【トルコのハードファイター】メリフ・デミラルのプレースタイルを徹底解剖!

【トルコのハードファイター】メリフ・デミラルのプレースタイルを徹底解剖!

2022年2月12日 4 投稿者: マツシタ
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ガスペリーニ式3バックは非常に特殊である。中でも、その中央に入る選手には非常に難しい要求にこたえることが求められる。

アタランタはマンツーマンに近い守備を行うチームであり、それは最終ラインも同じ。マッチアップ相手のFWが中盤に引いて行けばそれについていく必要があるし、逆に1トップだけが孤立している場合は周囲からのサポートがない状態で広いスペースを守る必要がある。

そのため、対人で絶対に負けないことを強く求められるわけだ。これは非常に難しいタスクであるだ、それと同時に期待にこたえられれば非常に高く評価されることになる。

昨季にこのポジションを担ったクリスティアン・ロメロはいい例だ。昨シーズン通して対面のアタッカーを破壊し続けてきたファイターは、シーズン終了後にリーグ最優秀DFに選出。オフシーズンにはアルゼンチン代表の主力として南米王者に輝き、プレミアリーグ所属のトッテナム・ホットスパーへと移籍している。

そんなロメロの後継者としてアタランタにやってきたのが、23歳のトルコ代表DFメリフ・デミラルである。

 

トルコの名門フェネルバフチェのユース出身であるデミラルは、ポルトガルのアルカネネンセに引き抜かれ、そこからさらにレンタルされたスポルティングCPのBチームでプロデビューを飾っている。

2018年夏に母国のアランヤスポルに加入したデミラルは、ここからとんとん拍子でステップアップしていく。半年後の2019年冬にUSサッスオーロに移籍して5大リーグデビューを飾ると、さらに半年後の2019年夏にはユベントスに加入することに。半年ごとに移籍するというスピード出世でイタリア王者の一員となった。

しかしながら、さすがにユベントスの選手層は厚く、デミラルはCBの3~4番手という位置づけに。2年間でリーグ戦での先発出場は15試合にとどまった。

この状況に不満を抱いたデミラルは移籍を決断。新天地として選んだのがロメロの後釜を探していたアタランタだった。

加入後すぐさまフィットしたデミラルはここまでリーグ戦15試合に先発中。昨季リーグ最優秀DFの不在を嘆く声が聞こえてこないほどのパフォーマンスを見せているのだ。

アタランタにとって欠かせないキーマンとなっているデミラル。彼は一体どんなプレーヤーなのか、徹底的に掘り下げていこうと思う。




デミラルのプレースタイル

 

圧倒的な対人守備

デミラルは非常に対人守備に強いCBであり、これが彼の最大の魅力だ。

常に相手との距離を詰めてタイトにマークにつき、ボールが離れた瞬間に長い足を伸ばしてタックルを見舞うのがデミラルのやり方。相手の出方をうかがうようなことはせず、とにかく自分からタックルを仕掛けるアグレッシブなスタイルで相手の自由を奪う。

  • プレッシャー成功率:39.2%(セリエA8位

とリーグ屈指のプレッシャー成功率を誇っているのも、デミラルに距離を詰められることが相当な圧力になっている証拠だろう。

対面のFWをつかまえるために最終ラインから大きく飛び出しているデミラル。普通のチームなら中盤の選手に受け渡すところだが、アタランタではそのままCBがマークを捕まえる。ゆえに、非常に機動力を求められる。

これを支えているのが恵まれたフィジカル能力だ。簡単に裏を取られないスプリント、相手の動きにしつこくついていけるアジリティと持久力。これらすべての能力が総じて高いことがデミラルのプレースタイルの根底にある。

ゆえに、人に対する意識が非常に強い戦術の中で輝く選手であり、そういう意味でアタランタは理想的な環境だといえる。

ここら辺は文字で説明するよりも動画で見てもらったほうがわかりやすいだろう。下はサッスオーロ戦におけるデミラルのタックル集だ。

 

