【ジェノアのバンディエラ】ドメニコ・クリーシトのプレースタイルを徹底解剖!

【ジェノアのバンディエラ】ドメニコ・クリーシトのプレースタイルを徹底解剖!

2021年4月28日 2 投稿者: マツシタ
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ジェノアCFC。イタリア最大の貿易港ジェノヴァに本拠地を置く、セリエA優勝9回を誇る名門クラブだ。

ただし、最後のスクデットは1923-24シーズン。もう100年近くも前だ。今では古豪と言ったほうがしっくりくるだろう。

近年はセリエAの中堅から下位をさまよう戦いに終始しているジェノア。しかしながら、14年間降格することはなく1部の舞台で戦い続けている点は立派だ。そのうち4度は降格圏ぎりぎりの17位でフィニッシュしていて、安定感には欠けるがしぶといチームだといえるかもしれない。

そんなジェノアのキャプテンとしてチームを引っ張っているのが、ドメニコ・クリーシトだ。

 

ジェノアのプリマヴェーラで育った生粋のジェノアっ子であるクリーシトは、20歳にしてユベントスに引き抜かれる。しかし、イタリア屈指の強豪では選手層の厚さに阻まれ、わずか半年でジェノアに復帰。4シーズンで5ゴール8アシストと活躍し、この間にイタリア代表にもデビュー。南アフリカワールドカップでは全試合に先発出場するなど中心選手の一人として活躍した。

その後はナポリからの誘いを蹴ってゼニトへ移籍し7シーズン活躍したクリーシトは、2018年に契約満了を迎える。このタイミングで選択した新天地は、心のクラブであるジェノアだった。

復帰とともにキャプテンに就任したクリーシトは、毎年残留争いに巻き込まれる苦しい戦いの中でもチームを鼓舞し続け、残留に導いてきた。彼がいなければ、今頃ジェノアはセリエBで戦っていたのではないだろうか。

今シーズンは現在13位と降格圏までは比較的余裕があるジェノアだが、ここまで喫した13敗のうち8敗はクリーシトがいない試合だった。その敗率は73%にもなる。彼がいるいないでチームのパフォーマンスにどれほど大きな影響が出るかがわかるだろう。

ジェノアに欠かすことができないクリーシト。彼は精神的支柱であることはもちろん、プレー面でも大きな貢献を果たしている。それでは、彼は一体どんなプレーヤーなのか。

今回はドメニコ・クリーシトのプレースタイルについて徹底的に解剖していこうと思う。




クリーシトのプレースタイル

 

組み立て能力の高さ

クリーシトの最大の武器が組み立て能力の高さだ。

  • 1試合平均パス回数 38.0(チーム内3位)

という数字を見ても、クリーシトがジェノアのビルドアップにおいて中心的な役割を担っていることがわかる。

彼の最大の武器がキックの精度の高さだ。以前は左サイドバックとしてプレーしたクリーシト。当時は左足からの正確なクロスボールを武器とするプレーヤーだった。現在は、その正確なキックを後方からの組み立てで生かしている格好だ。

特に目を引くのがロングパスの精度で、逆サイドにいる味方に正確に届ける。相手のDFラインが高くなっていれば、その裏にふわっと落とすタッチダウンパスも蹴ることができる。

  • ロングパス成功数  3.5(チーム内3位)

という数字を見ても、彼が積極的にロングパスを狙っていることがわかる。

 

クリーシトがビルドアップの中心としてふるまえる理由はキックの正確性だけではない。ポジショニングの的確さも彼の武器だ。

下はユベントス戦のジェノアの各選手の平均ボールタッチポジション。4番のクリーシトはハーフスペースの高い位置に積極的に進出していることがわかる。

 

そう、クリーシトは3バックの左の位置からタイミングよく前へ出てくる。この中盤へ出ていくタイミングが絶妙で、味方が詰まりかけたタイミングですっと前へ出て斜めのパスコースを作り出し、ボールを受け、逆サイドに展開する。パスワークの逃げどころであり、同時にサイドチェンジの中継点としても機能しているのだ。

下はユベントス戦でのクリーシトのヒートマップ。最終ラインと中盤の2か所で色が濃くなっていることがわかる。彼が最終ラインで組み立ての中心となりつつ、中盤にも出ていっていることが示されている。

彼が1列前に出てくることで中盤に数的優位を作り出し、ジェノアの攻撃は安定する。彼がいるいないでは攻撃のスムーズさが違うのはこのためだ。

 

また、クリーシトが前に移動する手段はオフ・ザ・ボールの動きだけにとどまらない。ボールを持っている状態でも前に出ていける。つまり、ドリブルで持ち運べるのだ。

クリーシトは前が空いていれば積極的にドリブルで持ち運ぼうとする。そうすることで、相手FWを置き去りにして敵のMFを引き付け、フリーの味方を作り出すことができるのだ。

これはデータにもしっかり現れている。

  • 突破をともなわないドリブル成功距離 4088m(チーム内3位)
  • 縦方向の突破をともなわないドリブル成功距離 2650m(チーム内2位)

このように、クリーシトがセンターバックながら長距離を持ち運んでいることがわかる。その中でも縦方向への持ち運びが多いことが特徴で(「縦方向のドリブル成功距離」とはタッチラインと平行に見て相手ゴールの方向に進んだ距離のこと。この数字と単純なドリブル成功距離の数字が近いほどまっすぐな縦方向へのドリブルに近くなる)、クリーシトが横に逃げるドリブルではなく局面を進める縦へのドリブルを多く見せていることは明らかだ。

