【セリエ最強のデュエルマスター】マタイス・デリフトのプレースタイルを徹底解剖!

【セリエ最強のデュエルマスター】マタイス・デリフトのプレースタイルを徹底解剖!

2021年5月23日 5 投稿者: マツシタ
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18-19シーズンのアヤックスは記録にも記憶に残るチームだった。

5年ぶりのリーグ優勝を含む国内2冠を達成とオランダではまさに敵なし状態だったが、より注目を集めたのがチャンピオンズリーグでの躍進だった。

96-97シーズン以来22年ぶりにベスト4に進出。惜しくも決勝進出を逃したものの、大学生ほどの年齢の選手が大半を占めるチームが優勝候補のメガクラブを次々と打ち破るさま痛快だった。しかも、引いて守ってカウンターといういわゆる「弱者のサッカー」ではなく、攻撃的でアグレッシブなサッカーでだ。その爽快感あふれるサッカーは記録よりも人々の記憶に残るものだったはずだ。

そして、そのアヤックスの中心にいたのがマタイス・デリフトだ。

 

アヤックスで育ったデリフトは17歳にしてトップチームデビュー。そのシーズン(16-17)にオランダ代表デビューを果たして1931年以降の同国代表の最年少出場記録を更新。それだけでなく、ヨーロッパリーグの決勝にフル出場して欧州主要大会の決勝における最年少出場記録を更新した。

18-19シーズンには弱冠19歳にしてアヤックスのキャプテンに就任(これもクラブの最年少記録だ)。アヤックスの国内2冠とCL準決勝進出に貢献した。

若手が躍動するアヤックスの中でも特別に出世が早かったデリフトは、翌シーズンにステップアップを果たす。移籍先は自らのゴールでCLの舞台から葬ったユベントスだった。

移籍初年度となった昨シーズンはカルチョへの適応に手間どったデリフトだったが、徐々に巻き返していく。そして迎えた今シーズン、ライバルたちの負傷離脱が重なった事情もあってCBの選手の中ではチーム最多となる26試合に出場している。

ユベントスでも不可欠な存在にあるデリフト。彼は一体どんなプレーヤーなのか。

今回はマタイス・デリフトのプレースタイルについて徹底的に掘り下げていこうと思う。




デリフトのプレースタイル

 

対人守備では負け知らず

デリフトの最大の持ち味が対人守備の圧倒的な強さだ。デリフトはとにかく人に対して強く、対面の相手に突破されることは極めて珍しい。

彼の強さを裏打ちしているのは恵まれたフィジカル能力だ。189cm90kgの屈強な肉体はまるでラガーマン。ぶ厚い胸板はもちろん、太ももやふくらはぎ、二の腕まですべてが筋肉で武装されている。この自慢の肉体で相手のコンタクトをことごとくはじき返すのだ。

かといって体が大きいから鈍重というわけでもなく、水準以上のスピードを持っているため走り合いで負けない。さらに跳躍力があるため空中戦も非常に強い

諸々のデータを見ていくと、

  • ドリブラーに対するタックルの成功率 63.2%(チーム内トップ)

というデータが最も目を引く。2位のアレックス・サンドロの数値が53.8%、3位のラビオのそれが45.5%であることを考えればデリフトの数字がいかに飛び抜けているかがわかる。

デリフトはそのスピードとアジリティを活かして相手のドリブルについて行き、ここぞのタイミングで強烈なタックルをお見舞いする。その巨体から出力されるパワーのすべてを相手にぶつけるようなタックルは強烈で、よろめかないでいられるアタッカーは皆無だ。

特にうまいのがスライディングタックル。相手の足ごと刈り払うかのようなそれは強力で、確実にボールを奪い取ることができる。

その守備技術の高さは

  • イエローカード 4枚

というスタッツを見てもわかる。非常にパワーがあるために、ともすればタックルがラフに見られかねないデリフト。しかしながら、イエローカードを4枚しかもらっていない通り彼にはダーティーなイメージがない。確実にボールを捉える守備技術の高さがよくわかる。

 

また、そのスライディングタックルはブロックにも活用されていて、

  • ブロック数 37(チーム内4位)
  • シュートブロック数 15(チーム内3位タイ)

というスタッツになっている。デリフトが最後の最後に体を投げ出して相手のシュートをブロックする場面はユベントスではもはやおなじみだ。コースの切り方はもちろん、どこで体を投げ出すかの判断も素晴らしい。

 

さらに、

  • ルーズボールの回収数 216(チーム内3位)

