【アタランタの戦車】ドゥバン・サパタのプレースタイルを徹底解剖!

【アタランタの戦車】ドゥバン・サパタのプレースタイルを徹底解剖!

2021年8月8日 7 投稿者: マツシタ
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20-21シーズンのアタランタにおいて最大のトピック、それはバンディエラとしてチームを引っ張ってきたパプ・ゴメスとの決別だろう。それまでは彼なしでは考えられないくらいアタランタはパプのチームだったものの、周囲の心配をよそにパプなき後のアタランタはむしろ調子を上げ、コッパ・イタリア準優勝に3年連続のセリエA3位という結果を残して見せたのだ。

そのパプ後のアタランタが機能する上で最も大きい役割を果たした選手のひとりがドゥバン・サパタだ。

 

母国コロンビアのアメリカ・デ・カリでデビューしたサパタはアルゼンチンの名門エストゥディアンテスを経て、セリエAの強豪SSCナポリに引き抜かれた。

ナポリでの2シーズンでは11ゴール3アシストとまずまずの結果を残したものの主力に定着することはできず、以後ウディネーゼ、サンプドリアとプロビンチャを渡り歩いたサパタ。転機となったのが2018年7月のアタランタ移籍だった。

加入初年度から主力に定着したサパタはセリエAだけで23ゴールと爆発。得点ランキング2位に入る活躍でアタランタをクラブ史上初のCL出場に導いたのだ。

以後19-20シーズンは公式戦19ゴール7アシスト、20‐21シーズンは19ゴール13アシストと常に20に近いゴールと10に近いアシストを記録。アタランタの前線の核として欠かせない存在となっている。

特に前述のゴメス退団以降その依存度はさらに高まっている印象で、もはやアタランタの攻撃はサパタありきで構築されているといってもいいくらいだ。

アタランタにとって最も欠かせない選手へ覚醒したドゥバン・サパタ。彼は一体どんな選手なのか、そのプレースタイルを徹底的に掘り下げていこうと思う。




サパタのプレースタイル

 

高い得点能力

サパタの最大の強みは何といってもその得点能力の高さだ。毎シーズンコンスタントに20ゴール近い数字を残してきたことからもそれは明らかだ。

〈90分あたりゴール数〉

  • 20-21シーズン 0.80(セリエA5位)
  • 19-20シーズン 0.71(セリエA2位)

と、ここ2シーズン90分あたりの得点率で高数値をたたき出している。リーグ屈指のスコアラーであることに疑いの余地はないだろう。

サパタはなぜ多くの得点を奪えるのか。それはそもそものシュート数の多さが要因になっている。

  • 1試合平均シュート数 2.7(チーム内トップ)
  • シュート総数 96(セリエA7位)
  • 1試合当たり枠内シュート数 1.1(チーム内トップタイ)
  • 枠内シュート総数 38(セリエA5位)

と、シュートそのものの数が非常に多く、またそれらのシュートをきっちり枠内に飛ばしていることもわかる。シュート数が多いからゴールもそれだけ多くなるという至極当然の結果だ。

 

問題はなぜそんなに多くのシュートを打てるのかだ。アタランタの攻撃的なサッカーがそれを助けていることは間違いない。だが、それ以上に目を引くのが得点パターンの多彩さだ。

それを支えているのはサパタの規格外のフィジカル。筋肉で武装されながらスプリント力もジャンプ力も兼ね備えているまさにフィジカルモンスターだ。

この自慢のフィジカルを活かし、サパタは強烈なミドルシュートで遠距離からでもゴールを強襲する。対戦相手にとってはペナルティエリア外であってもサパタに前を向かせるのは危険だ。

 

さらに、サパタは後ろ向きからでも強引にシュートを叩き込んでくる。常人離れしたフィジカルを持っているサパタは多少無理な体勢からでもシュートに持ち込める。特に反転ざまのシュートはとても体をねじりながら打ったとは思えないほどのパワーだ。ローマ戦でのゴールは圧巻だった。

 

さらに、空中戦の強さも兼ね備えているサパタはクロスボールに合わせての得点も多い。垂直ジャンプで相手の上から叩いてしまうジャンプ力はまさに理不尽。それでいてコンタクトに強いので空中でもバランスを崩さない。そのためサパタはファーサイドでクロスボールを待っていることが多く、ふわっとしたボールを叩き込むのがお決まりのパターンだ。19‐20シーズンには総得点の約3分の1に相当する6つのゴールをヘディングで挙げている。

