【連覇へ視界良好】インテルの戦術を6局面分析で徹底詳解!

【連覇へ視界良好】インテルの戦術を6局面分析で徹底詳解!

2022年2月16日 1 投稿者: マツシタ
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インテルの攻撃戦術分析を投稿してから3か月、守備戦術についても書きます!と言ってからだいぶ時間が経ってしまった。頭の片隅にありながら後回しにしてしまっていたのだが、CLが再開し、優勝候補のリバプールとぶつかるこのタイミングがちょうどいいと思い筆を執ることにした。

当初は守備面についてだけ書くつもりだったのだが、この3か月間でインテルは攻撃面も含め全面的に完成度を高めており、3か月前とは事情が異なっている。

  • ゴール数:55(セリエAトップ
  • 失点数 :20(セリエAで2番目に少ない

と、攻守ともにセリエA屈指の数字を残しており、現状イタリア最強チームと言って差し支えないだろう。

インテルの攻撃戦術分析では、チーム作りの過程における試行錯誤の方に重点を置いたわけだが、それを経て完成を見たシモーネインテルについて、守備面だけでなく攻撃面も含めて改めてまとめてみたいと考えた次第だ。

セリエA屈指の完成度を誇るシモーネ・インテルを丸裸にしていこう。




運ぶ局面

インテルのビルドアップの基本は、ピッチに大きな円を描くように布陣し、相手の守備陣形を大きく広げた上で空いた中央を起点としながら前進していくというものである。

この発想は、ルカクにかわって新たに迎え入れられたジェコという前線に柱を最大限生かすことが出発点であるという見解は以前投稿したシモーネ・インテルの攻撃戦術分析記事(以下前回の記事と表記)で紹介し、そこから数か月経過したいまも変わっていない。

インテルのビルドアップはピッチに大きな円を描くように布陣し、空洞化した中盤にジェコをおろすことで数的優位を作り、空いた選手にくさびを入れて前進していくというものだ。

前回の記事では、このビルドアップにおいてジェコへの依存度が高すぎると指摘した。

現在のインテルにおいても、ジェコがくさびの受け手、つまりビルドアップの最大の目的地として非常に重要な機能を担っていることは変わっていない。

FBref.comより、今季のインテルの縦パスレシーブ数のランキング。トップはジェコで、2位のラウタロの1.6倍ほどのパスレシーブ数となっている。彼が縦パスの主要な目的地となっていることに変わりはない。

ただ、そこから数か月を経た現在では、ジェコに依存している状況からは脱している。ジェコを活かすことを出発点としながらも、その重点が「ジェコをいかに活かすか」から「チームとしていかに再現性高くボールを前進させるか」に移っていった結果、ジェコがいなくてもスムーズにボールを運ぶことができるようになっている。

インテルのビルドアップにおいて特徴的なのは、非常に流動的なポジショニングだ。3バックの一角であるバストーニが高い位置を取ったと思えば、ブロゾビッチが最終ラインに降りてくる。ジェコもどんどん降りてくるし、隙を見てバレッラが飛び出す。相手からすれば捕まえづらいことこの上ないだろう。

だが、ピッチを全体的に見てみると、そこに立っている選手は違いこそすれ、チーム全体としての陣形はほとんど変わらないことがわかると思う。チームのバランスを崩さずに流動性を生み出すこのメカニズムは一体何なのか。

個人的には、シモーネはピッチに11個の「座席」を用意しているのではないかと思っている。

シモーネがピッチに用意した「座席」。

座席の場所は決まっているけど、そこに誰が座ってもいい。これならば、選手が立ち位置を変えても全体としてのバランスは変わらない。

そして、11という数字もキモ。フィールドプレーヤーは10人なので、1つ空席ができることになる。この空いた席に誰かがずれることで、連動のスイッチが入るわけだ。

画像で確認してみよう。

WBのダルミアンがボールを持っている場面、バレッラが内から外へと動く。先ほどの画像でいうと、7番の座席から空いている11番の座席へと移動する動きだ。

バレッラが動いたことで、7番の座席が空いた。ここに降りてきたのが、10番にいたラウタロだ。

このように、11個の座席という概念を用いることで、ピッチ上の選手はどこの座席が空いているのかを認識でき、そこに入っていくことで連動のスイッチが入る。その動きを見た次の選手もどこに連動すればいいかがすぐにわかる。これがシモーネインテルが複雑な流動を生み出しながらもバランスを崩さないの秘訣なのではないかと思っている。

