【いぶし銀ファンタジスタ】アントニオ・カンドレーバのプレースタイルを徹底解剖!

【いぶし銀ファンタジスタ】アントニオ・カンドレーバのプレースタイルを徹底解剖!

2021年10月8日 1 投稿者: マツシタ
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セリエAを見るうえでの醍醐味のひとつがベテランプレーヤーの活躍だ。

通常、ビッグクラブでのキャリアを終えた選手は5大リーグ以外のクラブ(中東やMLS、中国など)に移籍することが通例になってきている。ヨーロッパ以外の大陸へ移籍することも多い。

セリエAではそうした選手がプロビンチャへ加入することが多い。もう終わったかと思われたベテランが経験を活かしたプレーでもう一花咲かせる。チームを引っ張るリーダーとして成熟する。そうした姿を見ると、昔の姿を知っているファンからすればうれしいものだ。

そんな「いけオジ」たちが今季も多く活躍するセリエAだが、その中でも今一番アツいいけオジがアントニオ・カンドレーバだ。サンプドリアで活躍する34歳の右サイドアタッカーである。

 

セリエBのテルナーナでデビューしたカンドレーバはウディネーゼへ移籍、そこから複数のクラブへのレンタルを経験したのちラツィオで4シーズン半、インテルで4シーズン主力として活躍。この8年半でリーグ戦合計275試合53ゴール48アシストの成績を残した。この間イタリア代表にも召集され続けたカンドレーバはイタリアを代表するアタッカーのひとりだったといえる。

そんなカンドレーバがプロビンチャへ舞い戻ったのが20-21シーズン。インテルからサンプドリアへとレンタルされた。そして今シーズンは完全移籍へ移行、正式にサンプドリアの選手になるとここまで全試合にフル出場し3ゴール2アシストと絶好調。ラツィオ、インテル時代を超える全盛期を迎えそうな様相を呈しているのだ。

今回は、そんなカンドレーバのプレースタイルについて徹底的に掘り下げていこうと思う。




 

カンドレーバのプレースタイル

 

低い位置に引いてきてゲームメイク

サンプドリアにおいてのカンドレーバはいまや絶対的な存在だ。サンプの選手たちはまずカンドレーバを探している印象で、チームとしてできるだけ早く彼にボールを預けようとしている印象を受ける。

こちらは4節終了時点のサンプドリアの1試合平均パス回数。トップにカンドレーバがランクインしている。通常このランキングの上位にはCBもしくはセントラルMFが入る。サイドハーフのカンドレーバがトップになっているのは極めて特殊な事例だといえる。SofaScore.comより。

また最新のデータを見てもこの傾向は変わっていない。 ※以下のデータはすべてFBref.comより引用。

  • ボールタッチ総数 492(チーム内1位
  • パス成功総数 273(チーム内1位

 

サンプドリアが右サイドを中心に縦に速いビルドアップを行うことは以前にも紹介した通りだ(詳しくはサンプドリアの攻撃戦術 徹底詳解を参照)。その枠組みの中で、カンドレーバは低い位置に引いてきて足元にボールを引き出し、ビルドアップの出口となる。そこから長短のパスを配給してゲームを組み立てるのだ。

サンプドリアのビルドアップの典型的な場面。右サイド低い位置に降りてきてボールを受けたカンドレーバ。彼が前を向いた瞬間、前線の選手が一気に裏へのランニングを見せる(青の矢印)。ここへカンドレーバが配給し、攻撃を加速させる。

 

通常、縦方向のパスはそう簡単には通らないものだ。そのままタッチラインを割ってしまうことが多くなるし、DFからしても跳ね返しやすい。しかし、カンドレーバは卓越したキック技術と視野の広さ、戦術眼を兼ね備えている。だからこそ、タッチライン際から的確な配球で局面を前に進められる。

  • 前方へのパス成功総数 54(セリエA1位

縦パスの成功総数がセリエAでトップになっているのは特筆すべきデータだ。

 

