【停滞と修正】日本代表活動レポート タジキスタン マッチレポ

【停滞と修正】日本代表活動レポート タジキスタン マッチレポ

2021年6月11日 5 投稿者: マツシタ
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最終予選突破を決めたミャンマー戦、史上初の五輪代表との「紅白戦」を経て、日本代表は6月8日のタジキスタン戦に挑んだ。オーバーエイジや負傷などによって主力選手が多く抜けた中、新しい戦力を試しながらの戦いとなったこの試合。ベストメンバーが固まりつつある中で、そこに割って入れそうなタレントがいるのか、また主力を欠いた中でどれだけチームが機能するのかに焦点が当たる試合だった。

今回はベストメンバーとの差にも注目しながらタジキスタン戦を振り返っていきたい。

 

 

スタメン

 




機能しない左サイド

日本は開始6分に幸先よく先制したものの、直後に追いつかれてしまうという立ち上がり。その後はタジキスタンがしっかりブロックを組んで守りを固め、日本がボールを持ちながらチャンスを伺うという展開になった。

結論から先いに言ってしまうと、日本はこの守備ブロックを崩すのに苦労した。一体なぜなのか。

タジキスタンは4-5-1でブロックを組みつつ、インサイドハーフの10番が外側を切るようにプレスしてきた。そして、両サイドハーフは上がってくる日本のサイドプレーヤーやボールの動きに合わせてポジションを下げ、6バック状態になることも辞さなかった。

 

タジキスタンがボールを左に追い込もうとしたということは、タジキスタンからしたら右にボールを入れられたくなかったのだ。つまり、タジキスタンの右、日本でいう左サイドから効果的に攻め込めれば相手からしたら嫌だっただろう。

しかし、残念ながら前半の日本の左サイドは機能しなかった

下に示した選手の平均ポジションを見てほしい。日本の左サイド、佐々木と原口が縦並びになっていることがわかると思う。

 

それぞれのヒートマップを見てみてもわかる通り、プレーエリアが被ってしまっている。

 

 

つまり、佐々木と原口のポジショニングのバランスが悪かったことが左サイドが機能しなかった原因だ。ふたりともタッチライン際に開いてボールを受けようとしてしまうあまり、左のハーフスペース(下図の青で囲んだ部分)に選手が配置されていない状態が続いていた。

 

先述のように、タジキスタンは4-5-1のうち右インサイドハーフが前に出てくるので、日本側から見た左ハーフスペースは空いた状態になることが多かった。このエリアが相手の守備ブロックを内側から崩壊させるキーポイントだったのだ。しかしながら、ここに人がいないことで日本はタジキスタンの守備ブロックの内側に侵入できず、ブロックの外でパスを回すことに終始した

こうなると、相手からすればただブロックの外をボールが行き来するだけなので怖くない。人数がそろった状態であれば、サイドにボールが出ても複数人で囲んでタッチライン際に追い込める。攻撃を押さえるのはとても楽なのだ。

たしかに原口がカットインに固執したことはよくなかった。相手が中央を固めていたのだからなおさらだ。しかし、原口の持ち味がそこにあることもまた事実。その持ち味を引き出せるようなサポートをチームとしてできていなかったことは褒められた話ではない。

もし佐々木が斜め前にインナーラップしていくことができれば、相手がひきつけられて原口にカットインするためのスペースを提供することができる。しかしながら、佐々木にはそのようなプレーのレパートリーはない。

 

そもそも佐々木は攻撃参加を怖がっているように見えた。原口にボールが入った時も縦にランニングするのではなく、後方にサポートについてバックパスを受けようとする場面が多かった。また相手の最終ラインに対するプレスは1トップ+10番の2枚だったにもかかわらず、両CB+ボランチの片方+佐々木で4枚いることが多く、後ろに過剰に人数をかけた結果前線のパスコースが少なくなってしまっていたのだ。

このように、佐々木が適切なポジショニングをできていなかったことが日本の攻撃停滞を招いたひとつの原因と言える。

 

もっとも、これは当たり前の話だ。佐々木はクラブレベルではCBが本職。彼の長所が攻撃ではなく守備にある。それゆえ4バック採用時でもサイドバックではなくセンターバックを務める選手なのだ。

そんな選手に的確な攻撃のサポートを求めようとすることが間違いであり、中に絞って中盤でプレーしろなどもってのほかだ。これは佐々木の問題であると同時に、佐々木をSBとして起用し続ける森保監督の問題でもある