ダルミアンが4番の座席からから11番の座席へ縦にスライドしてスイッチを入れると、空いた4番にはバレッラが降りてくる。バレッラがいた7番には、ラウタロが降りてくる。この場面のように、右サイドではバレッラが内→外の動きを入れることで相手のMFを釣り、内側にパスコースを作り出す形を多用する

一方の左サイド。チャルハノールが6番から5番に動いたことで、空いた6番にコレアが降りてくさびを受ける。このように、右では横×縦で動きにギャップを作ることが多いのに対し、左ではチャルハノールがブロゾビッチ脇に降りることをスイッチとして2重の縦降りで相手を混乱させることが多い

また、先ほどの画像でラウタロが高い位置にとどまって相手の最終ラインをピン止めしていることにも注目したい。結局のところ、2トップを縦関係にしてライン間で前を向かせることがインテルの狙いなのだと思う。それに最適化されたストライカーがジェコであるというわけだ。

ただ、ここ最近調子を上げてきているサンチェスや現在負傷中のコレアもこの役割に適合した選手であり、彼らがフィットしてきたことがインテルのジェコ依存解消の要因になっている。

このように、中盤を動かすことでFWをおろし、そこにくさびをつけることで前進していくインテル。序盤戦から変わったなと思うのは、相手がこれを警戒して中央を固めてくれば、その頭越しにサイドtoサイドのロングボールを入れて相手のプレスを打開する場面がみられるようになったことだ。

  • スイングパス:435(セリエA3位

スイングパスとはピッチの横方向に40m以上移動したパスのことで、いわゆる1発のサイドチェンジのこと。その多さはデータも裏付けている。

流動的な連動から中央にくさびを入れることを基本的な狙いとしつつ、相手が中を固めてくれば逆サイドへ。この選択が適切であるゆえに、現状イタリアのクラブではインテルのビルドアップを困難に陥れるのが難しい状況だ。運ぶ局面の完成度でいえば、イタリアでもトップだと言っていいだろう。




崩す局面

中央ルートで前進した後は、いったんボールをサイドに逃がすのがシモーネ流。そこからクロスボールを供給するのが狙いだ。

  • クロス数:345(セリエAトップ

と、データもインテルのクロスボールの多さを裏付けている。

Whoscored.comより、今季のインテルのアタッキングサイド。左サイドからの攻撃が多くなっていることがわかる。

昨季のインテルはハキミ、バレッラにルカクを加えた右サイドからの攻撃が多かった。しかし、今季は左サイドに重点を置いている。

左39%、右33%という数値ではそこまで大きな差は感じないので、具体的なクロスボールの数や生み出されたアシスト期待値について見てみよう。

〈クロスボール〉

  • 左サイド:157
  • 右サイド:99

〈アシスト期待値〉

  • 左サイド:12.0
  • 右サイド:7.9

ただし、左サイドはペリシッチディマルコ、バストーニ、チャルハノールの合計値、右サイドはダルミアン、ドゥムフリース、バレッラ、シュクリニアルの合計値だ。

クロスボール、アシスト期待値ともに右サイドが左サイドの3分の2程度にとどまっている。こうしてみると、左サイドから生まれるチャンスの多さがよくわかるのではないだろうか。

その左サイドで崩しの急先鋒となっているのがペリシッチだ。中央経由で左にボールを運んだら、ペリシッチが素早く縦に仕掛けてクロスボールを供給する。これがインテルの基本的な狙いだ。加えて、右のWBに定着しているドゥムフリースは非常に空中戦に強く、ジェコとともにクロスボールのターゲットとなる。

左はクロッサーのペリシッチ、右はターゲットマンのドゥムフリース。WBの用兵がインテルの狙いを如実に物語っていると思う。

 

↓ ペリシッチのクロスボールにジェコとドゥムフリースが飛び込む。インテルの狙いがよく表れたシーンだ。

 

