【小柄なモダンアタッカー】ジャコモ・ラスパドーリのプレースタイルを徹底解剖!

【小柄なモダンアタッカー】ジャコモ・ラスパドーリのプレースタイルを徹底解剖!

2022年1月2日 2 投稿者: マツシタ
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シーズンもちょうど折り返し地点となった。新年1月からは後半戦が始まる。と同時に冬の移籍市場も開いた。すでに移籍関連のニュースが賑わいを見せ始めている中、ステップアップ候補として取り上げられている選手のひとりがジャコモ・ラスパドーリである。

 

2000年生まれのラスパドーリは、まだ小学生だった2009年に加入して以降サッスオーロ一筋。ユース時代にはインテルやミラン、ローマといった強豪クラブがこぞって獲得に関心を示したものの、ネロベルディ(緑と黒を表すサッスオーロの愛称)への忠誠を誓ってきた。そのまま2018年にプロ契約を締結すると、翌2019年アタランタ戦でプロデビューを果たしている。

現在ブレイク中のチームメイト、ジャンルカ・スカマッカとダビデ・フラッテージに代表されるように、サッスオーロでは下部組織出身の選手をレンタルに出して成長を促すケースが少なくない。

しかし、クラブはラスパドーリだけはレンタルに出さずに手元にとどめ続けた。これが彼への期待値の高さを雄弁に物語っている。

ラスパドーリもそれにこたえる形で成長を続け、昨季(20-21)には27試合6ゴールとブレイク。夏にはビッグクラブへのステップアップもうわさされたものの残留し、今季はリーグ戦全試合に出場して4ゴール4アシストと完全に主力に定着している。

各方面からの注目度は増すばかりのラスパドーリだが、彼の何がすごいのだろうか。

今回はイタリアが誇る注目株、ジャコモ・ラスパドーリのプレースタイルを徹底的に掘り下げていきたい。




ラスパドーリのプレースタイル

 

ダイナミックに動き攻撃に関与

ラスパドーリは「持たざる」選手だ。172cm69kgと小柄でずんぐりした体形のラスパドーリは、特別足が速いわけではない。というかむしろ遅い。瞬間的な加速力やパワーも特筆すべきレベルにはなく、フィジカルが強調される現代サッカーにおいて身体能力はかなり低い部類だと言っていい。

しかし、それを補って余りある能力を備えている。

その中でも大きな特徴になっているのがダイナミックさだ。広範囲を動きながらボールに関与し、さばいては動いてを繰り返せる。

1トップから2列目まで攻撃的なポジションならどこでもこなせるラスパドーリだが、やっていることはどのポジションでも同じ。自分の基本ポジションにとらわれずに動き回りながら他のアタッカーたちと入れ替わり、連携し、相手の守備陣形を崩していく。そうした組織的な連携の中で機能するモダンなアタッカーだといえる。

SofaScore.comより、ラスパドーリの今季のヒートマップ。左ウイングとしての起用が多いラスパドーリだが、ピッチ中央エリアでも多くボールに触っていることがわかる。

 

データサイトFBref.comを見てみると、

  • 縦パスレシーブ成功数:127(セリエA4位

というデータが目を引く。これは1トップとして起用されているスカマッカをも上回るチームトップの数値だ。これが、ラスパドーリの「動いてさばいてまた受けて」というスタイルをよく表している。

スピードがない分、ゆっくりだが常に動きを入れるラスパドーリ。細かいスペースに顔を出し、受けてはシンプルにさばいてリズムを作る。これを相手のDFラインとMFラインとのライン間で行うことで、相手の陣形をじわじわと崩していくのだ。

 

↓ ライン間に侵入したラスパドーリがアシストを決めた場面。

 

↓ 昨季のミラン戦での得点。またしてもライン間でボールを受けたラスパドーリはシンプルにさばいてゴール前へ。最終的にはクロスボールに合わせて決めた。

 

逆に、各ポジションの選手にその場その場でのプレーを求めるようなスタイルだと、ラスパドーリの良さは引き出されないだろう。

アジリティや瞬間的なスプリントに優れているわけではないラスパドーリは対面の相手をドリブルでかわすようなプレーは得意ではない。

  • ドリブル突破成功率:44.4%(チーム内13位

ゆえにウイングで起用して「相手SBを突破してチャンスつくってください!」と言われても多分厳しい。突破型のウインガーを求めているのなら、ラスパドーリは適役ではないだろう。

