【神戸のエース、セルティックへ】古橋亨梧のプレースタイルを徹底解剖!

【神戸のエース、セルティックへ】古橋亨梧のプレースタイルを徹底解剖!

2021年8月1日 0 投稿者: マツシタ
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日本人選手がヨーロッパに挑戦することも珍しくなくなってきた。いまや各国のクラブに日本人選手が在籍しており、海外組だけで日本代表が構成されるくらい多くの選手たちが活躍している。それは、Jリーグが優秀な選手を継続的に供給していることも意味している。今やヨーロッパ中から日本にも視線が向けられているのだ。

今年の夏にも多くの選手が海を渡ることになった。その中でも特に注目しているのがヴィッセル神戸からスコットランドのセルティックへの移籍が決定した古橋亨梧だ。

 

興国高校、中央大学を経てFC岐阜でプロデビューを果たした古橋は、初年度から主力としてプレーし7ゴールと活躍。翌2018年シーズンには前半戦だけで11ゴールを挙げ、夏にJ1のヴィッセル神戸に引き抜かれた。

ポドルスキやイニエスタ、ダビド・ビジャといった世界的に知られた名手が多く在籍するヴィッセル神戸において、J2からやってきたほとんど無名に等しい若者に対して加入当初から大きな期待を寄せていた人は少なかったんじゃないだろうか。ところが、大方の予想を覆して古橋はヴィッセルの絶対的な主力として君臨。半年間の適応期間を経て、2019年は10ゴール8アシスト、2020年は12ゴール5アシストの数字を残した。

そして、今シーズンはまだシーズン半分をほんの少し過ぎた段階ながらすでにキャリアハイの15ゴール。ストライカーとして完全に覚醒し、ヴィッセル神戸を3位に導く立役者となっている。

神戸での活躍を受けてすっかり日本代表にも定着した感がある古橋に対し、多くのクラブが獲得に名乗りを挙げたのは当然だった。競争を勝ち抜いたセルティックが支払った移籍金は500万ポンド。日本円にしておよそ7億6000万円であり、Jリーグでプレーする日本人選手に対する移籍金としては破格の金額だ。古橋がいかに期待されているかがよくわかる。

いまや日本を代表する選手のひとりへと成長し、満を持して欧州挑戦を決めた古橋だが、彼は一体どんな選手なのか。なぜ得点を量産できるのか。

今回は、古橋亨梧のプレースタイルについて徹底的に掘り下げていこうと思う。




古橋のプレースタイル

 

高い得点力

古橋の最大の武器が高い得点能力であることは間違いないだろう。1年通してプレーしている2019年シーズンからすべて2桁得点を挙げていることが雄弁に物語る。

右利きだが左足も問題なく使いこなせ、ほとんど両利きと言っていいレベルにある。身長が高いわけではないがヘディングでの得点も少なくなく、正確なコントロールで流し込むことができる。どこからでも得点できることが彼の得点力を支えている。

データを見てみると、

  • 1試合平均シュート数 3.9(J1 2位)
  • 1試合平均枠内シュート数 1.5(J1 2位)

とJ1の全選手の中でもトップクラスに多くの枠内シュートを放っていることがわかる。彼のシュートテクニックの高さがよくわかるだろう。

だが、それ以上に目を引くのがそもそものシュート数の多さ。1試合平均にしておよそ4本ものシュートを打っている計算だ。古橋が多くの得点を挙げているのはたくさんシュートを打っているからだというある意味当たり前の結論が見えてきたわけだが、それではなぜ古橋はここまで多くのシュートを打つことができるのか。




オフ・ザ・ボール日本一

その一因は、極めて高いオフ・ザ・ボールの動きの質にある。特に裏への抜け出しは職人芸で、ここぞのタイミングで一気に裏へ飛び出し、相手GKとの1対1を制する。これが古橋の必殺パターンになっている。おそらく、相手DFラインを破って裏にボールを引き出す能力において古橋は日本でトップだ。

また、パスの出し手の充実もまた古橋の得点量産を支えている。ヴィッセル神戸にはいまだ世界屈指のパサーであるイニエスタに加え、司令塔のサンペールが高精度のロングパスを供給でき、古橋は彼らと熟成された連携を見せる。高精度のスルーパスに古橋が抜け出す場面は神戸の最大の得点パターンになっている。

もちろん裏へ飛び出した後の1対1を制する能力も高い。正確に四隅を射抜くだけでなく、GKが前に出てくればループシュートを狙う選択肢も持っている。

 

さらに特筆すべきなのがトランジション時の動き出し。味方がボールを奪った瞬間に一歩先んじて動き出し、相手DFを置き去りにする。ポゼッションサッカーを標榜する神戸だが、実際のところボールを奪った瞬間に古橋へのロングボール一閃で素早くゴールを陥れる場面が多くなっている。