ペリシッチ→ジェコでゴール。

 

このようなペリシッチの単独の仕掛けを基本線としつつ、相手に引かれてスペースが無くなればWB、HV、MF、FWの4枚をぐるぐると循環させながら崩していく。ここでも流動性とバランスの担保を活かしながら崩していくわけだ。

この場面ではワイドに開いたFWがボールを持っており、内から外に逃げるWB、WBがいたスペースに攻め上がってくるHV、そのHVが空けたスペースに顔を出しMFが連動しながら相手を崩しにかかっている。

 

遅攻になった時にカギを握るのはチャルハノールだ。低めの位置からの配球からクロスボールまで使いこなしてチャンスメイクをこなし、自らもミドルシュートで得点を決める。組み立ての局面でもブロゾビッチを補佐するトルコの司令塔は、今のインテルのキーマンとみて間違いない。

〈チャルハノールに関するデータ〉

  • ゴール数:6(チーム内3位
  • アシスト数:8(セリエAトップ
  • キーパス数:54(セリエA2位
  • クロスボール数:31(チーム内3位タイ
  • スイングパス:68(チーム内2位
  • ファイナルサードへ届けたパス数:94(チーム内2位

 

↓ チャルハノールのミドルシュートによる得点

 

人数をかけて崩しにかかる左サイドに対し、右サイドはWBとバレッラの連携でシンプルに崩していく。後ろに構えるシュクリニアルはどちらかというとCBタイプで、あまり攻め上がってこないからだ。

ゆえに、カギを握るのはバレッラ。斜めにサポートする場面と内外使い分けながら前に出ていく場面とを状況に応じて使い分ける。右サイドの攻撃は彼の創造性に一任されている感すらある。

〈バレッラに関するデータ〉

  • アシスト数:7(チーム内2位
  • キーパス数:33(チーム内2位
  • クロスボール:40(チーム内2位
  • ペナルティエリア内へのパス:47(チーム内トップ

 

↓ WBをサポートしたバレッラがクロスボールを供給しアシストした場面。

 

また、コーナーキックが大きな得点源となっていることも触れなくてはならない。

  • コーナーキックでのゴール数:10(セリエAトップ

インテルはチャルハノール、ディマルコとセリエAを代表するプレースキッカーを複数抱えているうえ、デフライ、シュクリニアルジェコ、ドゥムフリース、ペリシッチと空中戦に強いプレーヤーを数多くそろえている。

  • 空中戦勝率:56.3%(セリエAトップ

と、チーム全体としての空中戦勝率はセリエAトップとなっている。

流がよくなくても、それをぶった切るセットプレーという飛び道具によって強引に流れを引き寄せられることもまたインテルの強さ、得点力の源泉となっている。




攻→守の局面

ボールを奪われたら即時奪回を目指すことは現代サッカーの常識であり、インテルもその例外ではない。

インテルの攻撃力を支えている要因のひとつが、この攻→守の局面における即時奪回が機能していることだと思っている。彼らはいかにして即時奪回を機能させているのか。

個人的には、前線にかける人数の多さが秘訣になっていると思う。インテルは一度相手を押し込んだら、CBのデフライを後方に残して多くの選手をゴール前へと送り込む。

後方では、バストーニとシュクリニアルの両HVを斜め前へ上げることで、リスク管理ユニットを1-3の形に組んでいることが多い。

たとえばこの場面。バストーニとシュクリニアルは斜め前へ上がっていき、ブロゾビッチとともに前線を支える形をとっている。

その後の場面。シュートを打った時、バストーニとシュクリニアルは敵陣に大きく進出している。なおかつ、かなり中央まで絞ってきていることが肝。彼らが中央のスペースにポジションすることで、セカンドボール回収をスムーズにしている。

サイドバックをボランチに並ぶくらいまで内に絞らせる偽サイドバックは、ビルドアップ時に中央にパスコースを作り出すと同時に被カウンター時に危険な中央のスペースをケアするという意図を持った戦術である。シモーネはこれをHVに求めているのだ。

