【インテルのスピードスター】アクラフ・ハキミのプレースタイルまとめ

【インテルのスピードスター】アクラフ・ハキミのプレースタイルまとめ

2021年4月7日 7 投稿者: マツシタ
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サッカーにおいて、足が速いということはそれだけで武器になる。105×68mの広大なピッチを22人でカバーすることはできないため、空いたスペースにボールがこぼれたときには当然走り合いになる。そうなった時に有利なのは足が速い選手だ。

実際、サッカー界には俊足なサッカー選手がごまんといる。だが、インテルで活躍するアクラフ・ハキミは全サッカー選手の中でもトップクラスの俊足の持ち主だ。

 

レアル・マドリードの下部組織で育ち「未来のカルバハル」と呼ばれていたハキミは、当時トップチームにいたダニーロのユベントス移籍に伴ってトップチームに昇格。18歳にしてデビューしたのが17-18シーズンだった。

翌シーズン、ハキミはさらなる出場機会を求めてドルトムントへレンタル移籍。2年間で12ゴール17アシストと大活躍し、満を持してレアル・マドリードへ復帰すると思われた。

しかし、ジダン監督はハキミをチームの構想に入れなかった。ハキミは古巣を去ることを決断、イタリアの名門インテル・ミラノに加入して現在に至る。

加入早々右ウイングバックの絶対的なレギュラーに定着したハキミはリーグ戦28試合中27試合に出場して6ゴール4アシストを記録。早くも中心選手といて君臨している。

そんなハキミの長所は、そして改善点は何なのか。

今回はアクラフ・ハキミのプレースタイルを徹底的に掘り下げていこうと思う。

 




 

ハキミのプレースタイル

 

最大の武器は圧倒的なスピード

すでに書いた通り、ハキミの最大の武器は爆発的なスピードだ。ブンデス時代には時速36.4kmのトップスピードを記録しており、これは当時のリーグ記録だった(のちにアルフォンソ・デイビスが記録を更新)。

この快足を飛ばしてタッチラインを直線的に突破しチャンスを作る。

ハキミのスピードが特に生きるのがカウンター時だ。コンテ監督はハキミに対して守備時に5バックの一角として守備ブロックに参加することを求めている。そのため、相手がボールを保持している場面ではハキミは自陣深くまで戻る。

そしてインテルがボールを奪い返した瞬間、ハキミは快足を飛ばしてタッチライン際を駆け上がりカウンターの急先鋒となるのだ。普通守備時にあれほど深い位置に戻っていたら、カウンターで出ていくのにはかなり時間がかかる。ところが、ハキミはあまりに足が速いので一瞬で前線のFWに追いつき、追い越せる。ハキミにとって深い位置からスタートすることはもはや助走でしかない。

さらに、ハキミはスプリント力に優れているだけでなく、持久力も一級品。試合終盤になってもその快足はまったく衰えない。90分間何度でもカウンターの急先鋒になれるのもハキミの優れたポイントだ。

 

ここ数か月のインテルはより守備に重点を置き、堅守速攻へと舵を切ったことは以前にお伝えした通り(詳しくはロメル・ルカクのプレースタイルを参照)。この戦術変更によってカウンター攻撃の場面が、つまりハキミの快速を活かす場面がより増えた。

しっかり引いて守るインテルは、ボールを奪ったらピッチの右寄りで攻め残っているルカクに当てる。フィジカルモンスターの彼は絶対にボールをおさめてくれる。ルカクがボールをキープしている間にピッチの右脇を駆け上がるのがハキミで、ルカクから直接、もしくはバレッラを経由してハキミを裏へ走らせるというのがインテルの速攻の形になっている。

 

堅守速攻のスタイルをとることによってルカクのキープ力、ハキミの快速を同時に引き出したコンテの采配は見事だったといえる。

 




 

ドルトムント時代からの変化

現在はハキミはパスの受け手としてそのスプリント能力を存分に活かしているハキミ。一方、ドルトムント時代はパスの受け手としてではなく、ドリブラーとしてその快足をフル活用していた。

ここでドルトムント時代(19-20シーズン)のデータを見ると、

  • ドリブル突破数 73(ブンデス6位)
  • ドリブルによる突破をともなわない持ち運び数 308(ブンデス1位)
  • ドリブルによるファイナルサード侵入数 87(ブンデス4位)
  • ドリブル成功距離 6303m(ブンデス3位)

と、ドリブルに関するデータが総じてブンデストップクラスになっている。対して、今シーズンの同データの中でセリエAのトップ10に入っているものはない。

データを見ても、ハキミはドルトムント時代と比較するとドリブルの数が格段に減っているといえる。

 

