【ピッチの統治者】フランク・ケシエのプレースタイルを徹底解剖!

【ピッチの統治者】フランク・ケシエのプレースタイルを徹底解剖!

2021年6月20日 4 投稿者: マツシタ
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ミランがついにCLの舞台に帰ってきた。実に8年ぶりのことだ。それも、最終節でピオーリ体制で唯一勝ったことがなかった宿敵アタランタに2-0の完勝をおさめてのこと。強いミランが戻ってきたことを印象付ける、文句なしの2位フィニッシュだ。

その記念すべきシーズンの主役と言っていい活躍を披露したのがフランク・ケシエだ。

 

コートジボワールで生まれたケシエはプロデビュー前に母国のA代表でデビューした経歴を持つ。2014年9月17日のシエラレオネ戦、若干17歳だった。

その後、2015年の冬にアタランタと契約。翌年夏にレンタル移籍した2部のチェゼーナでプロデビューを果たした。プロ初年度から主力に定着したケシエは36試合に出場して4ゴール2アシストと活躍し、次のシーズンにはレンタル元のアタランタに戻って中盤の軸に。セリエA初年度の19歳にして30試合に出場、6ゴール4アシストを記録した。このシーズンはガスペリーニ体制の初年度。現在につながる躍進の土台を作り上げたシーズンだった。

翌年には早々にACミランにステップアップ。初年度から主力に定着し、以後セリエAにおいて

  • 17-18 37試合5ゴール1アシスト
  • 18-19 34試合8ゴール2アシスト
  • 19-20 35試合4ゴール1アシスト

と中盤の絶対的な要として君臨。多くのゴールにも絡み、ミランにとって欠かせない戦力としての地位を確立していった。

そんなケシエだが、中でも今シーズンの活躍は別格だった。負傷者が続出し毎試合スタメンが入れ替わる中で、ひとり継続して試合に出続けてチームを支え続けた。その結果チーム最多の公式戦47試合出場、チームで2番目に多い14ゴールを記録。さらに一皮むけて完全にワールドクラスの領域に足を踏み入れた。それは、ひとりで中盤を制圧したELマンU戦の2試合を見れば明らかだ。

チーム事情の苦しさを成長のための糧とし、リーグを代表するMFに成長したケシエ。今回は、20-21シーズンの圧巻のパフォーマンスを振り返りながら、彼のプレースタイルについて徹底的に掘り下げていきたい。




ケシエのプレースタイル

 

圧巻のフィジカル能力

ケシエの最大の特徴が恵まれたフィジカル能力だ。183cm74kg、全身を筋肉で武装した屈強な肉体はテレビの画面越しにも規格外だとわかる。相手のコンタクトを受けても岩のようにびくともしない体の強さは異次元だ。これでほとんど筋トレをしないというのだからすごい。

下の動画を見てほしい。セリエA最強の武闘派集団アタランタの選手が3人がかりでもボールを奪うことができない。こうしたボールキープは今シーズン何度も見られた。

 

このフィジカルで相手のバランスを崩し、確実にボールを奪い取る。ボール奪取力の高さがケシエの最大の武器だ。ユース年代ではCBとしてプレーしていた経験も大きいだろう。

  • タックル総数 72(チーム内2位)
  • タックル勝利総数 44(チーム内2位)
  • ドリブラーに対するタックル成功率 61.9%(セリエA 6位) 昨季26.9% それまでも50%以下

このように、タックル勝利数、タックル成功率のいずれのデータをみてもコンタクトプレーの強さは反映されている。

この中でも、ドリブラーに対するタックル成功率のデータに関しては注意してみる必要がある。昨シーズンの勝率は意外にもわずか26.9%しかなかったのだ。それ以前にさかのぼっても、最高値は42.9%。50%を超えていたシーズンはなかった。それが、今シーズンは大幅に向上している。もともと持っていたフィジカルの強さに加え、読みやタックル技術が大きく向上したことがよくわかる。ケシエのボールを奪う技術は今季さらに進化したのである。