本来CBで対人に強い2人を門番として配置することでセカンドボール回収率を上げ、安定したボール支配を確立している。

また、彼ら2人の前にかける人数も多いために、シュートのこぼれ球で競り合う確率が高く、相手に自由にロングボールを蹴らせていないこともまた即時奪回の秘訣になっている。

FBref.comによると、

  • シュートを生んだシュート:41(セリエA2位)

というデータが出ている。つまり、シュートのこぼれ球をが次のシュートにつながった回数がセリエAトップクラスというわけだ。これは裏を返せばシュートのこぼれ球をインテルが多く回収できていることを示すデータであり、それだけ前線の密度が上がっていることがわかる。

前線に人数をかけることで、敵陣でのセカンドボールに必ず競り合い、自由にボールを蹴らせないことで回収率を上げる。これが

  • ボール支配率:56.3%(セリエA4位

とイタリア屈指のボール支配率につながっている。

もしこれらをすべてかわされたらブロゾビッチバレッラ、チャルハノールら機動力に長ける中盤の選手たちが猛然とプレスバックし相手の攻撃をつぶす。もしくは遅らせている間に他の選手たちが戻ってきて素早く陣形を整える。このプレスバックがリーグ屈指で速い。ここら辺はよく訓練されているといった印象だ。

いずれにしても、攻→守の局面が洗練されていることがインテルの堅守を支えていることは間違いない。




奪う局面

非保持の局面も見てみよう。まずはアタッキングサードでの守備だ。

上にあげたのは10月1日時点、第6節終了の段階におけるセリエAのアタッキングサードでのプレッシング数のランキングだ。同ランキングにおいて、インテルは下から2番目になっている。

FBref.comにおいてのプレッシングはただ相手にアプローチをかけただけではなく、一定以上の圧力をかけなければプレッシャーとはカウントしないという定義になっている。

開幕当初のインテルは前に出ていくけれどもボールを奪うという意味合いは薄く、ボールホルダーに制限をかけながら徐々にラインを落としていく、いわば相手のビルドアップを受け止め、勢いを殺すようなプレスの掛け方をしていた。

一方、現在では

  • アタッキングサードでのプレッシング数:816(セリエA10位

とトップハーフまで上昇してきている。開幕当初の少なさを考えると、直近で切り取ればさらに上位にきているはずで、現在のインテルは高い位置からしっかりプレスを行うチームであると認識しておいて間違いないだろう。

インテルは5-3-2で構える。ポイントは3-2の5枚。中央にボールがあるときには人を捕まえず、中央を固める。このときゾーンを基準に相手と相手の間に立つことがポイント。各選手が両にらみの状態を作ることで、ボールが入ればすぐさま寄せられる状態を作ってけん制する。

通常アタッキングサードでのプレスでは、人を強く意識したポジショニングを行う。シモーネインテルは敵陣でもはかなりゾーン成分が強めで特殊なやり方なのだが、これを各選手の立ち位置の妙で成立させてしまっているのがおもしろいところだ。

そうしてサイドに追い出したら、そこからプレスのスイッチを入れる。昨季までは中盤のスライドを押さえるために右はインサイドハーフのバレッラが、左はウイングバックのペリシッチが出ていくという左右非対称なやり方を採用していた。

昨季のインテルのプレッシング。右はバレッラが、左はペリシッチが出ていって迎撃していた。

一方、今季はより柔軟性を増した印象だ。「ボールに近い選手に優先してマークにつくことで、選択肢を排除する」ことを原則とし、そこにマンツーマンでマークすべき相手などの試合ごとの微調整を加味したうえで、各選手が柔軟に対応している。

昨季とは違い、基本的には左サイドもインサイドハーフ(チャルハノール)が出ていくことで迎撃する形になっているのだが、サイドチェンジを繰り返されるなどしてインサイドハーフのスライドが間に合わなければウイングバックが出ていく。試合や状況に応じてピッチ内で柔軟にやりくりしている。それでもバランスを崩さず選択肢を排除できているので、中央5枚にWBを加えた7枚の連動性はよく訓練されているといえる。