 

また、172cmと小柄ゆえ、最前線で起点になってください!と言われても厳しいはずだ。

  • 相手DFのタックルを受けてボールをロストした回数:41(チーム内トップ

この数値はチーム内で断トツのトップだ。2位はベラルディとスカマッカの19回で、ラスパドーリは彼らの倍タックルを受けてボールをロストしていることになる。決して細身なわけではないがコンタクトプレーは苦手にしていることが読み取れる。

それゆえ、カウンターを主な攻撃手段に据えるチームで周囲のサポートを待つまで相手を抑え込んで時間を作ったり、ひとりでカウンターを完結させることを求めても難しいだろう。

 

このように、ラスパドーリは活躍するための環境を選ぶタイプだといえる。ただし、最適な環境においてもらえさえすれば、確実に結果を残すはずだ。




動きながらのプレーがとてもうまい

というのも、ラスパドーリはオフ・ザ・ボールだけでなく、オン・ザ・ボールでも能力が高い。両足に極めてハイレベルなテクニックを備えているのだ。それも、ただうまいだけではない。動きながらでもテクニックの質が全く落ちないのである。

普通動きながらプレーすれば精度が落ちるものだが、ラスパドーリにはそれがない。走りながら絶妙な位置にトラップしたり、ターンしながら相手の足が届かない場所にボールを置いたり。そのセンスが絶妙なのだ。

ここらへんは映像で見てもらった方が早いだろう。

 

↓ ヴェローナ戦の先制弾の場面。横パスを受けたラスパドーリはワンタッチで相手GKが出てこれない絶妙な位置にボールを置き、見事に抜け出して見せた。

 

↓ イタリアU21代表での得点シーン。裏に飛び出してボールを引き出したラスパドーリ。ワンタッチ目が少し乱れたが、ヒールで絶妙な位置にトラップしてリカバーして見せた。彼のテクニックレベルの高さがよくわかる場面である。

 

このように見ていくと、フィジカル的に劣っているラスパドーリが欧州トップレベルでも得点を奪える理由が見えてくる。シュート前のトラップがめちゃくちゃにうまいのである。

相手が密集しているエリアであっても、どこにスペースがあるかを瞬時に認知できる戦術眼。そして、そこに狙い通りに持ち出す正確なテクニック。これらを研ぎ澄ませることで、フィジカル的に劣っていても十分に通用することを証明している。いや、フィジカル的に劣っているからこそ、それを補うための能力を研ぎ澄ませたのかもしれない。

understat.comより、ラスパドーリの得点についてシュートを打った位置とゴール期待値の大きさを円で表したもの。

注目したいのはゴール正面からのシュートが多いこと。ラスパドーリがゴール前の危険なエリアに侵入してボールを受けるランニングのセンスを備えていることがうかがえる。

加えて、比較的円が大きい=期待値が大きいシュートが多いことにも注目したい。このエリアでは通常相手選手が複数いるものだが、そんな中でも期待値が高い状況を作り出せている。つまり、この狭いエリアでもワンタッチで相手を剥がし、シュートコースを作り出せていると読み取れる。

再びunderstat.comより、ラスパドーリのミスショット(セーブされたシュート、ブロックされたシュート、枠外に外れたシュート)を打った位置と期待値の大きさについて円で表したもの。

注目したいのは期待値が大きいシュートが少ないこと。先ほどの資料と合わせると決定的なチャンスのほとんどを決めきっていることが読み取れ、ラスパドーリの決定力の高さがデータに現れているといえる。

逆に言えば、期待値が小さいシュートはほとんど決まっていないということでもあり、スーパーなゴールは少ないといえる。スカマッカとは対照的だ。ミドルシュートの精度を上げることが今後に向けた課題と言えるかもしれない。

 

↓ これまで説明してきたポイントが凝縮された得点シーン。中盤に引いてボールを受けたラスパドーリは右のベラルディに展開してゴール前へ。足元に入ってきたボールをワントラップで絶妙な位置に置いてトモリを置き去りにし、ゴール左下に正確に流し込んだ。トモリと言えばセリエAでも屈指のフィジカル能力を誇るCBだが、一瞬の駆け引きで手玉に取って見せた。




