【進化と不安】日本代表活動レポート 2021年6月前編

【進化と不安】日本代表活動レポート 2021年6月前編

2021年6月7日 4 投稿者: マツシタ
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バイエルンを手本としたチーム作りに着手した3月シリーズを経て、6月には5試合を行う日本代表。チームの完成度を高めるためには格好の機会だ。

今回は、その6月シリーズの最初の2試合についてのマッチレポートをお届けしたい。

 

vsミャンマー 10-0〇

 




完璧だった崩し

前回ぶち上げた日本が目指すサッカー像をもう一度確認しておくと、「ボールを奪われた瞬間に激しいプレッシングを仕掛け、すぐにボールを奪い返すことで常にボールと試合を支配して戦う」というものだ。バイエルンを手本とする、ポゼッションによる崩しとハイプレスをミックスさせた現代的なスタイルだ。

結論から言うと、ミャンマー戦ではこの理想像と合致する戦い方ができていたといえる。この試合通しての日本のボール支配率は76%。ほとんどの時間でボールを握ることができていた。ボールを失った後のハイプレスもしっかり機能していて、相手に自由を許さなかった。ここについては、モンゴル戦同様完璧だったといえる。

ということで、ほとんどの時間で日本がボールを握り、ミャンマーが自陣に守備ブロックを構築して待ち構えるという展開になったこの試合。焦点はそのブロックをいかに崩して点を奪うかという点だろう。

日本はこの試合、ビルドアップ時に左SBの長友を高い位置に押し上げ、残るDFラインの3人がスライドすることで3-2-5の陣形を形成した。

 

対して、ミャンマーの守備ブロックは4‐1‐4‐1。1トップがCBからのパスコースを限定しつつ、インサイドハーフの2人が日本の2ボランチにプレッシャーを掛ける構造になっていた。

この形だと、アンカーの両脇に大きなスペースができることになる。日本はこのスペースに狙いを定めた。

 

日本のボランチは相手のインサイドハーフに監視されているのだが、立ち上がりの日本はあえてそこにボールを入れていた。そうすることで相手のインサイドハーフを引っ張り出し、アンカー脇のスペースを広げた上で南野や鎌田、大迫がこのスペースを活用し内側から相手を打ち崩して見せた。

 

日本の先制点はまさしくこの形から生まれた。南野がインサイドハーフの8番を引っ張ってスペースを空け、そこに侵入した鎌田に吉田の縦パスが入ったところから攻撃がスピードアップしている。まさに狙い通りの崩しだった。

この攻略ポイントを素早く見つけることができたことはとてもポジティブだと思う。だからこそ、日本の先制点は開始7分で生まれた。

さらに、先制点を奪った後の日本はボランチを縦関係にし、守田を積極的に攻撃参加させるようになった。その結果、陣形は3-1-5-1のように変化した。このことで、南野と鎌田に守田が加わり、さらにトップの大迫が降りてくることでミャンマーの中盤に対して4対3の数的優位を作り出していた。これによってさらにくさびが入りやすくなり、中央からの崩しは加速していくことになった。このポジションチェンジからも、日本の中央崩しは意図的なものだったとわかる。

 

前回のモンゴル戦は左から右への揺さぶりによってサイドから相手を崩した日本(詳細は前回の代表活動レポートを参照)だが、今回は中央から相手のブロックを打ち崩した。異なる攻略法で相手の守備ブロックを崩し切ったこの2試合で、相手の弱点を的確に読み取れること、その弱点を突くための手段を持っていることを示してくれたと思う。

引いた相手を崩しきれずにホームで0-0のスコアレスドローを許した6年前のシンガポール戦のように、引いた相手に苦戦する日本ではもうない。そういう意味で、日本は着実に進化しているといえるだろう。

 

 

※1枚目がモンゴル戦のプレーエリア、2枚目がミャンマー戦のプレーエリア。モンゴル戦のファイナルサードに注目してみると右サイドの色が特に濃く、中央エリアが最も色が薄い。対して、ミャンマー戦ではファイナルサードにおいても中央エリアの色が濃くなっていて、右サイドの色が最も薄い。このことからも、日本が相手に応じて柔軟に攻撃の形を変化させたことがわかる。




