
【右サイド職人】ファン・ギジェルモ・クアドラードのプレースタイルを徹底解剖!
近年、サイドアタッカーをサイドバックにコンバートする例が多くなっている。バイエルンでブレイクしたアルフォンソ・デイビスはその代表例で、ベテランではヘスス・ナバスがサイドバックコンバート後に再ブレイクしている。
そして、フアン・ギジェルモ・クアドラードもまた、サイドアタッカーからサイドバックに転向して息を吹き返した選手の一人だ。
といっても、クアドラードはもともとサイドアタッカーだったわけではない。母国コロンビアのインデペンディエンテ・メデジンではサイドバックとしてデビューしている。
その後イタリアのウディネーゼにわたったクアドラードは、右のウイングバックを主戦場にするようになる。その後のレッチェ、フィオレンティーナでも当初は右のウイングバックでプレーし、チームが4-3-3へシステムを変更すると、クアドラードは右のウイングを任されるように。以後、代表でも右のサイドアタッカーとして活躍し、プレミアリーグの強豪チェルシーへの移籍を勝ち取った。
しかし、負傷離脱などもあって出場がままならなかったクアドラードはイタリアへの帰還を決断。ユベントスに加入することになったのだ。
ユベントス加入後当初はサイドアタッカーとして活躍したクアドラードだったが、3年目の17-18シーズンはリーグ戦21試合、続く18-19シーズンは同18試合と徐々に出番を減らし、チーム内での地位が苦しくなっていった。
そんな中迎えたコパ・アメリカで、クアドラードは4-3-3のインサイドハーフとしてプレーして好印象を残す。これを受け、翌19-20シーズンからユベントスの指揮官に就任したマウリツィオ・サッリはクアドラードのポジションを下げることを決断。サイドバックへと再コンバートする。これが功を奏し、クアドラードは再び輝きを放つようになったのだ。
続く今シーズンもサイドバックを主戦場としてプレーしているクアドラードは、ここまでチームトップとなる公式戦14アシストを記録している。特にCLだけで6アシストを記録していて、同大会のアシストランキングでダントツトップ。このままアシストキングになっても何ら不思議ではない。クアドラードは欧州屈指のアシストマシーンだといっていいだろう。
サイドバックからアタッカーを経てまたサイドバックに戻ってきたクアドラード。インサイドハーフもこなせる彼は右サイドならどこでもこなせる、まさに右のスペシャリストだ。
今回は、そんなフアン・ギジェルモ・クアドラードのプレースタイルを徹底的に掘り下げていきたい。
目次
クアドラードのプレースタイル
強力なドリブル突破
クアドラードの最大の武器がドリブルだ。
クアドラードのドリブルの特徴はテクニックスピードが高次元で融合していることだ。またぎフェイントを多用しながら相手の足を止め、一気に縦に持ち出して突破してしまう。この持ち出しのタッチがパワフルで、瞬間的に相手の前に入ってしまう。この一瞬のキレは動物的で、止めるのは容易ではないだろう。
これがよく表れたのがジェノア戦でのアシストだった。
クアドラードがユベントスの中でも屈指のドリブラーであることはデータにも表れていて、
- 1試合平均ドリブル成功数 1.7(チーム内3位)
- ドリブル成功総数 36(チーム内2位)
- ドリブル成功率 70.6%(チーム内4位)
とドリブルに関するデータでは軒並み高い数字を残している。
特に驚異的なのがドリブルの成功率で、その数字はドリブル成功数で1位・2位になっているロナウドの65.8%、キエーザの56.9%を大きく上回っている。成功率でクアドラードを上回っているダニーロ、アルトゥール、アレックス・サンドロはいずれも後方でプレーする選手であるため、敵陣で相手を突破するドリブルでみればクアドラードはトップだといっていいかもしれない。
このドリブル突破を活かすべく、クアドラードは守備時にはサイドバックに位置しながら、攻撃時にはウイングに近い立ち位置をとる。そうしてボールを受け、相手のサイドバックを突破することでチャンスを作り出すことがクアドラードに求められているタスクだと言えるだろう。
高精度のクロスボール
強力なドリブルを持っているクアドラードだが、彼の武器はドリブルだけではない。タッチライン際から供給する高精度のクロスボールもまた彼の大きな武器なのだ。
- クロス総数 64(チームトップ)
- 1試合平均キーパス数 1.7(チームトップ)
という数字を見てもわかるように、彼のクロスから非常に多くのチャンスが生まれているのだ。
クアドラードのクロスの素晴らしいところは、キックのバリエーションが非常に多彩なこと。GKとDFラインの間に入れる低くて速いボールからふわっとしたボール、カーブしてピンポイントで合わせるアーリークロスまでを蹴り分ける。コーナーキックからのアシストも多い。これだけ多くの球種を蹴り分けられる選手はそういない。