運動量豊富でカバーエリアも広い

ケシエは大柄だが決して動きが鈍いわけではない。むしろ運動能力は非常に高く、カバー範囲がとても広い。

走行距離のデータを見てみても、

  • 1試合平均走行距離 11.326km(セリエA8位)

となっていてセリエAでトップ10に入っている。もちろんミランの中では最長の走行距離だ。

この運動量を活かし、広範囲を動いてはボールハントを敢行しまくる。

  • プレッシャー総数 535(チーム内トップ)
  • 1試合平均インターセプト数 1.2(チーム内2位)
  • インターセプト総数 43(チーム内2位)
  • ブロック数 75(セリエA 4位)

プレッシャーもインターセプトもチームトップクラスだ。ブロック数とはシュートブロックとパスブロックの合計でありl相手の何らかのキックを阻止した数を表している。この数値がセリエAでトップ5に入っていることからも、ケシエがしっかり相手との距離を詰めていることがわかるだろう。

また、プレッシャー総数、インターセプト総数はこれまでのキャリアを通してみても今シーズンが自己最多。プレッシャー成功率も自己最高値だ。

このように、守備に関するデータが軒並み自己最高値を更新している。やっぱり今季のケシエはワンランク上のプレーヤーに成長したことがよくわかる。

下はケシエの今シーズンのヒートマップ。全エリアに色がついていて、そのカバー範囲はまさにピッチの統治者だ。中でも左サイドに色が濃いエリアが広がっていることがわかる。

 

これは左サイドバックのテオ・エルナンデスが上がった背後のスペースをケシエがカバーしているからだ。中盤と左サイドの両方をカバーできるケシエの行動半径の広さがあるからこそなせる業だ。

テオのドリブル突破、迫力あふれる突進はミランの大きな武器になっている。そして、それが成立しているのはケシエがその背後をカバーしてくれているからなのだ。

 

また、ケシエはその運動量を活かして自ら前線に飛び出していくプレーも得意としている。先ほどのヒートマップを見ると、相手ゴール前にも色がついていることがわかる。

  • 1試合平均シュート数 1.3

と毎試合シュートを打っていることからもケシエの攻撃参加はミランのひとつの武器になっていることがわかる。特に圧巻なのが試合終盤。相手の運動量が落ちれば落ちるほどケシエは前線へ飛び出して相手をかき回す。

さらに、ケシエは強烈なミドルシュートも備える。そのパワーをすべてボールに込めるため、枠内に収まってしまえばほとんど止めることはできないだろう。




PKの達人

このように、ケシエはプロデビュー当時から毎シーズン得点を重ねてきた。すでにデビューしてからの6シーズンで42のゴールを積み重ねてきている。これらのゴールの中には先ほど説明した前線への飛び出しや強烈なミドルシュートもたしかにある。だが、半分の22ゴールはPKから奪ったものだ。

今シーズン、ケシエはセリエAで13ものゴールを決めているが、そのうち実に11がPKによるもの。これはもちろんキャリア最多だ。

彼が信頼できるPKキッカーであることは、シーズン途中にイブラからその座を譲られたというエピソードを挙げれば十分だろうか。あるいは、ケシエがミランにきてからのPK成功率が86.3%であるのに対し、ここ6シーズンのメッシのPK成功率が68.8%であるといえばいいだろうか。

いずれにせよ、ケシエがサッカー界きってのPK職人であることは間違いない

 

ケシエはゆったりとボールにアプローチし、GKの動きをよく観察して逆側に流し込む。下の写真を見ればわかるように、キックの瞬間も全くボールを見ない。これは相当自信がないとできないのではないだろうか。

仮にGKが動かなければゴールの隅に流し込む。ゆっくりとした助走からはあり得ないくらいボールスピードが出るため、キックを見てからの反応でボールを止めることはほとんど不可能だろう。