3月シリーズの記事でも指摘したが(詳しくは日本代表活動レポート 3月編を参照)、攻撃時に佐々木に適切な役割が与えられていない問題は森保監督が就任した当初から全く改善されることなく放置され続けている。いつまで見て見ぬふりをするつもりなのだろうか。厳しいことを言うようだけれど、愛弟子の評価を下げ続けているのはほかでもない森保監督自身だ。佐々木をどう起用すればその持ち味を引き出せるのか、そもそも佐々木が日本代表のサイドバックに適した人材なのか、いま一度考え直すべきではないだろうか。




橋本ではなく守田がスタメンである理由

このように、後ろに人数が重くなりすぎて前線に人数が足りなくなってしまった日本だったが、これは佐々木だけの問題ではない。ボランチの一角が高い位置をとっても、この問題は解決していたはずだ。

この日のボランチコンビは川辺と橋本。どちらかと言えば橋本が高めの位置をとることが多かったことは、彼が後半にクロスに合わせて得点を挙げたことからもわかる。それでは、橋本は効果的なポジショニングをできていたのか。

下は橋本のヒートマップだ。佐々木(19)と原口(8)の間のスペースを中心に動いていることがわかる。

 

対して、下はミャンマー戦の守田のヒートマップ。橋本よりも広範囲を動いていることがわかり、なかでも右サイドハーフの南野の平均ポジションともかぶるくらい高い位置どりをしていることがわかる。橋本と比べても、プレーエリアは高い位置にあるといえる。

 

橋本と守田は国内で守備的MFとしてプレーし、海外に移籍してから攻撃参加を身につけたという共通点がある。そんなふたりに差があるとすれば、いつどこに立つかという判断の面。状況に応じて立ち位置を変えることができるかどうかだ。

ミャンマー戦の守田も最初の数分は低めの位置で最終ラインのビルドアップを補助していたものの、相手のアンカー脇に有効なスペースがあるとみるや高めのポジションを取り、中央エリアに数的優位を作り出すことに成功していた(詳しくは日本代表活動レポート 6月前編を参照)。

対して、橋本は低い位置にとどまり続け、先ほど指摘した空いている左ハーフスペースに入っていくプレーを見せなかった。

お互いに万能な選手だからこそ、それをいつどこで発揮するかの判断ができているかどうかが勝負を分けると思う。何でもできる中でどの力にフォーカスするのか。その判断力は、現時点で守田が上回っているように見える

橋本が守田を追い抜いてポジションをつかむためにはその万能な能力を適切な場所とタイミングで発揮できるようにならなければならないだろう。得点能力は守田よりも橋本の方が高いはず。点が欲しい状況で橋本はジョーカーになりうるだろう。だからこそ、状況判断により磨きをかけてほしいところだ。




力不足を露呈した最終ライン

このように、前線の人数が少なく、パスコースが少ないがゆえに相手のブロックに潜り込めなかった日本。しかしながら、パスの受け手だけでなく出し手の方にも問題はあったといえる。

今日の最終ラインは2年ぶりに召集された昌子源とJ1で好調の中谷進之介というコンビだったが、このふたりからは効果的なパスが配球されなかったというのが結論だ。

足りなかったポイントはふたつ。ひとつが相手のブロックを揺さぶるプレーだ。この日の昌子と中谷は安全な横パス、それもショートパスをつなぐことに終始してしまった。それも、パスをさばくまでのテンポが遅い。川崎フロンターレのように、ショートパスでも素早くつないでいけば相手のブロックを揺さぶることができるのだが、昌子と中谷はボールを受けてからパスコースを探している印象が強く、ボールの流れをよどませてしまった。いわゆる「各駅停車」だ。これでは相手のスライドも容易である。

加えて、ロングパスが少なかった。モンゴル戦の日本のロングパス成功総数が50だったのに対し、この日のそれは30。モンゴル戦の6割でしかなかった。距離を変えるボールを入れればそれだけ相手は長い距離を移動しなくてはならず、それだけ守備陣形を乱せる。しかし、この日の日本にはそうしたプレーが見られなかったのだ。

足りなかったポイントの二つ目がくさびのパスだ。これは縦への揺さぶりと言える。パスコースが少ないながらに、南野や古橋に縦パスを通せる場面は少なからずあった。しかし、今日のCBコンビはそのようなチャンスを見逃し、ボランチやサイドバックへの安全な横パスを多くつないでしまっていた。積極性に欠いていたといえると思う。

日本の前線の選手たちは時間がたつにつれて足を止めてしまった。これは、いくら動いても最終ラインからパスが出てこないことにも原因があったのではないだろうか。

また、冨安や吉田、板倉にはパスコースが空いていなければ自分がドリブルでつっかけて相手を引き付け、味方をフリーにするテクニックを有している(詳しくは日本代表活動レポート 6月前編を参照)。このようなプレーのレパートリーも昌子と中谷にはないように感じた。