守備での貢献度が高い

さらに、ラスパドーリは守備での貢献度も非常に高い選手である。

  • タックル勝利数:16(チーム内2位

というデータはディフェンダーやMFの選手たちを差し置いてチーム全体の2位である。

また、セリエA全体で見てもアタッカータイプの選手の中ではフェリペ・アンデルソン(ラツィオ)、サーレマーケルスミラン)、カプラーリ(ヴェローナ)の3人に次いで第4位である。

ラスパドーリよりも高い数値を出している3人が所属するチームはハイプレス志向もしくはマンツーマン志向である一方、今季のサッスオーロはミドルプレスを採用していて、前線から激しいプレスをかけるチームではない。

〈アタッキングサードでのタックル数〉

これらを考えれば、個人戦術レベルでラスパドーリのボールを奪う能力が非常に高いことがよくわかる。

5大リーグのFWの中で比較したときのラスパドーリの守備スタッツのパーセンタイル(計測値の分布を小さい数字から大きい数字に並べパーセント表示することで、該当のデータがどこに位置するかを示す指標。単純化して言えば、数値が大きいほど比較対象の中で優れたデータであるということを表している)。FBref.comより。

特に優れていると感じるのは予測力。相手がパスを出してくる瞬間にスッとコースに入ってカットしたり、相手がトラップする方向を読んでボールをつついたりといったプレーが得意で、フィジカルに劣っていてもボールを奪えることを証明している。

 

↓ ラスパドーリのインターセプトから生まれた得点

 

まとめると、

  • 動きを連続させながらパスコースを作り出し、
  • ボールを受ければシンプルなプレーで味方と連携し、
  • 両足にハイレベルなテクニックを装備し、
  • ゴール前では絶妙なワンタッチで狭いスペースでもフリーになれ、
  • 決定力が高く、
  • 守備での貢献度も極めて高い

フィジカルに劣っていても、それをテクニックやインテリジェンスで十分補えることを証明し続けているラスパドーリ。小学生によく見てお手本にしてほしい、そんなプレーヤーである。




ラスパドーリの伸びしろ

それでは、そんなラスパドーリの伸びしろはどこにあるのか。

個人的には、フィジカル的な制約の都合上、またそれ以外の能力の完成度の高さから、選手個人としての伸びしろはそこまで大きくは残っていないんじゃないかと思っている。あえて挙げるならば、先ほどちらっと触れたミドルシュートの精度くらいだろうか。

となってくると、あとはどのような戦術的文脈に置かれるかが大きいような気がする。器用ゆえどのポジション、どのタスクでもそつなくこなしてしまうラスパドーリだが。ひとつ軸になるスタイルが欲しいところだ。

昨季にブレイクした際は1トップの位置から自由に動き回る偽9番的なスタイルだったラスパドーリ。今季はスカマッカの1トップ定着を受けて2列目でプレーしているが、その本質に大きな違いはない。この路線を継続していくなら、プレーエリアの広さとテクニックを武器とするチャンスメーカー兼ゴールゲッターとして大成していくだろう。

あるいは、1トップで起用されてよりゴール前での駆け引きに集中させるなら、将来的にはアグエロのようなストライカーになっている可能性もあるだろう。

守備能力の高さやプレースタイルを考えると、ボールポゼッションを高められるチームでなら中盤3センターの一角でプレーさせても面白いのではないかと個人的に思っているが…。

いずれにせよ、今後2、3年でどのような環境で、どのような戦術的文脈に置かれるかが彼のプレースタイルを定めていくことになるはずだ。




あとがき

昨シーズンにブレイクして以降、ラスパドーリには移籍の噂が付きまとっている。中でも移籍先候補として頻繁に名前が挙がっているインテルは、前線・中盤が流動的にポジションを入れ替わりつつ攻撃を組み立てていく戦術を採用していて(詳しくはインテルの攻撃戦術 徹底詳解を参照)、動的なスタイルでこそ真価を発揮するラスパドーリとの相性は抜群なはずだ。

ラスパドーリ本人もインテリスタであることが知られており、相思相愛な状況。ぜひ実現してほしい移籍だ。

いずれにしても、次の移籍先にどこを選ぶかはキャリアを左右する分岐点になるだろう。昨年にデビューしたアッズーリでの地位確立も待たれるだけに、彼のこれからのキャリアは要注目だ。

 

 

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