 

古橋はもともとスピードがあり、Jリーグでも屈指の快速アタッカーとして知られている。だが、古橋がDFライン裏でボールを引き出せるのは純粋なスピードによるものではない。彼のラインブレイクの源泉となっているのは、そのスピードよりもむしろ飛び出すタイミングの感覚と、それを相手に悟らせない駆け引きの巧みさにある。

それがよくわかるのが下の場面。古橋は相手DFラインにギャップができたのを見逃さず、オフサイドラインに沿うようにして相手の背後に回り込む。そうしてパスが出てくる瞬間に飛び出し、フリーでボールを受けることに成功している。

この場面、裏のスペースはほとんどなかった。にもかかわらず、フリーで相手DFの背後にボールを引き出すことに成功している。彼がスピードよりも駆け引きによってオフ・ザ・ボールを制していることがよくわかるのではないだろうか。広大なスペースを必要とするスプリンターとは一線を画す。狭いスペースであっても潜り込めるのが古橋の特徴なのだ。

 

狭いスペースへ入り込むうまさはクロスボールが上がってくるときにも活かされる。古橋は決して大柄ではないため、競り合いになってしまうとどうしようもない。だから、相手DFが密集している中でもわずかなスペースを見つけ出して侵入し、点で合わせて得点に結びつけるのだ。




ミドルシュートもうまい

ここまで説明してきたように、古橋はゴール前でフリーでボールを引き出すのが非常にうまいプレーヤーだ。だが、古橋はそれだけの選手ではない。

古橋はミドルシュートも得意としていて、中距離からでも正確にゴールを射抜く力がある。しかも、そのシュートを両足から放ってくるのだから相手からしたら脅威だ。

ミドルシュートに持ち込むまでのドリブルも素晴らしい。決して難しいフェイントを使うわけではないが、相手の重心を見ながら一瞬の持ち出しで置き去りにする。そのうえタッチが細かくまた正確で足元からボールが離れないのでDFからしたらなかなか飛び込めないだろう。

相手の裏でボールを引き出すだけでなく、相手の前でボールを受け、ひとつふたつと持ち運んでからのミドルシュートでも得点を奪えるのが古橋という選手だ。

 

遠距離からのシュートにも自信がある古橋は、遠い位置からでも積極的にシュートを打っていく。J1で2番目に多い平均シュート数を記録しているのは、自分のシュートに対する自信と、そこからくるシュートへの積極性も大きな要因になっているのだ。

ここでひとつ興味深いデータを紹介しよう。

  • ゴール期待値 9.401(J1 3位)
  • ゴール期待値-実際のゴール数の差 5.599(J1 1位)

現在ダントツでJ1の得点ランキングトップを走っている古橋だが、ゴール期待値で見れば3位にすぎない。古橋は期待値を大きく上回るゴールを記録していて、これは難易度が高いゴールをいくつも決めていることを示している。オーバーヘッドなど難しいスーパーゴールを決めまくっている印象があるレアンドロ・ダミアン以上の数字と考えるとすごいことだ。

裏へ抜け出しての1対1という期待値の高いプレーにとどまらず、ミドルシュートなどで前触れなくゴールを陥れることもできる。古橋がJリーグ屈指のストライカーであることに疑いの余地はないだろう。




チャンスを作り出す力もある

ここまでで古橋の得点力の高さは理解してもらえたと思う。だが、古橋は自分が天をとるだけの選手ではない。味方にチャンスを提供する能力も高い選手なのだ。2019シーズンに8アシストを記録しチームのアシスト王に輝いたことからもそれは明らかだ。

今シーズンのデータにもチャンスメイク力の高さは表れている。

  • 1試合平均キーパス数 1.2(チーム内トップ)

とチームで最もラストパスを提供しているのだ。

今シーズンこそ2トップの一角に固定されている古橋だが、最前線だけでなく両サイドとトップ下も問題なくこなせるポリバレントなプレーヤー。サイドで起用された試合では正確なクロスボールで味方に多くのチャンスを提供することができる。

また、古橋はドリブル突破も得意で、

  • 1試合平均ドリブル突破成功数 1.0(チーム内トップ)

とチームトップの数字を記録している。サイドで起用された試合では積極的に仕掛けていく。そうしてサイドを破ってクロス、もしくは中に切れ込んでシュートというのがお得意のパターンだ。

さらに、中盤に降りてきてMFの選手たちと細かく連係することも可能。狭いスペースでのプレーも苦にしない。テクニックレベルの高さとクイックネスを駆使し、多くのチャンスを作り出せる。自分が主役になっても引き立て役に徹しても輝けるのが古橋だ。




