【発展途上の攻撃サッカー】インテルの戦術を徹底詳解!(攻撃編)

【発展途上の攻撃サッカー】インテルの戦術を徹底詳解!(攻撃編)

2021年11月21日 0 投稿者: マツシタ
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昨シーズン、実に11年ぶりのスクデットに輝いたインテル。しかしながら、チームの核であったエースFWロメル・ルカクと指揮官アントニオ・コンテが退団。実質的に新たなチーム作りを求められる状況で新シーズンに入っている。

ゴール数、アシスト数ともにリーグトップだったルカクが退団したこともあって攻撃力低下が不安視されていたインテルだが、ふたを開けてみればここまで12試合で

  • 29ゴール(セリエA最多
  • 決定機創出数 42(セリエA最多

最多得点だけでなく、決定機の数が2位アタランタの33を大きく突き放してダントツトップ。内容も伴ったリーグ屈指の破壊力を見せつけている。

今回は、そんな新生インテルの攻撃について、昨季との違いも交えながら徹底的に掘り下げていきたい。

 

 

主力メンバー




昨シーズンをざっと復習

昨季のインテルがルカクを中心に戦術を組み立てていたことは言うまでもない。

爆発的なダッシュ力と安定したポストプレーを武器とするルカクを活かすため、インテルはカウンターを攻撃の軸において戦術を構築。低めにブロックを構えて守備を安定させるとともに、ボールを奪った時にはオープンスペースでルカクに勝負させる、もしくはルカクのポストプレーを活用しながら快速のハキミがサポートして鋭いカウンターを繰り出し猛威を振るっていた。

ロメル・ルカクのプレースタイル解説も参照

 

下は20-21リーグ戦2度目のミラノダービーのハイライトだ。

最初のシーンはルカクのポスト→ハキミの飛び出し、続く2つのシーンはルカクのオープンスペースでの爆走の典型的な場面。これが昨季インテルがメインに据えていた攻撃パターンである。

 

このカウンターにおいて中心的な役割を担っていたルカクとハキミがそろって退団。これを受けて、インテルは攻撃を再構築する必要性に迫られたのだった。




ビルドアップ

 

ジェコを活かすための組み立て

コンテはルカクを軸に攻撃を組み立てたが、シモーネ・インザーギは誰を中心に考えているのか。

それはジェコだと思う。

ルカクに代わる前線の核として獲得された35歳のベテランストライカーこそ、シモーネインテルの基準点だ。

 

それでは、彼はどのような特徴を持つストライカーなのか。詳しくはジェコのプレースタイルを詳しく解説した前回の記事を参照してもらうとして、ここでは要点だけを抜き出してみよう。

  • 行動範囲が広く、中盤に降りてきて攻撃の起点となる
  • 相手を抑え込んでキープするよりも、ワンタッチフリックや味方との連携を得意とする
  • 自ら前を向けば的確な配球で最終ラインと前線をつなぐ司令塔としても機能する
  • スピードはあまりなく、オープンスペースでの勝負は得意ではない

つまり、ルカクとジェコの違いをまとめるとこうなる。

  1. ルカクが自分の前方にスペースを必要とするのに対し、ジェコは自分の手前にスペースを必要とする
  2. 前を向いたときにルカクは単独で仕掛けるのが得意なのに対し、ジェコは味方を使うのが得意
  3. ルカクは単独で時間を作れるのに対し、ジェコには素早いサポートが必要になる

この違いを前提にすれば、今季のインテルを理解しやすくなる。




中央ルート重視の前進

シモーネインテルが志向するのは外枠を作ったうえで、その枠の中を動かすこと。多くの選手が流動的に連携しながら縦のポジションチェンジを繰り返し、相手を混乱に陥れる。

インテルのビルドアップ時基本配置。3バックとWBの5枚で外枠を作り、その中で中盤3枚と2トップの5枚が縦に入れ替わりながら連携する(※ただしラウタロは前線にとどまることが多く、ジェコは頻繁に中盤に引いてくる)。

直近のミラノダービー(21-22セリエA第12節)における攻撃時の平均ポジション。先ほど説明したことがよくわかる配置になっているんじゃないだろうか。

外枠を作って中盤を空洞化させるのは、ジェコの特性「自分の手前にスペースを必要とする」を考えれば納得がいく。ダイナミックに動きながらスペースで受けることを好むジェコを活かすため、彼が降りてくるためのスペースを提供する。最終ラインからジェコの足元に当てながら、中央ルートで前進していくのがインテルの狙いだ。

