【頭脳派ファンタジスタ】ピオトル・ジエリンスキのプレースタイルを徹底解剖!

【頭脳派ファンタジスタ】ピオトル・ジエリンスキのプレースタイルを徹底解剖!

2021年5月23日 6 投稿者: マツシタ
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現代サッカーにおいて純粋なトップ下の選手、いわゆる10番は絶滅危惧種になっている。守備組織がしっかり整備され、また各選手のフィジカル能力が格段に上がったことが理由だ。そのためピッチ中央で得られるスペースや時間は日に日に少なくなっていて、ライン間で華麗なプレーを見せながら攻撃をつかさどるトップ下の選手はどんどん減っていっている。かつてはトップ下に置かれたような選手がウイングやシャドーで起用されるケースが増えているのはこうした事情からだ。

そんな流れがある中、古き良き10番の雰囲気を感じさせてくれる選手がナポリにいる。ピオトル・ジエリンスキだ。

 

ポーランド出身のジエリンスキは母国のクラブ、ザグウェンビェ・ルビンのユースチームで育った。しかしプロデビューの地は母国ポーランドではなくイタリア。2011年にウディネーゼに移籍し、翌年にプロデビューを果たしている。しかしながら、ウディネーゼでは主力に定着するに至らず。2014年に当時昇格組だったエンポリに移籍することとなった。

このエンポリ移籍がジエリンスキの運命を変えた。初年度に途中出場がメインながら3アシストを記録すると、翌年には35試合に先発出場して5ゴール4アシストを記録。エンポリの10位躍進を中心選手として支えたのだ。

この活躍が評価されたジエリンスキは翌年に国内屈指の強豪SSCナポリに引き抜かれる。移籍初年度から5ゴール7アシストと結果を残したジエリンスキはクラブとファンからの信頼をがっちりとつかみ、ナポリでの5年間すべて35試合以上に出場している。

中でも今シーズンの躍動ぶりは別格で、すでに8ゴール10アシストとともにキャリアハイの数字を記録しているのだ。

ナポリの地でキャリア最大の輝きを放つジエリンスキ。彼の何がすごいのだろうか。

今回はピオトル・ジエリンスキのプレースタイルについて徹底的に掘り下げていこうと思う。

 




 

ジエリンスキのプレースタイル

 

イタリア屈指のチャンスメーカー

今シーズン、トップ下に起用されているジエリンスキはピッチ中央から攻撃を指揮し、攻撃の最終局面を一手に担っている。

ジエリンスキはとにかくゴールによく絡む。8ゴール10アシスト(公式戦通算では10ゴール11アシストだ)という結果がそれをよく物語っている。ここまで多くのチャンスに絡み、ゴールに直結する仕事をできる選手はなかなかいない。

実際、FBref.comというデータサイトが算出する指標「ゴールクリエイティング・アクション」をみてみると、その数値がリーグトップになっている。

  • ゴールクリエイティング・アクション 23(リーグ内トップ)

この指標はゴールに直結した2つの連続したアクションを点数化したもの。たとえば、ドリブルした後のラストパスがゴールにつながったり、自らドリブル突破してからのシュートで得点を奪った場合には点数として加算される。その選手のドリブルが誘ったファウルが得点につながった場合にも点数化されるようだ。

つまり、ジエリンスキは複数の連続したアクションを、狭くて時間が制限されたライン間のエリアで披露しているのだ。

実際、

  • 1試合平均キーパス数 1.6(チーム内2位)
  • 1試合平均ドリブル成功数 1.7(チーム内2位)

というデータを見てもジエリンスキが多くのキーパスを供給し、ドリブル突破を成功させていることがわかる。なぜジエリンスキは狭いライン間でもここまで自由にプレーできるのか。

 




 

狭いスペースでもプレーできるファンタジスタ

その秘訣のひとつがポジショニングの良さ。ジエリンスキはライン間をのらりくらりと移動しながら、ここぞのタイミングで相手と相手の間に空いたわずかなスペースに潜り込む。そのポジショニングと入っていくタイミングが絶妙だからこそ多くボールに絡める。並の選手では認知できないようなスペースを見つけ出す戦術眼も素晴らしい。

もうひとつ大きいのが非常に高度なテクニック。ジエリンスキがセンスにあふれたプレーヤーであることは彼のプレーを一度でも見ればすぐわかるはずだ。とても繊細なボールタッチでぴたりと足元にとめ、相手につま先ひとつ触れさせない。その絶妙なタッチは見る者を魅了する。

そして、ジエリンスキはその高度なボールスキルを両足に備えている。両利きと言っていいジエリンスキはどこにボールがあっても自在にボールを操れるのだ。狭いスペースでもボールを失わないのは、こうした高度なボールスキルあってのものだ。