というデータからは彼がルーズボールをことごとく回収していることがわかる。この数値はCBの中では最多だ。

ボールがこぼれたときにいち早く反応できる反射神経や出足のよさはもちろん、ルーズなボールをマイボールにできるコンタクトの強さなどもあるデリフトは中途半端なボールを確実にユベントスボールにしてくれる。特に多いのが自分が競り合ってこぼれたボールに対しもう一度出ていってマイボールにしてしまう場面だ。対面の相手には絶対に負けないという意識がよく表れているのではないだろうか。

 

地上戦で圧倒的な強さを見せるデリフトだが、それは空中戦でも同じだ。

  • 空中戦勝率 68.4%
  • 空中戦勝利総数 65(チーム内トップ)

というデータを見ればわかるように、デリフトはエアバトルマスターでもあるのだ。勝率は7割近く、純粋な勝利数ではチームトップ。驚異的な跳躍力と落下地点を譲らないフィジカルの強さ、空中でコンタクトされてもバランスを崩さない体幹の強さなどフィジカル的な資質が彼の空中戦の強さを支えていることは間違いない。

しかし、それ以上にデリフトの空中戦の強さの秘訣となっているのがジャンプのタイミングだ。デリフトは相手よりも少しだけ早くとび、相手のジャンプを上から押さえつけるようにして制限するのがとてもうまい。技術的な側面、駆け引きについてもひとつ抜きんでているといっていいだろう。




ビルドアップでの貢献度も高い

このように地空ともに対面の相手を封殺するデリフト。圧倒的な守備力を最大の持ち味としているわけだが、彼は攻撃面での貢献が低いわけではない。

デリフトはユース時代にはボランチでプレーする機会が多かったため、足元のテクニックも問題ない水準に達している。だから、後方からのビルドアップで大きな貢献を果たすことができるのだ。

  • 1試合平均パス回数 60.7(チーム内トップ、セリエA7位)

というデータを見てもわかる通り、デリフトはユベントスの中で最も多い平均パス数を記録している。文字通りビルドアップの中心として機能しているのだ。

中でも注目すべきは

  • パス成功率 94%(チーム内2位)

非常に成功率が高いこと。500分以上出場した選手の中ではアルトゥールの次に高い数値になっていて、デリフトがほとんどミスを犯さないことがわかる。

右足のテクニックはもちろん、周囲の状況を見ながら判断を変える能力なども高い。そして何よりも大きいのが相手のプレッシャーを受けても慌てないメンタル。きっと自分のテクニックに自信があるのだろう。ここらへんはアヤックスユースでボランチとしてプレーした経験が大きいのではないか。

 

デリフトが足元のテクニックに自信を持っていることを示すデータはほかにもある。

  • 突破をともなわないドリブル成功総数 1326(チーム内4位)
  • 突破をともなわないドリブル成功距離 7078m(チーム内3位)

このデータを見ればわかるように、デリフトはドリブルが非常に多いCBなのだ。いずれのデータもユベントスのCBの選手の中では最多となっている。

下はデリフトのヒートマップ。中央右寄りのレーンの低い位置だけでなく、そこから敵陣にかけて縦方向にヒートマップが広がっていることがわかる。

このことからもわかるように、デリフトは相手がプレッシャーに来なければ積極的にドリブルで持ち上がり、中盤に数的優位を作り出すことができる。そうして相手を自分に引きつけ、味方をフリーにしたりスペースを作り出したりすることができるのだ。縦方向へと伸びるヒートマップが、このドリブルを示してくれている。

このプレーができるのも確かなテクニックとそれに起因する自信の表れだろう。デリフトは技術的にも精神的にもビルドアップに貢献するための資質を持っているのだ。




得点力も兼ね備える

さらに、デリフトの攻撃での貢献はビルドアップだけにとどまらない。セットプレーでは得意のヘディングで自らゴールを奪うこともできるのだ。

18-19シーズン、ユベントスはデリフトのヘディング弾によってベスト8敗退を余儀なくされるわけだが、このシーズンのCLにおいて最もヘディングシュートを打ったのはデリフトだったのだ。上位にはクリスティアーノ・ロナウドをはじめFWの選手の名前が並ぶ中、CBのデリフトが一人トップに立っているのは印象的なデータだ。

デリフトはこの強烈なヘディングで毎シーズン得点を重ねてきている。今シーズンはパルマ戦のゴールのみとなっているが、昨季までは平均で1シーズンに3ゴールを記録している。その得点力は非常に高いといっていいだろう。




21歳とは思えないリーダーシップ

ここまで、デリフトはフィジカル面でも技術面でも優れていると同時に、メンタル面でも非常に優れているとたびたび言及してきた。この精神面の成熟こそデリフトの最大の武器かもしれない。

19歳にしてアヤックスの腕章を託された通り、デリフトは周囲を鼓舞するリーダーシップ、どんな場面でもあわてたりイラついたりしない冷静さを持っている。これまでのキャリアでレッドカードをもらったことがないという事実がそれを如実に物語っているだろう。