守備力も高い

さらに、古橋は守備時の貢献度も非常に高い。持ち前のスプリント能力は、裏抜け時よりもむしろ守備時に発揮されている印象だ。ヴィッセル神戸での古橋は先陣を切って相手に猛然とプレスをかけ、守備のスイッチ役として重要な役割を果たしていた。特にトランジションの意識は非常に高く、ボールロストの瞬間に相手に襲い掛かって攻撃を遅らせる場面は何度も見られた。

古橋の素晴らしいところはただ献身的なだけでなく、しっかり相手の攻撃の方向を限定できることだ。古橋は背中でパスコースを消す守備が非常にうまく、確実に相手の選択肢を削り取る。こうしてくれると味方としては相手がどこにパスを出してくるか予測しやすく、網をかけるために非常に助かる。言葉にするのは簡単だが、これを正確にできる選手はそう多くはない。

下は古橋のプレスでボールを奪い、そのまま得点につなげたシーン。プレスのスピードも半端ではないが、しっかり外側のパスコースを切ってイニエスタとドウグラスがいる中央へとボールを誘導しているのがミソ。どこに味方がいるのか、そこに追い込むためにどのパスコースを切るのか。その判断がとても正確だ。

オフ・ザ・ボールもそうだが、古橋はとても賢いプレーヤー。個人能力も非常に高いのだが、それを味方との連携の中で最大化する術を知っている。高度に戦術化されているヨーロッパの舞台で戦ううえで、これは大きなアドバンテージになるはずだ。

 

このように、

  • 巧みな駆け引きを習得したラインブレイクの達人で、
  • 左右両足から正確なシュートを放ち、
  • 多彩な得点パターンを持っていて決定力も高く、
  • クロスボールや細かい連係で味方にチャンスを提供することもでき、
  • 爆発的なスプリントとインテリジェンスで守備での貢献度も非常に高く、
  • 前線ならどこでもプレーできるポリバレント性を備える

ここまで万能なアタッカーはなかなかいない。テクニックやフィジカル面だけでなく、頭脳の面でも洗練されている。心技体の三拍子とはこのことだ。今後ヨーロッパで経験を積んでいけば、日本代表でも欠かせない主力になっていくだけのポテンシャルがある選手だと思う。




古橋ののびしろ

それでは、古橋がさらに改善していくべきポイント、伸びしろはあるのだろうか。

ここで挙げたいのはフィジカルな相手への対応だ。

記憶に新しいのは日本代表の一員として戦った6月11日のセルビア戦。この試合、古橋は屈強なセルビアのDFに何度も鋭いタックルを決められて得意の突破を封じられ、何もできないまま前半で交代を告げられてしまったのだ。

Jリーグレベルの相手に対してはオフ・ザ・ボールの動き出しの質とクイックネスで相手に触れさせることなくかわしていくことができていた古橋だが、欧州に行くとDFのレベルはまた上がってくる。それに、セルティックという新しい環境では味方との連携を深めるのに時間を要するだろう。イニエスタやサンペールレベルのパサーがいるかどうかも分からない。状況としてはセルビア戦の日本代表と似てくるのではないだろうか。

スコットランドでより個人での強さが求められたときに、セルビア戦のようにデュエルを強いられて強みを発揮できない、という展開になってしまわないかどうかはひとつ不安要素だ。

 

幸い、セルティックは先月まで横浜Fマリノスで指揮を執ったアンジェ・ポステコグルーを新監督に迎えている。古橋がどんなプレーヤーかはしっかり把握しているはずだ。

その強みをしっかりアピールしつつ、新しいチームメイトとの間で相互理解を深めることができれば、スコットランドを席巻することができるはず。新天地での活躍に期待したい。




あとがき

8月1日未明、スコットランドリーグが開幕した。この試合で、古橋はさっそく79分から登場。ヨーロッパデビューを果たしている。

 

いまでこそ日本を代表するFWになり、「やっと欧州デビューか」くらいに思ってしまう古橋だが、その道のりは決して簡単なものではなかった。

「なかなかプロ入りが決まらず、サッカーを辞めようと思った時期もあった。最後の最後で岐阜に拾ってもらった。」You Tubeで1日密着を受けた際に古橋本人が語った言葉だ。

ギリギリプロになったところから岐阜のエースに上り詰め、タレント集団のヴィッセル神戸でもほとんど無名の状態から押しも押されもせぬ大エースに上り詰めた。

下剋上を繰り返してここまでたどり着いた古橋なら、多少の壁にぶつかろうと乗り越えてくれるだろう。セルティックで活躍し、本人が希望するスペインへ。そして、日本代表の主役へ。古橋の下剋上はまだまだ終わらない。

 

 

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