【超攻撃的CB】ラファエウ・トロイのプレースタイルを徹底解剖!

【超攻撃的CB】ラファエウ・トロイのプレースタイルを徹底解剖!

2021年5月9日 5 投稿者: マツシタ
Pocket

昨シーズン、イングランドプレミアリーグで旋風を巻き起こしたのがシェフィールド・ユナイテッドだった。11年ぶりに昇格してきた古豪は戦前の予想を覆す戦いぶりで9位に躍進、昇格後即一桁順位に食い込んで周囲を驚かせた。だが、ファンを驚かせたのは想定外の強さよりも、彼らが採用した独特の戦術だったかもしれない。

3-5-2を基本フォーメーションとするシェフィールドは、3バックの両サイドが積極的に攻撃参加するという攻撃的な戦術を披露。今までになかったCBの積極的な攻撃参加は「オーバーラッピングセンターバック」として一世を風靡したのだ。

イングランドでは驚きをもってとらえられたCBの攻撃参加だが、イタリアの強豪アタランタはこうした戦術を数年前から披露していた。そして、この「攻撃参加するCB」の第一人者として知られているのがラファエウ・トロイだ。

 

トロイはブラジル出身で、母国のゴイアスでデビュー。その後サンパウロを経由してイタリアの地にやってきたのが2015年の8月だった。以降、トロイはアタランタの主力として定着。自身の成長とともに、プロビンチャのひとつでしかなかったアタランタをイタリア屈指の強豪に押し上げた功労者だ。

冬のゴメス退団にともなって最古参となったトロイは、プロビンチャ時代を知るほぼ唯一の存在となった。長くチームを支えてきた彼が新キャプテンに就任したのも納得だろう。

アタランタの攻撃サッカーを体現し、クラブを引っ張り上げた男ラファエウ・トロイ。今回は、彼のプレースタイルについて徹底的に掘り下げていこうと思う。

 




 

ラファエウ・トロイのプレースタイル

 

積極的な攻撃参加

ラファエウ・トロイの特徴として挙げないわけにはいかないのが、積極的な攻撃参加だ。

下はラファエウ・トロイの今シーズンのヒートマップだ。自陣だけでなく敵陣にも色が濃いエリアが広がっており、CBの選手とは思えないのような動き方をしていることがわかる。

 

ここで、前述のシェフィールド・ユナイテッドの右CB、クリス・バシャムのヒートマップも見てみよう。

 

バシャムの場合、トロイと比較すると敵陣に進むにつれてタッチライン際にプレーエリアが寄って行っていることがわかる。バシャムはあくまでも「オーバーラップ」というわけだ。

一方、トロイのヒートマップでは内側にも広く色がついていて、ペナルティエリア手前のハーフスペースまで頻繁に侵入していることがよくわかる。つまり、トロイはオーバーラップだけでなくインナーラップも使いこなすのだ。バシャムでも驚いているイングランド人がトロイを見れば、きっと腰を抜かしてしまうに違いない。

これが彼の最大の魅力。185cm75kgと大柄なトロイがゴール方向へダイナミックに走る。そしてボールを受け、ラストパスを供給し、シュートを放つ。やっていることはまるでウインガーだ。

1試合平均シュート数

  • トロイ  1.0
  • バシャム 0.2

1試合平均キーパス数

  • トロイ  0.5
  • バシャム 0.3

となっていることからも、トロイがよりゴールに直結するアクションを起こしていることがわかる。

下は昨シーズンのナポリ戦でのアシスト。インサイドレーンに入り込んだトロイがアタッカーばりの見事なスルーパスを供給してイリチッチのゴールを演出している。

 

さらに、トロイは逆サイドにボールがあるときには積極的にゴール前に侵入していき、クロスボールのターゲットとなる。

再びトロイのヒートマップを見てみると、相手ペナルティエリア内にも色が濃くなっていることがわかる。対してバシャムの場合はほとんど色がついていない。

CBが上がってきてクロスボールに合わせるなど前代未聞だが、アタランタではこれが一つのパターンとしてしっかり戦術に組み込まれているのだから恐ろしい。

トロイは非常に空中戦が強いプレーヤーだ。

  • 空中戦勝率 72.2%(セリエA6位)

というデータを見ると、その勝率はセリエAトップクラスであることがわかる。トロイはオープンプレーでもセットプレーでもこの武器を活かして脅威になるのだ。

実際、トロイが過去3シーズンにセリエAで決めた5得点のうち実に4つが頭で決めたもの。ゴール前へ出ていける運動量はもちろんのこと、空中戦の圧倒的な強さがトロイの得点力を引き出しているのだ。

 




 

低い位置ではシンプルに

このように、敵陣での仕事に最大の特徴があるという異端のCB、ラファエウ・トロイ。それでは、自陣でボールを持った時のふるまいはどのようなものなのか。

基本的に、トロイは低い位置でボールを持った時にはシンプルにプレーする。そこまで高度なテクニックを持っているわけではないため、鋭いくさびで局面を打開したり馬力のあるドリブルで長距離を持ち運ぶようなプレーはしない。

  • ドリブル成功数 0.2(チーム内15位)

というデータを見ても、トロイがほとんどドリブルをしないことがわかる。

 

低い位置でボールを持ったら近くの味方に安全に預け、自分は早々と前線へと駆け上がっていくのがトロイのプレースタイル。あくまでも自分は受け手として、オフ・ザ・ボールで敵陣をかき回すことで貢献するのだ。

近くのパスコースが消されているときには、ロングボールをサパタの裏に通して走らせることが多い。

  • ロングパス成功数 3.2(チーム内2位)

というデータを見ても、トロイが長距離のパスを多用していることがわかる。

低い位置で持った時にはできるだけシンプルに、素早くボールを離すことを意識しているのではないだろうか。

 




