【ラツィオの軍曹、覚醒】セルゲイ・ミリンコビッチ=サビッチのプレースタイルを徹底解剖!

【ラツィオの軍曹、覚醒】セルゲイ・ミリンコビッチ=サビッチのプレースタイルを徹底解剖!

2021年5月3日 3 投稿者: マツシタ
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ラツィオでは東欧系の選手が多く活躍してきた印象がある。その中でも、セルビア人選手は数多い。古くはスタンコビッチやミハイロビッチ、最近でいえばコラロフやバスタ、ジョルジェビッチなどがそうだ。

彼らセルビア人選手の活躍がラツィオを支えてきたことは間違いない。だが、現在ラツィオでプレーするセルゲイ・ミリンコビッチ=サビッチはそうした歴代の名手たちの誰よりも才能に恵まれているかもしれない。

 

スペインのカタルーニャ州で生まれたミリンコビッチ=サビッチは母国セルビアのヴォイヴォディナでデビュー。この年に開催されたU-19EUROでセルビアを初優勝に導く活躍を見せ、翌年には伊東純也が所属していることでおなじみベルギーのヘンクに引き抜かれることになる。

初めての海外挑戦となったベルギーでも24試合5ゴール2アシストとその才能を存分に発揮したミリンコビッチ=サビッチは、わずか1年でイタリアの強豪ラツィオに引き抜かれることになった。

初年度は苦しんだものの、2シーズン目からは完全に主力に定着したミリンコビッチ=サビッチはどんどん成長。17-18シーズンにセリエAベスト1118-19シーズンにセリエA最優秀MFに選出されるなど、すでにリーグを代表するMFとなっている。

移籍市場が開くたびにレアル・マドリードやマンチェスター・ユナイテッド、パリ・サンジェルマンなど世界の名だたるメガクラブからの関心が寄せられるのも当然だろう。ラツィオのロティート会長が頑なに放出を拒否するのもまたよくわかる。それくらいの格の選手だ。

これまでのパフォーマンスももちろん素晴らしかったのだが、今シーズンのパフォーマンスは特に目を見張る。特に後半戦からは完全に覚醒しており、セリエAの中では頭一つ抜け出た存在に到達したといっていいだろう。

彼のどこがすごいのか。なぜ覚醒したのだろうか。

今回は、セルゲイ・ミリンコビッチ=サビッチのプレースタイルについて徹底的に掘り下げていこうと思う。




ミリンコビッチ=サビッチのプレースタイル

 

高い得点能力

ミリンコビッチ=サビッチの大きな武器のひとつが高い得点力だ。

17-18シーズンには12ゴールを挙げてセリエA得点ランキングの9位にランクインしており、以降も毎シーズン5点以上を記録してきた。今シーズンもここまでで8ゴール。ここまでコンスタントに得点が期待できるMFはなかなかいない。

彼の得点力の秘訣のひとつが空中戦の強さだ。191cmとMFとしてはひときわ大柄なミリンコビッチ=サビッチは、跳躍力も兼ね備えていて競り合いに非常に強い。

  • 空中戦勝利総数 92(セリエA6位)

というデータを見ても、彼がセリエA屈指のヘッダーであることがわかる。この空中戦の強さが得点力につながっているというわけだ。ミリンコビッチ=サビッチはここまで頭だけで3つのゴールを奪っており、セリエAでは4位タイの多さだ。彼の頭がラツィオの得点源になっていることがわかる。

こうした彼の武器を活かせるような戦術が整備されていることも大きい。遅攻時、ラツィオは左サイドを中心に攻める。このとき、逆のインサイドハーフに当たるミリンコビッチ=サビッチはファーサイドからゆっくりとゴール前に入っていき、「3人目のFW」としてクロスボールのターゲットになるのだ。空中戦を制する競り合いのうまさもポジショニングも、熟練のストライカーさながらだ。

 

この形がよく表れたのがヴェローナ戦の劇的な決勝点だった。ほぼ直立の状態から競り勝ってしまっているのもすごいが、その前に腕を使って巧みに空間を作り出しているパワーと駆け引きの巧みさも際立っている。

 

空中戦の強さももちろんだが、裏への飛び出しのタイミングもそもそも素晴らしい。

ミリンコビッチ=サビッチは相手を押し込む前からでも積極的にライン裏へ飛び出していく。多くの場合、ミリンコビッチ=サビッチは最初はサイドバックにくっつくようにポジションしている。そこから一気に斜めに走ってCBの裏を取るのが必殺パターンだ。この動き方をされると相手がマークについて行くことは困難だ。ここでも彼の駆け引きのうまさ、クレバーさがうかがえる。

そして、裏へ抜け出した後の浮き球の処理も抜群にうまい。セリエAでこの能力においてミリンコビッチ=サビッチの右に出る者はいない。強さ、クレバーさだけでなくうまさも兼ね備えていて、まさに三拍子そろっている。

