【手段の目的化】日本代表活動レポート vsセルビア

【手段の目的化】日本代表活動レポート vsセルビア

2021年6月15日 3 投稿者: マツシタ
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5試合を戦う6月シリーズも終盤戦に突入した。ここまで3試合は明確な格下との対戦だった中、4試合目の対戦相手はセルビア。ほとんど2軍だったとはいえ、実力的には今回の5試合の中でもっとも日本に近い対戦相手だろう。

これまでとは違った展開になり、多くの新しい課題が発見できたセルビア戦について振り返ってみたいと思う。

 

スタメン

 




相手を崩すために足りなかったこと

この試合、セルビアは自陣に守備ブロックを作って待ち構えてきた。そのため、日本がボールを握りつつ相手のブロックを崩すチャンスを伺うという展開になった。ここはこれまでの3試合と変わらない。

違うのはセルビアの守備ブロックの完成度がアジアの弱小国とは比較にならないほど高いこと。組織として統率が取れていることはもちろん、そのブロックを構成するひとりひとりの選手のクオリティも高い。大柄でコンタクトに強く、自分が担当する選手にボールが入った時にはタイトに寄せてきた。

そんなブロックを、日本は最後まで崩せなかった。不可解なオフサイド判定でオナイウのゴールが取り消されたとはいえ、結果的にはコーナーキックからの伊東のゴール以外に得点を生み出すことはできなかった。決定的なチャンスも、オナイウのオフサイド以外には浅野の飛び出ししかなかったと思う。

何が足りなかったのだろう。ここでは4つのポイントを挙げさせてもらいたい。




①相手の対策に対する修正ができない

試合開始当初、セルビアは5-2-3で守備ブロックを組んで、ゴール前のスペースを消しつつ前線にもプレッシャーを掛けようとしてきた。これに対し、日本は普段通り3-2-5に可変。すると、日本と相手の陣形は鏡写しのように噛み合う。つまり、セルビアからすれば自分が担当するマッチアップ相手がとてもわかりやすく、役割が整理しやすい状態になっていた。

 

これにより、日本のキーマンである南野・鎌田の両シャドーにボールが入った時にはストッパーが前に出てきて厳しくプレス。日本は崩しのキーマンになかなかボールを入れられず苦しんだ。

だが、日本も対抗策を見出す。両ストッパーが前に出てきたことで空いたハーフスペースの裏を古橋に狙わせたのだ。序盤には古橋への一発ロングボールが何度か入り、攻撃の起点になっていた。

 

これを受けて、セルビアのストッパー2人は後ろを気にし始める。それによって両シャドーへのマークが緩くなり、セルビアのDFラインとFWラインとの間にスペースができ始めた。横幅をボランチの2人でカバーすることは不可能であるため、彼らボランチの両脇、シャドーの後ろには日本が自由に使えるスペースが広がっていた。

これをしっかり認知していたのが鎌田。彼が斜めに下りてこのスペースを起点にすることで日本は徐々にセルビアのブロックの内側にボールを運び始める。

 

少しずつうまくいき始めていたものの、セルビアはすぐさま修正を施す。1列目の両サイドをMFラインまで下げて5-4-1に変更。鎌田が使っていたスペースを消したのだ。これにより、セルビアは5-4-1で堅固な守備ブロックを形成。最前線に1トップしかいなくなったため攻撃はおぼつかなくなったものの、日本の攻撃を封じることには成功している。

 

このように、日本が見つけたセルビアの弱点はことごとく消されていったこれが世界基準だ。お互いの変化を見逃さず、その意図を素早くくみ取って修正を施すのだ。世界の最前線である欧州では、この修正の応酬が当たり前に行われている(イタリアvsトルコのマッチレビューも参照)。弱点が最後まで修正されないアジアの舞台とは話が違うのである。

一方、日本がこの後修正を施すことはなかった。たしかにハーフタイムのオナイウの投入で流れを変えたものの、世界基準でいえばそれでは遅いのだ。ハーフタイムの1度でしかチームに変化を加えれないようでは不十分なのだ。

たとえば、相手が1トップだけを最前線に残しているのなら、無理に3バックを作らなくてもCBの2人だけで十分数的優位を確保できる。3バックを形成していたボランチの片方を前方に送り込むことで、中央エリアやサイドに数的優位を作り出し、崩しの起点にすることができるはずだ。しかし、日本は最後まで3バックにこだわった。

