【フランス産ヴェッラッティ】マキシム・ロペスのプレースタイルを徹底解剖!

【フランス産ヴェッラッティ】マキシム・ロペスのプレースタイルを徹底解剖!

2022年1月30日 1 投稿者: マツシタ
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「イタリアのペップ」ロベルト・デゼルビ監督のもと、2018年からの3シーズンにわたってポゼッション路線を突き詰めてきたサッスオーロ。徐々に結果を伴わせ、セリエA7強に次ぐ中堅クラブとしての地位を確立した感がある。

その3年間文字通りチームの心臓として活躍したのはマヌエル・ロカテッリだった。ミランからやってきた若きセントラルMFはデゼルビのもとイタリア屈指のレジスタとして開眼し、今シーズン開幕前にユベントスへと移籍している。

アレッシオ・ディオニージ監督が就任した今季もサッスオーロはボール保持を大切にするスタイルを継続。ただし、その中心はロカテッリからマキシム・ロペスにかわっている。

 

スペイン人の父親とアルジェリア人の母親のもとに生まれたマキシム・ロペスは、出生地であるマルセイユの名門オリンピック・マルセイユのユースで育ち、そのまま18歳の時リーグアン出場を果たしてプロデビュー。その後5シーズン通算でリーグ戦113試合4ゴール13アシストを記録した。

生まれ育ったマルセイユを離れることになったのは2020年の夏。167cmという身長の低さ、テクニックとクイックネスを武器とするスタイルが共通することから「フランスのヴェッラッティ」と呼ばれて注目されていたロペスは、バルセロナやセビージャ、トッテナムなど名門からも関心を寄せられる中、育成に定評がありなおかつ自身のプレースタイルともマッチするサッスオーロを移籍先として選択した。

レンタルでの加入だった昨シーズンはロカテッリとともに2ボランチを構成してリーグ戦29試合に出場すると、完全移籍に移行した今シーズンはロカテッリにかわる中盤の柱として22試合に出場中だ。

サッスオーロの新たな心臓として奮闘するロペス。彼は一体どんなプレーヤーなのか、徹底的に掘り下げていきたい。




マキシム・ロペスのプレースタイル

 

動的レジスタのお手本

マキシム・ロペスのプレースタイルを支える根底になっているのが運動量の豊富さだ。

機動力に優れるマキシム・ロペスは、ピッチの全域をカバーしながら攻守にボールに絡むプレースタイルを持っている。

  • 1試合平均走行距離 10.906km(セリエA10位

ちなみに、サッスオーロはセリエの中でも走行距離が短いチームであり(1試合平均走行距離は全20チーム中18位)、チームで2番目に平均走行距離が多いフラッテージの9.919kmに1km近い差をつけている。

サッスオーロは各選手が立ち位置を重視しつつボールを動かしていこうとするチームである。その中にあってマキシム・ロペスは各選手間の隙間隙間を埋め、中継する役割として一人汗をかきまくっているのだ。

SofaScore.comより、マキシム・ロペスのヒートマップ。自陣ペナルティエリアの外からミドルサードまでの縦幅全域がカバー範囲となっていることがわかる。

 

さらに、マキシム・ロペスは非常に高い組み立て能力を持っている。

長短のパスは非常に正確。敵と味方の位置を把握する能力も高く、フリーの味方を見つけて的確に配球する。

データサイトFBref.comよりデータを引用すると(以下データはすべてFBref.comより)

  • パス総数:1700(セリエA2位
  • パス成功数:1558(セリエA2位
  • パス成功率:91.6%(セリエA11位

とパスに関するスタッツは軒並みセリエAトップクラスである。

これらの能力を存分に活かし、中盤を広く動きながら細かくボールに絡むのがマキシム・ロペスのプレースタイルである。

4-3-3採用時にはアンカーで、4-2-3-1採用時にはセントラルMFの一角で起用されるマキシム・ロペスだが、そうしたスタートポジションに縛られずに広範囲を動き回ってボールに絡み、受けてはさばいて次のポジションへ移動、またボールを受けてはシンプルにさばいてを繰り返しながら試合を組み立てる。動的レジスタの最たる例のような選手である。

そのスタイルはデータにもよく表れていて、

  • パスターゲット:1544(セリエAトップ

と今季のセリエAで最もパスの受け手となっている。

ちなみに、同データの2位はブロゾビッチ。マキシム・ロペスとブロゾビッチは組み立ての局面での振る舞いが非常によく似ている、と言えばブロゾビッチを知っている人にはわかりやすいかもしれない。