 

抜け出して1対1を制したりこぼれ球に反応したりと言ったいわゆるストライカーらしいゴールだけでなく、恵まれたフィジカルを利した理不尽なゴールをも奪えるのがサパタの強み。普通の選手ならそうしない場面でもシュートという選択をできるからこそ、リーグの中でもトップクラスのシュート数の多さ、そして得点数の多さにつながっているのではないだろうか。




確度の高いポストプレー

自らが得点する能力も高いサパタだが、それ以外の部分での貢献度も非常に高い。

何よりも欠かせないのが自慢のフィジカルを利したポストプレーだ。

アタランタは相手に押し込まれた状態でボールを奪ったとき、ひとまずサパタの裏にロングボールを蹴って攻撃の起点にする。サパタはスタートポジションとして中央に位置どっておきながら、そこから左斜め外へと逃げる動きをする。ゴールから逃げるこのランニングは対峙するDFにとっては対応が難しく、ただでさえフィジカルに優れるサパタをつぶしきるのは容易ではない。

今シーズンのサパタのヒートマップ。左サイドの色が濃くなっていることがわかると思う。

 

ゴメス退団後はボールを奪うととりあえずサパタを裏に走らせて攻撃の起点にする頻度が高まっている。厚みのある攻撃でリーグ屈指の得点力を誇るアタランタにとって、サパタのボールキープは前線に人数を送り込むための時間を作る上で欠かせないのだ。

また、サパタは相手を押し込んでからのポストプレーもお手の物。相手をがっちり抑えてキープし、2列目の選手の走り込みを促す。ペナルティエリア内でサパタに背負われてしまっては相手DFとしてはどうすることもできないだろう。

相手に押し込まれてからも、自分たちが押し込んでからもポストプレーで攻撃の基準点となれるサパタ。結果として

  • 縦パスを受けた回数 402(セリエAトップ) ※ここでの縦パスは10ヤード以上相手ゴール方向に移動したパスのこと

とリーグの中で縦パスレシーブが最多になっているのも納得だ。




左突破からのクロス

リーグ屈指のポストプレーヤーでもあるサパタだが、彼はただ相手を背負えるだけの選手ではない。彼が特殊なのは相手を背負ってボールをおさめた状態から強引に前を向き、ドリブルで突破して局面を打開することさえできることだ。

多少足元は粗いものの、自分の空間を確保する能力が極めて高いため遠くにあるボールも強引に自分のものにしてしまえる。このフィジカルは圧巻だ。相手をなぎ倒すようにして突き進むそのドリブルはまるで戦車で、止めるのは容易ではない。

特に強力なのがペナルティエリアの少し外で受けてそのままペナルティエリアの中まで力づくでボールを持ち運んでしまうプレー。

  • ドリブルによるペナルティエリアへの侵入数 53(セリエA3位)

と、ペナルティエリアの外から中に入っていくプレーがリーグでトップクラスに多いことがデータでも示されている。

サパタのお決まりの流れはこうだ。左サイドに斜めに流れていってロングボールを受け、いったんボールをおさめて起点となる。そこから強引に前を向いて相手を振り切り、そのままペナルティエリアへ侵入。左ポケットをとってクロスボールを送り込むのだ。その流れはヒートマップの中で色が濃くなっているエリアを読み解くことでも見えてくるだろう。

 

サパタの左サイド突破からのクロスはアタランタにとって主要な攻撃パターンになっている。

  • クロス総数 45

という数字はFWとしてはかなり多い数字だ。試しに昨シーズンのセリエAの主なFWの数字と比較してみると、

といずれもサパタの半分以下だ。サパタがクロスボールから多くのチャンスを作り出していることがわかるだろう。




的確な落としで2列目の選手を活かす

サパタは左サイドからだけでなく、ピッチ中央エリアからのチャンスメイク力も高い。

フィジカルなイメージが強いサパタだが、ワンタッチパスに関しては繊細な感覚を持っている。ひとが密集している中でも適切なパスコースを見つけるのがうまく、イメージ通りのパスを出すことができるテクニックも持っている。それは下のペッシーナへのアシストを見ればよくわかるだろう。