その様子を見ていると、手段が目的化してしまっているように思えてならない。後方に3バックをつくるのは相手のプレッシャーを外してスムーズにボールを運ぶためであり、それがCB2人だけでも達成できるのなら無理に3バックを保つ必要はないはずだ。ここら辺の本質を理解できていないのではないか、そういうルールになっているから思考停止で3バックに可変しているのではないかという懸念が浮かんでくる事例だ。

こうした修正をピッチ上の選手が自分たちでできるのならそれが理想だが、できないのなら外から修正を施してやる必要がある。放任主義は世界のトレンドの正反対で、いまはベンチワークも含めた総力戦でなければ戦うことができなくなってきている。こうした時代の流れをくみ取ったうえで、適切な対応をとっていかなければ世界の舞台で相手の守備ブロックを打ち崩すことはできないだろう。




②動きの連動性の不足

先ほどの項でも書いたように、日本は古橋が裏のスペースをアタックしたり、鎌田が空いたスペースを巧みに見つけて潜り込んだりといった個々の動きは見られていた。しかし、そうした「最初のアクション」に連動する選手が少ないことはどうも気になる。タジキスタン戦でも浅野が孤立していたように、この6月シリーズを通して日本は味方の動きに連動する意識が低いように感じる。うまくいっていたのはフルメンバーで臨んだミャンマー戦だけだ。

連携が成熟していないと言ったらそれまでだが、果たしてそれだけが原因だろうか。

誰かが動けば、相手がつられてスペースが空く。そうした2手先で空くスペースを認知し、侵入する感覚を備えている選手は、日本で鎌田大地ただ一人であるように感じる。だから、鎌田はスペースを見つけてライン間でプレーすることができるし、アクションを起こすことで相手の守備ブロックに風穴を開けることができる。しかし、この感覚を共有できる選手がいない。だから、日本は相手を崩せない。鎌田と感覚を共有できる選手があと2人いれば、日本は面白いように相手のブロックを崩せるはずだ。

 

古橋は「最初のアクション」に特化したプレーヤーだ。そのオフ・ザ・ボールの動きは達人級だと思っている。だが、残念ながら古橋に連動してくれる選手がいない。そのうえ、イニエスタやフェルマーレン、サンペールらが古橋の裏に高精度のボールを供給してくれる神戸とは違い、この日は古橋へのロングボールがあまり出てこなかった。だから、古橋は裏への動き出しを途中でやめてしまった。そうして足元での勝負に固執し、屈強なセルビアのDFにつぶされてしまった。

古橋が賢いがゆえに試行錯誤した結果、うまくいかなかった。だが、古橋が工夫しようとしていたことはよく感じられた。個人的には、問題は古橋よりもそれを活かしてあげられない周りに問題があるように思う。これで古橋の最大の長所が失われないことを願うばかりだ。

 

日本人選手の技術レベルは高いはず。足りないのはテクニックよりもサッカーセンスなどのインテリジェンスだろう。日本サッカー界全体にとって考えさせられる問題なのではないだろうか。




③最終ラインのボールの動かしかた

古橋へのボールが出てこなくなったという話をしたが、最終ラインからの配球能力がそこまで高くないこともまた日本が相手を崩せなかった原因のひとつだ。ミャンマー戦タジキスタン戦の代表レポートに散々書いたのでここでは簡単にとどめるが、やはり欧州でプレーしているCBとJリーグのCBでは配球能力に雲泥の差があるそれは技術の問題ではなく戦術的な感覚の問題だ。

どちらかと言えば意識の差なので、解決しない問題ではないはず。リーグ全体で最終ラインからの配球について向上させていかなければならないのではないだろうか。




④最後の局面のクオリティー

そして、ボールをファイナルサードに運んだあとの崩しにおいても課題がある。点を奪うために最終的に必要になってくるのは個々のクオリティーだ。戦術でかばうといっても限界はある。相手を一人二人とかわす、ミドルシュートを叩き込むなど、相手のブロックを壊すアクションがひとりひとりに求められる。

それでは、この日の日本はどれだけ相手DFをドリブルでかわしただろう。きわどいドリブル突破はあっただろうか。南野が鎌田に供給したラストパスは2本ともずれていた。これがあっていれば得点になっていたのではないか。浅野は比較的余裕がある1対1を外している。不可解ではあったが、もしオナイウがどフリーでオフサイドになっていたのならいただけない。

このような、攻撃を仕上げる局面での力不足もまた露呈した格好になった。三笘のような強烈な個性がもっと必要かもしれない。

 

モンゴル戦やミャンマー戦のレポートで見たように、日本代表はアジアの弱小国相手にはその守備ブロックの弱点を探り当て、適切に崩していくことができた。しかしながら、少し主力が欠け、相手の守備ブロックの完成度が高まるとそれを崩すことができなかった。

相手の守備ブロックの完成度が高かったとはいえ、相手はセルビアの2軍だ。これを崩せないようでは、欧州諸国の組織だった守備を崩すことなど到底不可能だろう。世界の最前線と比較すると、日本はまだまだ遠い場所にいることが露呈されたのではないだろうか。




なぜ守田&橋本コンビはうまくいかなかった?