そうしてボールを動かしつつ、縦パスを入れて攻撃の局面を進める機会をうかがう。パスコースが見えれば、積極的に縦にボールを動かすこともまたロペスの特徴だ。

  • ファイナルサードへ届けたパス数:145(セリエAトップ
  • 縦パス成功数:138(セリエAトップ

ボールを動かすのは、効果的な縦パスを供給するためのチャンスを作り出すためなのだ。

自陣での組み立てからファイナルサードへボールを届けるまで、ビルドアップのほぼすべての局面に関与しているロペスの存在感は絶大だ。




ロカテッリとの比較

先ほどロペスをブロゾビッチと似ていると紹介したが、昨季の中心だったロカテッリと比較するとどうなるだろうか。

パスを長さで分類したときの全体に占める割合を棒グラフで表現したもの。ロカテッリと比較するとロペスはショートパス/ミドルパスの割合が高く、ロングパスの割合は低くなっている

パスを最高到達点で分類したときの各割合を棒グラフで表した。ロカテッリと比較するとロペスはグラウンダーの割合が高く、ハイパス(選手の頭よりも高い最高到達点のパス)の割合が低くなっている

このように、ロペスはグラウンダーのショートパスを多用していることがわかる。細かいパスをつなぎ、また受けては細かくつなぐ。これを繰り返すスタイルが反映されているといえる。

  • グラウンダーのパス数:1427(セリエAトップ

逆に、長めのサイドチェンジはあまり用いない。スイングパス(40フィート以上ピッチの横幅を移動したパス。いわゆる一発のサイドチェンジのこと)を比較してみると、

〈1試合平均のスイングパス数〉

となっている。ロペスと比較すると、ロカテッリはよりロングレンジのパスを用いたダイナミックな展開に持ち味があるといえるだろう。




マキシム・ロペスを中心としたサッスオーロの可変

そんな動的でショートパスを中心としたロペスの特性を最大限発揮できるよう、サッスオーロは彼の立ち位置に応じて柔軟にてビルドアップの形を変化させる。試合画像を交えながら見てみよう。

マキシム・ロペスの基本ポジションは最終ラインの一つ手前。レジスタの位置に入り、最終ラインからボールを引き出す。

ここからロペスが最終ライン中央に落ちた時は両CBがワイドに開き、レジスタの位置にフラッテージが入ってきてバランスをとる。いわゆるサリーダ・ラボルピアーナだ。

この形は、ロペスにボールを渡すというよりもむしろワイドに開いたCBから縦パスを供給することを目的としている。特に左CBのフェラーリはマキシム・ロペスにも劣らないほどの展開力の持ち主である。彼をサイドに押し出し相手FWからのプレッシャーを受けない場所から配球させるという意味合いが強い可変の仕方だといえる。

 

また、マキシム・ロペスがCB脇に斜めに下りたときには彼が縦パスの出し手となる。

この動きに連動してサイドバックがインサイドに入り、ウイングとともにトライアングルを形成。ロペスに選択肢を提供する。

 

このように、マキシム・ロペスの機動力を最大限に発揮できるよう、彼の動きに応じて複数のビルドアップパターンを用意しているサッスオーロ。それを状況に応じて使い分けるロペスは、サッスオーロのビルドアップの道しるべである。

また、ロペス自身にとってもこうした細かい設計が施されていることは、自分の能力を最大限発揮できる環境が整った理想的な環境だといえる。両者は理想的な共存関係にあるといっていいだろう。




ゴール前に進出して決定機に絡むことも

さらに、マキシム・ロペスのプレーエリアは最終ライン手前に限定されない。チャンスと見れば3列目から飛び出していき、ゴール前での決定機に絡むこともできる。

特にカウンター発動時には2列目のアタッカーを追い越して前線へ飛び出すことも多く、そこから決定的な場面に絡む

 

↓ ユベントス戦のゴールシーン。後半ロスタイムに駆け上がり、カウンターを仕上げた。

 

また、前が空いていればドリブルで持ち運ぶ推進力も持っている

  • 縦方向のキャリー数:140(セリエA7位
  • 縦方向のキャリー距離:2331(セリエAトップ

と、縦に持ち運ぶドリブルの多さはデータも裏付けている。

ここら辺もパス同様、縦への意識の強さがうかがえる部分だ。

 

↓ マキシム・ロペスの運ぶドリブルが起点となって生まれた得点




球際で戦えるファイターでもある

このように攻撃の全局面に関与できる能力を持つマキシム・ロペスだが、彼は攻撃だけの選手ではない。守備面での貢献度も非常に高いのだ。

  • タックル数:47(セリエA9位
  • タックル勝利数:31(セリエA8位
  • プレッシャー数:319(チーム内トップ
  • プレッシャー成功数:96(チーム内トップ

