【ローマの新たなバンディエラ】ロレンツォ・ペッレグリーニのプレースタイルを徹底解剖!

【ローマの新たなバンディエラ】ロレンツォ・ペッレグリーニのプレースタイルを徹底解剖!

2021年4月8日 6 投稿者: マツシタ
Pocket

ASローマには「ロマニズモ」と呼ばれるアイデンティティが受け継がれている。簡単に言ってしまえば「ローマ人によるローマ人によるローマ人のためのローマ」ということ。ローマで育てられたローマ人を中心に据えたチームを作ろうじゃないかという、地元愛や地元主義に近い概念だ。

2000年代に入ってからも、ローマの中心には常にクラブ生え抜きの選手がいた。トッティ、デ・ロッシ、そしてフロレンツィだ。しかし、彼らは続々とチームを去り、今やローマは多国籍化した。イタリア人選手も少なくないが、クラブの生え抜きはほぼいなくなってしまった。

そんな中、現在トップチームで活躍する唯一の生え抜きがロレンツォ・ペッレグリーニだ。

 

そのペッレグリーニもローマ一筋というわけではなく、一度サッスオーロに売却された過去を持つ。しかし、サッスオーロでの2年間で9ゴール6アシストと結果を残し、ローマへの帰還を勝ち取った。

こうしてローマにもどってきたペッレグリーニは、昨シーズンまでの3シーズンでリーグ戦7ゴール14アシストを記録。まずまずの活躍を見せてきた。一方で細かい負傷離脱もあって出場試合数は25試合程度にとどまり、30試合以上に出場したシーズンはなし。完全に主力に定着したとは言えない状態が続いていたのだ。

しかし、今シーズンはここまでですでに28試合に出場、自身のキャリアハイに早くも並び、出場時間で見れば自己最高を更新している。さらに、年末からは負傷離脱が続くジェコにかわってキャプテンマークを巻いている。今季こそは完全に主力に定着したといっていいだろう。

これまでトッティ→デ・ロッシ→フロレンツィと、生え抜きの選手たちに引き継がれてきたキャプテンマークだったが、フロレンツィ退団後は非ローマ人のジェコが任命されていた。ジェコが悪いキャプテンだとは思わない。それでも、ローマというクラブの伝統を考えれば、ペッレグリーニが腕章を巻いている姿を見るとキャプテンマークがあるべき場所に戻ってきた、そういいたくなる。

いまや唯一ロマニズモを体現する男となったペッレグリーニは一体どんなプレーをするのか。

今回はロレンツォ・ペッレグリーニのプレースタイルについて徹底的に掘り下げていこうと思う。




ペッレグリーニのプレースタイル

 

確かなチャンスメイク力

ペッレグリーニの最大の武器が高いチャンスメイク能力だ。ここまでチーム2位の6アシストを記録している。

3-4-2-1の右シャドーまたは右セントラルMFを定位置とするペッレグリーニは、そのどちらからでも決定的なパスを出せる。正確無比なキックはもちろん、視野の広さやスペースの認知能力の高さも突出している。

  • 1試合平均キーパス数 1.7(チーム内トップ)
  • キーパス総数 47(セリエA7位)

となっていて、ローマ最大のチャンスメーカーであることは明らかだ。

  • 被ファウル数 45(チーム内トップ)

というデータを見ても、ペッレグリーニが攻撃の中心として相手から警戒されていることがわかるのではないだろうか。

また、ここまでの6つのアシストのうち3つはコーナーキックからのもので、セットプレーのキッカーとしても優秀。キック精度の高さはイタリアの中でもハイレベルだ。




確かな得点力も兼備

司令塔としての能力はもともと持っていたペッレグリーニだが、今シーズンになって開花したのがその得点能力だ。

1試合平均シュート数

  • 昨シーズン 1.3(チーム内4位)
  • 今シーズン 1.5(チーム内3位)

となっていて、少しではあるがシュートの数が増えていることがわかる。しかし、この少しの増加幅は思っているよりも大きいものだ。

というのも、昨シーズンのペッレグリーニはほとんどの試合で4-2-3-1のトップ下、もしくは3-4-2-1のシャドーでプレーしてきた。これに対し、今シーズンのペッレグリーニは先発出場した25試合のうち半分の12試合でボランチとして起用されているのだ。

つまり、今シーズンのペッレグリーニは基本的にプレーエリアを昨シーズンよりも下げているといっていい。にもかかわらずシュートの数が増えているということは、それだけ積極的にシュートを打っているといっていいだろう。

 

また、単純にシュートの数が増えただけでなくシュートの精度も明らかに高くなっている。

枠内シュート率

  • 昨シーズン 17.2%
  • 今シーズン 36.8%

となっていて、昨シーズンと比較すると倍以上の確率でシュートを枠内に収めていることがわかる。

実際に試合を見ていても毎試合必ずシュートを打っているし、どのシュートもかなりきわどいものだ。特に得意なのが右足でファーサイドに巻いて決めるコントロールショット。ミドルレンジからでも積極的に狙っていく。

また、利き足でない左足のシュート精度も非常に高い。特にトリノ戦で決めた一発は見事だった。

 

昨シーズンはトップ下をメインにしながら1つしかなかったゴール数が、1列後ろを兼任している今シーズンは5に増加している。これはシュートへの積極性、シュートの精度の両方を高めた結果だといえるだろう。




守備力も水準以上

昨シーズンから向上した能力でいえば守備力もそうだ。

1試合平均タックル数

  • 昨シーズン 0.6(チーム内7位)
  • 今シーズン 1.3(チーム内5位)

タックル勝利数

  • 昨シーズン 20(チーム内7位)
  • 今シーズン 32(チーム内3位)