存在価値を見せた板倉

中央エリアでスペースを見つけ、パスコースを作り出した2列目の面々ももちろん素晴らしかったのだが、そこにパスを送り込む側、つまり両CBも素晴らしかった。的確にパスコースを読み取りながら積極的にくさびを入れ、攻撃の起点として十二分に機能していたのだ。日本の先制点は吉田からの、2点目は板倉からのくさびが直接の起点になっている。

特に冨安に代わってスタメン出場した板倉は、ライバル冨安にも劣らないレベルで攻撃に貢献できることを示した。アピールに成功したと思う。

特に圧巻だったのが24分の場面。左サイドからボールが回ってくるタイミングで板倉は前方にスペースが空いているのを読み取り、すっと前へ出て中盤でボールを受けた。

 

たったこれだけだが、その効果は絶大だ。この動きによって相手のアンカーを前へ釣り出すことで中盤にスペースを作り出すことに成功したのだ。空いたスペースを見逃さずに鋭い斜めのパスを入れたことも含め、一連の流れは完璧だった。

 

さらに、板倉はオフザボールの動きだけでなく、ドリブルによる持ち運びでもボールを中盤に運び、数的優位を作り出すことに成功していた。しかも、そのプレーを左右両サイドで遜色なく見せていたのだから、これは偶然ではなく意識的にプレーしていることの証拠だろう。攻撃面での貢献度の高さは特筆すべきものだ。この「中盤に数的優位を作り出す」という点で、板倉はほかのライバルよりも一歩抜きんでていると思う。

たとえば後半から出場した植田は、効果的なくさびのボールがほとんどなく、また前方にスペースがあるときも後ろの方でボールを受け、ドリブルで持ち運ぶプレーも見られなかった。板倉との差は一目瞭然だ。

彼が冨安に代わってスタメンで出場したは決して五輪代表を見据えてのことではないと思う。実力でつかみ取ったスタメン出場なのだと、プレーで示してくれた。




さすがの両SB

モンゴル戦からの変化という意味でいえば、冨安→板倉のところ以外にもあった。両サイドバックだ。モンゴル戦では左に小川、右に松原が入ったのに対し、今日は左に長友、右に酒井といういつもの面々だった。

やはりこの2人は別格だということを見せつけた。モンゴル戦の小川と松原が決して悪くないパフォーマンスを見せたことは間違いない。でも、それ以上に長友と酒井のパフォーマンスは抜きんでていた。

長友は小川と比較してプレーの幅が広い。タッチライン際を駆け上がってのクロスボールはもちろんのこと(2アシストを記録した通り、クロスボールのクオリティは相変わらず高い)、自由に動き回る南野の動きに合わせて内外に立ち位置を変えていた点はさすが。ほぼアウトサイドにポジションしていた小川と比べても流動性を出すことに成功していた。

酒井が優れていたのはその走力だ。ビルドアップ時には3バックの一角として機能しながら、右サイドにボールが出てきたときにはパワフルなランニングで伊東をサポートした。ペナルティエリア内に侵入してPKをもらった場面は象徴的だった。酒井の場合もまたプレーの幅という意味で松原との差を見せつけた格好だ。

この2人が盤石であることを再確認したと同時に、後継者探しには苦労させられそうだとも感じさせるプレーぶりだった。




唯一の不安は…

ポジティブな面が多かったミャンマー戦で唯一懸念材料を挙げるとすれば、それは森保監督の采配が全くハマらなかったことだ。

後半15分ごろ、ミャンマーはシステムを5‐4‐1に変更した。これとほぼ同時に、森保監督はボランチの守田に替えて原口を投入し左サイドに入れ、左サイドにいた南野を中央に入れて4-3-3にシステムを変更した。このシステム変更により、日本の攻撃は停滞した。

システム変更によって生じた問題点は2つある。

 

