【ジョルジーニョ再来⁉】アンドレ=フランク・ザンボ・アンギサのプレースタイルを徹底解剖!

【ジョルジーニョ再来⁉】アンドレ=フランク・ザンボ・アンギサのプレースタイルを徹底解剖!

2021年10月3日 5 投稿者: マツシタ
Pocket

SSCナポリといわれるといまだにサッリ時代を思い出す人も多いのではないだろうか。自分もそのひとりだ。欧州一美しいといわれたパスサッカーは、記録以上に記憶に残るチームだった。

そのサッカーを実現する上で絶対的な中心になっていたのがジョルジーニョだった。レジスタとしてボール循環を司るさまはまさに指揮者だった。サッリボールを最も理解した男は恩師のチェルシー移籍に続く形で渡英、いまではバロンドール候補に推されるまでの選手に成長している。

サッリがジョルジーニョを連れていったように、自分のサッカーを理解してくれる選手は重用される。ナポリの新監督に就任したルチアーノ・スパレッティにとってのそれはアンギサだろう。アンドレ=フランク・ザンボ・アンギサ。25歳のカメルーン代表MFだ。

 

アンギサはフランスのスタッド・ランスのユース出身で、2015年にマルセイユへ移籍。翌16-17シーズンからは主力に定着し、2年でリーグ戦70試合に出場するなど活躍した。以降はプレミアリーグのフラムとラ・リーガのビジャレアルでプレーし、今季からナポリへと加入している。

市場最終日の移籍で、形態も買取オプション付きのレンタル。デンメ離脱による選手層拡張の色合いが濃く、特に名の知られた選手でもない。加入当初の期待値はそこまで高くなかったというのが正直なところだろう。

ところが。ナポリでの初戦となった大一番ユベントス戦でいきなり先発したアンギサは出色のパフォーマンスを披露。以降リーグ戦全試合にフル出場している。

加入後瞬く間にスパレッティナポリのキーマンとなったアンギサ。彼は一体どんなプレーヤーなのか、徹底的に掘り下げていこうと思う。




アンギサのプレースタイル

 

サッカーインテリジェンスの高さ

アンギサは見るからにフィジカルに恵まれた選手だ。184cm79kgと理想的なバランスをしていて、コンタクトプレーにとても強い。実際、SofaScore.comによると

  • デュエル勝率 63%

と高い数字を記録している。

 

走力もあって、ピッチの広範囲をカバーできるのも魅力。セリエA公式サイトによると

  • 1試合平均走行距離 11.383km(セリエA4位

とリーグでも屈指のダイナモっぷりを発揮している。

 

ここまで書くと、アフリカンらしくフィジカルを前面に押し出してピッチを制圧する選手をイメージしてしまうが、そうではない。アンギサを特徴づけているのは、むしろ極めて高いサッカーインテリジェンスだ。彼はとにかく賢い選手なのだ。




ボール循環を文字通り指揮

彼の賢さはプレーの節々に感じられるのだが、一番わかりやすいのはナポリがボールを回しているときだろう。アンギサに注目してみていると、彼が常に周りの選手たちに指示を与えているのがわかると思う。あそこに動かせ、次はそっちだ。その間に自分も移動し、いま出せ!と要求。受けた後はシンプルにさばいて動かす方向を指示し、また動きなおす。そのシンプルさと正確さはまさにジョルジーニョを思い起こさせる。

  • パス成功率 93.5%(セリエA6位)※以下のデータはすべてFBref.comより引用。

 

リーグでも屈指のパス成功率を記録しているアンギサは、基本的にグラウンダーのショートパスでボールを動かす。

  • ロングパス総数 13(チーム内10位
  • グラウンダーパス総数 231(チーム内5位
  • ハイパス総数 11(チーム内12位

 

そうしてチームメイトを使ってボールを動かしながら、ここぞのタイミングでボールを受け、ボールを前進させていく。難しいスルーパスなどを出すことは少ないけれど、

  • ファイナルサードへのパス成功数 33(セリエA8位

とボールを敵陣へ届けるプレーの多さはデータに現れている。ちなみに、ナポリに加入したタイミングの関係でアンギサはここまで6節のうち4試合にしか出場していない。それですでにセリエAでも上位のスタッツ。すべての項目に関して言えることだが、1試合平均に換算し直したらもっと順位は上がるはずだ。

 

