【駆け上がる男】マヌエル・ラッザリのプレースタイルを徹底解剖!

【駆け上がる男】マヌエル・ラッザリのプレースタイルを徹底解剖!

2021年4月11日 3 投稿者: マツシタ
Pocket

クリスティアーノ・ロナウドにメッシ、ネイマール、ムバッペ、ハーランド…。サッカー界で名声を得る選手には、確かに若いころから継続して活躍してきたいわゆるエリートが多い。しかし一方で、8部から這い上がって奇跡のプレミア優勝を成し遂げたヴァーディーのように、プロ生活を始めてから大逆転を果たした選手も少なからず存在する。

マヌエル・ラッザリも全くの無名の存在から現在のステージにたどり着いた苦労人だ。

 

ラッザリは当時4部にいたSPALでプロデビューした。SPALはラッザリのデビューからわずか4年でセリエBを優勝、初のセリエA昇格を果たす。ものすごい勢いでトップへの階段を駆け上がったSPALはその後も2年連続でセリエA残留を成し遂げた。この激動の6年間を支えたのがラッザリで、4部時代を知る唯一の存在でありチームの中心選手としてSPALを高みへと導いたのだ。その活躍が評価され、2018年には代表デビューも飾っている。

すっかりSPALの中心となったラッザリだったが、翌シーズンにステップアップを決断。苦楽を共にした古巣に別れを告げ、イタリア屈指の強豪ラツィオへの移籍を果たした。

加入初年度から右ウイングバックの定位置をつかんだラッザリはラツィオに不可欠な存在として定着。チームを4位に導き、5年ぶりのチャンピオンズリーグ出場権をもたらしたのだった。

自らも成長し、所属するチームも常に高みへと引っ張り上げてきたラッザリ。驚異的なスピードでセリエA屈指の攻撃的ウイングバックに駆け上がった。

今回は、そんなマヌエル・ラッザリのプレースタイルについて徹底的に掘り下げていこうと思う。




ラッザリのプレースタイル

 

驚異的なスピードと強力な縦突破

ラッザリの最大の長所がその爆発的なスピードだ。とにかく速い。誰が見ても速い。

このスピードを活かした裏への飛び出しとシンプルな縦へのドリブル突破が最大の持ち味で、わかっていても止められない切れ味の鋭さがある。ラッザリに一度スピードに乗られてしまったら、止めるのは容易ではないだろう。

CLのバイエルン戦ではブンデス最速記録を持つアルフォンソ・デイビスをスピードでぶち抜く場面も見られた。おそらくラッザリはセリエA全体で見ても最速クラスのプレーヤーだ。

 

また、ラッザリはスピードだけでなく持久力も持ち合わせていて、試合終盤になってもスプリントを繰り返すことができる。

そのスピードと持久力を活かして右サイドを縦に上下動するのがラッザリの基本的なプレー。

インザーギ監督もその特徴をよく理解している。彼がラッザリに課しているタスクは「とにかくタッチライン際を走り回れ!」というとてもシンプルなものだ。




ラツィオでの役割① カウンターの主役

基本的にラツィオが狙っているのはしっかり守ってからのカウンター。相手がボールを持っているときは5-3-2でブロックを組んで待ち構える。この時に自分たちの守備陣形を崩さないことを優先するのが特徴的で、あまり前から奪いに行かない。相手が前に前進してきたら、それを引き込むように徐々にラインを下げていく。そうして相手を自陣に引きずり込み、カウンターで使えるスペースを準備する。

そして、奪ったらラッザリの出番だ。自分たちのボールになった瞬間、ラッザリは右サイドを全速力で駆け上がる。ここにボールを供給するのがミリンコビッチ=サビッチ。視野の広さとパス精度を併せ持つ彼のスルーパスからラッザリが裏へ飛び出すシーンはラツィオの定番の攻撃パターンとして定着している。

 

この形から見事なアシストを決めたのがローマダービーでの2点目。ボールが出た時点では自分よりも前にいたイバニェスをぶち抜いている。

 

ボールが左サイドにある時もラッザリがカウンターの急先鋒となることは変わらない。左からカウンターを仕掛ける時はルイス・アルベルトが運び、その前でインモービレとコレアの2トップが動き出してボールを引き出そうとするのがお決まりの形だ。しかし、その外側からラッザリが猛然と追い越してくる。相手DFが2トップに釣られた場合、空いたラッザリが使われることが多い。左からのカウンターでも、第3の矢としてのラッザリの存在は重要だ。