試合画像でも見てみよう。中央にボールがあるときは特定のマークを持たず、ゾーンを基準に人と人の間に立って中央へのパスをけん制する。

サイドにボールを誘導したらマンツーに切り替え。ボール周辺の選択肢をマンツーマンで排除し、ボールを奪いにかかる。

最終的にHVのバストーニがボール奪取に成功した。

個人的に、インテルのプレッシングはあり地獄のようだと感じている。

ゾーンでサイドに誘導→マンツーに切り替えて奪取という守備方法なので、最初はサイドがスカスカと空いているように見える。前にかけてくる人数も少ないので、余裕をもってつなげるように見える。

ところが、サイドにボールを出したとたんに選択肢を消されて不思議なことに選択肢が無くなってしまうのだ。

  • インターセプト:277(セリエAで2番目に少ない
  • アタッキングサードでのタックル数:4位(セリエA4位

この2つのデータがその印象を裏付けてくれていると思う。インターセプトが少ないということは、最初から人にマークについていることが少ないということ。だから、パスの出し手からすればパスコースがあるように見えるのだろう。ところが、ボールが入ったとたんに強い圧力を受ける。

出させてとる。この守備が、インターセプトが少ない割にタックル数が多いという不思議なスタッツにつながっていると思う。

 

この局面でポイントとなるのはブロゾビッチだ。インテルのプレスではボール近くの選択肢を排除するという原則があるため、人数が足りなければブロゾビッチも積極的に前に出ていってプレスに参加する

特に、陣形が乱れて2トップや両インサイドハーフとの間に距離ができてコンパクトさが薄れた時、ブロゾビッチがスッと前に出て中央の選択肢を消すのだ。この細かな上下動とポジショニングの調整がインテルのプレッシングを支えている。

問題はブロゾビッチが前に出た時、それによって空いてくる背後のスペースをどうするかだ。

基本的にはバストーニ、シュクリニアルのHVが前に出てブロゾビッチが空いたスペースに入ってくる相手を拾うのが原則になっているのだが、これがスムーズにいかず、ビルドアップの出口になってしまっている場面が散見されるのだ。

この場面、ブロゾビッチもプレッシングに参加し高い位置に出ていった結果、その背後でジエリンスキがフリーになっている。

バストーニは遅れて出ていったもののジエリンスキはダイレクトで落として前向きのアンギサが突進、止めに入ったバレッラがイエローカードを頂戴している。

この画像は前半戦のナポリ戦から引用したものだが、先日行われた25節ナポリ戦でも同じような場面が何度も見られた。

現状、ナポリはインテルに次いでビルドアップが整備されているセリエAのクラブであり、彼らのようにプレッシングをショートパスをつないで回避できるようなチームと対峙したときにこの弱点が露呈しないかどうかは、CLで躍進するためのポイントになる気がしている。

 

ただ、全体としてインテルのプレッシングはしっかりと整備されているといえる。HVがある程度遅れて出ていくのも、背後のスペースケアを最優先としつつ、くさびに対しては縦を切って遅らせれば十分ととらえている節があるのかもしれない(理由は後述)。実際それでかなり失点をおさえられている。その源泉は、プレッシングの整備にあると考えている。

インテルが採用する5-3-2は後ろに枚数を多くかける陣形であり、プレッシングには適さないと多くの本やサイトで触れられている。しかし、自分にはこうした見方が戦術ボード上の硬直した見方に思えてならない。

確かに基本的な立ち位置はそうかもしれないが、プレスに行くときは相手の立ち位置に応じて形を変えることが基本であり、そうした柔軟性があれば基本的な布陣が何であれプレッシングは成り立つはずなのだ。5-3-2が後ろに重いのならば、後ろからどんどん人を送り込んでいけばいいのだ。むしろそうしたやり方の方が人を捕まえやすいし、後方に不要なスペースを空けないため安定感あるプレッシングが実現できると思っている。

そうしたことを裏付けてくれているのだインテルのプレッシングなわけだ。5-3-2プレスの教科書として参考になるものが非常に多いと思う。




局面の移行

アタッキングサードでのプレスを打開されて相手に前向きでボールを受けられたら、そこに対して選手が出ていくのではなく、ラインを一気に落としてディフェンシブサードに5-3の重厚な守備ブロックを構える。守る局面に素早く移行するわけだ。