ドリブル突破を警戒して距離を開ければ高精度のクロスを上げられ、それを警戒して寄せにいったらスコンとかわされる。単独でクアドラードを止めることが不可能なのは、相手の対応によって異なる手段でチャンスを作り出せるからなのだ。
後方からの配給力も高い
クアドラードのキック能力の高さはクロスボールだけに生かされているわけではない。彼は後方からの的確な配球でゲームメイクもできるのだ。だからこそコロンビア代表ではインサイドハーフで起用されるのだろう。
特に精度が高いのがロングパスで、
- 1試合平均ロングパス成功率 3.0(チーム内4位)
というデータからもそれは明らかだ。
ゲームメイク力はサイドバックで起用されたことによって引き出されたクアドラードの新たな側面だといえるだろう。低めの位置でセンターバックからボールを引き出し、前線のアタッカーへのロングボールや鋭いくさびでボールを前進させる。さらにはドリブルで持ち運び、相手の陣形が整う前にアーリークロスでゴールチャンスを生み出す。
こうしたプレーのスムーズさを見ていると、クアドラードの最適なポジションはサイドバックだと感じる。マークがきつく、相手を背負う必要が出てくるウイングよりも、前向きでボールが受けやすく、自分がボールを受ける高さを調節できるサイドバックの方がクアドラードにはあっているだろう。
今のクアドラードはピッチの縦幅をすべてカバーできるフィジカル能力、そしてどの高さからでもチャンスを作り出せるプレーの幅の広さを最大限発揮できているように感じる。
激しいプレッシング
このように攻撃面での貢献度が高いクアドラードだが、守備での貢献度が低いわけでは決してない。
- 1試合平均タックル数 1.7(チーム内3位)
- 地上戦勝率 62%
- 1試合平均インターセプト数 1.5(チーム内2位タイ)
となっている通り、チームの中でも屈指の守備アクションを記録している。
クアドラードの守備の特徴がアグレッシブさで、非常に積極的にタックルを仕掛けに行く。一度離されても持ち前のスピードとアジリティを活かして粘り強く食らいつき、何度もコンタクトして相手のバランスを崩す。技術的に洗練されているわけではないが、質の不足を量でカバーするような守備をするのが彼の特徴だ。
そしてインターセプトも得意技。相手の目線を見て一気に前に出てパスをカットする。ここでもアグレッシブさが活きているのだ。
このように、
- テクニカルかつキレのあるドリブルは強力で、
- 多彩なクロスボールでアシストを量産し、
- 後方からの配球能力にも長け、
- アグレッシブな守備で相手アタッカーを封殺する
攻守両面でクオリティの高いクアドラード。サイドバックで起用されたことにより、その両方がより発揮しやすくなっている印象だ。
クアドラードの弱点
それでは、クアドラードの弱点は何なのか。
ひとつ挙げるとすれば、守備時の判断力だろうか。
先ほど、クアドラードは質の不足を量でカバーするような守備をするという話をした。比較的高い位置ではそれでもいいけれど、自陣ゴールに近くなればなるほど、勝負できる回数は限られる。こうした場所で自分から仕掛けようとするあまり、バクチ的な対応が多く見受けられる。その結果、ボールを奪う回数も多いが簡単に相手にかわされてしまう場面も多いのがクアドラードだ。
また、カードの多さも気になるところ。
- イエローカード 8枚(チーム内トップ)
となっている。
気になるのは不要なカードが多いこと。相手に完全に前に入られた場面やペナルティエリア内などでもアグレッシブにタックルを仕掛けようとする傾向にあること、ボールよりも相手の体に対してタックルする傾向にあることから悪質なファウルに見えやすい。また、若干気性が荒くイライラしやすいため冷静さを失っているようにも見られやすいのだと思う。
敵陣ではアグレッシブな姿勢は魅力だが、自陣での守備対応では冷静さや丁寧さといった要素が欲しいところだ。
あとがき
自陣深い位置での守備に不安があるクアドラードだが、攻撃面や敵陣での守備に関する貢献度は非常に高い。相手に押し込まれることが少なく、むしろ高い位置をとって攻撃する時間が長いユベントスは、彼の長所を発揮しやすい環境だといえる。ユベントスにとってもまた、クアドラードは目指すサッカーのスタイルとマッチした攻撃的サイドバックだといえる。
最適な環境で、最適なポジションに置かれたことでキャリアを立て直したクアドラード。第2の春を謳歌する彼が望むのは、新たなタイトルだろう。CLで敗退し、セリエA10連覇の夢もほぼついえた今、5月19日に開催されるコッパ・イタリアは是が非でも獲得したいタイタイトルのはずだ。
相手は先日敗れたアタランタ。リベンジを果たしてカップを手にできるか。そのカギを握るのはクアドラードだ。
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