【ヴェネツィアを支配する野人】ジャンルカ・ブシオのプレースタイルを徹底解剖!

【ヴェネツィアを支配する野人】ジャンルカ・ブシオのプレースタイルを徹底解剖!

2021年11月20日 0 投稿者: マツシタ
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昇格プレーオフを勝ち抜いて実に20年ぶりのセリエAを戦っているヴェネツィアFC。大量補強によってチームをほぼ総入れ替えした未知数なチームは、ここまで残留圏内の15位と奮闘している。

チームが大きく入れ替わっただけあって、ザネッティ監督は試行錯誤を続けている印象。ここまで実に30人の選手がリーグ戦に出場している。ちゃんと調べてはいないが、リーグ最多に近い数字のはずだ。

そんなヴェネツィアにあって、先発出場を続ける選手がいる。今夏の新加入選手のひとり、19歳のアメリカ代表MFジャンルカ・ブシオだ。

 

19歳には思えぬ貫録を漂わせるブシオは、外見だけでなくキャリアも早熟。2017年8月25日にスポルティング・カンザスシティに加入。2004年以降最年少でMLSクラブと契約した選手になった。翌年4月4日には早速プロデビューを果たす。当時16歳である。

その後高校生年代にしてクラブの主力に定着していったブシオは、2021年7月に行われたゴールドカップ(北中米カリブ海王者を決める大会)でアメリカA代表にサプライズ招集。そればかりか大会中にレギュラーポジションを奪取し全6試合に出場、アメリカの優勝に大きく貢献したのである。

勢いそのままゴールドカップ優勝の1週間後にはセリエAのヴェネツィア移籍が公式発表に。合流が遅れた影響で開幕戦は出場が叶わなかったものの、以降の試合では全試合に先発出場中である。

試合によって選手が大きく入れ替わるヴェネツィアにあって、絶対に欠かせない中核となっているのだ。まさに飛ぶ鳥を落とす勢いである。

近年有望な若手選手を多数輩出しているアメリカだが、その中でも特に将来を嘱望されているブシオ。今回は、彼のプレースタイルについて徹底的に掘り下げていこうと思う。




プレースタイル

 

プレーエリアの広さとボール奪取力

非常に多彩な能力を持っているブシオなのだが、そのすべての根幹にあるのは豊富なスタミナとそれを活かした運動量の多さ、カバーエリアの広さだ。

  • 1試合平均走行距離 10.987km(チーム内トップセリエA12位

2021年シーズンのMLSにおけるブシオのヒートマップ。ペナルティエリア間のほぼ全域をカバーしていることがわかる。SofaScore.comより。

この走力を活かし、中盤を幅広く動いてボールハントを敢行する。FBref.comより守備に関するスタッツを見てみると、

  • タックル総数 30(セリエA6位
  • タックル勝利数 22(セリエA4位
  • プレッシャー総数 211(セリエA7位
  • ブロック総数 31(セリエAトップ

軒並みセリエAトップ10にランクインしている。

特に注目すべきは読みの良さだ。相手がどこにパスを出してくるか、どの方向にトラップするかを読んだうえで先回りし、危険なスペースやコースを未然に消せる。ブロック数がセリエA最多になっているのも、彼のポジショニングの良さを表していると思う。

媒体によって169cm、170cm、172cmとばらばらに表記されているブシオの身長だが、彼が小柄な選手だということは間違いない。それでいて

  • 空中戦勝率 51.5%(FBref.comより)

と決して空中戦に弱くないのも、読みを活かして落下地点を先に確保できていることが大きいのだ。

 

もちろん守備技術も高い。特にうまいのがボールのつつき方。相手とボールが離れた瞬間を見逃さずにボールだけを的確につつき、ルーズボールになったところを持ち前の機動力で相手に先んじて回収する。

小柄ながらボールを奪えるのは、無駄なデュエルを避けつつボールを奪う守備テクニックを備えているゆえだ。

 

各守備アクションをプレーエリアごとに見てみると、ディフェンシブサードでのアクション数が多くなっている。

  • ディフェンシブサードでのタックル数 19(チーム内トップ
  • ディフェンシブサードでのプレッシャー数 89(チーム内トップ
  • シュートブロック数 9(チーム内2位

実際に試合を見ていても、相手にシュートを打たれる瀬戸際のところでブシオが攻撃を止めている場面はとても多い。機動力と危機察知能力を活かし、最終ラインの前で奮闘する彼がいなければヴェネツィアはより多くの失点を喫していたはずだ。

ミドルサードでのプレッシング数も

でトップとなっていて、プレッシングにおいても重要な役割を果たしていることがわかる。

高い位置でのプレッシングから中盤でのボールハント、ゴール前での跳ね返しまで、守備のあらゆる局面で貢献できるクオリティを備えているブシオ。非常に頼もしい選手だ。




組み立て能力も非常に高い

ヴェネツィアでは守備能力の高さが際立っているブシオだが、彼は本来は攻撃的な選手だ。カンザスシティ所属時には左サイドハーフとしてプレーしていたシーズンもあり、そこから中盤にコンバートされている。

ゆえに基礎的なテクニックレベルが高く、攻撃面での貢献度も高いのだ。

 

  • パス総数 445(チーム内2位
  • ショートパス成功数 129(チーム内2位
  • ミディアムパス成功数 179(チーム内2位
  • ロングパス成功数 59(チーム内2位
  • サイドチェンジ総数 16(チーム内トップ

