【セリエ最強の狩人】マルテン・デローンのプレースタイルを徹底解剖!

【セリエ最強の狩人】マルテン・デローンのプレースタイルを徹底解剖!

2021年4月18日 6 投稿者: マツシタ
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近年、サッカー選手に求められる役割は複雑かつ多様になってきている。GKには攻撃への参加が求められ、FWには守備への参加が求められるというように。

一方で、ピッチを広範囲に動き回ってボールを回収しまくる中盤、いわゆるボールハンターは古くから存在していて、今でも変わらず貴重な戦力として重宝されている。

現在ナポリの監督を務めているジェンナーロ・ガットゥーゾは現役時代にこのタイプの代表的な選手だった。現代でいえばその第一人者はエンゴロ・カンテだろう。また、ブンデスリーガで最多のデュエル勝利数を記録して称賛を浴びている日本代表、遠藤航もこのタイプに分類される。

そして、現在のセリエAにおいてボールハンターの第一人者と言えるのがアタランタでプレーするマルテン・デローンだ。

 

母国オランダのスパルタ・ロッテルダムでデビューしたデローンは、ヘーレンフェーンを経てアタランタへと加入する。

当時のアタランタは現在のイタリア屈指の強豪という立ち位置とは程遠く、数あるプロビンチャのひとつに過ぎなかった。実際、デローンが加入した15-16シーズンは13位と振るわないシーズンを過ごしている。そんなアタランタでデローンは主力として活躍したもののわずか1シーズンで放出されることに。イングランド・プレミアリーグの昇格組ミドルスブラへ移籍する運びとなった。

このイングランド移籍が吉と出て、デローンは大きく成長。ボールを回収しまくるだけでなくチーム内得点ランキング2位となる4ゴールを挙げる大活躍。結果的に降格することとなるミドルスブラの中で孤軍奮闘を見せた。

この活躍を評価したアタランタはデローンを買い戻すことを決定。1年でイタリアの地に舞い戻ることになった。

デローンが飛躍した16-17シーズンは奇しくもアタランタにとっても飛躍の1年で、当時のクラブ史上最高のセリエA4位に入っていた。別々の道でそれぞれ成長したデローンとアタランタは再び力を合わせて戦うことになったのだ。

以降の躍進ぶりはここで説明する必要はないはず。アタランタはいまやイタリア屈指の強豪クラブへ成長し、デローンはイタリア屈指の守備的MFとして大成した。アタランタなくして今のデローンはなく、デローンなくして今のアタランタはありえなかっただろう。

今回は、そんなマルテン・デローンのプレースタイルについて徹底的に掘り下げていきたい。




デローンのプレースタイル

 

広範囲を動いてボールハント

デローンの最大の武器がボール奪取力の高さだ。中盤を広範囲に動いては相手のキーマンに鋭いタックルをお見舞いする。

  • 1試合平均タックル数 2.3(チーム内トップ)
  • タックル総数 73(セリエA2位)
  • タックル勝利数 52(セリエA1位)

となっていて、今季のセリエAで最もタックルを成功させている選手となっているのだ。これが私がデローンをイタリア最強のハンターと称する理由だ。

ガットゥーゾやカンテなどが小柄なのとは対照的に、デローンは185cm76kgと中盤の選手としては大柄。それゆえ、ひとつひとつのタックルに非常にパワーがある。デローンにタックルをぶちかまされてバランスを崩さずにいられる選手は少なく、一度狙われたらボールを守ることは非常に難しいだろう。

 

また、デローンはインターセプトも得意としていて、

  • 1試合平均インターセプト数 2.0(チーム内4位)
  • インターセプト総数 52(セリエA6位)

とこちらもセリエA屈指の数字を記録している。基本は自分がマークする相手を監視しながらも、相手がパスモーションに入った瞬間にパスカットに切り替える判断には素晴らしいものがある。

そして、これらの守備アクションを支えているのが豊富な運動量であることに疑いの余地はない。

  • 1試合平均走行距離 10.885km(チーム内2位)

となっていて、同トップのフロイラーとともに中盤を幅広く動いてはタックルをかましまくる

下はデローンの今シーズンのヒートマップ。右サイドを中心にミドルサードの全域を幅広くカバーしていることがわかる。デローンは大柄な見た目からは想像できないくらい機動力が高く、ガスペリーニのマンツーマンディフェンスを体現する上では理想的な人材だろう。

ピッチ全体をカバーできるスタミナが、デローンのボール回収の多さを支えているというわけだ。

 

さらに、デローンは長身であるため空中戦にも強い。

  • 空中戦勝率 61%

と、6割を超える勝率を記録している。地上戦だけでなく空中戦でも相手の攻撃をシャットアウトできるのは、カンテをはじめとした小柄で俊敏なボールハンターにはない長所だといえるだろう。




正確なロングフィード

守備力に特徴を持っているデローンだが、攻撃での貢献度が低いわけでは決してない。いや、むしろ高いといっていい。

  • パス回数 53.1(チーム内トップ)

というデータを見てもわかる通り、組み立ての中心としての役割も担っているのだ。

アタランタは3バックのシステムを採用しているが、この3人のセンターバックはそこまで組み立て能力が高くない。そのため、ガスペリーニ監督はビルドアップ時にはデローンが右CBの位置に降りることで4バックを形成し、彼が起点となってボールを集配することでビルドアップをスムーズにするメカニズムを採用している。だからデローンのパス回数がチーム内最多なのだ。

 

また、デローンはただ堅実にパスを散らすだけでなく、ロングボールで局面を打開するようなプレーも得意としている。

  • ロングパス成功数 4.1(チーム内トップ)