難しいプレーをしないので何となく見ていたら目立たないけれど、1本1本のパスやチームメイトへの指示は本当に的確で、どうすれば効果的にボールを前進させられるかがわかっている。そのために自分がどこでボールを受け、どこにボールを動かすかもたぶん、見えている。月並みな表現をすれば「サッカーがわかっている」。その姿はまさにピッチ上の指揮者だ。

また、彼について触れるうえで強調しておきたいのがいい意味での脱力感だ。力みがなく、フィジカルを押し付けるようなプレーは見られない。大げさかもしれないが、ちょっとダイナミックなイニエスタのように感じる。

今季のナポリは後方に人数をかけながらチーム全体を徐々に押し上げていこうとする。いわゆる全体進軍だ。チームとしてのそうした志向性と、味方を使いながらボールを動かし、組織の一員として自分を俯瞰して見られるアンギサの相性は抜群だ。スパレッティのサッカーを体現する選手だといえる。




ドリブルによる局面打開

前述のように基本的にはシンプルなプレーに徹するアンギサだが、だからこそ効いてくるのが時折見せるドリブルだ。

  • ドリブル突破成功総数 11(セリエA9位
  • ドリブルによるファイナルサードへの侵入数 11(チーム内3位
  • 被ファウル総数 8(チーム内3位

ちなみに19-20のラ・リーガ、続く20-21のプレミアリーグでもアンギサはドリブル突破成功総数がリーグ3位になっている。彼のドリブルはどのリーグでも猛威を振るってきたようだ。

 

シンプルにさばくことが多いからこそ、突然ぐんとターンされたらついていくのが難しい。このドリブルを織り交ぜるタイミングの感覚が抜群だ。

相手が近づいてこなければボールを動かすし、食いついてくればスッとドリブルでかわして持ち上がれる。相手の出方を見ながら的確な判断を下して効果的にボールを前進させられる。それができるのは、常に脱力して周囲を観察しているからだろう。

 

また、ここ数試合は前線に飛び出してペナルティエリア内で仕掛ける場面も増えてきた。相手を剥がすドリブルではなく、仕掛けるドリブルだ。

いったん攻撃をやり直すと見せかけてターン、前を向いて仕掛けていくのが十八番のパターン。これを見せられることで、相手からすればアンギサが何をするかはより読みづらくなってくる。

もちろん前線へランニングするタイミングも抜群で、ここからも彼の戦術眼がうかがい知れる。

 

積極的に変化してきたのはドリブルだけでなくパスも同じ。堅実でシンプルな循環させるパスだけでなく、縦方向の仕掛けのパスも徐々に増えてきていて、そのバランスが絶妙になってきつつある。

サンプドリア戦では自陣から数十mをドリブルで持ち運び、ロサーノの足元にボールを届けている。そのロサーノのクロスから4点目が生まれている。さらには直近のカリアリ戦では2得点すべてがアンギサ起点。アシストとなるクロスを上げたジエリンスキに浮き球のスルーパスを通したもの、PKを獲得することになるオシメンの足元にボールを届けたのもアンギサだ。

パスもドリブルも精度を高く保ったまま決定的な仕事を増やしてきている。正確性を重視しながらチャンスがあれば仕掛けられるのは、試合の流れが読めているアンギサだからこそなせる業だ。




守備能力も高い

ナポリでは攻撃面で非常に目立っているアンギサだが、彼はもともと守備力を売りにするタイプの選手だったようだ。

〈タックル総数〉

  • 20-21 87(プレミアリーグ9位
  • 19-20 79(ラ・リーガ9位
  • 17-18 92(リーグ・アン5位

イングランド、スペイン、フランスすべてのリーグでタックル数がトップ10に入っている。そして、イタリアでもすでにその能力を十分に見せていている。

  • 21-22 タックル総数 7(セリエA4位タイ

 

またタックル以外の守備アクションについてもチーム内屈指のスタッツを残している。彼のところでカウンターの起点をつぶす場面はもはやナポリでおなじみのシーンになってきている。

  • プレッシャー総数 67(チーム内5位
  • プレッシャー成功総数 20(チーム内3位
  • インターセプト総数 7(チーム内2位タイ

 

攻撃から守備に切り替わった瞬間の出足の速さと予測力が抜群。狙いを定めた相手に対して一気に距離を詰めてボールをからめとる。

特筆すべきはボールを奪う技術の高さだ。相手との距離を詰めた後は、ボールと相手との間に自分の体を入れてクリーンに奪い去る。スライディングでも正確にボールを捉える。だから、アンギサのプレーはラフに見えない。ここまでカードを1枚ももらっていないのも納得だ。過去にさかのぼってみても、各リーグでトップクラスのタックル数を記録していながらイエローカードの数でトップ10に入ったシーズンがないそうだ。

