーリの姿を見せつけた。

近年有望な若手が多く台頭するようになったイタリアだが、その中でも特に将来を嘱望されてきたのが、ASローマでプレーするニコロ・ザニオーロだ。

 

トスカーナ州生まれのザニオーロは、フィオレンティーナのユースで長く育った。しかし、彼はフィオレンティーナではなく、2016年に移籍したヴィルトゥス・エンテッラの一員としてプロデビューしている。

1年間セリエBでプレーした後、ザニオーロはインテルのユースに引き抜かれた。ここでプリマヴェーラの一員として活躍したザニオーロは、13ゴールを挙げて得点王に輝いた。このシーズン、インテルユースはカンピオナート・ナツィオナーレ・プリマヴェーラ(かつて存在したイタリアのユースリーグ)で優勝を果たしている。

翌年には親善試合でトップチームデビューを果たすなどインテルで活躍していくかに思われたザニオーロだが、その後ラジャ・ナインゴラン獲得オペレーションの代価の一部としてASローマに加わることになった。

加入初年度の18-19シーズンからリーグ戦27試合4ゴール2アシスト&CLデビューで一気に注目を浴びたザニオーロは、翌19-20シーズンも公式戦通算33試合8ゴール4アシスト。完全にブレイクし、「トッティの後継者」と称されるなどイタリア屈指の若手逸材としてその名は世界中にとどろいた。

しかし、その矢先だった。シーズン後の代表戦で左膝前十字靭帯断裂の大けがを負ってしまったザニオーロは20-21シーズンのすべてを棒に振る羽目となり、先述のアッズーリの欧州制覇もテレビ越しに見守ることになった。

そして今季、牧菓子を誓ってピッチに戻ってきたザニオーロはモウリーニョ新監督の信頼を得てここまでリーグ戦21試合に出場。実質新加入選手としてローマにプラスアルファをもたらしている。

そんなザニオーロは一体どんなプレーヤーなのか、徹底的に掘り下げていきたい。




ザニオーロのプレースタイル

 

恵まれたフィジカルとそれを活かしたゴリブル

ザニオーロの最大の長所、それは恵まれたフィジカルである。190cmの長身MFであるザニオーロは、相手に背後からコンタクトされてもびくともしない強靭な体幹を備えており、ライン間で相手を背負ってボールキープできる。そのプレースタイルは「ポストプレーヤー型トップ下」といっていい。

守備陣形がどんどんコンパクトになっていく流れにある現代サッカーにおいて、近くにDFがいる中でも相手を背負って時間を作ってくれるザニオーロのような選手は非常に貴重かつ有用性が高い。

 

さらに、彼を特別な選手たらしめているのは相手を背負った状態から強引に前を向いてドリブルで運べることだ。

それを支えているのは下半身に備える爆発的なパワー。相手のコンタクトをものともせず、むしろ振り払うようにして突き進む馬力あふれるゴリブルは迫力満点だ。

データサイトFBref.comによると、ザニオーロはドリブルに関してセリエA屈指のスタッツを残している。

まずはドリブル突破に関するスタッツを見てみよう。

  • ドリブル突破総数:84(セリエA2位
  • ドリブル突破成功数:42(セリエA3位タイ
  • ドリブル突破でかわした人数:45(セリエA3位タイ

このように、ザニオーロはドリブルの試行数/成功数ともにセリエAトップクラスだ。彼のドリブルに対する積極性がうかがえる。

さらに注目すべきはドリブル突破でかわした人数の多さ。彼が一度ドリブルを始めれば何人ものDFをかわしてしまっていることがよくわかる。

といっても、ザニオーロは相手に引かれた状態で複数人をかわして行けるほどの細かいボールタッチや瞬間的な加速、敏捷性などは持ち合わせていない。そうした細かいステップの踏みかえではなく、直線的なドリブルで相手を突き破るようにして突破するのが彼の真骨頂。フェイントはほとんど用いず、多少の緩急以外には目立った細工はしない。とにかく彼のドリブルの特徴は他を寄せ付けない圧倒的なパワーなのだ。