GKからすれば先に動いても、動かず待っていてもほとんど止める余地が残されていないのだ。ケシエが目測を誤り自分が飛んだ方向に蹴ってくれるか、外してくれるのを願うしかないだろう。




組み立て能力が大きく向上

ここまで説明してきたように、ケシエはフィジカルと運動量、守備力に得点力と多くの武器を持っている。そして、それらのデータのほとんどで自己最高の数値をたたき出している。もともと持っていた武器にもさらに磨きをかけているのだ。

しかし、ケシエが今シーズン最も伸ばしたのはこれまで苦手としていた配球能力だ。昨シーズンまでのケシエは組み立て能力に関しては凡庸で、フリーな味方に安全なショートパスをつなぐことが多い選手だった。それが、今シーズン劇的に改善されたのである。

まず、単純にボールに触る回数が増えた。

  • ボールタッチ総数 2440(セリエA10位) 

昨季の数字は2030回であり、20パーセントを超える大幅な伸びを記録している。ケシエがミランのビルドアップにおいて中心選手に君臨したことがよくわかる。それはパスに関するデータにも表れていて、

  • 1試合平均パス回数 47.9(チーム内 1位) 
  • パス成功率 89%(10試合以上出場した選手中チーム内 3位)

となっている。ケシエはミランの中で最もパスをつないだ選手なのだ。昨季、一昨季と比較してみると、

〈1試合平均パス回数〉

  • 18-19シーズン 43.2(チーム内 4位)
  • 19-20シーズン 43.0(チーム内 4位)

となっていて今シーズンのケシエの有意な成長が見て取れる。

また、伸びたのはショートパスだけではない。ロングパスに関しても、

  • ロングパス成功数 2.8(チーム内 3位) 
  • ロングパス成功率 77.8%

となっている。再び昨季と一昨季と比較してみると

〈1試合平均ロングパス成功数〉

  • 18-19シーズン 1.6(チーム内 8位)
  • 19-20シーズン 1.9(チーム内 8位)

となっていてその伸び幅は明らかだ。

今までのケシエは安全なショートパスをフリーな味方につなぐことが多かったものの、今シーズンからはリスクを負ってロングパスを通し、展開を変える司令塔としての能力を発揮し始めていることがよくわかる。

ただロングパスの数が増えただけでなく、その成功率の高さも目を見張る。77.8%という数字は20試合以上出場した選手の中では最も高いものになっているのだ。

 

なぜここまでの急成長を見せたのか。理由は頼れる相棒べナセルの長期離脱だ。昨シーズンまでは中盤からの組み立てはべナセルが全面的に担っていた。それもそのはず、べナセルはリーグ屈指のレジスタであり、マンCのペップが獲得を望むほどの実力の持ち主。ケシエからすれば、とりあえずべナセルに預けておけばそれでOKだったのだ。

ところが、今シーズンはそのべナセルが負傷を繰り返し、先発出場は17試合にとどまった。彼が抜けた分、誰かがゲームメイクを担わなければいけなかった。当初、その役割は「ピルロ2世」の肩書を引っ提げてやってきたトナーリが担うものだと思われた。ところが、ふたを開けてみれば組み立てもケシエがやってしまった。まさに1人2役、ひとりでミランの中盤を一手に引き受けたのだ。

結果としてシーズン終盤に復帰したべナセルが、自分がやることが減ってしまって困惑しているように見えるほどにケシエは大きな成長を遂げたのである。

 

さらに、ケシエはドリブルによる持ち上がりでも局面を変えられる。

  • ドリブルによる持ち上がり総数 1695(チーム内トップ)
  • ドリブル成功率 78.7%

となっていて、ミランの中で最もドリブルによるキャリーを見せているのだ。また、ロングパス同様その成功率の高さも特筆もの。78.7%という数字は、20試合以上に出場した選手の中では2位の好数値だ。パスでもドリブルでもボールを運べるケシエの存在感は絶大だ。