レギュラークラスの3人と比較すると、昌子と中谷はビルドアップ能力で大きく劣るというのが現実だと思う。昌子のあまりにも適当なクリアを拾われて喫した失点の場面を含め、実力不足を露呈してしまったといえる。

これはJリーグ全体に言えることだが、ボールを握るチームが多くなった一方で引いた相手を崩すためのボールの動かし方に課題を抱えているチームが多い。これは、CBに相手のブロックを揺さぶるための技術が不足していることに原因があるのではないだろうか。日本代表に選ばれている選手は当然リーグの最高峰にいるプレーヤー。そんな彼らでも、欧州でプレーする選手たちとは大きな差があるのが実情なのだ。リーグ全体でどう相手を動かし、陣形にひびを入れてそこを突いて行くかを鍛えていく必要があるのではないだろうか。




鎌田はいかにして日本を変えたのか

ここまでみてきたように、前半の日本はタジキスタン相手にてこずった。しかし、後半になるといくぶんか改善され、前半よりも効果的な攻撃がみられるようになっていった。

理由は後半頭から登場した鎌田大地と坂元達裕だ。

鎌田は前述の左サイドの問題を解決してくれた。彼のヒートマップを見てみよう。相手のMFラインと最終ラインのライン間を幅広く動き回っていることがわかる。特に佐々木に替わって小川が投入される62分までは左サイドを起点にプレーしており、前半は有効活用されていなかった左ハーフスペースにポジションどって攻撃の起点になっていた。彼が輝いたのはタジキスタンの弱点を的確につき、フリーになれるスペースを見つけたからなのだ。

 

鎌田はハーフスペースを起点としながらも、状況に応じて古橋と入れ替わってサイドに流れたりしながらタジキスタンの守備陣を混乱させた。橋本になかった状況に応じた柔軟なポジションングも見せてくれたといえる。

これにより、佐々木が後方にとどまっていてもサイドと一つインサイドの両方に選手が配置され、日本のポジションバランスが劇的に改善されたのである。これは森保監督の指示だった可能性があり、そうだとすると素晴らしい修正だったといえる。

また、鎌田が広範囲を動くことによって前半は失われていた流動性も取り戻した。テクニックはもちろん、インテリジェンスの側面でも別格だった鎌田。彼の存在が日本にとっていかに大きいかを見せつける45分となった。




山根の変化

一方の右サイドに入った坂元達裕も効果的だった。前半は機能性に乏しかった右サイドを改善することに成功している。それは、前後半での山根の変化を見ても明らかだ。

前半の山根は非常にポジションが低かった。それは、平均ポジションを見でばよくわかる。

 

なぜ山根のポジショニングは低くなってしまったのか。原因は3つあると思う。

ひとつは古橋との位置関係。平均ポジションを見てもわかるように、古橋はトップ下の南野よりも内側に平均ポジションがある。積極的に内側に絞っていった古橋は右のハーフスペースを超えてセンターレーンで主にプレーし、2人目のCFのようにふるまっていた。その結果、山根との距離が離れてしまった。山根はオープンスペースでは推進力あるドリブルを見せるものの、この日のように引いた相手に対して狭いスペースを抜けていくようなドリブルは得意としていない。だからこそサイドハーフのサポートが必要なのであり、古橋というが中に絞っていったことでサポートを欠いた山根は高い位置取りを躊躇したのではないか。

もうひとつは精神的な問題。日本の失点シーンは、逆サイドからのクロスボールに山根が競り負けたことで生まれたもの。この場面が山根にメンタル的な影響を及ぼしたとしても不思議はないと思う。加えて、タジキスタンは山根のサイドから徹底的に攻めてきた。これはタジキスタンの選手の平均ポジションとプレーエリア、そこに表示された矢印の長さを見ても明らかだ。

 

 

一度やられた上に自分のサイドを相手が徹底的にせめてくる。リスクを負うことを嫌い、守備的なふるまいを選択したとしても不思議ではない。

3つ目が最終ラインのパスの回し方。先ほど説明したように、この日の日本はショートパスを各駅停車で回すことが多く、ロングパスは使わなかった。だから、山根が高い位置に張っていてもそこに直接ロングパスは届かない。それよりも、低めの位置でCBと近い位置をとっていたほうが各駅停車のパスをスムーズに受けられるだろう。そういう意味でも、山根は低い位置にとどまっていたのではないか。

