【青黒のジャックナイフ】イバン・ペリシッチのプレースタイルを徹底解剖!

【青黒のジャックナイフ】イバン・ペリシッチのプレースタイルを徹底解剖!

2022年2月11日 7 投稿者: マツシタ
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インテルが強い。ここまですべてのコンペティションで勝ち上がっており、すでに獲得したスーペルコッパ・イタリアーナを含めて4冠の可能性を残している。新たな黄金期の到来を思わせる充実ぶりである。

その先駆けとなりそうな昨季のインテルは、右サイドが攻撃の中心であった印象が強い。エースのルカクが右に流れてから起点になり、そこにハキミとバレッラが絡んでいく攻撃には迫力があった。

そこからルカクとハキミが退団した今シーズン、インテルの攻撃の中心は左サイドに移行した。その左サイドを根城にチャンスを量産しているのがイバン・ペリシッチである。

 

母国クロアチアのハイデュク・スプリトで育成を受けたペリシッチは、その後引き抜かれたフランスのソショーのBチームでプロデビューした。

当時から欧州中の注目を浴びていたペリシッチだが、彼のステップアップをさらに後押ししたのはベルギー時代の活躍だった。19歳のころレンタルされたベルギー2部KSVルーセラーレでの活躍が評価されて名門クラブ・ブルージュに移籍。2シーズン目の10-11にはリーグ戦22ゴールを挙げてリーグ得点王ベルギー年間最優秀選手賞を受賞している。

翌年にはドイツ王者のドルトムントに移籍すると、28試合7ゴールを挙げてリーグ連覇に貢献。22歳にしてドイツ王者に輝いている。

その後、ドルトムントとヴォルフスブルクで5年間を過ごしたペリシッチは、2015年夏にセリエAのインテル・ミラノに加入。すぐさま主力に定着し、18-19までの4年間でリーグ戦141試合37ゴール24アシストと活躍している。

転機が訪れたのは19-20シーズン。新監督に就任したアントニオ・コンテが3バックを採用、それまでペリシッチが得意としていたサイドアタッカーのポジションが無くなった。コンテはWBとしてペリシッチをテストしたものの、適性がないとみなして構想外にしてしまった。

ペリシッチはそのシーズンをレンタル先のバイエルンで過ごしたものの、買い取られることなくインテルにレンタルバック。新たな移籍先を探すかに思われた。

しかし、ペリシッチはもう一度コンテの元でWBに挑戦するという決断を下し、20-21シーズンに望む。アシュリー・ヤングの後塵を拝した時期もあったが徐々に信頼をつかむと、シーズン中盤以降は左WBの定位置を確保。主力としてインテルの10年ぶりのスクデット獲得に貢献したのだった。

そして、今季は左WBの絶対的な主力としてここまでリーグ戦21試合に出場(ハンダノビッチ、ブロゾビッチに次いで多い)し5ゴール1アシストを記録。すっかりWBも板に付き、その輝きは昨シーズンをさらに上回っている印象がある。

 

最も得意なポジションが無くなるという危機を、自らの適応力によって乗り越えたペリシッチ。彼は一体どのようなプレーヤーに変貌しているのだろうか。

今回は、イバン・ぺリシッチのプレースタイルについて、徹底的に掘り下げていこうと思う。




ペリシッチのプレースタイル

 

左サイドから仕掛けるドリブラー

ペリシッチの最大の武器はドリブルでの仕掛けだ。

彼が特別なのはカットインと縦への突破、その両方が選択できることだ。多くのメディアが両利きと表記する通り、左右どちらの足でもそん色ないプレーができるゆえプレーに選択肢が多く、相手に的を絞らせない。

FBref.comからデータを引用すると(以下すべてのデータはFBref.comより引用)、

  • 右足:左足 使用率=58%:42%

となっており、ほぼ左右均等と言っていい数値である。

ただ、最も得意なのは左足で縦に突破する形。緩急の変化やまたぎフェイント、キックフェイントなどを駆使しながら相手の足を止めた上で縦に持ち出し、一瞬空いたコースを見逃さずにクロスを上げる。

特に今シーズンのインテルは空中戦に強い選手がそろっていることもあり、カットインしてから自らフィニッシュするよりもクロスボールによるチャンスメイクを行うことが多い印象だ。

 