ふつう、タックルの数が多い選手は総じてカードの数も多くなるものだが、アンギサはそうはなっていない。これは彼のタックル技術の高さを如実に物語っているといえる。

そして、ここでもいい意味での脱力感が効いていると思う。ボールを奪う際にパワーで相手を弾き飛ばすようなことが少なくて、しなやかに奪うのだ。だからラフに見えないし、ボールを確実に自分のものにできる。職人というか、仙人というか、そんなイメージをアンギサからは感じる。

 

このように、

  • フィジカルに長けているがむしろサッカーインテリジェンスの高さに特徴があり、
  • 味方にボールの動かし方を指示しながら攻撃を指揮し、
  • 自らもシンプルに絡んでボールを円滑に前進させ、
  • 機を見たドリブルで複数の相手を剥がして局面を打開でき、
  • 守備技術の高さと予測力を活かして即時奪回でも機能する

組織として全体を押し上げるビルドアップと、素早い奪回。その両方でスパレッティが求めるものを体現するアンギサは、今後も主力としてナポリの中盤を支えていくはずだ。




アンギサの伸びしろ

そんなアンギサの伸びしろはどこにあるのか。

ひとつは得点力の向上だろう。データを見てみると、17-18からの4シーズンすべてにおいてゴール期待値より実得点が下回っている。これはつまり、得点チャンスに対して実際の得点数が下回っていることを意味している。もっと得点数が伸びていておかしくないのだ。

〈得点数/ゴール期待値〉

  • 17-18 0/1.5
  • 18-19 0/0.7
  • 19-20 2/2.4
  • 20-21 0/1.8

 

今季もここまでヘディングやミドルシュートで惜しい場面はあったものの、得点には至っていない。今の活躍をつづけながらシーズン5点くらいが計算できるようになってくると、いよいよ鬼に金棒だ。弱点が無くなってくる。

あとは先ほども触れたシーズン通しての継続性がどうか。毎シーズン30試合以上に出場しているアンギサだが、途中出場もそこそこ多かったようだ。これまでのプロキャリアでリーグ戦30試合以上に出場したシーズンはない。

今季はここまでリーグ戦フル出場が続いているアンギサ。冒頭で紹介したように、走行距離もリーグ屈指の長さになっている。さらに、今年はシーズン途中にアフリカ・ネイションズ・カップによる離脱も控えている。これらを経てもパフォーマンスを落とさず、継続して現在のハイパフォーマンスを維持できるか。

この継続性が達成されてシーズン終了を迎えたとき、アンギサはセリエA屈指のMFとしての地位を確立しているだろう。スパレッティにとって欠かせないキーマンであるだけに、彼の成否はナポリの最終順位にも大きく影響してくるはず。今後の動向にも注目だ。




あとがき

全くノーマークだっただけあり、個人的に今季ここまでで最大の衝撃を受けているのがアンギサだ。力を抜いて優雅にプレーし、周囲を動かすことでチーム全体に影響を及ぼす。彼の存在感は試合を重ねるごとに高まっており、いまやスパレッティのサッカーを体現する選手だ。ジョルジーニョやイニエスタといった職人系の選手の影を重ねてしまうのは、彼が体よりも頭を使ってサッカーをしていることがよく伝わってくるからだと思う。

セリエAを、そしてアフリカを代表するMFに成長する可能性は十分だ。まずは今季通してのコンスタントな活躍に期待したいところだ。

 

 

あわせて読みたい 関連記事

ナポリ関連の記事一覧はこちらから

【モンスターストライカー】ヴィクター・オシメンのプレースタイルを徹底解剖!

【イタリア最高の万能サイドバック】ジョバンニ・ディ・ロレンツォのプレースタイルを徹底解剖!

【ナポリの司令塔】ファビアン・ルイスのプレースタイルを徹底解剖!

【頭脳派ファンタジスタ】ピオトル・ジエリンスキのプレースタイルを徹底解剖!

【アフリカ史上最高のDF】カリドゥ・クリバリのプレースタイルを徹底解剖!

【超万能ダイナモ】ディエゴ・デンメのプレースタイルを徹底解剖!