【必要十分。ペッシーナ以外は。】イタリアvsウェールズ マッチレポ

【必要十分。ペッシーナ以外は。】イタリアvsウェールズ マッチレポ

2021年6月21日 3 投稿者: マツシタ
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決勝トーナメント進出を決めて臨んだウェールズ戦。イタリアはメンバーを大幅に変更し、また試合自体のテンポも落としながら1-0で勝利した。

 

この日のイタリアには、トルコ戦・スイス戦ほどの圧倒的な強さは感じられなかった。それは攻撃のテンポを落としていたからでもあるし、自分たちの決定機が少なかったのに対して相手には3度の決定機(コーナーキックにフリーで合わされた26分の場面、アチェルビがロングボールの処理を誤ってラムジーとドンナルンマが1対1になった53分の場面、フリーキックを頭で折り返されベイルにフリーでボレーシュートを打たれた75分の場面)を与えたからでもある。それでも、セットプレーから得た1点を手堅く守り切り、グループリーグ3連勝を達成した。

緊張感を緩めたとまでは言わないけれど、効率的な試合だったことは間違いないと思う。この日のイタリアの平均走行距離(前半終了時点)は4.96km。スイス戦の数値が5.45kmだったことからも、試合自体の強度を落としていたことがうかがえる。

ウェールズもウェールズで10人全員でブロックを構築してしっかり待ち構える戦いを選択。前から激しくプレッシングしてくる場面はなかった。それはイタリアに先制されてからも変わらず、後半開始10分でアムパドゥが退場した時点で0‐1を受け入れて大量失点を避ける戦いにシフトした。そのため、両軍合意のもと試合のテンポが抑えられた。イタリア、ウェールズともにトーナメントに向けて温存という、ビッグトーナメントの最終戦にありがちな展開となった。

しかしながら、前半にはこれまでの2試合同様おもしろい戦術的な駆け引きがみられた。その過程で輝き、トーナメントへ向けてアピールに成功した選手たちもいた。

今回は、前半の駆け引きを中心にウェールズ戦を振り返っていきたい。

 

 

スタメン

 

 




 

駆け上がるバストーニ

しっかり引く相手に対しイタリアが攻略ポイントを探るという展開はいつも通りだ。まずはウェールズの守備について見てみよう。

イタリアはいつも通り左肩上がりの3-2-5可変。これに対し、ウェールズは5-2-3で陣形をかみ合わせてきた。ただし、マンツー気味でハイプレスをかけてきたわけじゃない。1列目の3枚はまず中央を固めてボールをサイドに追い込む。そうしてストッパーにボールが出てからジェームズとベイルが前に出る。ただし、これもプレッシャーというよりは制限する程度。陣形が大きく崩れないことを意識していた。また、中央のラムジーは基本ジョルジーニョにマンマーク。スイス戦のシャキリと違い、ボヌッチは放置気味だった。

 

これに対し、イタリアはヴェッラッティをジョルジーニョの脇におろしてくる。左MFに補助レジスタとして攻撃を組み立てさせるのはこれまでの2試合と同じだ。

 

これに対し、ウェールズは右MFのモレルが前に出て捕まえに来る。そうして空くアレンの右脇のスペースはベイルが埋めていた。

 

この一連の流れでベイルの立ち位置が低く、また中央寄りになったことで空いたのがイタリアにとっての左サイド。ここを使ったのがバストーニだ。キエッリーニに替わって出場した22歳は、CBながらまるでSBのように前進し、高精度のアーリークロスを供給してチャンスを作り出した。ファーサイドには左WGのベルナルデスキと1トップのベロッティが殺到。この試合最初のチャンスを作り出したのが11分の場面だった。

 

バストーニはこの試合でアピールに成功した選手のひとりだ。攻撃参加でチャンスに絡んだのはもちろん(クロスは2本とも成功させていて、パス成功率は92.9%の高数値だ)、ウェールズの最大の脅威であるベイルを完璧に抑え込んで見せた(特に空中線は圧巻だった)。おかげでイタリアはカウンターから危険な場面を作られずに済んだ。

スイス戦の前半で途中交代したように、37歳となったキエッリーニが大会通して万全にプレーできる可能性は低いと見積もっておいたほうがいいだろう。ゆえに3人目のCBがどれくらいやれるかはアッズーリが優勝できるかどうかを左右する。そういう意味で、攻守両面で盤石だった今日のバストーニのパフォーマンスは心強い。スイス戦ではアチェルビが出場したものの、今日の試合で序列は逆転したかもしれない。

 




 

ペッシーナで動かし、ペッシーナで仕留める

さて、試合の流れに戻ろう。右サイドからチャンスを作られた11分のプレーを受け、ウェールズはジョルジーニョ&ヴェッラッティへのマンマークを維持したうえでベイルを1列目に戻す。右からの進攻に制限をかけるためだ。陣形は5-1-4のようになった。