というデータを見てもわかるように、積極的にロングフィードを狙っていることがわかる。

デローンのロングフィードの受け手はサパタ。デローンが右CBの位置で前向きにボールを受けたとき、サパタは必ず斜め前へ動き出す。デローンはその裏めがけてロングフィードを送り、左サイドの深い位置に攻撃の起点を作る。この対角線のロングパスがアタランタのビルドアップの主要パターンになっている。

 

このように、デローンは自分たちのボール保持を安定させるだけでなくボールをアタッカーへ届けるという意味でも重要な役割を果たしている。

  • ファイナルサードへのパス成功総数 190(セリエA4位)

となっている通り、デローンのパスによって局面を前に進める場面は非常に多くなっている。特に、冬にゴメスが退団してからはデローンに期待される役割はさらに大きくなっている。今までゴメスが担っていた役割の一部をデローンが肩代わりしている格好だ。




リーダーシップも兼備

そのゴメス退団後、キャプテンを継いだのはラファエウ・トロイだった。しかし、デローンが継いでいても不思議はなかったと思う。

事実、昨シーズンにゴメス不在時にキャプテンマークを巻いていたのはデローンであり、今シーズンもラファエウ・トロイ不在時にはデローンがキャプテンマークを巻いている。

チームに締まりがない時には中盤で激しいタックルを見せて喝を入れるのも印象的。声だけでなくプレーでもチームを鼓舞できるよきリーダー、それがデローンだ。

 

このように、

  • 中盤を広範囲に動いてボールを回収しまくり、
  • ビルドアップ時には最終ラインに降りて組み立ての中心となり、
  • ロングフィードで局面を前に進め、
  • リーダーシップも兼ね備える

決して派手な選手ではないが、チームには欠かすことができない黒子だ。それはここまでチームトップの出場時間(2303分)を記録していることを見れば明らかで、ガスペリーニ監督からの信頼は絶大だ。




デローンの弱点

それでは、デローンに弱点はあるのだろうか。

あえて言うならゴールに絡む回数が少ないことだが、これは弱点というよりも昨シーズンからの変化と言ったほうがいい。ミドルスブラでチーム2位の4ゴールを挙げたことを紹介した通り、デローンはゴールにも絡めるプレーヤーだ。

アタランタに復帰後も毎シーズンゴールとアシストを記録している。具体的に見てみると

  • 17-18シーズン:3ゴール3アシスト
  • 18-19シーズン:2ゴール3アシスト
  • 19-20シーズン:2ゴール5アシスト

となっている。ボールハントを主な仕事とする守備的MFとしては、むしろかなり高いレベルの攻撃力を持っていると評価していいだろう。

下は昨シーズンのブレシア戦で決めた見事なゴール。このように、前線に飛び出して強烈なミドルシュートを突き刺すプレーはむしろ得意とするところなのだ。

 

そんなデローンだが、今シーズンは開幕節のトリノ戦で得点を挙げて以来ゴールから遠ざかっている。ここまでの1ゴール1アシストという数字はこれまでのシーズンと比べると少ない。その原因は何だろうか。

個人的にはゴメスの不在が原因だと感じている。

ゴメスがいれば、ゴールに絡むプレーはデローンがやらなくてもいいように思える。しかし、ゴメスが中心にいた昨シーズンまでのアタランタのメカニズムを知ればその疑問は解決できる。

というのも、アタランタがボールを保持しているとき、ゴメスは中盤の低い位置にまで下りてきて組み立ての絡んでいた。そのため、ゴメスがボランチの位置にいて、それと入れ替わるようにしてデローンが前線へ飛び出していく場面が結構あったのだ。

 

しかし、ゴメスがいなくなったことで最終ラインを補助できる選手がいなくなってしまった。ゴメスに替わって主力に定着したペッシーナは低い位置にひいてきてゲームメイクしたりドリブルで持ち運んだりするタイプではなく、むしろパスの受け手として前線に飛び出すことで良さを発揮する選手だ。

そこで、デローンが前述のように最終ラインの一角にひいて組み立ての中心としてふるまう頻度が増えたというわけだ。そこから前線まで駆け上がって点を取れというのはあまりにも酷な話だろう。

つまり、デローンのゴール関与率が下がったのは彼の能力の問題ではなく、チーム事情によるものなのだ。

自分が目立つプレーをすることも確かにできる。それでも、そうしたプレーを抑えてでもチームのバランスを保つことに徹する。フォア・ザ・チームのスピリットにあふれた、素晴らしい選手だ。




あとがき

アタランタとともに成長してきたデローンはいまやオランダ代表でも主力となった。ファン・デ・ベークやクラーセンと言った実力者を押しのけ、ワイナルドゥムやデヨングとともに中盤を形成している。ふたりのスター選手の陰で汚い仕事を引き受ける様は仕事人という愛称がよく似合う。

 

母国オランダでもそのボールハントが高く評価されるデローン。いまや世界でも指折りのボールハンターだといえる。

こうなってくると、デローンに足りないものはただ一つ、タイトルだ。幸い、そのチャンスは多く巡ってきそうだ。まず何といっても外せないのがコッパ・イタリアの決勝。ここでユベントスに勝利すれば、念願のキャリア初タイトルだ。アタランタにとっても1962-63シーズン以来58年ぶりのタイトルになる。

そして、シーズン終了後にはEUROが待っている。一時の暗黒期を脱したオランダ代表には欧州制覇のチャンスも十分にあるはずだ。

30歳となったいま、自身のキャリアにトロフィーという花を添えられるか。アタランタを、オランダを陰ながら支えるデローンの活躍に注目だ。

 

 

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