彼が一度突進を開始してしまえば止めるのは容易ではなく、

  • 被ファウル数:48(チーム内トップ

とファウルで止めざるを得ないのが現状だ。

 

次に、突破を伴わないドリブル(ここではキャリーとする)についても見てみよう。

  • 縦方向へのキャリー:104(チーム内2位
  • ファイナルサードへのキャリー数:48(チーム内トップ
  • ペナルティーエリア内へのキャリー数:18(チーム内トップ

と、ザニオーロは縦方向に運ぶドリブルも多く見せている。

特に、ファイナルサードへの侵入に関しては

  1. ラファエウ・レオン  :61
  2. フェリペ・アンデルソン:56
  3. カプラーリ      :56
  4. バラク        :55
  5. ザニオーロ      :48

とFW/アタッカーに限ってみればセリエAトップ5に入る数字だ。彼が前線と中盤を物理的につなぐ架け橋となっていることがよくわかる。

ローマはいったん後方にどっしりと構えて守り、そこからカウンターに出ていく戦術を基本線に据えている。この戦術において、後方からのフィードを収めて時間を作るだけでなく、自ら前を向いて前線までボールを運んでくれるザニオーロが非常に重要な役割を担っていることは想像に難くない。

ザニオーロにとってもまた、前方に広大なスペースが広がっている中で自らの持ち味を発揮しやすい環境が整っているといえるだろう。

 

こうした特徴から考えると、彼はサイドよりも中央でのプレーにより適正があると思う。サイドで起用されたときにはタッチラインによってプレーが制限され、窮屈そうにしていることが多い。細かいスペースを抜けながらカットインしていくプレーも実はあまり得意ではなく、プレーする方向を自由に決められる中央の方がやりやすそうだ。

ゆえに、アッズーリの4-3-3でも最前線で起用すべきではないかとみている。

サイドアタッカーとしてのザニオーロの課題に関しては、またあとで触れたい。




強烈なミドルでゴールを強襲

さらに、ザニオーロは下半身のパワーを活かしたミドルシュートを得意とする。

  • シュート数:53(チーム内3位

とシュートに対して積極的であり、

  • シュート平均距離:17.9m

とシュートの平均距離を見てもペナルティエリア外からのシュートが多いことがわかる。

一方でアシストに関するデータを見てみると

  • アシスト数:0
  • アシスト期待値:1.3(チーム内9位
  • キーパス数:16(チーム内6位

と低い数値にとどまっている。過去のシーズンの実績を見てもアシスト数よりもゴール数が上回ってきたザニオーロ。周りの味方を活かすよりも、強引にでも自らゴールをこじ開けようとする、積極的なパーソナリティーの持ち主だといえるだろう。

 

↓ 19-20のナポリ戦で決めた、キャノン砲のようなミドルシュート。

 

18-19と19-20の2年間で公式戦通算14ゴールと、トップ下として考えれば高い得点能力を誇るザニオーロ。ただ、今季はここまで2ゴールと大けが前と比べるとその得点力は鳴りを潜めている。

枠内シュート率を比較すると、

  • 18-19:36.7%
  • 19-20:46.8%
  • 21-22:24.5%

と、大けが前の19-20の半分くらいの数値になってしまっている。まだまだ本来のポテンシャルを発揮しきれていないといえるだろう。

彼が本来の得点能力を発揮し始めた時、ローマはさらに高みへ登れるはずだ。今後はさらなるゴール数増加に期待したい。

 

最後に、ザニオーロのらしさが詰まった場面を紹介しよう。

第24節ジェノア戦、ザニオーロは高い位置で相手CBを背負ってボールを受けることに成功すると、そこから強引に前を向き、緩急で相手DFのタイミングをずらしながらシュートコースを作り出すと、体をひねりながらゴール右下に決めた。彼のパワーとミドルシュートのうまさ、強引にでもゴールを割らんとするパーソナリティーが詰まった場面だ。

 