ここからはより細かいところに目を向けていこう。まずはボランチだ。

今日のスタメンは守田&橋本。橋本が後方に残って最終ラインをサポートし、守田が前線と中盤を往復しながらバランスをとっていた

結論から言ってしまうと、この形はうまくいっていなかった。そして、ハーフタイムに橋本と川辺が入れ替わり、バランスは改善された。一体なぜ前半はうまくいかなかったのだろう。

これは橋本にレジスタ的な役割を任せたことが原因だろう。先日橋本が出場したタジキスタン戦では相手はべた引きで、日本のパスワークに制限をかけることはなかった。だから橋本のところにはほとんどプレッシャーがかからなかった。一方、セルビアは自陣にしっかり守備ブロックを組みながらもボールホルダーに対してはしっかりプレッシャーをかけてきた。今までならなんとなくでも前を向けていたところが、この日はの橋本は何度も不適切なタイミングで前を向こうとしてはボールロストを繰り返してしまった

緩い相手に慣れてしまったのか、それともそもそもレジスタとしての適性がないのか。いずれにせよ、低調なパフォーマンスに終始してしまった。ハーフタイムで交代を告げられたのも納得だ。

 

後半から入った川辺がそれを改善した要因かというと、それもまた違う。バランスが改善されたのは守田が低めの位置に入ったからだ。ポルトガルで攻撃面が成長したことが注目される守田だが、低めの位置からのゲームメイクも問題なくやれる。それをセルビア戦で改めて見せてくれた。さすが、川崎でゲームメイクを担っていた選手だ。

橋本との大きな差はプレス耐性相手のプレッシャーをいなす力だ。オナイウのゴールがオフサイドで取り消された場面。あの起点になったのは、守田が相手のプレッシャーを逆手に取り、鎌田とのワンツーでオープンスペースにボールを持ちだしたプレーだった。橋本に対してお手本を見せてあげたような、二人の差を象徴するような場面だった。

対して、橋本はプレッシャーを受けてあわててしまう場面は多かった。また、フリーであるにもかかわらずルーズボールを味方につなげない場面も目立った。周囲の認知が甘いように見える。

この試合を見る限り、たしかに橋本は日本のボランチに求められる組み立て能力が不足している。しかし、だからと言って切り捨てるのはまだ早いのではないか。

たとえば、前半のうちに守田と橋本の位置関係を逆にしてればどうなっていたか。後半に修正されたのは川辺が入ったからではなく、守田が低めの位置に入ったから。前半のうちにこの修正を行っていればいち早く修正できたのではないか。橋本にはフィジカルという明確な長所があり、得点力も日本のボランチの中では一番高いように見える。彼の攻撃力はセルビアの引いた守備を崩すために有効だったかもしれない。ビルドアップを安定させることができるとともに、攻撃面でも有効な一石二鳥な手になったのではないだろうか。

先ほどの修正力のなさにもつながってくるところだが、現在の日本は適材適所の配置がデザインされていない印象を受ける。それは、過去の記事で何度も指摘している佐々木の左サイドバック起用を見ても感じる。ここを指導者側がしっかり考えてやれば、橋本ももっとポジティブな印象を残せたのではないだろうか。

選手にできないことを押し付けるのではなく、それぞれができることを組み合わせ、それが自然な形で機能するチーム作りができないものか。セルビア戦のボランチ問題を見て、改めて感じた。




オナイウは日本に最適の1トップだ

問題点を列挙してきたが、この日の日本にはポジティブな発見もあった。それがこの日代表にデビューしたオナイウ阿道だ。

前半に相手の巨漢DFにつぶされて機能しなかった古橋とは打って変わって、持ち前のフィジカルを活かしてしっかりボールをキープし、攻撃の起点となった。タイプでいえば大迫系統のプレーだ。今までの日本にフィットしてきたタイプのFWであり、2列目の南野や鎌田との連携もスムーズだった。大迫は柔軟なテクニックを武器にするタイプだが、オナイウはよりフィジカル。同じプレースタイルながら異なる特徴を持っているのも魅力的だ。