※ショートパスは5~15ヤードのパス、ミディアムパスは15~30ヤードのパス、ロングパスは30ヤード以上のパス。FBref.comより。

 

ブシオがヴェネツィアのビルドアップを指揮する選手であることがよくわかる。

秀逸なのは動きながら試合を組み立てるプレーだ。短いパスをさばいては動き直し、いい状態を作って前を向いて浮き球のスルーパスやサイドチェンジを供給、局面を変える。最近流行の動的レジスタだ。

21-22シーズンのヴェネツィアにおけるブシオのヒートマップ。最終ライン付近に加えて、左サイドで多くのボールを触っていることがわかる。

ヴェネツィアというチーム自体が左サイドからのビルドアップを重視しているのだが、ここにおいてブシオはキーマンだ。中盤の位置からCBの間、CBの脇、SBとWGの間などに適宜動いてボールを中継し、ビルドアップを円滑にするのである。

さらに、シンプルな散らしで中継地点となるだけでなく、チャンスと見れば積極的に縦パスを供給して局面を変えられるのもブシオの素晴らしいところ。

  • 縦パス総数 28(チーム内2位
  • パスによるファイナルサードへの侵入 25(チーム内2位
  • パスによるペナルティエリアへの侵入 7(チーム内2位

とブシオのパスが局面を進めていることはデータにもしっかりと表れてきている。

結果として

  • 決定機創出数 3(チーム内2位タイ
  • キーパス総数 10(チーム内2位

とチーム屈指のチャンスメーカーになっていることも納得だ。

 

↓ ワイドに開いた位置からスルーパスを供給し得点を演出したシーン。




攻撃の最終局面に絡めるクオリティも

ブシオのチャンスクリエイトについて、より詳細に見てみよう。FBref.comのシュートクリエイティングアクションという指標(シュートにつながったパスやドリブル、被ファウル、守備アクション等)を見てみると、

  • シュートクリエイティングアクション 20(チーム内トップ

とチームトップとなっている。その内訳は

  • 13 流れの中でのパス
  • 6 セットプレー
  • 1 守備アクション

となっていて、セットプレーからも多くのチャンスを作っていることがわかる。

キックの精度にも定評があるブシオはMLS時代には直接フリーキックも決めており、セットプレーでも要注目の選手だ。

 

↓ フリーキックから得点をアシストしたシーン。

 

さらに、ブシオは持ち前の推進力を活かしドリブルでボールを前進させたり、ゴール前に顔を出してフィニッシュに絡んだりすることも可能だ。

  • キャリー総数 348(チーム内2位
  • キャリーによるファイナルサードへの侵入 16(チーム内トップ

MLSでは4シーズンで7ゴール。毎シーズン得点を挙げていて、コンスタントに結果を残しているのも頼もしいところだ。

 

↓ すでにカリアリ戦でセリエA初ゴールを奪っている。

 

まとめると、

  • 豊富な運動量を持ち、
  • 読みと守備技術の高さを活かしてボールを刈りまくり、
  • 動きながら長短のパスで攻撃を組み立てる動的なレジスタであり、
  • ラストパスやフィニッシュなど崩しの局面での貢献度も高く、
  • 守備的なMFからサイドハーフまでこなす万能戦士でもある

万能MFであるブシオ。これといって大きな弱点が見当たらず、19歳にしてこの完成度の高さは驚異的である。今後の伸び次第では世界に名をとどろかせるようなプレーヤーになってもおかしくないのではないだろうか。




伸びしろ

目立った弱点はなさそうなブシオだが、その中であえて伸びしろを上げるとしたらフィニッシュの精度だろう。

FBref.comよりMLS時代の4シーズンのゴール期待値と実得点、その差を累計してみると、

  • MLS時代の通算ゴール数 7
  • MLS時代の通算ゴール期待値 9.3
  • MLS時代の通算ゴール数と通算ゴール期待値の差 -2.3

と期待値を得点が下回る結果となっている。つまり、もっとゴールを決めていておかしくないということだ。

 

↓ ジェノア戦のシュートミスのシーン

 

せっかくフィニッシュに絡めるだけの身体的条件に恵まれているので、最後の精度を上げていきたい。ここが仕上がってくれば、守備的なタスクをこなしながら毎シーズン複数得点を期待できる、ユベントス時代のビダルのような選手に進化する可能性もあるのではないだろうか。

さらなる成長に期待したいところだ。

 

あとがき

ブシオに似ている選手って誰なんだろう、と考えていた時、ふと一人の選手が思い浮かんだ。エンゴロ・カンテである。世界でも最高クラスのMFとして地位を確立しているこのフランス代表とブシオは似ていると思う。豊富な運動量、小柄ながらボールを奪えるところ、攻撃での貢献度も高いこと…。

思えば、若き日のカンテもサイドアタッカーとしてプレーしていた。そこからセントラルMFにコンバートされ、中盤の全エリアをカバーしつつボールハントからフィニッシュまでこなす万能なプレーヤーとして大成している。

ブシオもその領域に到達するだけの素質が十分にあると思う。それが実現するかどうかは、彼が適切な環境にステップアップしてさらに成長しつつ、タイトルを獲得していけるかどうかにかかっている。

ブシオがどのようなキャリアを描いて行くか注目だ。