ここで注目したいのはスライディングタックルの技術の高さだ。相手とボールの間に距離ができれば、すかさず長い足を伸ばしてボールをはじき出す。相手がどんな状態だろうが積極的に仕掛けるため危なっかしく見えるが、正確にボールを捉える技術があるためスライディングでファウルを取られる場面はあまりない印象だ。

こちらの動画にはデミラルの真髄が詰まっている。ラッシュフォードにボールが渡った段階で、デミラルはかなり後ろにいる。完全に裏を取られた状態だ。

この状態から追いついてしまえるスプリント能力はまさにフェノーメノ(怪物)。広大なスペースを守ることが求められるアタランタのCBに彼が抜擢された理由だ。

さらに、追いついたあと食らわせるスライディングタックルも見事。通常背後からのタックルを成功させるのは難しいが、デミラルは身体を投げ出したうえで足だけを相手の外側から回すようにしてボールをはじき出す特殊なテクニックを習得している。相手の体に触れる前にボールをはじき、ノーファウルで対応する。足の長さに技術力の高さが兼ね備わっているデミラルだからこそできる、特殊技能だ。

ときおりポジショニングが怪しかったり、裏にボールが出てくるときの準備が悪かったりする場面が散見されるデミラルだが、そうした細かいミスをすべて無に帰してしまえるほどの身体能力を持っている。どんなアタッカーでも、彼をかわすのは容易ではない。




空中戦にも強い

さらに、デミラルは空中戦にも非常に強い。

  • 空中戦勝率:78.7%(セリエA2位

とほぼ8割の勝率を誇るのだ。これはプロの世界でも異常といえる数値で、空中戦では無敵と言っていい。

190cmの長身であるのに加えて超人的な跳躍力を誇るデミラル。ばねのようにしなやかな足が、助走なしの垂直飛びでも驚異的な高さを実現している。

たとえば下の画像、デミラルは頭一つどころか上半身一つ分飛び出している。

彼の跳躍力のすさまじさに、ドゥムフリースもこの表情である。

 

デミラルの高さはセットプレーにも活かされる。特にコーナーキックでは彼がターゲットになる機会が多くなっている。

  • 90分あたりシュート数:1.1(セリエAのCBの中でトップ

と、CBの中でもシュート数が多くなっているのは、セットプレーのターゲットとなっていることが大きいだろう。

 

↓ マンチェスター・ユナイテッド戦、デミラルはコーナーキックに頭で合わせてゴールを挙げている。




すでに最終ラインの絶対的な軸に

ここで、面白いデータを紹介しよう。リーグ戦に関して、デミラルがいる試合といない試合とで失点数に関するデータを比較してみると、彼の存在感の大きさがはっきりわかるのだ。

〈失点数〉

  • デミラルあり:14失点(15試合)
  • デミラルなし:14失点(8試合)

〈平均失点〉

  • デミラルあり:0.93
  • デミラルなし:1.75

〈クリーンシート率〉

  • デミラルあり:40.0%
  • デミラルなし:12.5%

 

と、デミラルがいるかいないかで失点数が明確に変わってくるのだ。彼がすでにアタランタの最終ラインにとってなくてはならない存在となっていることは明白だ。

 

まとめると、

  • 恵まれたフィジカルを基盤に対人守備には絶対の自信を誇り、
  • マーク相手との距離を素早く詰めて積極的にタックルを仕掛け、
  • 裏を取られても驚異的なスプリントで追いついてボールを奪い去り、
  • スライディング技術が非常に高く、
  • 世界最強クラスの空中戦の強さを誇り、
  • セットプレーにおけるターゲットとしても機能する

まさに対人に特化した古典的なCBで、相手のエースを破壊せんがごとく厳しくマークするクラッシャー。ボールを奪い去った後の咆哮も含め、野性味あふれる闘将だ。ガスペリーニが求めるCB像にぴたりと合致しているといえるだろう。

私自身、彼の加入が発表されたときに絶対ハマると確信を持っていたものだが、期待を裏切らない活躍ぶりだ。

今後も相手のエースを完封していけば、さらに評価が高まるのは間違いない。




デミラルの伸びしろ

それでは、デミラルの伸びしろはどこにあるのか。

それは、ビルドアップでの貢献度を高めることだろう。

昨季のユベントスの面々と、ビルドアップ関連のスタッツを比較してみよう。

 