 

厳しいプレッシャーで相手を封殺

一方、CBとして本来は最も重視される守備についてはどうなのだろうか。

アタランタの戦術はマンツーマン守備を基本としていて、高い位置から積極的にプレッシングを行う。そのため、1対1のデュエルで負けないことが非常に重要になってくる。

この点、前線からのアグレッシブな守備はトロイの得意とするところだ。

  • プレッシャー成功率 38.1%(セリエA6位)

というデータから見てもわかるように、トロイはアグレッシブにプレッシャーを掛けることで相手のミスを誘う。そうしてボール奪取に貢献しているのだ。

こと背中を向けた相手に対するプレッシャーは非常に激しい。ボディバランスとアジリティに優れたトロイは、相手が背中を向けた瞬間に一気に距離を詰めて圧力を強め、相手とボールとの間に距離ができた瞬間鋭いタックルを食らわせてボールを奪い取る。

  • 1試合平均タックル数 1.6(チーム内5位)

チーム内で特に数字が多いわけではないが、昨シーズンと数字はほとんど変わっていない。その昨シーズンの数字はチーム内でトップ3に入るもので、

  • 昨シーズンのタックル勝利数 51(セリエA7位)

とリーグ全体でもトップクラスのタックル勝利数を記録している。

これらのデータを見れば、トロイに対して背中を向けることがいかに致命的かがわかるだろう。一度つかまれば最後、しつこいディフェンスでプレッシャーを感じてミスしてしまうか、鋭いタックルでボールを奪われてしまう。高い位置から激しいプレッシャーを仕掛けるというアタランタの戦術において、トロイは理想的な人材なのだ。

 

このように、

  • オーバーラップだけでなくインナーラップも駆使し、
  • ゴール前に飛び込み空中戦を制してゴールを奪い、
  • 低い位置でボールを持った時にはシンプルにプレーし、
  • 激しいプレッシングで相手から自由を奪う

アタランタのアグレッシブなプレースタイルを象徴するCBだ。

 




 

ラファエウ・トロイの弱点

それでは、ラファエウ・トロイの弱点は何なのか。それは、相手に前を向かれたときの守備対応だろう。

さきほど、相手が背中を向けたときのプレッシャーのうまさについて説明したが、一度相手に前を向かれてしまうとトロイはもろさを露呈する。

特に苦手なのがドリブラーへの対応。CLレアル戦でヴィニシウスに何度も突破されてしまったのは記憶に新しい。

 

この動画を見てもわかるように、トロイは足が並んでしまう癖があり、横の揺さぶりに弱い。また、相手に前を向かれたときに焦って勝負を急いでしまう傾向にあり、自ら勝負を挑んではスコンとかわされてしまうことが多いのが現状だ。

アグレッシブな守備が彼の魅力であることは間違いないが、相手に前を向かれた場面では冷静な対応を求めたいところだ。

 

また、裏を取られやすいというのもトロイの弱点だ。

前へ前へという意識がとても強いトロイは、自分の後ろに走られたときに対応が後手に回りやすい。そこまでスピードがあるわけでもないので、スプリント勝負に持ち込まれたら苦しい部分がある。

いずれの弱点もトロイのアグレッシブさゆえの弱みだろう。それが無くなってしまえば彼の魅力が半減してしまうので、前への意識の強さは失ってほしくない。それを残しながら状況によっては後ろに下がったり相手にアクションを起こさせるような駆け引きができるようになれば、守備者としてより完成されたプレイヤーになれるはずだ。

 




 

あとがき

守備面に課題があり、最大の特徴が攻撃力にあるという異色のCB。ラファエウ・トロイはアタランタだからこそ輝けた側面が大きいと思う。

先日、3バックの右に入ったミンゲサが攻撃参加したことに対して怒りをあらわにするバルセロナのクーマン監督の動画が話題になった。バランスを重視する監督なら、CBの攻撃参加はご法度なのだ。

そういう意味で、トロイがCBの攻撃参加も許容するガスペリーニ監督と出会えたことは幸運だったといえる。

また、守備の面で見ても高い位置からプレッシングを仕掛けていくアタランタの戦術だからこそトロイのアグレッシブな守備が最大限に生かされているといえる。自分たちが圧力をかけていくスタイルでは相手に前向きにボールを持たれる場面がとても少なく、トロイの弱点が露呈する場面は少なくできるのだ。

アタランタにとってトロイが理想的であるとともに、トロイにとってもアタランタは理想郷なのだ。

そういう意味で、先日デビューしたイタリア代表でトロイがどこまでやれるのかは注目だ。もともとブラジル国籍ながら、イタリアのパスポートを取得して念願のアッズーリ入りを果たしたトロイ。現在のアッズーリは高い位置からアグレッシブにプレッシングを行うアタランタに近いスタイルを採用しており、戦術的な親和性は高い。4バックの右サイドバックにも対応できることから、EUROのメンバーに入ってきても不思議はないだろう。

アタランタで、そしてアッズーリでのトロイの活躍に注目だ。

 

 

あわせて読みたい 関連記事

アタランタ関連の記事一覧はこちらから

アタランタの戦術はこちらから

アタランタの全選手一覧・簡単なプレースタイルの紹介はこちらから

【セリエ最強の狩人】マルテン・デローンのプレースタイルを徹底解剖!

【セリエ最強ファイター】クリスティアン・ロメロのプレースタイルを徹底解剖!

【最強ジョーカーから不動のエースへ】ルイス・ムリエルのプレースタイルを徹底解剖!

【アタランタが生んだ異端児】ロビン・ゴセンスのプレースタイルを徹底解剖!

【アタランタの戦車】ドゥバン・サパタのプレースタイルを徹底解剖!