サッカーは6つの局面に分けられる【サッカー論】

サッカーは6つの局面に分けられる【サッカー論】

2022年2月4日 1 投稿者: マツシタ
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サッカーというスポーツはとても複雑で、なかなかひとことで表すのは難しい。こういうときは、いったん分けて考えてみることが有効だ。数学を勉強しよう!と思っても何から手をつけたらいいのかわからないけれど、三角関数を勉強しよう!ならば取り組みやすいのと同じである。

それでは、サッカーというスポーツはどのように切り分ければいいのだろうか。これはシンプルだがとても難しい問題だ。今回考えるのはサッカーをプレーの性質からいくつかの局面に分けることなのだが、これもなかなか難しい。

サッカーをよく知らない人に「サッカーの試合はどのような流れで進むんですか?」と聞かれたとき、あなたはどう答えるだろうか。答えに詰まる人が多いんじゃないだろうか。

テニスやバレーボールのように、コートがネットで区切られている競技では一方がボールを打ち返し、もう一方が受ける。これを繰り返していくという流れだ。野球ならば3回アウトをとられるまで攻撃が続き、もう一方のチームは守備が続く。それらをさらにバッターvsピッチャーの局面、進塁vs守備の局面など細分化することはできるが、いずれも明確な切り替わりのタイミングがあり区分するのは容易だ。さらに、それぞれの局面には明確な流れがあり、順番が決まっている。ボールを打っていないのにいきなり1塁に向かって走り出すことなどできないわけだ。

対して、サッカーのような一定時間が経過するまで試合が終わらないスポーツでは、プレーを局面に切り分けるのが難しい。その上、どんな流れで試合が進むかは決まっていない。攻守の切り替わりが激しい試合もあれば、どちらかが一方的に攻めるような試合もあるわけだ。

細かいことを気にせずにいえば、腕以外を使って1点でも多く点を取ればあとは何をしてもいいという非常に自由度が高いスポーツ。これを切り分けるためにはどうすればいいのか。

今回は、私なりのフレームワークを紹介しようと思う。

正解はないので、これを読んで議論したり、自分のフレームワークをアップデートしたりしてもらえれば幸いだ。

 

 

従来の局面分けをアップデートする

近年、サッカーは4つの局面に分けられるという論調が主流を占めている。すなわち、ボール保持、ボール非保持、ポジティブトランジション、ネガティブトランジションである。

ボールを持っているか、持っていないかというのは最も基本的で、なおかつわかりやすい局面分けだ。だが、ひとことにボール保持といってもそのプレー内容は多岐にわたる。

サッカーがピッチの両端にあるゴールを目指し守るスポーツである以上、ボールがピッチのどこにあるのかでチームの振る舞いは変わってくる。敵陣でプレスをかけるのと、自陣ゴール前で相手の攻撃を跳ね返すのとをひとつに括ってしまうのは妥当とは思えない。

そこで、ボール保持/ボール非保持の局面を、ボールが自陣にあるか/敵陣にあるかでそれぞれ2つに分割してみたい

  • 奪う局面:ボール非保持かつボールが敵陣にある局面。
  • 守る局面:ボール非保持かつボールが自陣にある局面。
  • 守→攻の局面:非保持から保持に切り替わる間の局面。いわゆるポジティブトランジション。
  • 運ぶ局面:ボール保持かつボールが自陣にある局面。
  • 崩す局面:ボール保持かつボールが敵陣にある局面。
  • 攻→守の局面:保持から非保持に切り替わる間の局面。いわゆるネガティブトランジション。

私はサッカーをこの6つの局面に分けて考えている。そして、それぞれの局面は基本的には下の図のような流れで循環する。

さて、これら6つの局面についてより詳しく見ていこう。




奪う局面

まずはボール非保持について見てみよう。というのも、試合の展開はボール非保持側が決めるからである。非保持側が高い位置からプレッシングを行えば保持側はそれをかわして素早く前線へボールを運ぼうとするためにダイナミックな試合展開になる。非保持側が低い位置に構えて注意深くスペースを消せば、それを崩そうとする保持側との攻防は緻密で緊張感のある試合展開になる。

いずれを選択するにしても、現代サッカーにおいては最初から自陣に引きこもり、敵陣で全く守備を行わないチームはほとんどないといえる。アタッキングサードからアグレッシブにプレスを行うにしろ、ミドルサードに構えてそこから迎撃に出ていくにしろ、守備アクションのスタート位置は敵陣に設定されることが多い。

