【諸刃の剣】CL グループリーグ第1節 リバプールvsミラン ミニレポート

【諸刃の剣】CL グループリーグ第1節 リバプールvsミラン ミニレポート

2021年9月17日 1 投稿者: マツシタ
Pocket

21-22シーズンのCLが開幕した。多くのドラマがあったグループリーグ第1節だが、その中でも最も面白かった試合のひとつがリバプールvsミランだった。

8年ぶりに槍舞台に戻ってきたミランはかたさもありながらアンフィールドのリバプール相手に反発する時間帯を作り、前半をリードして折り返すなど健闘。最終的には再逆転され2-3で敗れてしまうわけだが、ポジティブな側面も見いだせた一戦だった。

今回はそんなミランの中でいい意味でも悪い意味でも主役になったラファエウ・レオンに焦点を当ててこの一戦を振り返ってみようと思う。

 

 

右サイドから2失点した理由

試合は序盤から圧力を高めるリバプールの前に自分たちの形を作れず、そのまま先制点を奪われるというミラン目線で見れば最悪な立ち上がりになった。まずはミランの守備について見てみよう。

ミランは相手の3トップに対して人を意識した守備を行った。特に1トップのオリギに対してはケアーとトモリでダブルチーム。サイドにボールが出されてもCBは中央にとどまって危険なスペースを埋め、オリギに対して数的優位を保つという原則を採用していた。先日のラツィオ戦も同じ構造になっていたので、これはチームとしての決まり事とみていいでしょう。

一方でSBは相手のWGを捕まえるので、CBとSBの間には自然とギャップが広がることに。ここをいかにカバーするかがミランの守備における焦点になるわけだ。

 

一番簡単な方法はWGがしっかりとプレスバックして埋めること。しかし、ラファエウ・レオンは守備時の献身性に疑問符が付くプレーヤーだ。

先制点はそれがモロに出てしまった。対面のアレクサンダー=アーノルドのインナーラップに対してついていけず置き去りにされてしまったレオン。ミランの泣き所であるCBとSBとのギャップを見事に突かれた結果くらった失点だった。

 

失点の場面だけでなく、レオンの守備参加の不足は顕著だった。たとえば、下の場面を見てもらいたい。

このように、CBとSBのギャップはケシエが斜めのランニングで埋めることが多かった。それによって中央の厚みがなくなってしまうが、ここは逆サイドから戻ってくるサーレマーケルスでうまくごまかしていた。右と左でWGの守備時の貢献度の差は明らかだった。

 

話は後半に飛ぶが、2失点目もレオンのところからだった。

斜めに引いたヘンダーソンに対してプレッシャーに行ったレオンだったが、プレスの角度が悪く簡単にアレクサンダー=アーノルドにパスを散らされてしまう。ここが起点となり、失点につながった。

状況を判断してプレスを自重するか、いくならしっかりアレクサンダー=アーノルドへのコースを切るべきだったといえる。

 

このように、守備参加の意識も低ければ、プレスに行くべきかどうかの判断やコースの切り方も甘い。守備面に関して全面的に改善が必要だというのがレオンの現状だろう。

ミランのような個々のデュエルを重視するチームではひとりひとりの守備能力はより強調されるわけで、対戦相手のレベルを考えてもレオンをサイドハーフで起用するのは非常にリスキーだったといえる。しかし、ピオーリ監督がレオンの起用に躊躇しなかったはずだ。なぜなら、彼はミランのメインウェポンだからだ。

 

 

ミランの攻撃の意図

プレッシングの常識に照らして考えると、ボールは外へ外へ追い出すのが鉄則だ。しかし、リバプールは逆に外を切って中へ中へ追い込もうとする、いわゆる外切りプレスを行うチームとして有名だ。MFにボールハントに長けたプレーヤーを3人配していることから、ここを取り所に設定しているのだ。となると、リバプールと対戦する側からすれば、いかにプレスをかいくぐって外へ外へボールを運べるかが焦点になってくるはずだ。

しかし、ミランはちがう発想を持っていた。中へ追い込まれるならそれに逆らわず、中央で勝負してやろう。それがピオーリの狙いだった。

右MFのサーレマーケルスをピッチ中央あたりまで大きく絞らせ、ブラヒム&レオンに加勢させて中央に選択肢を作ったうえでくさびを入れ、そこから左サイドへ展開。中央経由で左へ運んでレオンのドリブルで仕掛けさせるというのがピオーリが最初に準備してきた形だった。

SofaScoreより、リバプール戦のミランのヒートマップ。相手に押し込まれた事情もあるとはいえ、後方で引き付けつつ左からファイナルサードに侵入するというビルドアップの狙いが現れていると思う。矢印の長さを見ても、ミランの攻撃の中心は左だった。

 

さらに、ピオーリは途中から配置をさらに転換。レオンの仕掛けがしっかり対策されていることを見て彼を中央へ移動、レビッチとの疑似2トップに。相手CBにぶつけた。

さらに、この日のミランはMFを片方落として3バックを作るといういつもの形を見せることが少なく、かわってボランチは横並びにしていた。相手が高い位置からプレスをかけてきたこともあるのだろうが、個人的にはインサイドハーフ2人を引っ張り出す意図があったのではないかと思っている。