実際にジェコのボールタッチ数がファイナルサードよりもミドルサードで多くなっていることをジェコのプレースタイル解説で紹介した通りである。

セリエA公式より、左から第1節~第3節までのインテルのボールタッチエリア。

セリエA公式より、左から第4節~第6節までのインテルのボールタッチエリア。

このように、今季のインテルは中央エリアでのボールタッチが多くなっている。外枠を作ってその中から進軍するという狙いをよく表しているといえる。

 

そして、ジェコが中盤に引いてくる動きは縦のポジションチェンジのトリガーにもなる。ジェコが引いてくることで今度は前線にスペースができる。ここに中盤から、サイドからどんどん人が飛び出していくことで人数をかけ、迫力ある攻撃につなげていく。リーグ最多の攻撃力の源泉も、前線への選手投入量の多さが要因の一つになっている。

また、前線に選手を動員することはジェコの特性ともマッチしている。ダイレクトでのポストプレーを得意とするジェコに選択肢を提供すること、前を向いたときには多くのパスコースを用意することが目的なのではないか。

 

↓ ジェコのボールタッチ集。少ないタッチでのパスが多いことがよくわかると思う。

 

それでは、実際の試合画像で確認してみよう。

この場面のように、WBは早い段階でワイド深い位置をとって幅と深みを確保する。2トップよりも高い位置にポジションしていることも少なくない。そうしたうえで2トップが引いて中央にスペースを作り出す。ここに3人目の選手が飛び込んでいくのが狙いだ。

このスペースに飛び込む人数の多さが破壊力ある攻撃の源泉になっている。クロスボールに詰めたり、ゴール前の混戦からプッシュしたりといったゴールパターンは多い。また、ジェコの配給力を生かすという意味でもジェコの前に多くの選手を動員するのは合理的。彼がサイドに正確なフィードを届ける場面は多い。これはルカクにはなかった魅力だ。

 

このように、中盤~前線に流動性を持たせることがシモーネインテルのキーになっている。それを担保するため、インザーギは「誰かがポジションを離れたら、誰かが埋めなさい」というプレー原則を採用している。

つまり、誰かがポジションを離れたら、そこにほかの選手が入ってくる。さらにその選手が空けたところに誰かが入ってきて…という動きを繰り返すことで、立っている選手は変わるけれども、チーム全体としての配置バランスは変わらない。秩序を保ちつつ流動性を出すための原則である。これを「立ち位置の分解と復元」と呼んでいる。

この場面でも各選手は持ち場を離れている(分解)が、全体としてのバランスは担保されている(復元)。選手は動いてもチーム全体では秩序を保つことがインザーギの理想であるはずだ。

 

ビルドアップの構造変化はなぜ起こった?

流動的な配置転換で相手につかまりにくく、前線に人数をかけて破壊力も抜群。インテルの攻撃は完ぺきに見える。

しかし、実際にはハイプレスにはめられて苦しむ展開が多くみられている。なぜなのか。

 

それを探る前に、昨シーズンのインテルのビルドアップを復習してみよう。

昨シーズン終盤のインテルのビルドアップの形。最終ラインとGKが低い位置に4バックを構えた上で、近い位置でブロゾビッチとエリクセンがサポートする。ポイントはブロゾビッチとエリクセンがダブルボランチになっていることだ。

相手のトップ下がブロゾビッチのマークを優先したため、空いたエリクセンがボールを受けてロングフィードを送り、前進に成功した。

他の試合でもエリクセンはブロゾビッチと横並びになり、ピッチの左右を分担している。

 

一方、今シーズンはビルドアップの陣形が変化している。

今季はブロゾビッチがワンアンカーで最終ライン前にポジションする形がデフォルトだ。掲載した3枚の画像はいずれもブロゾビッチのところでボールロストした場面である。

そう、ビルドアップ時に最終ラインの前にポジションしているMFの数が1枚減ったのである。なぜなのか。

ここで注目したいのがジェコとルカクの違い。

ルカクは強靭なフィジカルを活かしたボールキープで味方が上がってくるための時間を作り出すことができる上、前を向けば独力でフィニッシュまで持っていってしまえる。ゆえに前線に多くの選手を送り込むよりも人数を絞ってスペースを空けておき、その分後方に人数をかけてビルドアップを安定させることが最適解になるだろう。