このように、敵陣にボールがあるときのボール非保持の局面を、その目的を強調して奪う局面と呼ぼうと思う。

一般的に、ボール非保持/ボール保持はそれぞれ守備/攻撃と呼ばれることが多い。自分も以前までは何となく守備、攻撃と呼んでいたのだが、ある思いからボール保持、非保持というようになった。その要因が奪う局面にある。

ただゴールを守りたいのであれば、自陣に引きこもって堅固なブロックを構築していればいい。現代サッカーでも、リードした終盤に引いて守りを固める戦術を採用するチームは多くみられる。ボールを奪うために前に出ていけば、それだけ最終ライン裏にスペースを空けることになり、一定のリスクもあるわけだ。

それを承知の上で高い位置からプレッシングを行うのは、できるだけ高い位置でボールを奪うことを、もっと言えば奪った先のカウンターで決定的なチャンスを作り出すということを念頭に置いているからであり、そういう意味でプレッシングは攻撃アクションと言えるのではないかと考えるようになったからのだ。

非保持側が高い位置からプレッシングを行うとき、両チームがともに攻撃している。そうとらえると、スリリングでダイナミックな展開のイメージと合致するのではないだろうか。




守る局面

さて、奪う局面でボールを奪えなかった場合(最初からこの局面に相手を引き込む場合もあるが)は自陣で応戦することになる。ボール保持側から見て自陣にボールがある状態を守る局面と呼ぶことにしたい。

この局面の目的は文字通り守ることである。何を守るのかと言えば自分たちのゴールである。

そのために危険なスペースを埋めることが最優先となり、ボールが自陣ゴールに近づいてくるほど奪うことを目的としたプレッシングよりも、危険なスペースで待ち構えて相手の攻撃を跳ね返すという受動的なアクションが多くなっていく。ここに来て初めて守備という言葉のイメージと合致してくる印象だ。

ここでチェックしておきたいのは奪う局面から守る局面へ移行するタイミングはどこかということである。

アタッキングサードでプレスを打開されたらミドルサードでは戦わずにディフェンシブサードまで撤退するチームもあれば(現在セリエA首位を走るインテルが典型的)、自陣でもミドルサード内であれば積極的に圧力をかけ続けるチームもある。

今回紹介するフレームワークでは便宜的に奪う局面と守る局面の境界をハーフウェーラインに設定したが、実際はチームによって異なるものだ。それを読み解くことは、各チームの守備の狙いを紐解く上でひとつのヒントになる。ぜひ注目してみてほしい。




守→攻の局面

さて、非保持側がボールを奪った時、攻守が入れ替わることになる。この「ボールを奪った瞬間」の局面を守→攻の局面と呼ぶことにしたい。一般的にはポジティブトランジションと呼ばれている。

「ボールを奪った瞬間」という定義はあまりにもあいまいだ。奪ってから5秒間のことなのか、一定数パスをつなぐまでのことなのか何なのかがわからない。それに、守→攻の局面でもボールを保持しているチームと保持していないチームは生じてくる。ボール保持の局面と守→攻の局面はどう違うのだろうか。

これは攻→守の局面も同様なのだが、ボール保持/非保持とそれらの切りかわり局面とを分ける最大の違いは再現性の有無であると考えている。

現代サッカーではそれぞれの局面においてシステムを使い分けるいわゆる可変システムを用いることが多く、そのシステムを基盤を置くことで各局面での振る舞いはある程度パターン化されていることが大半である。

ボール非保持であればどの方向からプレスをかけてどこで奪うのか、またどんな陣形を組んでどう相手の攻撃に制限をかけるのか。ボール保持であればどのルートでボールを運びどのエリアからラストパスをだれに供給するのか。それらに再現性を持たせ、偶然に頼らずに勝利に近づいて行こうとするアプローチは現代サッカーの基本である。

一方で、これらの局面の切り替わり部分にあたる守→攻の局面、および攻→守の局面には再現性の要素が薄くなる。どこでボールを奪うのか、その時に周囲の状況はどうなっているのかは毎回異なる。ゆえに、ボール保持/非保持の局面と比べると選手たちはその場その場で即興的に対応することを求められ、保持/非保持の局面とはプレーの性質は大きく変わってくるのだ。