  • クロス数:79(セリエA2位

リーグでも屈指のクロッサーぶりはデータも裏付けている。

彼がすごいのは、大部分のクロスボールをアウトサイドレーンから提供しているにもかかわらず、多くのチャンスを生み出していること。

近年のサッカーでは、よりゴールに近いハーフスペースに侵入してからクロスボールを折り返すことを狙うチームが増えており、アウトサイドレーンからクロスを放り込むプレーは古典的かつ確実性が低いプレーだとされている。

しかしながら、ペリシッチは

  • アシスト期待値:2.9(チーム内3位

と非常に質が高いチャンスメイクを連発している。実際のアシスト数は1しかついていないが、期待値的には3倍のチャンスを作り出していることになり、彼がインテルにとって重要なチャンスメーカーであることに疑いの余地はないはずだ。

ちなみに、セリエA全体でサイドバックおよびウイングバックについてアシスト期待値をランキング化すると、

〈アシスト期待値ランキング(SB/WB部門)〉

  1. テオ・エルナンデス:3.4
  2. カルスドルプ   :3.0
  3. ペリシッチ    :2.9
  4. ビラーギ     :2.8
  5. ディマルコ    :2.8
  6. ザッパコスタ   :2.7
  7. マリオ・ルイ   :2.5
  8. ドゥムフリース  :2.3
  9. ラゾビッチ    :2.3
  10. ファラオーニ   :2.1

となっており、ペリシッチは3位にランクインしている。同5位にディマルコ、7位にドゥムフリースとインテル勢が多くランクインしており、チームとしての充実もうかがえるランキングだ。




コンテ時代から変化したタスク

話をドリブルに戻してみよう。

もともとすごかったペリシッチのドリブルだが、今季は特にさえわたっているように見える。

注目したいのは

  • ドリブル成功率:63%

という成功率の高さだ。これは、本職のウイングを担っていた17-18(同47.9%)や18-19(59.6%)をも上回る数値である。

ちなみに、昨シーズンのドリブル成功率は38.9%と過去5年で最低の成功率。WBとしてのタスクにまだ適応しきれていなかったことが表れていると見ていいだろう。

そこからの急速な伸びがデータにも現れてきており、今季の彼の充実ぶりを裏付けている。

 

ここで言及しておきたいのは、インテルの戦術の変化もペリシッチのパフォーマンス向上に大きく寄与していることだ。

インテルの新監督に就任したシモーネ・インザーギは、WBにビルドアップの早い段階で高い位置を取り、幅と深みを確保するタスクを課している。それゆえ、昨シーズンと比較してWBの立ち位置は高くなっている。つまり、守備時にはWBながら、攻撃時のポジショニングはウイングのそれということになる。

この恩恵を受けているのが本来はウイングであるペリシッチだ。彼はシモーネが求める役割に適合した理想のWBといえる。

 

↓ ペリシッチがチャンスメイクした場面。

 

この動画で注目したいのはボールを受けた位置。ほとんど本職のウイングと変わらない場所でボールを受けている。

さらに、プレーエリアが高くなったことだけでなく、そこまで再現性高くボールを届けられるようなビルドアップが整備されたことも大きい。先ほどのSB/WBのアシスト期待値ランキングでインテル勢が多くランクインしていたことからも、ワイド高い位置に張っているWBにボールを届けるメカニズムが確立されていることは明らかだ。

さらにいえば、昨季のインテルが右サイドからのチャンスメイクを重視したのに対し、今季のインテルは左サイドからのチャンスメイクが多くなっている。

〈昨季〉

  • 左ユニットのアシスト期待値合計:12.9
  • 右ユニットのアシスト期待値合計:14.0
  •  ※左ユニット:ペリシッチ、エリクセン、ヤング、バストーニ、ガリアルディーニ
  •  ※右ユニット:ハキミバレッラ、ダルミアン、シュクリニアル

〈今季〉

  • 左ユニットのアシスト期待値合計:11.9
  • 右ユニットのアシスト期待値合計:7.8
  •  ※左ユニット:ペリシッチ、チャルハノール、ディマルコ、バストーニ
  •  ※右ユニット:ドゥムフリース、バレッラ、シュクリニアル、ダルミアン

 