南野と鎌田が相手につかまる

南野と鎌田の2枚を最初から2列目に並べることによって、相手の2ボランチと真っ向からマッチアップする形となってしまったことが最初の問題点。これにより、陣形のずれが無くなって南野と鎌田は常に相手のマークにさらされることとなった

 

さらに、2ボランチの裏に入ろうとしてもそこには3バックの両サイドが前に出てくる。これによって南野と鎌田は前後から相手に挟まれる形となり、自由を封じられた。結果としてこのふたりに効果的な縦パスが入ることが減り、日本の攻撃は停滞してしまったのだ。

 

左サイドの流動性が消失

もうひとつが左サイドの機能性が失われてしまったことだ。前半の日本は、左の南野が中央に絞っていって、空いたスペースに長友が上がってくることで効果的に機能していた。しかし、システム変更後は南野が最初から中央にいて動きが少なくなり、相手につかまってしまった。

さらに、替わって左サイドに入った原口はウインガータイプであり、サイドに開いてボールを受けたところから仕掛けていくタイプ。ゆえに中央に絞っていくことが少なく、長友が上がっていくためのスペースがつぶされてしまった。

 

そのため、前半は4対3の数的優位を作れていた中央エリアで、日本は3対5(南野・鎌田・大迫vs3CB+2ボランチ)の数的不利に陥ってしまったのだ。

結果的にサイド攻撃と即時奪回後の速攻、それにセットプレーで6点を重ねることに成功したとはいえ、その半分は相手が集中を切らしたラスト6分間で記録されたもの。しかも、得点の起点となったのはすべて右サイドだった。日本の左サイドが機能性を失ってしまった何よりの証拠だろう。

このように、森保監督のシステム変更は全く機能しなかった。点差がついていたので、相手に関係なく自分たちがやりたいことを試す!という思考を全面的に否定できないことも事実ではある。しかしながら、この4‐3‐3へのシステム変更は前回のモンゴル戦にも行われており、同じように機能しなかった。モンゴル戦ではすぐさま4-2-3-1に戻している。

2度連続で同じ現象が起きてしまうことを偶然と呼んでいいものか。本当に勝負がかかった試合で同じ現象が起きないかどうか心配になってしまうというのが正直なところだ。




vsU-24日本 3-0〇

 




CBコンビが懸念材料

初の日本代表同士の一戦となったこの試合、ミャンマー戦から6人を入れ替えたこともあり、日本はビルドアップがスムーズにいっていなかった

原因は様々考えられる。前線の運動量が少なくパスコースが少なかったこと。ボランチが横並びになってしまい、効果的な立ち位置をとれていなかったこと。これら前線・中盤の問題も確かにあったのだが、最も大きな要因はCBコンビだと感じた。

この日コンビを組んだ植田と谷口から効果的なくさびが入ってくる場面がほとんどなく、安全な横パスをつなぐことに終始してしまった感が否めない。

ミャンマー戦の吉田板倉ペアと比較して最も差があると感じたのが、相手を動かす能力。単純にパスのテンポが遅いため相手に容易にスライドされてしまうこともそうだし、長いパスでサイドを変えるプレーも少なかった。板倉のように、ドリブルやオフ・ザ・ボールの動きで相手の中盤を引き出すプレーもなかった。

トップレベルのCBは味方が動かなくても、自分でパスコースを作り出すことができる。そのために必要な相手を動かす技術に関して、吉田・冨安・板倉の3人とそれ以外の選手では差がある印象だ。

また、厳しいプレッシャーがかかると明らかにパスミスが増えていたのは気になるところ。次の対戦相手であるタジキスタンは前回の対戦でアグレッシブにプレッシャーを掛けてきた印象がある。吉田と冨安がいない中で戦うこの次戦、相手のプレスに苦しめられてビルドアップがうまくいかない…という事態に陥らないかは懸念材料である。