こうなると空いてくるのが「1」の右脇だ。このスペースを活用するため、イタリアも動く。キエーザとベルナルデスキを入れ替えたのだ。これによってトップ下タイプのベルナルデスキを空いたスペースに配置し、崩しの起点にしようとしたのだ。

ところが、ウェールズはベルナルデスキの足元にボールが入ると右CBのロドンを前に出してつぶしてきた。フィジカル的に優位にあるロドンに対し、ベルナルデスキは苦戦する。こうして狙えるスペースがあるにもかかわらずそこを有効活用できず、イタリアの攻撃は停滞していった。

 

これを打開したのが今日のヒーロー、マッテオ・ペッシーナだった。ベルナルデスキは中盤に引いてくることをやめ、前線に張ってロドンを足止め。狙いたいスペースを空ける。そして、そこに逆サイドからペッシーナを侵入させたのだ。ペッシーナはアレンの背中をまわって忍び込むようにスペースに侵入、ボールを引き出していく。彼が起点となり、イタリアはウェールズのブロックの内側に侵入できるようになっていった。

 

ペッシーナの「横断」によってふたたびチャンスを作り始めたイタリアに対し、ウェールズはさらなる撤退を選択。ジョルジーニョをマークするラムジーを残し、5-4-1のブロックで徹底してボールを外へ追い出そうとした。

これに対し、イタリアはトロイとバストーニをサイドバックのように攻撃参加させ、サイドに数的優位を作って押し込んでいく。これによってウェールズは自陣に閉じ込められ、防戦一方となっていくのだ。

 

そして38分、ウェールズは圧力に耐えきれずファウルをおかす。これをペッシーナがものにし、イタリアが決勝点を奪ったのだ。

得点はセットプレーによるものだったけれど、そこに至るまでの流れはイタリアが相手の守備陣形に穴を作り、そこを的確に突くことで相手を撤退に追い込んで生まれたものだ。そして、そのカギになったのがペッシーナの走力。左サイドから大きくピッチを横断してスペースを突いた。

前半終了時点でのイタリアの平均走行距離は4.96kmだったが、ペッシーナはひとりで5.89km走っていた。2位のジョルジーニョの5.35kmと比較しても飛び抜けている。ライン間はもちろん、裏へのランニングにも積極的だったペッシーナ。彼がオフ・ザ・ボールのランニングで相手の守備をかき回し続けたことでイタリアの効率的なサッカーが成立していたといえる。最終的にアシストがペッシーナのもとに来たのは泥臭く走り続けたことへのご褒美だろう。

このポジションにはバレッラという世界屈指のMFがいるが、仮に負傷してもペッシーナがその穴を埋めてくれるから大丈夫。そう思わせてくれるパフォーマンスだった。個人的にはMOMをあげたい。

 




 

切り裂くキエーザ

個人的MOMはペッシーナだが、大会公式のMOMはキエーザのもとに渡った。前半途中に左ワイドにポジションを移したキエーザは何度もドリブルでウィリアムズを翻弄し、ウェールズの守備網を切り裂き続けた。相手が5-4-1で撤退して以降は、ほぼキエーザからチャンスが生まれていた。スピナッツォーラもそうだが、引いた相手を独力でこじあけられるドリブラーの存在の大きさを感じさせるさすがのパフォーマンスだった。

おそらくトーナメントでもスタメンはインシーニェ&ベラルディになるだろうが、そこにキエーザが控えているのは頼もしい限り。途中出場から流れをガラッと変えてくれるだろう。

今後はイタリアが相手を追いかける場面が出てくる可能性も高い。そうなった時にも頼れるジョーカーがいることを、改めて見せつけた。優勝をとるためには、キエーザの強引さがカギになる試合が出てくるんじゃないだろうか。

 




 

あとがき

主力を温存しながらしっかり勝利をもぎとり、3連勝で首位通過を決めたアッズーリ。これで歴代最多タイの30試合連続無敗。次戦で勝利すればベスト8に進出すると同時にマンチーニ・アッズーリが歴史に名を刻むことになる。

今回のEUROで最もチームとして完成されているのはアッズーリで間違いないだろう。攻守両面でここまで安定している国はイタリア以外に見当たらない。順当にいけば好成績を望めるだろう。いや、優勝候補の筆頭格に躍り出たといっても過言ではない。

ただ、グループステージの3試合で対戦した相手は前線のタレントにパンチが足りなかったことは間違いない。たとえばルカクやムバッペと対戦した時、すべての攻撃を押さえきれるのか。今大会は強烈な個に組織のイタリアがどこまで通じるかという構図になりつつあるんじゃなかろうか。

トーナメントからはホームアドバンテージが無くなる。これほど調子がいいと、相手もさらなる対策を講じてくるだろう。そして、上に行けば行くほど強烈なタレントとの対峙も余儀なくされるはずだ。すべての障害をチーム一丸で乗り越えられるか。チーム・マンチーニの戦いは、ここからが本番だ。

 

 

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