 

直近のスペツィア戦でも、左サイドからのカウンターでルイス・アルベルト→コレアとつないでいる間にラッザリが右から駆け上がってきてボールを受け、先制点を決めている。ラツィオとしては狙い通りのカウンターだっただろう。

 

カウンター攻撃を主な攻撃手段とするラツィオ。そして、その主役となるのがラッザリだ。なぜ彼がラツィオで不可欠な存在になっているのかは明白だろう。




ラツィオでの役割② 右サイドでの仕掛け

カウンターを第一に狙っている一方で、相手の守備が整っていれば後ろから丁寧に攻撃を組み立てていく判断をすることも少なくないラツィオ。そうなったとき、遅攻の中心になるのは左サイドだ。

下は直近のスペツィア戦と2つ前のクロトーネ戦のヒートマップ。いずれも左サイドが濃くなっていることがわかる。

 

 

遅攻で中心的な役割を果たすのがルイス・アルベルト。ここにインモービレ、コレア、ラドゥあたりが絡んで崩そうとする。そうして左サイドに人数が密集すれば、相手も左によってくる。

それは右サイドにスペースができることも意味している。このタイミングでルイス・アルベルトやアチェルビがサイドチェンジ、ラッザリにボールを届ける。

こうして広いスペースを手に入れたラッザリは、単独で仕掛け、クロスボールを供給することを要求されている。

 

データを見てみても、

  • クロス総数 77(セリエA 8位)
  • ペナルティエリア外からのクロス総数 16(セリエA 6位)

となっていて、ラッザリがセリエA屈指のクロスマシーンであることがわかる。

ラッザリは非常にスピードがあるので、縦にぶち抜いて利き足の右足でクロスボールを供給するのが最も得意だ。しかし、それに固執するわけではなく、相手に縦を切られたら左足に持ち替えてクロスボールを上げるプレーもスムーズにできる。両足でクロスが蹴れるラッザリは相手からしたら厄介なことこの上ないだろう。

このような広いスペースでラッザリから完全に選択肢を奪うことは困難なのだ。

 

このように見てくると、ラツィオの戦術は速攻でも遅攻でも ラッザリに広いスペースを提供するように設計されていることがわかる。彼が最大限に持ち味を発揮できているのは、インザーギの計算しつくされた戦術のおかげといってよいだろう。




SPAL時代からの変化

最後に、SPAL時代からの変化についてみてみよう。

SPAL時代最終年となった18-19シーズン、ラッザリはある項目でセリエAでも屈指の成績を残していた。それはドリブルだ。

18-19シーズンのデータ

  • ドリブル突破成功数 71(セリエA 9位)
  • ドリブルによる持ち運び成功数 356(セリエA 4位)
  • 総ドリブル成功距離 7550m(セリエA 3位)
  • ドリブルによるファイナルサードへの侵入数 127(セリエA 3位)
  • ドリブルによるペナルティエリアへの侵入数 47(セリエA 4位)

となっていて、ドリブルに関するスタッツすべてでトップ10入りを果たしている。

一方、ラツィオに移籍してからの2シーズンでラッザリはいずれの項目でもトップ10に表れていない。つまり、ラッザリはラツィオに移籍してからはドリブラーとしてではなく、スルーパスの受け手としてそのスピードを活かしていることがわかる。

これは決して悪いことではなく、むしろミリンコビッチ=サビッチやルイス・アルベルトをはじめとした優秀なパサーの存在によってラッザリにかかる負担が軽減されているという見方ができる。彼がひとりで持ち上がらなくても、ほかにも多くの前身の手段を持っていることの表れなのだ。

ラッザリはドリブルで長距離を持ち運べるだけの能力があるが、あえてやっていない。いや、ラツィオではする必要がないのである。

 

まとめると、

  • 爆発的なスピードが最大の武器で、
  • 長距離のスプリントを90分間繰り返せる持久力も兼備し、
  • 1対1で仕掛けて右足でも左足でもクロスボールを供給でき、
  • ラツィオ移籍後は見られることは少ないがドリブルで長距離を突破できる