こちらは昨シーズンのユベントス戦で挙げたゴール。彼の飛び出しと浮いたボールの処理のうまさが凝縮されたゴールだった。そして、そこにぴたりと合わせるパスを出せるアシストマスター、ルイス・アルベルトの存在もまた彼の能力を引き出していることは付け加えておきたい。

 

また、彼が優秀なのはボールの受け手になるときだけに限らない。自分がボールを持てば非常に積極的にシュートを狙っていく。

  • 1試合平均シュート数 2.0(チーム内2位)

という数字を見てもそれは明らかだろう。ミリンコビッチ=サビッチは恵まれた体格から非常にパワーがある上、キックの精度も高いのでミドルシュートには自信がある。多少離れていても決定的なシュートを打てるのは魅力的だ。

 

また、彼の高精度かつ強烈なキックはフリーキックにも活かされる。

ミリンコビッチ=サビッチは今シーズン挙げた8ゴールのうち半分の4ゴールを直接フリーキックから決めているのだ。これはセリエAでは最多の数字。ミリンコビッチ=サビッチはセリエA最高のフリーキッカーなのだ。

個人的に最も美しいと思ったナポリ戦での一撃を載せておく。

 

このように、裏への飛び出しや空中戦、ミドルシュートにフリーキックと非常に多彩な得点パターンを持つミリンコビッチ=サビッチ。ストライカーさながらの得点力ははここからきているのだ。




高精度のパス

ゴールを奪うことに関して、MFとしては世界屈指のレベルにあるミリンコビッチ=サビッチ。しかし、ゴールを演出する側としての能力が低いわけでは決してない。いや、むしろアシスト能力もまたワールドクラスにあるといっていい。

ミリンコビッチ=サビッチのキック精度が非常に高いことは説明した通り。この自慢の右足を駆使し、長短のパスでチャンスを作り出す。

  • 1試合平均パス回数 41.8(チーム内2位)
  • ロングパス成功数 3.6(チーム内4位)
  • 1試合平均キーパス数 1.3(チーム内3位)

データを見てみると、ボールに積極的に絡んでパスを散らすだけでなく、ロングパスで局面を変えたり味方にチャンスを提供するキーパスを多く通していることがわかる。ミリンコビッチ=サビッチが組み立ての中心としても崩しの核としても重要な存在であることがよくわかるだろう。

特に目を引くのが右WBラッザリとのホットライン。特にカウンター時にはミリンコビッチ=サビッチのパスにラッザリが裏へ抜け出すというパターンがラツィオの主な攻撃手段となっている。イタリア屈指の快足を誇るラッザリのスプリント能力を存分に引き出しているのは、ミリンコビッチ=サビッチの高精度のスルーパスなのだ。

ローマダービーでも、ミリンコビッチ=サビッチからラッザリへというホットラインからゴールが生まれている。

 

また、足元のテクニックレベルが高いミリンコビッチ=サビッチはドリブルも得意だ。

  • 1試合平均ドリブル成功数 0.9(チーム内3位)
  • ドリブル成功率 67%

このように、チームでもトップクラスにドリブルを成功させているだけでなく、その成功率は特筆すべきレベルで高い。中盤の攻撃的な選手として成功率が7割近くあるのは驚異的で、チーム内で見てもCBとアンカーの選手以外を除くとミリンコビッチ=サビッチの成功率が最も高くなっている。

長距離を持ち運ぶダイナミズムやスプリント力こそないものの、目の前の相手をはがしたり、ボールをキープしたりするドリブルに関しては一級品だ。うまさと強さを兼備するミリンコビッチ=サビッチからボールを奪うのは容易ではない。




守備力も高い

このように、攻撃能力全般が高いミリンコビッチ=サビッチだが、守備力も非常に高い

  • 1試合平均タックル成功数 1.7(チーム内2位)
  • 1試合平均インターセプト数 1.4(チーム内4位)

というデータを見ても、守備面での貢献度の大きさは明らかだ。長身なミリンコビッチ=サビッチは長い足を伸ばしてボールをからめとるようにして奪うのがうまい。相手からすれば普通なら奪われないような間合いからでも足が出てくるため、非常に厄介だろう。

昨シーズンのデータにまで目を通してみると、

  • 19-20シーズンのタックル総数 83(セリエA6位)
  • 19-20シーズンのタックル成功総数 59(セリエA4位)

となっていて、リーグの中でもトップクラスのタックル数・勝利数を記録していたことがわかる。

身体的な強さが大きな武器になっていることは間違いないが、それ以上に目を引くのは彼のクレバーさ。相手の目線を見てパスを読む、相手が背中を向けた瞬間に距離を詰めるなどの賢い守備が目立つ印象だ。