チーム内のデータを見てみても、彼がボール前進で非常に重要な役割を担っていることがよくわかる。サンプドリアの組み立てにおいてカンドレーバは欠かせないのだ。

  • ファイナルサードへのパス成功総数 36(チーム内1位
  • ペナルティエリアへのパス成功総数 22(チーム内1位

 

↓ カンドレーバの縦パスが起点になって得点が生まれたシーン




ドリブルで局面を前に進める

相手にとってカンドレーバが厄介なのは、パスだけでなくドリブルでも局面を前に進められることだ。

パスの出どころであるカンドレーバをつぶそうと相手が前に出てくれば、それをひらりとかわして持ち運ぶ。

  • ドリブル総数(成功総数) 13(9)(いずれもチーム内2位

 

ちなみに、ここでのドリブルとは相手をかわそうとする仕掛けのドリブルのことだ。ということでみると、

  • ドリブル成功率 69.2%

という成功率は非常に高い数値だといえる。タッチがとても細かく、常に足元にボールを置いた状態を維持するため、対峙するDFにとっては非常に飛び込みにくいはずだ。事実、相手が足を出してきた瞬間にちょこんとボールを浮かせたり股を抜いたりしてかわす場面は多い。そこに細かいキックフェイントのようなフェイクを入れてくるのでたまったものではない。

 

↓ ドリブルで仕掛けながらタイミングをずらし、カプートへのアシストを決めた場面

 

仕掛けるドリブルだけでなく運ぶドリブルも一級品だ。この運ぶドリブル(相手をかわさないドリブル)を「キャリー」として、関連するデータを見てみよう。

  • キャリー成功総数 59(セリエA1位
  • キャリー成功総距離 1184ヤード(セリエA2位
  • キャリーによるファイナルサード侵入総数 27(セリエA1位

このように、カンドレーバはキャリーに関してのデータが軒並みセリエAトップクラスなのだ。カンドレーバはパスだけでなく、ドリブルによってもボールを多く前進させているということ。サンプドリアのビルドアップ(特にミドルサードからファイナルサードへのボール前進)において、そのすべてをカンドレーバが引き受けているといってもいい状態なのだ。




高精度のパスでゴールを演出

さらに、カンドレーバは組み立てだけでなく崩しの局面においても重要な役割を果たしている。

ここで注目すべきはキーパスについてのデータ。これがセリエAトップになっているのだ。

  • キーパス総数 19(セリエA1位

リーグ全体のパワーバランスの中で見ると、サンプドリアは決してトップグループにいるわけではない。その中でリーグ最多のキーパス数を残しているカンドレーバは突出したパフォーマンスを見せているといえる。リーグ屈指のチャンスメーカーだ。

 

それでは、カンドレーバはどのエリアからチャンスメイクをしているのだろうか。

ここで、もう一つキャリーについてのデータを見てみると、

  • キャリーによるペナルティエリアへの侵入総数 10(セリエA7位

となっている。ファイナルサードへの侵入数がセリエA最多である一方で、ペナルティエリアへの侵入数は相対的に少なくなっている。つまり、カンドレーバはペナルティエリアに侵入せず、その外から多くのチャンスを生み出しているのだ。具体的に言えば、タッチライン際を縦に持ち上がってからのクロスボールである。

実際にデータを見てみると、クロスボールの数がリーグトップになっている。

  • クロス総数 52(セリエA1位

 

ペナルティエリア外からのパスについて見ても、

  • ペナルティエリア内へのパス総数 22(セリエA1位
  • ペナルティエリア内へのクロスボール総数 8(セリエA1位

とセリエAトップの数字を記録している。

非常にキックの精度が高いカンドレーバはアウトサイドレーンからでも積極的にクロスボールを送り込む傾向にある。それを見越してサンプドリアはゴール前に多くの人数をかけるような原則になっている。チームとして彼のクロス精度を活かそうという意識が強くみられるのだ。

 