これが再現性の有無が局面分けの着目点であるとする理由である。

これに基づき守→攻の局面を再定義すれば、ボールを奪ってからボール保持のシステムを構築し秩序を取り戻すまでの間の局面、となる。

守→攻の局面でいえば、チームの振る舞い方は2つある。

ひとつはボール保持の確立。これは安全な選手にボールを預けることで、できるだけはやくボール保持の局面に移行しようとする行為であるといえる。もっといえば、再現性が薄い守→攻の局面をできるだけ圧縮しようとするアプローチであるともいえるだろう。

もうひとつはカウンターである。相手のボールを奪った瞬間は、相手の陣形は守ることに最適化されておらず、バランスを崩している。ここを突いて一気に攻め上がり、チャンスを生み出そうとするのがカウンターだ。局面論的に言えば相手が秩序を取り戻してボール非保持の局面に移行する前に攻撃を完結させようとするアプローチである。

これらの行為を局面図に落とし込むとこのようになる。

こうしてみると、なぜ多くのチームがカウンターを最優先にするかがわかりやすいと思う。カウンターは運ぶ局面を省略し、一気に崩す局面に移行できる飛び道具なのだ。いや、カウンターからそのままゴールを奪うことは定義的に言えばボール保持の局面を丸ごと省略し、守→攻の局面の段階でゴールを奪ってしまう行為だともいえる。

特に現代サッカーでは守備陣形が緻密に組織され、いったん守る局面に持ち込まれるとなかなか崩せない。その局面に持ち込ませる前にゴールを奪うことは、最も効率的かつ効果的なのである。

これがサッカーにおいてカウンターが重視される理由であり、それを起こすためのプレッシングが重視される流れにつながっているといえるだろう。




運ぶ局面

続いてはボール保持の局面を見ていこう。ボール保持側から見て自陣にボールがあるときの局面を運ぶ局面と呼びたい。

この局面の目的は文字通り、ボールを運ぶことである。どこに運ぶのかと言えば敵陣である。サッカーのピッチは非常に広く、縦幅は105mと規定されている。そのため、自陣から直接ゴールを生み出すことはほぼ不可能と言ってよく、ゴールを奪う前段階としてまずは敵陣までボールを運ぶことが必要なわけだ。

ここで注目したいのが、局面の対応性である。ボール保持側にとって自陣にボールがあるとき、ボール非保持側から見れば敵陣にボールがあることになる。つまり、ボール非保持側から見ればこの局面は「奪う局面」であるということである。

ボール保持側は、非保持側がかけてくるプレスをかいくぐり、敵陣までボールを運ぶことを目指すことになる。

前線にボールを届けるもっとも単純な方法はロングフィードである。こうすれば、途中でカットされることなく、なおかつ素早く敵陣にボールを送り届けることができる。

ただし、この方法で行くと高確率で競り合いが発生することになる。先ほどから何度も出てきているキーワード、再現性というところでいくと、競り合いが生まれればどこにボールがこぼれるか、それを拾った時に周囲の状況が応なっているかなどの再現性は低くなる。この競り合いから生まれカオスを織り込んだうえでプレーしようとするチームもたしかに存在する。がしかし、プレーに再現性を求めようとする現代サッカーの流れにおいては、配置とそれを結ぶネットワークを用いながら論理的かつクリーンにボールを動かし、相手のプレスを打開しようとするプレーが目立つようになっている。

現代サッカーの巨匠ペップ・グアルディオラは「前線の3人を除いた7人+GKで、相手の4バックを除いた6人によるプレッシャーラインを突破すること、すなわち8対6を制することがビルドアップの目的でありこうしてアタッカーまでボールを送り届けるところまでが戦術にできることだ」と言っている。運ぶ局面vs奪う局面の攻防こそが戦術の主役だとしているわけだ。

できるだけ高い場所でボールを奪いたい非保持側vsそれを回避しながらできるだけ再現性を持った形で敵陣までボールを運びたい保持側という、「両者攻撃」なこの攻防はどの監督も重視しており、また見ていて非常に面白い局面である。




崩す局面

さて、相手のプレッシングを回避して敵陣までボールを運んだら、いよいよ相手からゴールを奪うことを目指す。ボール保持側から見て敵陣にボールがあるこの局面を崩す局面としたい。