縦方向のプレーが多く、シンプルだが分かっていても止められない。それがラッザリというプレーヤーだ。




ラッザリの弱点

それでは、ラッザリの弱点は何だろうか。

 

①ラストパスの精度

ひとつはラストパスの精度。右サイドを切り裂いて突破できるラッザリだが、そこからのラストパスの精度が高いとは言えない。

アシスト期待値のデータを見てみても

  • アシスト期待値 2.4
  • 実際のアシスト 4

となっていて、彼が提供しているパスは実際の数字ほど質が高いとは言えないということが示されている。

また、クロスボールに関してもさらに精度を上げる必要があると感じる。クロスを上げることがサイドの選手(ウイングバックとサイドCB)でクロスの成功率を比較してみても、

〈クロス成功率 ランキング〉

  1. ルリッチ :33%
  2. アチェルビ:33%
  3. ラドゥ  :29%
  4. マルシッチ:22%
  5. パトリック:22%
  6. ラッザリ :20%
  7. ファレス :17%

と下から2番目になっていて、精度が高いとは言えない状況だ。セリエAの中でも屈指のクロス数を誇ることは説明した通りだが、アシスト数が4とその割には伸びていないのもこれが原因だろう。

後方からのスルーパスも含め、もう少し可能性のあるボールを供給できるようになればさらにアシスト数が伸びるのではないだろうか。

 

②狭いスペースでのプレー

また、狭いスペースでのプレーはあまり得意ではない点も挙げておきたい。

十分なスペースがあってスピードに乗れるときや、相手と1対1になっている場面では強みを発揮できるラッザリだが、相手に囲まれた状況でも突破していけるほどの繊細なテクニックは持っていないため、味方へのパスで逃げることが多い。

だからこそインザーギはラッザリが常にスペースを持った状態でプレーできるように戦術を組み立てているのだろう。

 

③守備

あともうひとつ。これは弱点ではないが、守備力が未知数という面がある。

というのも、ラツィオがしっかりと引いてブロックを作ることは前述の通り。そして、攻撃時には常に高い位置をとっていることも説明したとおり。そのため、ラッザリが守備で相手と1対1になる場面がほとんどないのだ。

常に味方が周辺にいてサポートにきてくれるので、ラッザリが一人で対応しなければいけない場面がほとんどない。だから、彼個人の守備力がどれくらいなのかがわからないのだ。

ここまで説明してきた通り、ラッザリは攻撃時に最大の持ち味を発揮するプレーヤー。そういう意味で、SPAL時代から起用され続ける右ウイングバックは最適なポジションだろう。

だが、後ろの枚数が減る4バックの右サイドバックでは当然一人一人の守備力がより強く求められてくる。ここに対応できるほどの守備力があるかどうかは不透明だ。

現在イタリア代表は4-3-3のフォーメーションを採用していて、ラッザリを起用するなら右のサイドバックになるだろう。この時、どこまでやれるのか。ラッザリの守備力をマンチーニがどう評価しているのかで、ラッザリがEUROのメンバーに名を連ねるかどうかが決まるだろう。




あとがき

右サイドを駆け上がり続け、4部からイタリア代表にまで駆け上がったラッザリ。彼は本当に毎シーズン成長している。

SPALとともに4部から1部まで這い上がり、1部2年目でイタリア代表デビュー、翌シーズンにはラツィオにステップアップ。ラツィオでの2シーズン目となる今季はゴール数もアシスト数もすでに昨シーズンを超える数字を残している(昨季は0ゴール3アシスト、今季は2ゴール4アシスト)。27歳となったラッザリだが、まだまだ伸び盛りな印象を受ける。

現在6位と今シーズンは苦戦気味のラツィオだが、上位陣は混戦模様。5位ナポリとの勝ち点差は4で、なおかつラツィオは1試合消化が少ない。まだまだ逆転可能な位置につけている。

ここからCL出場権まで駆け上がれるかどうかは、ラッザリが成否のカギを握っているかもしれない。

 

 

あわせて読みたい 関連記事

ラツィオの戦術はこちらから

【サッカー仙人】ルイス・アルベルトのプレースタイルを徹底解剖!

【ラツィオのDFリーダー】フランチェスコ・アチェルビのプレースタイルまとめ

【ラツィオの軍曹、覚醒】セルゲイ・ミリンコビッチ=サビッチのプレースタイルを徹底解剖!