そして、そのテクニックを的確に発揮できるのはギリギリまで相手の動きを観察できるからだ。ジエリンスキは常に冷静で、相手がどんなに近くにいてもぎりぎりまで判断を変更できる。そのため、ジエリンスキは相手の逆を突くのが非常にうまい。フェイクを入れたり相手にきづいていないふりをして一気に加速し、相手の虚をつくのだ。こうしたプレーはまさにファンタジスタと呼ぶにふさわしい。

下はカリアリ戦で決めた見事なゴール。ゴール前にスペースを見出してボールを受けたジエリンスキは、シュートフェイクからの絶妙なタッチで相手を置き去りにしてゴールを決めている。ここまで説明してきたことが凝縮されたゴールだ。

 

面白いデータがある。

  • また抜き成功回数 13(リーグ内トップ)

というデータがあるのだ。たしかに、相手がボールを奪おうと出してくる足の下をちょこんと通し、闘牛士のように華麗にかわすプレーはジエリンスキの十八番だ。これも相手の動きを把握できる目と小さな隙間を通せるテクニックあってのものだ。

ジエリンスキの華麗な突破がみられるのは相手が正面にいるときだけではない。相手に背後から寄せてこられても華麗なターンで入れ替わり、そのまま置き去りにしてしまうのだ。背中で相手の気配を感じる能力はセリエAの中でも最高なのではないだろうか。もちろん、ヒールやアウトサイドで完璧な位置にボールを置ける高度な技術も絶品だ。

ここまで紹介してきたジエリンスキの特徴が凝縮されたプレーが下のラツィオ戦でのアシスト。スローインを受けたジエリンスキは相手の逆を突く繊細かつトリッキーなトラップでフリーになると、中央で唯一フリーで待っていたメルテンスの足元に完璧なボールを届けている。

 




 

強烈なミドルシュート

このように、繊細かつインテリジェンスにあふれるプレーでチャンスを量産するジエリンスキだが、 パワフルな一面も持っている。というのも、ジエリンスキはミドルシュートを得意としているのだ。

  • 平均シュート距離 18.3m

というデータを見てもわかるように、ジエリンスキはペナルティエリア外からのシュートを多く放っているのだ。彼が繰り出す一撃は狭いスペースでのやわらかいプレーからは想像できないくらい強烈で、まさに打ち抜くようなシュートだ。

もちろん精度も高く、

  • 枠内シュート率 41.7%

と4割ものシュートを枠内に収めている。これはチーム内4位の数字だ。なお、2位のエルマスと3位のぺターニャは途中出場がメインでシュートの回数はジエリンスキの半分に満たない。彼らの倍近いシュートを放っていながらここまでの数字をキープしているのはジエリンスキのシュート精度が非常に高いからこそ。野球選手の打率を考えてみれば、どれほど確実に枠を捉えているかがわかるだろう。

そしてジエリンスキの恐ろしいところはこのミドルシュートを左右両足で繰り出せることだ。今シーズンにリーグ戦で挙げた8ゴールはきれいに左足4点右足4点になっている。ここまで左右両足をスムーズに使いこなせるプレーヤーは世界中探してもなかなかいるものではない。

下はフィオレンティーナ戦でのゴール。後ろから追ってきた相手をさらりとかわし、右足でミドルシュートを叩き込んでいる。こうしたプレーもまたジエリンスキの十八番なのだ。

 




 

複数のポジションをこなせるポリバレント性

このように、トップ下の位置からアシストもゴールも奪えるジエリンスキ。だが、彼はトップ下以外にも左サイドや3列目でもプレーできるポリバレント性も持ち合わせているのだ。

ここで昨シーズンのデータを見てみよう。昨シーズンのナポリで、ジエリンスキは4-3-3のインサイドハーフや4-4-2のセントラルMFで起用されることが多かった。今シーズンよりも低い位置を主戦場としていたのだ。このような位置に置かれたとき、ジエリンスキのプレーはどのように変わるのか。

  • ファイナルサードへのパス数 261(19-20セリエAトップ)

というデータからは、ジエリンスキがビルドアップ部隊と前線をつなぐパイプ役としての役割を担っていたことがうかがい知れる。なにせパスによってファイナルサードへボールを届けた数がリーグで最多。局面を前に進めるという点においてジエリンスキの貢献度は計り知れない。

しかしながら、それ以上に大きな武器となっていたのがドリブルだ。

  • ファイナルサードへのドリブルによる侵入数 81(19-20セリエA10位)
  • 突破をともなわないドリブル成功数 342(19-20セリエA3位)
  • 突破をともなわないドリブル成功距離 6602m(19-20セリエA5位)