このように、プレッシャー、タックルともにチームトップのスタッツを記録しており、特にタックルに関してはリーグトップ10に入る多さになっている。

サッスオーロは高い位置から相手の選択肢を制限する守備方法をとることが多く、4-2-3-1でセントラルMFに2枚を起用する試合でも、ロペスの相方(主にフラッテージ)を高い位置まで押し出してしまうことが少なくない。それゆえ、最終ライン前のスペースはロペスに一任されることになる。

この広大なエリアをプロテクトするため、ロペスは奮闘している。ここでもプレーエリアの広さが活かされているわけだ。ボールの動きに合わせながらポジションを調整し、ここぞの場面でボールホルダーに鋭いタックルを見舞う。かなり負担が大きいタスクだが、彼は忠実にこなしている。

攻守においてプレーエリアの広さを活かしてボールに絡めるマキシム・ロペス。今やサッスオーロの中盤に欠かせない大黒柱だ。

 

まとめると、

  • 中盤の全域をカバーできる運動量と機動力を持ち、
  • 細かいパスを連続させながらゲームを組み立てる動的レジスタであり、
  • ショートパスを主体としながらも縦への意識を持ち、
  • カウンターでは積極的に駆け上がってチャンスに絡み、
  • 守備時にも予測力を活かして広範囲を守れ、
  • 積極的にタックルを仕掛けて相手の攻撃の芽を摘める

デゼルビ体制だった昨季と比較すると、ディオニージ政権となった今季のサッスオーロはショートパスによる組み立てを重視しつつも要所要所で縦への速さを織り交ぜていこうとしている。そうしたスタイルを象徴する選手がマキシム・ロペスである。

彼のスタイルはディオニージの理想像だろうし、ロペスにとってもまたディオニージのサッカーが肌によくなじんでいるはずだ。

今の活躍を継続できるのなら、ビッグクラブへのステップアップやフランス代表への招集も現実味を帯びてくるだろう。いま要注目MFである。




マキシム・ロペスの伸びしろ

それでは、マキシム・ロペスの伸びしろはどこにあるのか。

個人的に上げたいのは守備技術の向上だ。

彼が球際で戦えるファイターであることを紹介したが、それが正当な激しさではなく守備の雑さからくることも少なくないのだ。

  • イエローカード:8(セリエAで2番目に多い

と、ロペスは今季のセリエAでもトップクラスの警告を食らっている。

ここで注目したいのは、ファウル数との対比である。

  • ファウル数:21(チーム内5位)

と、ロペスは特別ファウル数が多いわけではないのである。リーグ全体で見て最もファウル数が多いトルスビーは60のファウルを記録している。これと比べると、ロペスは3分の1程度に過ぎない。

それでいてカードを多くもらっているということは、悪質なファウルが非常に多いということを意味している。

これは、彼の守備技術の未熟さによるところが大きいと思う。マキシム・ロペスは小柄ゆえ、体を入れてきれいに奪い去るようなプレーは難しい。それではどうするかというと、相手の体にタックルを仕掛けてバランスを崩そうとするのだ。このタックルの仕方が雑で、ボールにチャレンジしているように見えづらい傾向にある。相手の体にラフなチャージを仕掛けたと取られやすいのだろう。

身長がなくてもボールを奪えることはエンゴロ・カンテが証明している。彼のように、相手のワンタッチを観察する余裕を持ち、それを読んでカットしてしまうような狡猾さを身につければ、よりクリーンにボール奪取することが可能になるはずだ。

 

ただし、彼の危険なファウルの多さはチームの戦術上の問題が関係していることにも触れておかなければならない。

前述のように、ロペスは一人で非常に広い範囲を守ることを求められており、どうしても対応が間に合わない部分が出てきてしまう。それを意図的なファウルで止める場面が散見されるのだ。

前方に人数をかけて制限をかけに行く代償としてロペスの負担が増加しているという事情があることもここに書き記しておきたい。




あとがき

昨季のサッスオーロを見ていた方なら、ロカテッリが抜けて大丈夫なのかと思ったことだろう。だが、サッスオーロは今季もリーグ屈指のポゼッションフットボールを維持し、ミランやユベントス、ラツィオなど上位陣から勝利を挙げるなどその力は健在である。

昨季の心臓が抜けても彼らが強い理由、それは新たな心臓であるマキシム・ロペスがまた違った形でチームの中心に収まったことが大きい。ディオニージサッスオーロを象徴する存在として、今後もチームを引っ張っていくはずだ。

次はどんな番狂わせを起こしてくれるのか。その中心にいるマキシム・ロペスに注目してみてほしい。

 

 

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