攻撃だけでなく守備での貢献度も非常に高いところが、ミリンコビッチ=サビッチがスーパーたるゆえんだ。




ピッチ全域をカバーする走力も抜群

ラツィオは基本的にはリトリート守備を採用していて、守備時には自陣深くまでしっかり戻ることが求められている。一方、攻撃時にはミリンコビッチ=サビッチがFWさながらに前線へ飛び出すことは前述した通り。つまり、ミリンコビッチ=サビッチのプレーエリアは自陣ゴール前から相手ゴール前まで、ピッチの縦幅すべてをカバーしていることになる。

これを実現するためには、非常に豊富な運動量が求められる。しかし、ミリンコビッチ=サビッチはこの難題にも難なく対応している。

  • 1試合平均走行距離 11.475km(セリエA4位)

と、リーグでもトップクラスの運動量を記録している。もちろんチーム内では断トツのトップだ。ミリンコビッチ=サビッチが中盤だけでなく両ゴール前で決定的な仕事ができる背景には、彼の恵まれた持久力があるのだ。

 

このように、

  • 空中戦の強さを活かして第3のFWとしてゴールを量産し、
  • 裏への飛び出しと浮き球の処理が極めてハイレベルで、
  • 強烈なミドルシュートや高精度の直接フリーキックも武器にし、
  • スルーパスでラッザリのスピードを引き出し、
  • テクニカルなドリブルで目の前の相手を剥がし、
  • 守備力も非常に高く、
  • 攻守で相手との駆け引きを制するクレバーさを持ち、
  • リーグトップクラスの運動量も兼備する

ここまで才能に恵まれたMFはなかなかいない。うまくて、強くて、賢い。フィジカル的にもテクニック的にも、持っている資質は超ワールドクラスのタレントだといっていいだろう。「ポグバの後継者」と呼ばれたのも納得だ。




ミリンコビッチ=サビッチの弱点

攻守ともに非常に能力値が高いミリンコビッチ=サビッチ。彼に弱点はあるのだろうか。

今までに指摘されていたのがパフォーマンスに安定感がない点だ。たしかに、今までのミリンコビッチ=サビッチはワールドクラスのパフォーマンスを見せる試合がある一方で、完全に消えてしまい存在感が皆無な試合も散見されていた。

こうした継続性の低さの要因となっていたのが未熟な精神面だった。うまくいかない試合のミリンコビッチ=サビッチは簡単にイライラしてしまい、自らリズムを崩していくという悪循環に陥ることも少なくなかった。

 

しかし、ここにきてミリンコビッチ=サビッチは精神的に成熟してきて、パフォーマンスが非常に安定した印象がある。

その証拠に、今までは途中交代が多かったのが今シーズンはフル出場の割合が大きく高まっている。

1試合当たり平均出場時間

  • 18-19 78分
  • 19-20 82分
  • 20-21 86分

特に、後半戦に入ってからは途中交代した試合はわずか2試合だ。これは彼がどんな試合でも90分通して安定したパフォーマンスを披露していることの何よりの証拠だろう。

転機となったのはCLでバイエルンに惨敗した試合だったと思う。この試合で世界のトップレベルとの差をまざまざと見せつけられたことで、ミリンコビッチ=サビッチの中で何かが変わったのだろう。バイエルン戦以降のミリンコビッチ=サビッチは明らかにパフォーマンスのレベルが一段上がり、決定的な仕事を連発している(バイエルン戦以降の5試合で2ゴール2アシスト)。

イライラすることも減り、黙々とハイパフォーマンスを継続する。攻守に走り回り、チームを鼓舞するリーダーシップも発揮しながら、だ。

数字を見ても、ここまでリーグ戦8ゴール9アシスト。ゴールとアシストの合計数でキャリアハイに乗せている。内容でも結果でも、キャリア最高の輝きを放っているのだ。

ワールドクラスの才能を安定して発揮できるようになったミリンコビッチ=サビッチ。唯一の弱点を克服した彼は、世界最高クラスのMFへとまた一歩近づいた。




あとがき

ついに精神面での成熟とパフォーマンスの安定を手に入れ、ワンランク上のレベルに到達したミリンコビッチ=サビッチ。完全にワールドクラスの領域に足を踏み入れたといっていいと思う。足りないのはタイトルなど国際的な実績だけで、実力だけ見れば世界でも10本の指に入るMFだと思う。

来年27歳となるミリンコビッチ=サビッチはここから全盛期を迎えるだろう。このタイミングでメガクラブへ挑戦することになるのか、それともラツィオのレジェンドとしてクラブにタイトルをもたらすことを選択するのか。実力的には歴史に名を刻むべきクラックだと思うので、どんな選択をするにせよ確固たる実績を築いて世界的な名声をつかんでほしい。

個人的にはCL優勝を争うレベルのクラブで見てみたいという思いもある一方で、イタリアでその姿が見られなくなるのはさみしいという複雑な思いだ。果たして、彼はどのような決断を下すのだろうか。

ミリンコビッチ=サビッチ。彼の名前が世界中にとどろくその時を楽しみに待ちたい。

 

 

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