〈パス成功率〉

  1. デリフト  :93.2%
  2. デミラル  :93.1%
  3. キエッリーニ:91.9%
  4. ボヌッチ  :90.1%

 

デミラルはパス成功率ではCB陣の中でも高数値を記録している。しかし、これは安全なパスを選択し続けた結果そうなっているに過ぎないと見ている。

実際にその他のスタッツを見てみると、

 

〈90分あたり縦パス数(10ヤード以上縦方向に移動したパス)〉

  1. ボヌッチ  :3.78
  2. キエッリーニ:3.77
  3. デリフト  :2.79
  4. デミラル  :2.02

〈90分あたりファイナルサードに届けたパス〉

  1. キエッリーニ:4.87
  2. ボヌッチ  :4.04
  3. デリフト  :3.97
  4. デミラル  :1.83

〈90分あたりスイングパス(40ヤード以上横方向に移動。いわゆるサイドチェンジ)〉

  1. キエッリーニ:1.88
  2. ボヌッチ  :1.87
  3. デリフト  :1.30
  4. デミラル  :1.15

 

と、デミラルは多少リスキーだが攻撃を組み立てる上で効果的なパスに関するスタッツでいずれも最下位になっていることがわかる。しかも、その離され方が非常に大きいことに注目したい。彼がビルドアップにおける貢献度でライバル3人に大きく劣っていたことは明白ではないだろうか。

 

対して、アタランタではデミラルに対して高度なビルドアップスキルは求められていない。

こちらはBetweenThePostsより、セリエA第5節サッスオーロ戦におけるアタランタのパスマップ。

最終ライン中央のデミラルに注目してみると、彼から縦方向へのパスルートが一つも伸びていないことが読み取れると思う。

このパスマップに象徴されるように、ボール保持時のデミラルは右から来たボールを左に、左から来たボールを右に流すという超シンプルな役割に徹している。これは彼が消極的なわけではなく、アタランタのチーム戦術としてこれを求めているのだ。

ガスペリーニは最終ライン中央のCBに攻撃での貢献を求めない代わり、仮に周囲からのサポートがなくても対面のストライカーに絶対に突破されるなという非常に困難なタスクを課す。これは、デミラルにとってみれば弱みを隠しながら強みだけを発揮することを許されている、理想的な環境だといえる。一方で、自分の弱い部分にチャレンジしていくためには環境を変える必要があるともいえるかもしれない。

デミラルがここから真のワールドクラスに成長していけるかは、アタランタから移籍することになった時にわかるだろう。ビッグクラブでは自分たちが主導権を握って戦い、その過程で最終ラインからのビルドアップを重視するのはもはや常識。そうしたチームにおいてデミラルが定位置を確保するためには、ビルドアップ面での成長が不可欠だろう。

そうした現状を踏まえると、欧州王者を争うようなクラブでデミラルが定位置を確保できるかどうかには疑問符が付く。昨季のユベントスで定位置を確保しきれなかったのも、守備時の細かい粗さ以上にビルドアップでの貢献度の低さが影響したんじゃないかと思う。監督がピルロだったことを思えばなおさらだ。

このままアタランタにとどまり続けて対人最強CBとして君臨し続けるのか、それとも更なる高みを目指すのか。後者の場合は早めに外に出てビルドアップ能力を磨くのが本人のために思えるが、果たして…。




あとがき

ビルドアップに関しては全面的に伸びしろがあるデミラルだが、守備者としては非常に優秀なことは間違いない。事実、昨夏に獲得を狙っていたクラブはアタランタだけではない。さかんに名前がとり沙汰されたドルトムントを含め、プレミアリーグの複数のクラブも獲得に名乗りを上げていた。

このままアタランタで活躍していけば、新たな移籍話が再燃するのは時間の問題だろう。そのときどんな決断を下すのかは、彼のキャリアを左右するはず。ピッチ内外で注目したいプレーヤーだ。

 

 

 

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