この試合で記録したもう一つのアシストも実に見事なので、ぜひ見てみてほしい(3分17秒~)。

 

サイドからも、中央からもチャンスを作り出せるサパタ。結果として

  • 1試合平均キーパス数 1.1(チーム内4位)
  • アシスト数 9(チーム内2位タイ)
  • 90分あたりアシスト数 0.35(セリエA10位)

とアシストに関する数字も十分以上のものを記録している。自らゴールを量産するだけでなく味方を活かすのもうまい。攻撃全般において幅広い役割を担えるのがこのサパタというストライカーなのだ。

 

このように、

  • 難しい体勢からでも強烈なシュートでゴールを強襲でき、
  • 空中戦の強さも持ち合わせ、
  • フィジカルを活かしてスペースの有無にかかわらず攻撃の起点となり、
  • そこから強引に前を向いて突破でき、
  • クロスボールや的確な落としのパスで2列目を活かす能力も高い

起点を作り、突破し、味方にチャンスを提供し、自らも決める。その役割を分担していたパプが退団するに伴ってサパタへの依存度が高まったのは当然の帰結だった。今のアタランタにとってサパタはいわば灯台。攻撃の基準点だ。彼がいるといないとで出てくる影響は非常に大きいだろう。




サパタののびしろ

すべての能力が高いサパタだが、彼には改善点があるのだろうか。挙げるとすれば決定力だろう。

一番最初に得点力が高い選手だと紹介しておいて何を言うのかと思われそうなので、データの力を借りてみたい。以下に20-21シーズンのリーグ戦とCLにおけるサパタのゴール期待値と実際のゴール数の合計を示す。

  • ゴール期待値 19.8
  • 実際のゴール数 18

これらを見てみるとサパタは期待値上は20ゴールを挙げていてもおかしくないが、実際のゴール数は18にとどまっていることがわかる。つまり、決定的なチャンスを少なからず外しているということだ。

SoFifaによると

  • 決定機のミス 21(セリエA2位)

と、サパタはセリエAで2番目に多く決定機を外しているそうだ。たしかに、難しいボールをものにする場面が多い一方で、GKとの1対1の場面ではセーブされてしまうことが多い印象。コースを狙うよりもパワーでぶち抜こうとするため、反応されると弾かれてしまうのだ。

下に挙げたフィオレンティーナ戦で1対1を止められた場面はまさに典型。さらに、動画の後半(3分28秒~)でも1対1をセーブされている。こうした場面を確実にものにできるようになれば、その得点数がさらに増えることは間違いない。

 

現状でも高い得点力を持っているサパタだが、まだまだ伸びる余地があるということ。決定機をものにする頻度を増やし、積み上げるゴールの数をさらに増やすことができればリーグ得点王も夢ではないのはずだ。個人タイトルでキャリアに花を添えられるかどうかは、もうひとつ突き抜けられるかどうかにかかっている。




あとがき

アタランタの攻撃にとって絶大な影響を及ぼすサパタ。20‐21シーズンのリーグMVPロメル・ルカクの売却が濃厚となっているインテルがその後釜の第一候補としてその名前を挙げるのも当然だろう。

ともにチームトップとなる24ゴールと11アシストを記録したルカク。それだけでなく安定したポストプレーで攻撃の起点となっていた大エースの退団は甚大な影響を及ぼすはずで、その代役が務まる選手は限られる。だが、サパタはその数少ない選手のひとりであり得るだろう。

サパタが自ら得点を挙げることも、味方に多くのチャンスを作り出すことも、フィジカルを生かした安定したポストプレーを持っていることもこの記事で紹介してきた通り。いきなりリーグMVPレベルの活躍ができるかはわからないし、年齢と移籍金はネックだが、それでもサパタを獲得できれば被害は最小限に抑えられるのではないだろうか。

逆に、サパタを引き抜かれることになればアタランタにとって被害は甚大だ。起点、前進、フィニッシュと攻撃の全局面で影響力を発揮してきた彼がいなくなれば、攻撃をもう一度設計し直す必要に迫られるだろう。

今後のサパタの動向は来季のセリエA全体をも左右しうる。要注目だ。

 

 

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