一方、ジェコは止まった状態で相手を背負い味方が上がってくるための時間を作るよりも、中盤にスペースを見つけて降りて来ながら、ダイレクトパスなど味方との連携によってボールをさばくことを得意とする。また、自ら前を向いても単独で仕掛けるプレーは得意としておらず、代わりにパスを配って味方を活かすプレーが巧みだ。ゆえに、前線に人数をかけてジェコと近い距離で連携できる状態を作り出すと同時に、ジェコが降りてくるためのスペースを広げることが求められる。

ルカクは前方に、ジェコは手前にスペースを必要とする

ルカクはスペースを、ジェコは選択肢を必要とする

エースの特性の違いがビルドアップの陣形の変化につながっているんじゃないだろうか。単にエリクセンからチャルハノールへと選手が入れ替わったという属人的な問題というよりも、ここまで説明したようなチームとしての構造そのものの変化によるものと考えている。




立ち位置の分解・復元原則によるデメリット

しかしながら、この構造変化がビルドアップにはめられやすい原因にもなっている。中盤のワンアンカー化によって相手はブロゾビッチに狙いがつけやすくなったのだ。

そして「立ち位置の分解と復元」原則を忠実に機能させる場合、

  • 分解する選手と復元する選手の役割をはっきりさせる必要がある

ということに注目したい。

もし隣り合う2人が同時に分解を行った場合、それを埋め合わせる選手がいなくなってチームとしてのバランスは崩れてしまう。ゆえに、それなりの練度とルール付けが必要になってくる。

というわけで、シモーネは分解役をある程度決めているように見える。1人目がジェコ、2人目がブロゾビッチである。

中盤をエリクセンと二分したコンテ政権時と違って、ブロゾビッチにはさらに広範囲への移動が許可されている印象だ。

そのため、彼は厳しくマークされるとマークがゆるい最終ラインに降りる。この動きはのボールを触れていいように見えるが、ロングフィードよりも20~30mの鋭く低いくさびを最も得意とするブロゾビッチにとって、前線との距離が開くことはあまり好ましいこととは言えないだろう。

そして、空いたアンカーのところにはインサイドハーフのいずれか(主にバレッラではない方)を前方から降ろすことで埋め合わせるメカニズムなため、相手DFからすればその動きについて行く形で前方向に勢いを持ってプレスに行ける、ということになる。

 

もうひとつ、ハイプレスにはめられていた要因がある。月並みな表現をしてしまうと練度が低かったからだ。

シーズン開幕当初のインテルはブロゾビッチが降りているのにチャルハノールもバレッラも縦に飛び出して3人とも分解役になってしまう場面が散見されていた。誰が分解してだれが復元するかという役割分担のバランスが取れず、チームとしてのバランスが瓦解してしまう場面が多くみられたのだ。

サッスオーロ戦の失点シーン。ワイドに開いたバレッラの近くにサポートはなく、孤立した状態で挟み込まれてしまっている。シュクリニアルのポジショニングにも問題はあるが、それ以上にバレッラのポジションが復元されていないことが問題だ。

 

昨季は後方に選択肢が多かったうえ、前に重心をかけてくればオープンスペースに無類の強さを発揮できるルカクをのど元につきつけられた。

対して、ジェコとラウタロはスピード勝負でぶっちぎれるほどのスプリント力はないので、相手からしても勇気を持って前に出て行けるのはずだ。

ゆえに、今季のインテルはハイプレスに来る相手を外せるか、外せないかで勝負する試合展開になる。チーム構造上、そうなっている。そして、練度不足によって相手のプレスを回避できない場面が多くなっていた。これがインテルの状況だったのではないかと思う。

 

それでもなんとか誤魔化せていたのは、ひとえにジェコの能力の高さによると考える。

先ほどと同じように左サイドに選択肢がない状況。タイミングよくジェコが降りてきてワンタッチでフリック、相手のプレスを無効化している。ちなみに、先ほどのサッスオーロ戦の場面ではジェコはベンチにいた。彼がいれば気を利かせてパスコースを作ってくれていたかもしれない。

多少の連携不足でぽっかりとスペースができても、降りる場所を把握しタイミングの感覚にも優れるジェコがいれば、それは彼のためのスペースにしてしまえる。しかし、そのジェコがいなくなると中央に選択肢を生み出せなくなってしまう