プレッシング問題は解決せず

そしてもうひとつ言及しておきたい問題がある。それが、プレッシング時のサイドの守備問題だ。

日本代表は相手が3バックを形成してビルドアップするとき、2トップに加えてサイドハーフが前に出ていくことでプレスする。このとき、サイドハーフがいなくなることで空くサイドのスペースをいかにカバーするかが整理されていないのだ。

これは韓国戦に多く見られた問題だが(詳しくは前回の日本代表活動レビューを参照)、この試合でも放置され、解決が先送りにされていた。事実、このスペースを使われてU-24日本にビルドアップを許す場面は何度か見られている。

 

また、守備が整理されていないと感じさせる場面は19分にもみられた。相手がゴールキックからビルドアップしてきたのに対し、日本は高い位置からプレッシングを行う。ここで、原口は降りてきた相手のウイング(8番)に気を取られて中途半端な立ち位置をとってしまう。その降りていったウイングをマークすべき長友もまた、サイドに流れてきた久保に惑わされて中途半端な立ち位置をとってしまっていた。

 

結果として原口がマークすべきサイドバックに自由を与えてしまい、そこから田川へのくさびを入れられてしまう。そこから久保とのワンツーで抜け出され、相手にGKとの1対1という決定機を与えてしまった。

 

これも大枠ではサイドの守備が曖昧にされた結果生じたピンチだといえる。原口がサイドバックに、長友がウイングについて行けばいいのだが、そこが明確にされていなかったがために中途半端な対応に終始してしまった。

まだ選手が相手に基準点を置くのか、スペースに基準点を置くのかの切り替えを消化しきれていない印象だ。ここを修正できなければ、同じように前線からのハイプレスを空転させられ、多くのピンチを招きかねない。相手が強くなり、ビルドアップの精度が上がればなおさらだ。できるだけ早く修正してもらいたいところだ。




即時奪回が機能

逆にうまくいっていたといえるのが、ボールロスト後のネガティブトランジションゲーゲンプレスによる即時奪回だ。11人全員に意識レベルで浸透しており、U-24と比べても切り替えのスピードがワンテンポもツーテンポも速かった。トランジションの完成度は天と地ほどの差があるといっていいと思う。

この試合の2点目も、相手のビルドアップに対してプレスをかけ、奪ったボールを素早く前線へつなぐことで奪ったものだ。今の日本代表にとって、トランジションで優位をとれることは大きな武器となっているのだ。そして、それはU-24代表相手にも揺るがないことも確認できた。4試合目にしてその完成度の高さは評価されてしかるべしだ。

トランジションに関してはW杯でベスト8やベスト4を狙うレベルの相手に対しても通用するのかが焦点になってくるだろう。それくらい今の日本のハイプレスの完成度は高いと考えている。

今後3試合では、前述した2つの課題、吉田・冨安・板倉抜きでどうビルドアップしていくのか、プレッシング時のサイドの守備をいかに改善するのかが注目点になっていくのではないだろうか。




あとがき

進化と課題が見えた有意義な2試合を経て、日本代表はタジキスタンとの一戦に臨む。注目点はオーバーエイジで抜けた3人の穴をどう埋めていくのか、そして大迫が負傷離脱した穴をどう埋めるかだ。

特にCBコンビに誰を起用し、ビルドアップをどう改善していくかは今後の代表活動を見据えても重要な課題になるだろう。

また、長年後継者不足が指摘されている大迫問題についても注目だ。やはり彼のポストプレーは日本代表にとってなくてはならない武器。U-24代表との試合での3点目も、大迫がボールをおさめてサイドチェンジを通したところから生まれている。攻撃の起点としての存在感が別格である彼がいない影響をどう埋め合わせていくのか。

U-24代表戦の後半は、前線に浅野と古橋という快速アタッカーを並べ、重心を落として速攻を狙うというソリューションを見せていたが、この形を継続していくのか、それとも…。

タジキスタンは現在グループ2位。今回のグループの中で最も力があるチームだといっていいだろう。ここまで積み上げてきたことがタジキスタン相手にどこまで通用するかは、最終予選を見据えるうえでも大きな指標となるはずだ。

 

 

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