FBref.comより、各守備アクションのエリアごとの数を見てみると、

〈プレッシング〉

〈タックル〉

と、自陣ゴールに近づくほど守備アクションが減っている。これは、インテルがアタッキングサードで奪えなければ潔く撤退し、ミドルサードでは戦わないという姿勢を反映したスタッツであるといえる。

ここら辺の局面のすっぱりした切り替えもシモーネ式だ。




守る局面

奪う局面と守る局面の切り替えをハッキリさせているシモーネインテル。それは、守る局面に自信があることの裏付けでもあるといえる。自分たちのゴール前で相手の攻撃を跳ね返せる自信があるからこそ、相手の攻撃を自陣に引き込むことができるのだ。

ここらへんはコンテが残した遺産をうまく活用している印象だ。昨季のインテルはシーズン途中に重心を落としてしっかり構える守備に変更している。守る局面を重視するスタイルに舵を切ったわけだ。

緻密な5-3-2ブロックで相手を中央から追い出し、サイドからのクロスボールを強要させて屈強な3バックで跳ね返す。このやり方をシモーネも踏襲している。

昨季からバストーニ、デフライ、シュクリニアルの3バック+守護神ハンダノビッチの鉄壁の守備陣は不変。連携も抜群で、彼らがゴール前に構えてしまえば簡単には失点しない。

実際、インテルの失点パターンにおいて、相手に押し込まれた後のクロスボールからの失点は少ない。むしろ大石ってのあターンは、ビルドアップを高い位置でカットされてからのショートカウンターだ。

インテルは中盤を空洞化させる陣形を採用しているため、高い位置で奪われたら中盤を容易に通過されてシュートを打たれる。決定的な場面につながりやすくなっている。

 

↓ ミラノダービーの同点ゴールもまさにビルドアップを途中でカットされたところから喫したもの。3対6の数的不利を作られてしまっている。

 

特に、ビルドアップの練度が低かった序盤戦にはこの形からの失点が多くなっていたのだが、ビルドアップの安定に伴ってそうした場面は減り、引いては失点数の減少という目に見える結果にもつながっている。インテルの守備が安定したのは、リスキーなビルドアップを途中でロストすることなく完遂できるようになったからだといえるわけだ。サッカーはつくづくすべての局面が連動しているスポーツだと思わされるところだ。




守→攻の局面

最後に守→攻の局面についても見てみよう。

昨季のインテルはこの局面を最大の武器としていた。スペースでボールを持たせたら無敵のルカクに、新幹線はきみが絡む高速カウンターはすべての対戦相手を震え上がらせていた。

彼らが抜けた今季は、昨季と比較すると瞬間的な火力は落ちた印象は否めない。しかし、個人に頼れる割合が下がった分、人数をかけた迫力あるカウンターが実現しており、昨季から大きく火力が下がったとは思わない。

個人の穴は組織で埋める。今季のインテル全体のコンセプトと言えるこの概念を体現することによって、今季のインテルは昨季以上の完成度を誇るチームに変貌している。

 

↓ インテルのカウンターにかける人数の多さがよくわかるゴールシーン。先ほど紹介した、前線に人数をかけることによるこぼれプッシュの典型例でもある。

あとがき

ボール非保持ではコンテが残した5-3-2ブロック守備を基盤ににプレッシングを整備してさらにチームとしての幅を持たせ、ボール保持ではルカク→ジェコというエースの交替をふまえて全く新しいメカニズムを構築してきたシモーネ・インザーギ。彼の仕事は賞賛されてしかるべしだろう。まさか半年ちょっとでセリエAトップクラスの完成度を誇ったチャンピオンチームを、また違った形でトップクラスの完成度を誇るチームに再構築するとは思っていなかった。その手腕には敬服だ。

今季のセリエAでも頭一つ抜けて総合力が高いと見て間違いないと思う。そうなるときになるのは、それが欧州レベルでどれくらい通用するかだ。今夜行われるCL決勝トーナメント1回戦、相手は優勝候補のリバプール。実力を測るにはこれ以上ない相手だ。

シモーネインテルの現在地は、果たして。インテルvsリバプールの一戦に要注目だ。

 

 

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