なぜ崩しなのかというと、この局面が非保持側の守る局面と対応することになるからである。

守る局面では、非保持側はボールを奪うことよりもゴールを守ることを重視し、そのためにスペースを消すのだった。これを言い換えると、ブロックを構築して待ち構えるということになる。保持側は、この相手の陣形をいかに攻略するかを考えながらプレーするわけだ。

非保持側はゴールに近い中央のスペースを消してくるので、攻撃はサイドが起点となる。このとき、アウトサイドからそのままクロスを放り込むのか、そこからもうひとつ内に切り込んでいくのかはチェックポイントだ。現代サッカーにおいては後者が重視される。

これも運ぶ局面と同じで、大外からのクロスボールに競り合いを制して合わせるようなプレーは、クロスの名手と空中戦に強い選手をそろえていない限り高度な再現性を生み出すことが難しい。

それよりも、アウトサイドレーンからもうひとつ内側、すなわちハーフスペースからラストパスを供給することはより確実なゴールチャンスを生み出す。このハーフスペースにいかに再現性を持ってボールを運ぶかが重視されているのだ。その方法はチャンネルランかもしれないし、ドリブルによるカットインかもしれない、いずれにせよ、アウトサイドレーンは以前まではクロスボール=ラストパスを供給するエリアであったのに対し、現代サッカーではそこからもうひとつ内へ侵入していくための中継地点としての性格を強めている




攻→守の局面

さて、ボール保持側はシュートを打つことを目指してプレーしていくわけだが、そこまで到達することができずにボールを失ことが大半である。こうなったとき、攻→守の局面が生じることになる。

ボールを保持していたチームがボールを失った瞬間から、秩序を取り戻してボール非保持もしくはボール保持の局面に移行するまでの間の局面である。

一方のチームにとって攻→守の局面が生じているとき、相手チームにとってそれは守→攻の局面となる。

守→攻の局面では、多くのチームがカウンターを発動し、素早く相手ゴールに迫ろうとするのだった。攻→守の局面にあるチームは、このカウンターを防ぐべく行動することになる。

攻→守の局面を迎えたチームの振る舞い方は大きく2つに分けられる。

ひとつはリトリートである。リトリートは英語であり、日本語に訳すと退却。自陣に戻ってブロックを構築することで秩序を取り戻し、ボール非保持の局面(多くは守る局面)に移行することを目指す。再現性が薄い攻→守の局面をできるだけ圧縮しようとするアプローチであるともいえる。

もうひとつが即時奪回である。文字通り、奪われたボールをすぐさま奪い返すべく、猛烈なプレスをかける。これに成功すれば、再び攻撃のための陣形を組んで秩序を回復し、ボール保持の局面へと移行することになる。

これを局面図に落とし込むとこうなる。

これは守→攻の局面もそうなのだが、秩序を取り戻すまでの間の局面では、いずれもどの局面へ飛ぶかを選択できる。ゆえに、そのチームの志向性が表れる局面だといえる。

中でも攻→守の局面はボール保持とボール非保持という正反対の局面のどちらに向かうかが見えるため、そのチームを率いる監督の志向性が色濃く表れるとみて間違いない。

中でも、ボール保持へ向かう即時奪回は唯一局面循環の流れに逆行しようとする戦術行動であり、この意味において注目すべきプレーであるといえる。ボールを失っても即時奪回で奪い返せばそのままボールを持ち続けることが可能であり、非保持の局面を最小限まで抑えながら試合を支配できる。

失点はボール非保持もしくは攻→守の局面でしか生まれない。つまり、ボール保持の局面にあるかぎり失点する可能性はゼロである。近年即時奪回が重視されているのは、それがボール保持局面を継続させるための、言い換えれば試合を支配し続けるための最も重要な道具だからだといえるだろう。




あとがき

今回は6つの局面に分けることでサッカーを切り分け、それぞれの局面における代表的な戦術行動を局面循環の視点から考えてみた。これはあくまでも私個人が考案したフレームワークであり、正解不正解はないと思う。また、さらにブラッシュアップしていく必要もあると思う。ぜひ皆さんの意見を聞かせてもらいたい。

サッカーというシンプルゆえに複雑なスポーツを探究する旅に終わりはない。今後もこうしたサッカーの本質的な部分について自分がどうとらえているかをまとめ、体系化していきたいと考えている。次回はフォーメーションやポジションについてかな。お楽しみに。

 

 

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