このように、今季と昨季では攻撃の比重が反転している。そして、新たな中心地である左サイドで崩しの急先鋒になっている選手こそペリシッチである。

チームとしての戦術の整備および変化こそが、ペリシッチの再覚醒に大きく寄与していることも重要なポイントだ。




プレーの幅の広さも魅力

ペリシッチの最大の武器がドリブルとそこからのクロスボールであることは間違いない。だが、それ以外のプレーの幅も非常に広いことも忘れてはならない。

ペリシッチは186cmの長身であり、空中戦にも強い。

  • 空中戦勝率:65.5%チーム内5位

これを活かして、ロングボールのターゲットになれる。マッチアップ相手となるサイドバックの選手はそこまで空中戦に強くないことが多く、ここにペリシッチを当てることで緊急避難先として機能するのだ。

 

↓ ハンダノビッチのフィードにペリシッチが競り勝ったことで生まれたチャンスシーン。

 

また、逆サイドからクロスボールが入ってくるときにはターゲットになる。ヘディングで力強くねじ込むプレーが時おり見られている。

 

↓ コーナーキックにヘディングで合わせて決めた得点シーン。

 

また、ペリシッチは複数のポジションをこなすポリバレントな選手でもある。本来のウイングはもちろん、豊富な走力と守備への献身性を活かしてウイングバックとしても機能する。

昨季のペリシッチがコンテの信頼をつかんだのはまさにその献身性を評価されたから。ウインガーながら守備能力も水準以上で、献身的なプレスバックで相手の攻撃の芽を摘む場面は多かった。

今季はその守備面がさらに成長しており、

  • インターセプト数:昨季21→今季39
  • タックル数   :昨季19→今季33
  • タックル勝率  :昨季57.9%→今季63.6%

とデータにも現れている。

 

また、得意とする左サイドだけでなく右サイドでもプレーできるのは、両利きのペリシッチならではだ。ドイツ時代には右メインで出場していたシーズンもある。

さらに、緊急時には2トップの一角でもプレーできる。昨季のCLGL第3節レアル・マドリード戦、今季のセリエA第8節ラツィオ戦ではいずれも2トップの一角に起用されてゴールという結果を残している。それぞれのポジションで求められる役割に柔軟に対応する、非常にポリバレントな選手だ。

 

ペリシッチは得点能力も高い選手だ。それは、本記事冒頭でさんざん紹介した数字を思い出してもらえば説明は不要だろう。

ペリシッチのゴールについて、シュートを打った位置をピッチ上にプロットしたもの。円の大きさはゴール期待値の大きさを表す。understat.comより。

上のデータを見てまず目につくのがシュートを打った位置。非常にゴールに近いことがわかる。まるでストライカーのようだ。

ペリシッチのゴールの多くは逆サイドからのクロスボールに合わせる形である。相手サイドバックの背後をまわり込んでフリーで合わせる形が多く、ゆえにゴールに近くかつ期待値の大きなシュートが大勢をしめている。ストライカー的な嗅覚を備えている選手だといえる。

さらにいえば、ペリシッチはボレーシュートが非常にうまい。ゆえにクロスボールが多少中途半端な高さになっても問題なく枠内にシュートを収められる。期待値が小さいゴールも少なからず見て取れるのは、彼の高い技術力を表しているのではないだろうか。

 

↓ ペリシッチがインテルで挙げた全ゴール集。

 

まとめると、

  • 縦への突破とそこからの高精度クロスでチャンスを量産し、
  • 左右両足を使いこなし、
  • 空中戦の強さとスペース侵入の嗅覚を持ち得点力も高く、
  • 両サイドのウイングからウイングバック、さらには2トップの一角も務めるポリバレント性を持つ

何でもこなせる万能な選手ながら、縦突破からのクロスという明確な武器も持っているペリシッチ。シモーネ・インザーギにとって、これ以上ないほど理想のウイングバックだろう。




ゴセンスとの比較

そんなペリシッチに、強力なライバルが登場しそうだ。インテルは今冬の移籍市場でアタランタの主力左WBロビン・ゴセンスを獲得している。現在は負傷離脱中であるものの、復帰してくればペリシッチに真っ向から定位置争いを挑んでくるだろう。

この強力なライバルに対し、ペリシッチが優れているポイントはどこなのか、また劣っているポイントはどこなのかを見てみたい。

まずはペリシッチが優れているポイント。これは単独でチャンスを作り出す能力である。

 

〈ゴセンスvsペリシッチ〉

  • シュートクリエイト:ゴセンス2.28vsペリシッチ2.77
  • クロスボール   :ゴセンス2.07vsペリシッチ4.20
  • ドリブル突破   :ゴセンス1.07vsペリシッチ1.47
  • ドリブル突破成功率:ゴセンス53.3%vsペリシッチ63.0%