ちなみに、キャリーの成功率トップはべナセル。彼もドリブルで持ち上がれるレジスタとして鳴らしている。パスだけでなくドリブルの面でもケシエはべナセルの穴を埋めてしまったのだ。昨シーズン形成された相性抜群のコンビをひとりで完結させてしまえる選手になってしまったケシエ。超万能MFとして完成されつつある。




リーダーシップも兼備

守備、ビルドアップ、フィニッシュとすべての局面で支配力を発揮するケシエ。だが、ボールがないところでの貢献度もまた絶大だ。ケシエは陽気な性格でロッカールームでもチームを盛り上げる反面、トレーニングに真剣に取り組むプロフェッショナルな一面も持っている。苦しい時間帯ではチームを鼓舞するなど、リーダーとしてもチームの中心になっているのだ。そうしたピッチ外での影響力から、チームメイトからは「プレジデント(大統領)」と呼ばれている。

過去には素行の問題も散見されたが、現在はそうした若気の至りは見られない。精神的に成熟した真のリーダーとして君臨しているのだ。

 

このように、

  • 圧倒的なフィジカルでボールを刈り取り、
  • 広範囲をカバーする運動量も持ち合わせ、
  • 前線へ飛び出して得点も奪え、
  • PK職人でもあり、
  • 組み立て能力も急成長してハイレベルになり、
  • リーダーシップも兼ね備えている

ミランが負傷者続出の中でも崩壊することなく戦えたのは、すべてをひとりでこなしてしまうケシエが常にピッチにいたからだろう。彼がチームの道しるべとして中盤に君臨し続けていなければ、ミランのCL復帰はあり得なかったはずだ。




ケシエの伸びしろ

完全無欠に見えるケシエ。ほとんどすべての能力が向上した今シーズンのパフォーマンスを見ると特にそうだ。彼にはまだ伸びしろが残されているのだろうか。

挙げるとすれば決定力だろうか。今シーズンのゴール期待値と実際のゴールを比較してみると、

  • ゴール期待値 13.6
  • 実際のゴール 13

となっていて、データ上ではもっとゴールを奪っていてもおかしくはないということになっている。PKを除いたデータにしてみるとそれは顕著で、

  • PKを除いたゴール期待値 3.7
  • 実際のPKを除いたゴール数 2

データ上は流れの中から倍近いゴールを奪っていておかしくない。過去にさかのぼってみても、ケシエの実際のゴール数がゴール期待値を上回ったのは18-19シーズンだけ。基本的には期待値よりもゴール数は低くなっている。これは、ケシエが決定的なチャンスを逃していることを表している。

たしかに、ゴール前まで飛び出し決定的なチャンスを迎えた場面でポストに嫌われてしまったり、GKに止められてしまう場面は何度か見られた。こうした場面をきっちりモノにできるようになれば、PKだけでなく流れの中からの得点も増やしていけるようになるだろう。

今季の枠内シュート率を見てみても

  • 枠内シュート率 22.2%

と低めの数値。16-17シーズンのそれが39.7%であったのを見ると、もっとやれるはずだ。

流れの中からも得点を量産し、常にシーズン2桁得点を記録するようになれば、世界最高のMFの称号も夢ではないのではないだろうか。




あとがき

来季、8年ぶりにCLを戦うミラン。ポット4に振り分けられることが決定しているため、強豪クラブと多く対戦することになる。そこを突破して躍進するためには、ケシエの活躍は不可欠だろう。

多くの選手と同様、ケシエにとって自身初のCLの舞台。ここで大活躍すれば、世界的な名声が見えてくる。欧州最高峰の舞台でケシエがどんなプレーを見せて中盤を制圧してくれるのか、今から楽しみでならない。

 

 

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