まとめると、

  • 強靭なフィジカルで相手を背負って時間をつくれるポストプレーヤー型トップ下で、
  • そこから強引に前を向いて突破することも可能であり、
  • 強烈なミドルシュートによる得点力も高い

トップ下としてはストライカー寄りで、ストライカーとしてはトップ下寄りな独特のスタイルを持つザニオーロ。いずれにしても、ピッチ中央に置かれてこそ輝くプレーヤーだといえる。

4-2-3-1の右サイドに置かれていたシーズン序盤戦と比べ、2トップの一角に置かれるようになったシーズン中盤以降に輝きを増したのも偶然ではないだろう。




ザニオーロの伸びしろ

それでは、ザニオーロの伸びしろはどこにあるのか。

ひとつはオフ・ザ・ボールの洗練だ。ユースでは圧倒的なフィジカルの強さゆえにモノを言わせ、細かい駆け引きがなくともパワーでねじ伏せられてきたのだろうが、セリエAトップレベルで見ると物足りない感がある。

特に気になるのは右サイドで起用された場合。サイドバックがボールを持った時に、足元にボールを要求して引いてきすぎるために、味方を窮屈にしてしまっている場面が見受けられる。彼の適切なサポートがないために、カルスドルプが苦労した側面があることは否めない。

サイド深い位置でボールを持った時の窮屈さも相まって、サイドに置かれたときのザニオーロは凡庸な選手に成り下がってしまう。サイドでも輝くためには、オフ・ザ・ボールによって直接DFラインの裏にボールを引き出したり、味方を活かすデコイランを身につけたりする必要があるだろう。

 

 

もうひとつは精神面の未熟さだ。

ザニオーロはかつて付き合っていた彼女に中絶をさせたとされており、そのほかにも喫煙が発覚するなどピッチ外で話題に上ることが多い選手でもある。精神的な成熟度に関してはまだまだだ。

これはピッチ上にも影を落としている。先述のようにザニオーロは多少の接触などものともしない馬力あるドリブルを備えている。にもかかわらず、ザニオーロは大したコンタクトには見えない場面でも倒れてファウルをアピールしてしまう。これではせっかくの持ち味が発揮されないというものだ。

彼の能力をもってすれば、ファウルを受けるよりもそのままプレーを継続してフィニッシュまで持っていった方がいいはず。相手のコンタクトをすべて跳ね返すくらいのプレーを見せてほしいものだ。

また、カードの多さも問題だ。

  • イエローカード:9枚(セリエA4位タイ
  • レッドカード:2枚(セリエAトップタイ
  • ファウル数:45(チーム内2位

と、攻撃的な選手としては明らかにカードやファウルが多い。厳しい判定がないとは言わないが、不要なファウルが多いことは間違いないだろう。

こうした冷静さを欠いたプレーが散見されるのも、精神的な未熟さに起因すると見ていいはずだ。

世界的に大成するためには精神的な安定が不可欠であることは当サイトで何度も述べてきている通り。その最たる例がヴラホビッチだ。

ザニオーロも精神的に成熟し、安定して実力を発揮できればもっとやれるはず。それだけに、現状には歯がゆさを感じてしまうところだ。

 

ほかにも

  • 空中戦勝率:37.8%(チーム内で下から3番目

と190cmという長身を生かしきれていないなど、その底知れぬポテンシャルを考えれば全体的に粗削りな印象が否めないザニオーロ。彼が真のワールドクラスとして大成するためには、改善すべき項目は多い。

逆に言えばまだまだ大きな伸びしろを残しているということ。将来的にどのレベルまで到達できるかは、彼の今後の取り組みにかかっている。




あとがき

かつてイタリアで栄華を築いたモウリーニョを新監督に迎えて今シーズンを迎えたローマ。ここまで6位と、思うようなシーズンを過ごせているとはいいがたい。

それはザニオーロも同じはずだ。彼の本来のポテンシャルを考えれば、今のパフォーマンスは満足のいくものではないはずだ。

ローマは、ザニオーロはここから巻き返せるのか注目だ。

 

 

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