※公平性を持たせるために90分あたりの数値に換算。なお、ゴセンスに関しては昨シーズンの、ペリシッチに関しては今シーズンのデータを用いている。

※シュートクリエイトはFBref.comにおけるSCA(シュートクリエイティングアクション)のこと。

 

このように、チャンスメイクに関するスタッツはいずれもペリシッチに軍配が上がっている。

 

一方、ペリシッチがゴセンスに後れを取っているところはどこなのだろう。

ひとつは中盤での組み立てだ。

 

〈ゴセンスvsペリシッチ〉

  • パス総数 :ゴセンス59.25vsペリシッチ47.18
  • パス成功率:ゴセンス81.7%vsペリシッチ72.3%
  • 縦パス数 :ゴセンス6.67vsペリシッチ4.10
  • ファイナルサードへ送ったパス:ゴセンス3.46vsペリシッチ1.28

 

このように、パス関連のスタッツではゴセンスに軍配が上がる。

ただし、これは両チームのスタイルおよびWBに求めているタスクの差も少なからず影響している。アタランタのWBはビルドアップ時に低めの位置でCBをサポートしながら、チームの前進に合わせて前に出ていく。ゆえに、組み立てに関与する場面はまずまず多い。

一方で、シモーネインテルのWBが組み立ての早い段階から高い位置へ上がっていくのは何度も述べている通り。ゆえに、組み立てに参加するというよりは組み立ての目的地としての役割が大きい。ゆえにパス関連のデータが小さくなるのは納得できる。

これら戦術的な影響も考慮に入れる必要はあるだろう。

 

あるいは、得点能力についてはどうか。

 

〈ゴセンスvsペリシッチ〉

  • ゴール数:
  • シュート数  :ゴセンス1.78vsペリシッチ1.33
  • 枠内シュート率:ゴセンス40.0%vsペリシッチ32.0%
  • ゴール期待値 :ゴセンス0.25vsペリシッチ0.18

 

このように、いずれもゴセンスに軍配が上がる。

ただ、ゴセンスは全世界のWB/SBの中でも最も得点力がある選手のひとりであり、ペリシッチの得点能力が低いのかと言われればそんなことはない。これは、先ほど紹介した通りである。

 

さて、ここでもう一度確認したいのはシモーネがWBに何を求めているのかということだ。

ボール保持時のWBは早い段階で高い位置をとる。ゆえに、中盤での組み立て能力はそこまでもとめられていないわけだ。それよりも、ファイナルサードでいかに仕事ができるか。これが焦点になってくる。

データ比較の結果を簡単にまとめると、ペリシッチは味方を使うのが、ゴセンスは味方に使われるのがうまい選手だといえる。

そして、チャンスを産む側である左サイドには、どちらかといえば味方を使う能力が求められると言え、「現状のシステムでは」ペリシッチに軍配が上がるのではないか。

一方、ゴセンスを起用する最大の魅力は何だろう。これはペリシッチのクロスにドゥンフリース!という形を両サイドに構築できることだろう。ただ、これをやるためには右からゴセンスにボールを届ける形を新たに構築する必要がある。また、ペリシッチがいなくなる分、ドゥンフリースにクロスを送る供給源が減る。そのため、バレッラとチャルハノールの両インサイドハーフの負担が増大する可能性もあるかもしれない。

いずれにしても、ゴセンスを組み込むならそれ相応のシステム構築が新たに必要になるということだ。

ゴセンスとペリシッチはともに一流ながら異なるタイプのプレーヤーであり、同じ文脈に置いても一方が機能すればもう一方は機能しないことが起こりうる。

まあ、マネジメントに長けるシモーネはそんなことは言われなくてもわかっているはず。彼らを状況に応じて使い分け、うまく共存の道を模索するのではないだろうか

指揮官の采配にも注目が集まるところだ。




あとがき

シモーネインテルにおいてもっとも替えが効かない選手のひとりになっているペリシッチ。ゴセンスの獲得も、ペリシッチとの契約が来夏で切れる状況を踏まえてのものでもあるはずだ。

その契約を更新するかどうかまだ不透明なペリシッチ。ピッチ外の動向も注目されるところだ。

個人的にはぜひインテルに残留し、まだまだその輝きをイタリアで、インテルではなってほしいと思っている。

ピッチ内外で今後のインテルのキーマンとなりうるペリシッチに要注目だ。

 

 

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