1試合平均インターセプト数

  • 昨シーズン 1.1(チーム内5位)
  • 今シーズン 1.5(チーム内4位)

となっていて、いずれの項目でも向上がみられる。

ペッレグリーニが特に素晴らしいのがボールロストした瞬間の切り替えの速さ。すぐさま守備に意識を切り替えてボールを奪い返そうと相手に襲い掛かる。

こうした即時奪回はローマよりもイタリア代表でのほうが強く求められているが、ペッレグリーニは問題なくそれに応えていた。彼の持っている能力と適応力の高さがよくわかる。




すべてを下支えする走力

このように攻守にわたってボールに絡むペッレグリーニ。それを下支えしているのは豊富な運動量だ。

  • 1試合平均走行距離 10.69km(チーム内2位)

となっていることからも彼がスタミナのある選手なのは明らかだ。

この走力はその他にも様々な能力の裏付けになっている。

たとえば裏への飛び出し。ペッレグリーニはパスの出し手としてだけでなく受け手としても優秀で、相手DFラインの裏にスペースが広がっていればそこへ飛び出して味方のスルーパスを引き出す。

彼のようにテクニックに優れている選手は足元にボールを要求しがちだ。しかし、ペッレグリーニはその走力を活かしてスペースでボールを引き出すこともできる稀有な存在だ。

ボローニャ戦、ELのシャフタール戦では見事に相手DFラインを破って裏へ飛び出し、ゴールを決めている。

 

また、ドリブルでの持ち運びも走力に裏付けされた得意項目のひとつだ。

今シーズンのドリブルに関するデータを見てみると、

  • 1試合平均ドリブル成功数 1.3(チーム内3位タイ)
  • 突破をともなわないドリブルの成功数 172(セリエA9位)
  • ドリブルによるアタッキングサード侵入数 74(セリエA6位)

となっていて、彼が頻繁に長い距離を持ち運んでいることがわかる。

こうした項目でペッレグリーニがセリエAのトップ10に入ってくるのは今シーズンが初めて。これは中盤低い位置での起用が増えたことが大きいだろう。

実際に試合を見ていると、ペッレグリーニが低めの位置でボールを受け、そのまま長距離を持ち運んで局面を打開する場面は多くみられる。

さらに、持ち運びつつタイミングをうかがい、スルーパスを出せるのも大きい。ドリブルしながらでも視野が狭くなったりパスの精度が落ちたりしないのは、彼のスタミナと確かなテクニックがあってのことだろう。

ひとりで運び、ひとりでチャンスを作り出せる。ペッレグリーニの存在感は絶大だ。

 

まとめると、

  • リーグ屈指のチャンスメーカーで、
  • 今シーズンは得点力も向上させ、
  • 守備での貢献度も高く、
  • 豊富な運動量を併せ持ち、
  • 裏への飛び出しやドリブルでの持ち運びも得意とする

中盤の高い位置でも低い位置でもプレーできて攻守に隙が無い。イタリアでも屈指の万能MFとして完成されつつあるのがペッレグリーニだ。




ペッレグリーニの弱点

ここまで見てきたように、攻守に万能な能力を持つペッレグリーニ。彼に弱点はあるのだろうか。

唯一挙げるとすればカードの多さか。

ペッレグリーニはここまで9枚のイエローカードを頂戴している。これはセリエA全体で見ても4番目に多い

これにはペッレグリーニの守備のやり方が関係していると思う。ペッレグリーニは基本的にボールをつつきにいく守備をする。つまり、足を出す守備だ。このやり方はお手軽な反面、誤ると相手の足を蹴っているように見えやすく、審判からすれば悪質なファウルに見えやすいという欠点がある。

それだけ守備時にファイトしているということの裏返しではあるが、カード9枚は多すぎる。もう少しファウルに見えにくい守備のやり方、具体的には相手とボールの間に体を入れるような守備のやり方を身に着ければカードの数を減らせるはずだ。




あとがき

日本からすれば、首都のチームに地元主義が根付いていることは不思議に感じられるかもしれない。東京主義とはほとんど目にしたことがない。地元愛とは言うが東京愛とは言わない。

これにはイタリアの成り立ちが関わっている。イタリアはもともとたくさんの都市国家に分かれていて、それらが一つになって現在のイタリアになった。しかし、イタリアが一つになってからの歴史はまだ浅く、各都市ごとの特色が色濃く残っている。ローマは首都ではある、あくまでたくさんある都市のひとつでしかない。

イタリア特有の概念、ロマニズモ。それを体現する男、ペッレグリーニ。プレー面でももちろん彼の存在感は抜群だが、ピッチ内を超越した、精神的なところでペッレグリーニの存在はローマにとって欠かせない。

ロマニズモの偉大な先輩、トッティ、デ・ロッシ、フロレンツィはいずれもイタリア代表でも中核として活躍してきた。ペッレグリーニもそれに続けるか。ローマの象徴として、イタリアの核としてペッレグリーニにかかる期待は大きい。

 

 

あわせて読みたい 関連記事

ローマの戦術はこちらから

【悪童プリンス】ニコロ・ザニオーロのプレースタイルを徹底解剖!

【ローマのジャックナイフ】レオナルド・スピナッツォーラのプレースタイルを徹底解剖!

【ローマの新エースへ】ボルハ・マジョラルのプレースタイルを徹底解剖!

【王国の未来のDFリーダー】ロジェール・イバニェスのプレースタイルを徹底解剖!

【早熟の万能MF】ブライアン・クリスタンテのプレースタイルを徹底解剖!

【ローマのDFリーダー】ジャンルカ・マンチーニのプレースタイルを徹底解剖!

【魅力的で危うい攻撃サッカー】ASローマの戦術を徹底解剖!