彼が次々と最年少記録を塗り替え、弱冠21歳にしてユベントスの主力にまで上り詰められたのは成熟したメンタルがあり、常に安定したパフォーマンスを残してきたからに他ならないだろう。

そして、強烈なリーダーシップを持っているかどうかは並のCBとワールドクラスのCBとを分ける大きな要素でもある。セルヒオ・ラモスやファン・ダイク、古くはカンナバーロやネスタまで、世界最高クラスのCBはどの選手も例外なく強烈なリーダーシップを持っている。これを生まれながらにして持っていることは、デリフトが世界最高のCBになる資格を持っていることを意味する。

まだ21歳と多分に経験を積む時間が残されていることを考えれば、バロンドール候補にノミネートされるレベルの超ワールドクラスに成長することも期待していいのではないだろうか。

 

このように、

  • 屈強なフィジカルで相手をねじ伏せ、
  • スピード勝負にも負けないスプリント力を持ち、
  • 高度なスライディング技術でクリーンにボールを奪い取り、
  • 最後には体を投げ出してシュートをブロックし、
  • 跳躍力と駆け引きによて空中戦で無双し、
  • 足元のテクニックにも優れていてパスミスが極めて少なく、
  • ドリブルで相手を引き付けられ、
  • セットプレー時の得点力を兼ね備え、
  • 成熟したメンタルとリーダーシップをも兼ね備える

CBに求められる資質をここまで完璧に兼ね備えている選手もなかなかいないのではないだろうか。しかも、それが21歳の時点でとなればなおさらだ。

今後イタリアで戦術的に磨かれて行けば世界でも指折りのCBに到達することは間違いないだろう。




デリフトの弱点

それでは、デリフトが世界最高のCBに到達するために足りないものは何なのか。それは、先ほども書いた通り戦術的な要素だ。

個人的に今のデリフトに足りないと思う要素はふたつ。ひとつが準備力だ。

デリフトはフィジカル的に恵まれていて対人に絶対の自信があるが故に、相手にボールが入ってから勝負しようとする傾向が強いように思う。その証拠に、

1試合平均インターセプト数

  1. キエッリーニ 1.7
  2. デミラル   1.4
  3. ボヌッチ   1.3
  4. デリフト   1.2

となっていて、インターセプトの数がユベントスのCB陣の中で最も少ない

あるいは、カバーリングにしてもそう。スピードがあるデリフトはよーいドンで走ってもボールに追いつき、何とか処理できてしまう。だけど、ボールが出てくることを予測して一歩早く走り出すだけで今までクリアしていたボールを味方につなげるようになるはず。そうした準備力をもっと磨けば、さらにワンランク上のCBになれるはずだ。

 

もうひとつが連携面。 特にペアを組むCBのカバーリングについてはまだまだ改善の余地があると感じる。

デリフトは良くも悪くも自分がマッチアップする相手に対する意識がとても高く、そこに意識が向きすぎるあまりコンビを組むCBとの距離が開きすぎてカバーリングが甘くなったり中央に大きなスペースを空けてしまう場面がちょこちょこ見られる。ボールが逆サイドにある時には相手を捨て、もう少しスペースへの意識を強めてもいいはずだ。

このように、個人としては強烈なデリフトだが、DFラインの一員として、味方と連携しながら守る能力に関してはまだ超一流とまでは言えない。だから私はこの記事の副題を「セリエ最強のデュエルマスター」としたのだ。デュエルは最強だが、CBとして真に完成されているかと言われれば、まだ磨き上げるべき部分があるだろう。基礎能力があまりにも早い段階で、あまりにも高いレベルに到達してしまったがために多少の雑さがあるように感じるのだ。インテリジェンスの部分を伸ばし、真の意味で「セリエ最強のCB」に到達できるかどうかは、今後の彼次第だ。




あとがき

世界トップのCBに到達するためにはまだ磨いていくべき部分があるデリフト。しかしながら、相対的に見ればすでにトップレベルのCBであることは間違いない。今後10年にわたってユベントスの守備の要としての活躍を期待していいタレントだろう。

それぞれ36歳になったキエッリーニと34歳になったボヌッチは負傷離脱が増え、フル稼働が難しくなってきつつある。そんな彼らに替わり、デリフトが最終ラインの要になりつつある。そんなデリフトがトップクラスのCBから超一流のCBへと脱皮できるかどうかは、ユベントスが将来イタリアの強豪という立場にとどまるのか、それともCLで常に優勝を争う世界屈指のメガクラブとしてその名をとどろかせるかの命運を握っているといっても過言ではないだろう。

クラブの未来を背負う若きDFリーダー、デリフトの今後のさらなる成長に期待したい。

 

 

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