というデータを見てももわかるように、ジエリンスキは低めの位置でボールを受けた後、自らの持ち上がりでファイナルサードへとボールを持ち運ぶプレーを何度も見せていた。

トップ下起用時に見せる柔らかく繊細なプレーからは想像できないほどの推進力があり、力強く持ち運んでいくのがジエリンスキのドリブルの特徴。ぐいぐいと持ち運び、一気に局面を押し進めるのだ。

中盤起用時にはパスでもドリブルでもボールを前進させるジエリンスキ。トップ下起用時とはまた違った形でチームに大きく貢献できるのだ。

彼をただのユーティリティープレーヤーではなく「ポリバレントな選手」と表現したのは、置かれるポジションによってそれに適したプレースタイルを選択できるからなのだ。

 

このように、

  • 小さなスペースにも嬉々として潜り込んでボールを引き出し、
  • 繊細なタッチで相手の逆を突くプレーを得意とし、
  • 狭いスペースでもプレッシャーを感じない冷静さと直前までプレーを選択できる判断力を兼ね備え、
  • 両足をそん色なく使いこなし、
  • 強烈かつ正確なミドルシュートでゴールを強襲し、
  • 1列低い位置で起用されれば力強いドリブルと正確なパスの両方で局面を前に進められる

ジエリンスキは本当に何でもできるプレーヤーだ。繊細なプレーも、力強いプレーもお手の物だ。

そういう選手は得てして器用貧乏に陥りがちだ。だが、ジエリンスキは違う。その時々、起用されるポジションに応じて自身のプレースタイルを柔軟に変化させていつでもどこでも輝いてしまう。そういう意味で、彼の活躍の根底にあるのはインテリジェンスの高さ頭の良さなのではないだろうか。

 




 

ジエリンスキの弱点

それでは、ジエリンスキの弱点を見てみよう。

ここまでに紹介してきたように、攻撃面では文句なしなジエリンスキ。となると課題は守備面になってくる。

2センターや3センターの一角として起用されることが多かった昨シーズンのデータを見てみても、

  • 1試合平均タックル成功数 0.7(19-20 チーム内13位タイ)
  • 1試合平均インターセプト成功数 0.6(19-20 チーム内12位タイ)

となっていて、中盤センターの選手としては低い数字にとどまっている。

ただ一方で

  • プレッシャー成功総数 129(19-20チーム内3位)
  • ブロック総数 53(19-20 チーム内トップ)
  • ルーズボールの回収総数 249(19-20 チーム内2位)

となっていて、相手にプレッシャーを掛けたりルーズなボールにいち早く反応して回収したりといったプレーに関しては十分以上にこなしていることもわかる。

つまり、チームの守備組織の一員として機能する能力に関しては非常に高いものを持っているのだ。ここら辺はさすがのインテリジェンスの高さだ。

ただ一方で自らタックルやインターセプトを仕掛けて相手のボールを奪い取る能力に関してはまだ低い水準にあるといっていいのではないだろうか。

 

そういう意味で、ボールを奪い取る能力も重視される3列目よりもチームのプレッシングの一員として機能する能力の方が重視され、なおかつ攻撃時にはゴール前でプレーする機会が多いトップ下で起用された今シーズンにキャリアハイの輝きを見せているのは当然の帰結といえるかもしれない。

彼を最も得意なポジションに置いてそのポテンシャルを最大限引き出したガットゥーゾ監督は見事だといえるだろう。

 




 

あとがき

かくしてナポリの攻撃の指揮者となったジエリンスキ。左サイドにはイタリア最高のファンタジスタともいえるインシーニェがいるわけだが、トップ下でプレーするジエリンスキもなかなかのファンタジスタだ。

このふたりのファンタジスタに、より直線的なプレーが得意な右のポリターノとロサーノ、速さと強さを備えた戦術兵器オシメンが加わって織りなすナポリの攻撃陣は非常に強力だ。

ここまでナポリがリーグ戦で挙げた得点数は85。バイエルンとアタランタに次ぎ、バルセロナと並んで5大リーグで3位タイの数字だ。現在リーグ戦では25試合連続得点中で、その勢いはとどまるところを知らない。

そんなナポリも昨シーズンの監督交代後は守備の再建を重視したために得点力が低下していた。そこから現在の形に仕上げてきたガットゥーゾ監督の仕事は称賛に値するだろう。攻守両面でチームを整備できる手腕の確かさを示した格好だ。

残念なことに、そのガットゥーゾの退任が確実視されている。来季のナポリは異なる指揮官のもとで戦う可能性が高そうだ。陣容が大きく変わることも考えられる。

だが、どこで使われても高いクオリティを保証してくれるジエリンスキは誰が新監督になろうとも重宝されるだろう。願わくば持ち味を最も発揮できるトップ下でプレーしている姿を来季も見たいものだ。

 

 

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