それは、データにも明確に表れている。

セリエA公式より、ジェコが後半まで出場しなかったサッスオーロ戦とエンポリ戦のボールタッチエリア。自陣では中央エリアでのボールタッチが多いのに対し、ハーフウェーラインを越えるとサイドでのボールタッチが多くなっているのがわかる。セリエA公式サイトより。

このように、ジェコがいないと中央エリアにボールが入る頻度が減っているのだ。

外枠を作ってもその中に適切なパスコースが見いだせなければ、外枠に添ってボールを動かすしかない。単純な話である。

 

「立ち位置の分解と復元」原則を忠実に守ると、元決めたワンアンカーが維持されることになる。それでは昨季のように完全にダブルボランチにしてしまうかというと、ジェコへ提供する選択肢が削られてしまう。なかなかにこの問題は根深い。

 

しかしながら、徐々にジェコへの依存度は落ちてきていると思う。単純に試合を重ねることで練度が上がってきたことが大きいだろう。ジェコ以外の選手が分解と復元の原則を消化し、彼がいなくても適切なコースが見いだせるようになってきたのだ。

という意味で、今夜のナポリ戦はひとつの試金石になるだろう。ナポリはリーグ屈指の完成度を誇るプレッシングチーム。こことどれだけやりあえるかで、インテルの現在地がわかるはずだ。プレスvsビルドアップの観点から、注目してみてほしい対決だ。

 




フィニッシュ

 

昨季からの変化

さて、ビルドアップによって相手のプレスを外せば、そこからは相手ゴールをいかに攻略するかに焦点が当たる。インテルはいかにフィニッシュに持ち込み、得点を量産しているのか。

インテルの攻撃の流れをおおまかに分解すると、

中央から前進サイドに散らして最後のひと崩し→もう一度中に入れて仕留める

といった感じ。FBref.comによると、

  • クロス総数 166(セリエA2位
  • ペナルティエリア内へのクロス成功数 41(セリエAトップ

サイド、特にペナルティエリア外からのチャンスメイクの割合が高いことが裏付けられている。

というわけで、フィニッシュの一歩手前ではサイドが主戦場になる。

ここで、今季と昨季の攻撃方向について見てみよう。

SofaScore.comより、20-21シーズン第30節から優勝が決まった第34節までの5試合の攻撃方向とプレーエリア。見やすいように順番は並び替えてある。 どちらかというと右サイドでのプレーが多くなっている。

同じくSofaScore.comより、今シーズンの第5節から第9節までの5試合の攻撃方向とプレーエリア。見やすいように順番は入れ替えてある。 今季はミドルサードより前に関しては左サイドでのプレーが多くなっていることがわかる。

この変化の恩恵を受け、全盛期の輝きを取り戻しているのがペリシッチだ。

 

  • アタッキングサードでの1試合平均ボールタッチ数 14.6→18.8
  • 1試合平均ドリブル総数 0.8→2.6
  • ドリブル成功率 38.9%→73.3%

※今季→昨季。ドリブルとは突破を意図した仕掛けのドリブルのこと。運ぶドリブルとは区別している。

 

このように、アタッキングサードでのボールタッチ数がおよそ30%増え、ドリブルで仕掛ける回数・成功率はともに飛躍的な上昇を見せている。

先述のように、シモーネはWBに対して早い段階で高い位置に進出し、幅と深みを確保するタスクを課している。そしてチームは中央からビルドアップし、最後の局面でペリシッチの元にボールが回ってくる。そこから仕掛け、決定機を作り出すことが求められる。

つまり、守備時のポジションはWBながら攻撃時に求められている仕事はWGのそれなのである。本来WGのペリシッチが存分に持ち味を発揮するのは当然の帰結だ。

彼の好調っぷりがインテルの攻撃力を支えている。

 

一方、右のダルミアンとダンフリースはオンザボールでの選択肢が多い選手ではなく、ダルミアンはカットインしてゴールに向かうランニングで、ダンフリースは逆サイドからのクロスボールのターゲットとしてチャンスに絡んでいる。

というわけで、右からの攻撃の全権を担っているのがバレッラ

  • アシスト数 5(セリエAトップ
  • 決定機創出数 9(セリエAトップ

といまやリーグ屈指のチャンスメーカーだ。昨季全体を通してのインテルの決定機創出数トップはルカクの10だったことを考えると、いかにハイペースでチャンスを作り出しているかがわかる。

  • 1試合平均キーパス数 1.8(リーグ内10位)