↓ アウトサイドレーンからのクロスで吉田の得点をアシストした場面




得点能力も高い

さらに、カンドレーバは自ら得点を奪うこともできる。

精度とパワーを兼ね備えた右足を持つカンドレーバはミドルシュートを得意としていて、遠距離からでも積極的に狙っていく

  • シュート総数 19(セリエA6位

とシュートの数がセリエAの中でもトップクラスに多くなっているのも、彼の自信の表れといえるだろう。

 

↓ エンポリ戦の得点

 

↓ ウディネーゼ戦の得点

 

また、逆サイドからクロスボールが入ってくるときのポジショニングも秀逸。相手の死角から侵入してパスが出てくるタイミングでマイナスの折り返しを受けられるポジションを取り、まんまと流しこむ。こうしたポジショニングセンスもカンドレーバの持ち味のひとつだ。

 

↓ ユベントス戦の得点

 

↓ ウディネーゼ戦でオウンゴールを誘発した場面

 

さて、ここまで見てきたことをまとめると、

  • 右サイド低い位置に降りてビルドアップの出口となり、
  • そこからパスを配給し組み立ての起点にもなり、
  • ドリブルで持ち上がることで局面を進めるプレーも得意で、
  • サイドからの高精度クロスを武器とするリーグ屈指のチャンスメーカーでもあり、
  • 自らの得点能力も高い

組み立てから崩し、さらにはフィニッシュまで攻撃の全局面で特大の貢献を見せるカンドレーバ。サンプの攻撃は彼がいなければ成り立たないくらいにカンドレーバを中心にしている。

基本的にはカンドレーバがいる右サイドで攻撃を完結させることが多いサンプドリア。相手を見て攻める場所を変える時も、その攻めたい場所にカンドレーバを移動させている(4節エンポリ戦では左サイドに、6節ユベントス戦では中央にカンドレーバを動かしていた)。

サンプの攻撃の狙いをさぐりたいなら、カンドレーバがどこでプレーしているかに注目するとよくわかるはずだ。

カンドレーバの今季のヒートマップ。基本的には右サイドでプレーしていることがわかる。ここからカンドレーバが動いているときはサンプドリアが攻撃に変化を加えようとしている証拠だ。




カンドレーバの弱点

攻撃面の能力が総じて高いカンドレーバだが、彼に弱点はあるのだろうか。

挙げるならば守備面の強度があまり高くないことだろう。タックル数のデータを見てみると、

  • タックル総数 4(チーム内9位

となっている。これは主力11人の中でFWを除くと最も少ない数字だ。

特にカンドレーバのところの緩さが目立ってしまうのが相手に押し込まれたときで、右サイドから攻められることが多くなっている。目の前をドリブルされているのにジョギングしていることも。ここはサンプドリアにとって泣き所の一つになっている(詳しくはサンプドリアの守備戦術 徹底詳解を参照)。

 

ただ、ダベルサ監督はこれも想定内でカンドレーバを起用しているはずだ。

セリエA公式サイトより走行距離についてのデータを見てみると、

  • 1試合平均走行距離 10.35km(チーム内2位

とチームで2番目の数字を記録。これはリーグ全体でも36位と上位にランクされる数値だ。低い位置でボールを受け、そこからドリブルで何度もボールを前進させていることを考えると納得の数字である。

そうした攻撃面での多大な貢献度を考えると、多少の守備面の甘さがあっても十分おつりがくるといえる。特にサンプドリアは自陣で守る時間をできるだけ少なくするサッカーを志向していて、それが実現できればカンドレーバの守備の甘さも問題はないと考えているはずだ(詳しくはサンプドリアの戦術 徹底詳解を参照)。

来年2月で35歳を迎えるカンドレーバを守備でも酷使しては体力が持たない。彼がピッチからいなくなることの方が被害は甚大なのだ。

 

 

あとがき

ジェノアの地で第2の春を謳歌するカンドレーバ。彼のプレーがサンプドリアの浮沈を左右することは間違いないだろう。

今季のダークホース候補との呼び声もある中、第7節終了時点で15位と不本意な順位に終始しているサンプドリア。ここから巻き返せるかは、カンドレーバの活躍にかかっている。




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