こうして相手を引き付け、フリーになったMFや降りてきた2トップへの鋭いくさび、逆サイドでフリーになったウイングバックへのサイドチェンジ、アーリークロスを的確に蹴り分けられる。あえて自分に相手のマークを集められる落ち着き、その中でも狂わない判断力、正確なキックのすべてがそろっていなければできない芸当だ。

これほど味方に時間を与えられるDFはセリエA全体を見てもなかなかいない。ビッグクラブでも通用するレベルのビルドアップ力だといっていいだろう。




PK職人でもある

さらに、クリーシトはPK職人でもある。昨シーズン、クリーシトはチーム2位の8ゴールを挙げているが、うち7つがPKからのもの。1シーズンにPKだけで7ゴールも決められるDFはそういない。

しかも、昨シーズンのフィオレンティーナ戦で失敗するまではキャリア通してPK成功率100%を維持していた。連続成功記録は15本。偉大な数字だ。

後にも先にもクリーシトがPKを失敗したのはこの1本だけで、ここまでキャリア通算17本のPKを沈めている。彼の正確な左足と強心臓の両方があってこそなしえた記録だろう。




守備

このように、攻撃面での貢献度が高いクリーシト。しかし、守備力で劣っているわけでは決してない。

クリーシトの魅力はアグレッシブで激しい守備。インテリジェントで落ち着いた攻撃時のふるまいからは想像できないほど守備時には激しく、厳しく相手にプレッシャーをかけて自由を与えない。特に目を引くのが相手が背中を向けたときの間合いの詰め方。一気に距離を詰めてタックルを仕掛け、自由を奪う。

  • 1試合平均タックル数 2.0(チーム内トップ)
  • タックル勝利総数 27(チーム内2位)
  • タックル勝率 62.7%

という数字を見れば、クリーシトがとても多くのタックルを仕掛けていること、ただ回数が多いだけでなく勝率も高いことがわかる。

激しさという面はカードの多さを見てもよくわかる。ゼニト時代の16-17シーズンには10枚のイエローカードを受けてリーグトップのカードコレクターに輝いており、ジェノア復帰1年目の18-19シーズンは35試合出場で12枚のイエローカードを受けている。3試合に1枚を上回るペースだ。

カードの多さは玉にきずとは言え、激しさが無くなってしまえば彼の魅力が半減することもまた事実。タイトな守備は彼の大きな武器なのだ。

 

また、クリーシトはインターセプトも得意としていて

  • 1試合平均インターセプト数 2.0(チーム内2位)

となっている。これも、常に引いて行くFWに対して出足鋭くプレッシャーをかけようと狙っている準備力のたまものだろう。また長年の経験からくる予測力も素晴らしく、相手の目線を見ながら瞬時に自分のマークを捨ててパスコースに入ってカットする場面も多い。

特別フィジカル能力に優れているわけではないクリーシトだが、その不足分を準備力や予測力で補っている。攻撃時の気の利いたポジショニングやドリブルも含め、非常に賢いプレーヤーだなと感じる。そのサッカーセンスの高さが彼の最大の武器なのかもしれない。

 

このように、

  • リーダーシップ抜群で、
  • 正確な長短のパスで組み立ての中心となり、
  • 的確なポジショニングやドリブルで中盤に数的優位を作り出せ、
  • アグレッシブな守備で相手の攻撃の起点をつぶせ、
  • フィジカル能力の不足を補う戦術的インテリジェンスの高さを持つ

と攻守両面で圧倒的な貢献度の高さを誇るクリーシト。彼がいなければチームの勝率が大きく変わるのも納得だ。




クリーシトの弱点

このように、チームに大きな影響力を持つクリーシトだが、彼に弱点はあるのだろうか。

先ほど、クリーシトはあまりフィジカル能力がないと書いた。地上戦ではタックルの技術力の高さで高い勝率を記録しているクリーシトだが、空中戦は

  • 空中戦勝率 45%

と勝率が半分を下回っている。クリーシトの弱点は空中戦の弱さだ。

実際に試合を見ていても、相手からのロングボールを隣のラドバノビッチに全面的に任せ、クリーシトはそのカバーに徹している。空中戦に弱点があることは分かったうえで、役割を分担しているのだろう。

ただ、クロスボールの対応時にはラドバノビッチにすべて任せるわけには行かない。3バックの一角としてゴール前で体を張ることが求められるが、クリーシトは競り負ける場面も多い。こうしたクロス対応に不安定さがあることが、クリーシトの数少ない弱点と言えるのではないだろうか。




あとがき

過去2シーズンは17位とギリギリでの降格回避が続いていたジェノアだが、今シーズンは現在13位。今年は最後にヒヤヒヤすることなくシーズンを終われる可能性が高そうだ。

例年と比較すると充実した戦いぶりを見せたといえるジェノア。その中心には、クリーシトがいた。今季ジェノアが喫した13敗のうち8敗はクリーシトがいない試合だったのは前述の通り。プレー面でも精神面でもチームを支えるクリーシトの存在感は絶大だ。

現在34歳のクリーシトは、引退後もクラブに残って若手を指導したいと話す。どこまでもジェノアとともに心中する覚悟だ。

ジェノアのバンディエラ、クリーシト。彼の最後の輝きに注目したい。

 

 

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