これらの理由からポジション取りが低くなってしまった山根だったが、それでもしっかり結果を出したことは素晴らしかった。日本が前半に奪った2点はいずれも山根が後方から出した斜めのパスが起点となっている。こうした低めの位置からの配球能力、いわゆる「司令塔としての能力」は酒井宏樹よりも優れているように見える。うまくいかないなりにしっかり持ち味を発揮して結果につなげられるあたりに、山根の実力の確かさが見て取れる。

 

このように前半は低めの立ち位置にとどまった山根だったが、後半は一転してサイドの高めの位置に進出していけるようになっている。その助けとなったのが、後半頭から登場した坂元達裕である。

下は坂元のヒートマップ。あまり中央には進出せず、アウトサイドレーンとインサイドレーンに柔軟にポジションしていることがわかる。

 

このように、右サイドの人選をCFタイプの古橋から純ウインガータイプの坂元に変更したことで山根は高い位置をとれるようになった。坂元とポジションを入れ替え、内外を使い分けながら攻め込んでいく。川崎で見せていた本来のプレーが出せるようになっていったのだ。そうして生まれたのが日本の3点目。高い位置をとった山根が真横に折り返したクロスボールがアシストになった形だった。

 

中央に絞っていく古橋に変えて坂元を入れて山根の活力を取り戻し、古橋を左に持っていって鎌田と組ませることで両サイドのバランスを一気に改善した森保監督の交代策は見事だったと思う。同じような采配を今後もどんどん続けてほしいところだ。

そして、山根自身のパフォーマンスが素晴らしかったことは言うまでもない。高い位置取りでも低い位置からでも決定的な仕事ができることを証明した。酒井宏樹とはタイプが違うが、山根も十分日本代表の主力としてプレーしていけるレベルにあると思う。それくらいポジティブなプレーだったといえる。それをサポートした坂元も、デビュー2試合目ながら効果的なプレーを見せてくれたといえるだろう。




大迫と浅野の違い

この試合のもう一つの注目ポイントが大迫不在の1トップだった。長年代役不在が叫ばれているこのポジションを務めたのは浅野拓磨だ。

浅野の最大の武器は言うまでもなくその爆発的なスピードである。それゆえ、浅野は相手の最終ラインと何度も駆け引きし、裏への飛び出しを積極的に狙っていた。

大迫が引いてきてのポストプレーで最終ラインの前に起点を作るのに対し、浅野は裏でボールを受けることで最終ラインの後ろに起点を作るプレーヤー。大迫の代役というよりも、異なるタイプのプレーヤーで、それに応じた運用が求められるといえる。

結果から言えば、浅野の裏抜けは効果的に作用していたといえる。それは浅野の裏への飛び出しが日本に先制点をもたらしたことからも明らかだ。大迫と違って単独でフィニッシュに持っていってくれるのは頼もしい限りだし、たとえボールが出てこなくても浅野の動きにつられて相手の最終ラインが乱れれば、日本の最大の強みである2列目のプレーヤーにスペースを提供することができる。彼の縦ベクトルの動きは日本代表にとって新たな武器になりうると思う。

ただ、浅野のスピードが速すぎて周りがついていけていないという課題も見えた。特にカウンターの時にそれは顕著。大迫の場合はしっかりボールをおさめて周囲の押し上げを待てるため、厚みのある連動したカウンターを仕掛けられる。

一方、浅野の場合はそのスピードが速すぎる上に浅野以外のプレーヤーは足元でボールを受けようとしているため、浅野へのサポートが遅れがちになっていた。そのため、浅野が一人でフィニッシュに持って行けなかった時にバックパスしか選択肢がなく、せっかく相手を押し込んだのに後方から組み立て直しになる場面が散見された。今後は浅野の動き出しにどれだけ周囲が連動できるかが課題だろう。

これは浅野よりも周りの選手たちの問題で、大迫が起用される時と浅野が出場する時で動き方を変えられれば、日本にとって大きな武器になりうると思う。今後のトレーニングや試合で連携がさらに深まっていくことを期待したい。




あとがき

このように、スタメン組との大きな差が露呈したポジションもあれば、異なるオプションとして十分期待できるプレーを見せてくれた選手もいた。ポジティブな発見とネガティブな発見があった試合だったと思う。

これを活かして行けるかは自分たちだ。そういう意味で、タジキスタンよりもさらに洗練されたプレーを見せるであろうセルビアとの一戦にどれほど修正を加えてこれるかは注目だ。

セルビアはほぼ2軍だが、それでも6月シリーズで最も完成度が高い対戦相手であることは間違いないはず。日本がどんな戦いを見せてくれるか楽しみだ。

 

 

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