という数字は決して多いものではなく(チームメイトのチャルハノールよりも少ない)、少ない機会を確実にチャンスに結びつけていることがわかる。特に高精度のクロスボールは圧巻だ。

左右両サイドから質が高いラストパスが入ってくる。これが今季のインテルの怖さである。




ディマルコがキーマンに

さらに、インテルにとって大きな得点源になっているのがセットプレーだ。

ゴール前でターゲットになるのはシュクリニアル世界でも屈指のパワーヘッダーである彼に合わせるシンプルな形が多いものの、それでチャンスを作れてしまうのだから活用しない手はない。

彼に合わせるキッカーを務めるのは新加入のふたり、ハカン・チャルハノールとフェデリコ・ディマルコ。特にディマルコのキックの質は非常に高い。精度・スピードともに抜群で、セリエAでも最高クラスのプレースキッカーと言っていいのではないだろうか。

 

↓ ディマルコのコーナーキックにシュクリニアルが合わせて決めた得点

 

さらに、ディマルコは得点が欲しい時のスクランブルアタックでもキーマンとなっている。

後半、得点が欲しいタイミングでシモーネがよく行うのがディマルコ、ダンフリース、ベシーノの3点セット投入。ディマルコを3バックの左に入れて攻撃参加させることでペリシッチをサポートさせる。さらに、ベシーノを右に入れることでバレッラも左に回す。ペリシッチ、ディマルコ、バレッラの3枚で連携し、ポケットへの侵入もしくはアウトサイドからクロス爆撃を浴びせる。

ここらへんはシモーネがラツィオで採用していた遅攻のデザインである。左でルリッチ、ラドゥ、ルイス・アルベルト、コレアらに連携させ、ミリンコビッチ=サビッチがゴール前に飛び込んでくる形だ。

違うポイントとしては、インテルにはミリンコビッチ=サビッチ役が何人もいること。ダンフリース、ベシーノはともに長身で空中戦に強く、ジェコも加えた3枚のハイタワーがゴール前で構えているため火力はかなりのものだ。

 

↓ 左に回ったバレッラのクロスにベシーノが飛び込むシーン。ジェコ、ダンフリースもファーサイドに構える。

 

だが、それ以上に効いているのがディマルコのゴール方向へのダイアゴナルランだ。左ワイドにバレッラ&ペリシッチ、ファーサイドに3枚のハイタワーと構えられると相手の守備陣形はこの2つのかたまりに引っ張られて分断される。それによってできたギャップを見つけ、後方から侵入するのがディマルコだ。

内外の使い分けが絶妙で、オンザボールだけでなくオフザボールでも相手を崩せるここまでの攻撃センスを持ったDFは稀有な存在だといえるだろう。

 

↓ ハーフスペースにぽっかりとできたギャップに飛び込みゴールを演出したディマルコ。

 

セットプレー、スクランブルアタックともにキーマンとなっているディマルコ。彼が質が高いチャンスを作り出していることはデータも裏付けていて、

 

  • 90分あたりアシスト期待値 0.41(セリエA2位
  • ペナルティエリア内へのクロス 7(セリエA7位
  • 90分あたりSCA 4.95(セリエA5位

※SCA=Shot-Creating Action。シュートにつながったアクション(パス、シュート、、守備アクション、被ファウル等)を合計したもの。FBref.comより。

 

と、途中出場メインながら短時間で多くのチャンスを作っていることがわかる。

流れを変えられる切り札として躍動するディマルコ。彼の存在もまたインテルの攻撃の破壊力をもたらしている。




あとがき

思えばインザーギはラツィオ時代にもストライカーを基準にして戦術を組み立てていた。大エース、チーロ・インモービレである。

ルカクほどではないにしろ、インモービレもオープンスペースへの飛び出しを得意としている。これを活かすため、重心を落として守りつつ、ボールを奪えばルイス・アルベルトというリーグ屈指のパサーとの黄金ルートで猛威を振るっていた。

昨季のラツィオと今季のインテルではベクトルが違うチームを作り上げているシモーネ・インザーギだが、チームのタレントを最大限活用する形でチームを組み立てようというアプローチには変わりないのではないだろうか。そして、その基準点にストライカーを置いている、というのが私の解釈。本当のところはわかりません、とお断りしておく。

 

今回は攻撃に焦点を絞って話を進めてきた。インテルの守備についても機会をみて記事にまとめたいと思っているので、しばらくお待ちいただきたい。

 

 

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