オナイウが素晴らしかったのはポストプレー一辺倒のプレーに終始せず、状況に合わせて裏のスペースをアタックする動きも見せていたこと。日本の先制点は、相手DFライン裏に抜け出したオナイウが奪ったコーナーキックから生まれている。これはいわば浅野・古橋系統のプレーで、大迫はあまり見せないプレーだ。オナイウは大迫タイプと浅野・古橋タイプの両方の特徴を兼ね備えたハイブリッド型なのだ。

大迫よりもプレーエリアが広く、中盤に引いてきたかと思えば裏へ抜け出す。最終ラインとの駆け引きを繰り返すことで相手のブロックに揺さぶりをかけられるダイナミックなFWだ。オナイウが大きく動いてくれれば、相手DFはその動きにつられて徐々に陣形が乱れていく。そうすれば、日本のストロングポイントである2列目、特に鎌田が潜り込むためのスペースを多く作り出すことができるだろう。まさに日本の1トップに最適な人材なのではないだろうか

彼の発見はセルビア戦の最もポジティブな点だといえる。今後の活躍次第では代表に定着してくるのではないだろうか。




プレッシングの前後分断問題

ここまでは攻撃の話をしてきたが、ここからは守備についても見てみよう。

問題が露見したのは相手のビルドアップに対するプレッシングだ。セルビアは基本的にテクニックに優れておらず、ビルドアップはあまりスムーズだったとは言えない。簡単にロングボールを蹴りだすことも少なかった。

しかしながら、ときおり日本の中盤にスペースを見出し、そこに鋭いくさびを供給していた。相手のレベルが高くなれば、もっと簡単にプレッシャーを回避されてしまうのではないだろうか。

原因は最終ラインの押し上げが十分ではないことだ。前線の4人が前に出ていく一方で、DFラインは後ろにとどまっている。当然中盤には広いスペースを与えてしまう。このスペースに起点を作らせないためには、DFラインも連動して相手の選択肢を削っていく必要がある。陣形が前後で分断され、連動していない。これが今の日本のプレッシングの現状だ。

 

また、プレッシングの狙いも不透明だった。どこにボールを追い込み、どこでボールを奪うのか。それが見えてこなかった。結果的にセルビアは簡単にロングボールを蹴りだしていたが、それは日本が狙って誘発したプレーには見えなかった。日本のプレッシングはまだまだ発展途上だといえるだろう。

これは今まで見えてこなかった問題。日本に対してビルドアップしていけるほどの実力を持った相手との対戦がなかったからだ。この新たな課題をどう解決していくのか、森保監督の手腕に注目だ。




完璧だった谷口

前項で確認したように、簡単にロングボールを蹴ってきたセルビアの攻撃。日本の最終ラインには屈強な相手アタッカーとの競り合いが求められた。その点、谷口彰悟は完ぺきだった。相手との競り合いはほとんど完勝。起点を作らせなかった。今回の6月シリーズで招集されたCBの中で最も対人守備が安定していたと思う。さらにいえば、足元のテクニックも安定していた。効果的な縦パスも何回か見られ、今回招集されたCB陣の中では最もビルドアップ能力が高いように感じる。さらに積極的に縦パスを通していけるようになれば、吉田や冨安、板倉らにも劣らない貢献度を期待できそうだ。

攻守両面で能力を示した谷口。今まで招集されなかったのが不思議なくらいだ。今後も安定したプレーを見せ、ぜひ代表に定着してほしいところだ。

 

谷口の台頭で苦しくなったのがペアを組んでいた植田。対人の強さを絶対的なアピールポイントにしていた植田にとって、同じく対人に強い谷口はライバルだ。それでいて足元のテクニックは明らかに谷口が上回っている。川崎でプレーしているだけあって、谷口から効果的な縦パスが入る場面は植田のそれより明らかに多かった。こうなってくると、立場が厳しくなるのではないだろうか。今後の奮起に期待したい。




あとがき

これまでには見られなかった課題が見えてきたセルビア戦。これを解決したいところだが、残念ながら次の対戦相手は日本よりも力が劣るキルギス。今日とはまた違った戦いになるだろう。アジアで戦いながらも世界のトップを目指す難しさを改めて感じる。

ヨーロッパとの親善試合が難しい以上、南米やアメリカ・メキシコ、あるいはアジアの中でも上位にランクされる強豪国(韓国やオーストラリア)とのマッチアップをより積極的に行っていく必要があるのではないだろうか。

いずれにせよ、次のキルギス戦がこの6月シリーズの最後の試合。集大成になる。この試合で成長した姿が見られることに期待したい。

 

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