そうしてアンカー脇を上下に広げた上で、左右にブラヒムとサーレマーケルスを配置。このファビーニョに対して2対1を作るという戦術が、ピオーリの出した回答だったわけだ。そしてそれが完成したのは、最前線でもプレーできるレオンを動かしたからこそだった。

 

この形で奪ったのが同点弾だ。

 

アンカー脇にいたブラヒムが引いてきてパスを引き出し、もうひとりのアンカー脇係・サーレマーケルスにパスを通す。こうなった時点で中央では3対2の数的優位ができていて勝負ありだった。

 

ドリブルによる仕掛けに中央に絞ってのFW化。ピオーリにとってレオンが重要な理由はもう十分なんだけれど、彼にはそれ以上に大きな役割が期待されている。それはカウンターの急先鋒となることだ。

ピオーリミランの大きな武器が鋭いロングカウンター。その中でもレオンは別格のタレントだ。オープンスペースでボールを持たせたら彼を止められるDFはほとんどいないはず。そこにテオやブラヒム、レビッチらが追い越しをかけるカウンターは迫力十分だ。それがリバプールにも通用した瞬間が逆転弾の場面だったのだ。

 

レオンが守備面でかなり粗いことは見てきた通り。それでも、ピオーリにとって彼は外せない。それくらい、攻撃面で及ぼすプラス効果が大きい。現にリバプール戦で奪った2得点はいずれもレオンを起用する意味が見える、狙い通りの得点だった。

しかしながら、収支がプラスに転ずるのは同格以下が相手の時までなのかもしれない。CLの舞台では1人でも守備時に穴になる選手がいれば見逃してはくれない。そのことを痛感させてくれた試合だったと思う。攻守に得点に絡んだレオン、今の彼は諸刃の剣だ。

ひるがえってリバプールのアタッカーたち。サラーとマネは毎シーズン2桁得点を記録する怪物ウイングだ。そんな彼らが、守備時にめちゃくちゃ走る、球際で戦う。とんでもないことだ。

レオンが彼らのレベルに達するためには、まずは守備面を磨かないといけない。でないと、よりレベルが高いタレントと競争になった時に起用されなくなってしまう可能性が高い。逆に、そこが整ってきたときに超ワールドクラスの領域に足を踏み入れるポテンシャルは十分にあると思う。

さらに、これはレオン自身がどこまで飛躍できるかの問題であると同時に、デュエルを重視するミランがチームとしてランクアップしていくためにも欠かせない要素だ。彼ほどの才能を持つ選手が守備でも貢献してくれるようになれば、さらに完成度が高いチームになれるはずだ。

今季のミランが欧州の舞台でどこまで行けるか、カギはレオンが握っているかもしれない。

 

 

あとがき

正直、点差以上に差はあったと思う。より多くのチャンスを作ったのはリバプールだったし、ミラン自身のパフォーマンスも本来のものではなかった。後半は特に自陣に押し込まれて耐え切れなかった。勝負を決したのは超スーパーゴールだったけれど、結果は妥当だったと思う。

とはいえ、若手中心でCL経験が皆無に等しいチームだったこと、8年ぶりのCLというただでさえ緊張感があるシチュエーションに加えて対戦相手が3年前の王者にして世界最高のプレッシングチームであるリバプールであり、そのプレスの強度を何倍にも増幅させる要塞アンフィールドが舞台であったこと。歴戦の猛者でさえ飲み込まれる舞台で、若い衆たちが本来のパフォーマンスを出せないことは仕方がないととらえたい。

むしろ、何もできないまま先制点を奪われその後も押し込まれるという最悪な展開の中でも相手に反発できたことはポジティブにとらえていいはず。鋭いロングカウンターや中央密集からのワンサイドアタック、ケアー&トモリの対人守備というセリエAでも猛威を振るっている武器がCLの舞台でも十分通用することが分かっただけでも収穫だ。そしてなにより、自分たちと系統が近くて完成度が高い、お手本のようなチームと対戦てきたことはチームにとって財産になるはずだ。

やっぱりリバプールの面々はデュエルの局面でワンランク上だと感じさせてくれた。デュエルを強調するミランにとって、欧州レベルではここがまだまだであると確認できたことは大きいはず。まだトップクラスまでは距離がある。

とはいえ悲観する必要はないでしょう。ミランのCLでの復活劇はまだ始まったばかりなのだから。ひとつひとつ積み上げていけば、欧州レベルでもしっかりとした地位を確立できるはず。当のリバプールにも7年間で1度しかCLに出場できなかった時期があったのだ。

若き新生ミランがどのように階段を上っていくのか。これからの戦いぶりに改めて注目だ。

 

 

あわせて読みたい 関連記事

【幻影を消し去るメニャンの自己紹介】セリエA21-22第1節 サンプドリアvsミラン ミニレポート