これは決してネガティブなことではなく、むしろしっかり前線でボールをおさめてくれるルカクや、展開力があるバレッラやブロゾビッチ、エリクセンらの存在によってハキミがひとりで長い距離を持ち運ばずともボールを前線に持っていけるということを意味している。

やろうと思えばハキミはドリブル突破から局面を突破することもできることはすでに証明済み。それをしなくてもいいということは、インテルが個人に依存する度合いが低く、組織としての完成度が高いことの裏返しだといえるのではないだろうか。

 




 

カットインからのシュートが選択肢に

ドルトムント時代からの変化はほかにもある。中でも大きかったのはバレッラという優秀な相棒を得たことだろう。

インテルに来てからのハキミは右サイドにほぼ固定されている。しかしながら、ハキミはもともと両サイドをこなせる選手で、ドルトムント時代は左サイドでプレーする機会もあった。

左サイドで起用されたハキミは右利きの左サイドアタッカーとなり、積極的にカットインを仕掛けていくプレースタイルだった。反面、右サイドで起用された試合では縦へ縦へ突破しようとする意識が高く、それ以外の選択肢が見えてこない印象だった。

しかし、インテルに来てからのハキミは右サイドからも積極的にカットインするようになった

これは、ハキミのカットインを助けるようなメカニズムが整備されたことが大きい。そのカギを握るのがバレッラだ。

ハキミがタッチライン際でボールを持った時、バレッラは必ず縦へのランニングで追い越してくれる。これによって相手の中盤の選手がひきつけられ、ハキミがカットインするためのスペースが空くのだ。

 

利き足でない左足でのシュート精度も着実に向上しており、カットインしてから左足のシュートというパターンですでに3つのゴールを奪っている。しかも、いずれも見事なゴラッソ。

  • 実際のゴール数 6
  • ゴール期待値 3.5
  • 期待値と実際のゴールの倍率 リーグ2位

となっていて、ハキミが難易度の高いゴールをいくつも決めていることはデータでも裏付けられている。

 

もともと得点力が高い選手だったハキミだが、今シーズンは前半戦だけで6ゴールと昨シーズンを上回るペースでゴールを量産した。後半戦になってその勢いが落ちたのは、堅守速攻への路線変更が大きい。ハキミが高い位置でボールを受けることが少なくなったのだ。

いずれにせよ、イタリアに来てからのハキミは戦術的な助けを受けてプレーの幅を広げ、得点力も一段と高めた印象だ。

 




 

ゴール前への飛び込み

さらにもうひとつ、ドルトムント時代から進化した点を指摘しておきたい。それが相手DFライン裏への飛び出しだ。

ハキミは逆サイドにボールがあるとき、大外から一気に相手DFライン裏に飛び出す。そうしてクロスボールにフリーで合わせるプレーを得意とするようになったのだ。

 

これは起用されるポジションとも関係している。ドルトムント時代のハキミはサイドバック。対して、インテルではウイングバックだ。CBの枚数が多いウイングバックのほうがより高い位置をとれるので、ゴール前に入っていける回数が増えたというわけだ。

下はドルトムント時代の19-20シーズン(黒線)とインテルに加入した今シーズン(青線)のヒートマップ。

ドルトムント時代と比較して、インテル移籍後はよりサイドの深い位置でプレーする機会が増えていることがわかる。

 

 

特に大外からペナルティエリアに飛び込むランニングの質が高くて、タイミングも入っていく場所もパーフェクトに近くなってきている。相手DFからすれば死角からハキミが飛び込んでくるので、捕まえることは非常に困難だ。

ただ、もらっているチャンスの数に対してゴールに結びついている確率がまだ低いのも事実。ボールを受けるところまではよくなってきているので、今後はクロスボールに合わせるシュートを磨いていく必要があるだろう。ここが伸びれば、もっとゴールを奪えるはずだ。

 




 

ペナルティエリア角からのクロスとシュート

さきほどヒートマップで示したエリアはハキミにとって重要なエリアだ。

ハキミのアシストの多くはオフ・ザ・ボールの動き出しで相手DFラインの裏へ飛び出し、ダイレクトで中央へ折り返す形。それも中央方向へ斜めにランニングして深い位置から折り返すことが多いため、ハキミのアシストはペナルティエリア内からが多い

 

爆発的なスピードがあるハキミに裏に走られたら止められるDFはまずいないだろう。相手からすればパスが出されてしまえばジ・エンド。出所でつぶしておかなければ防げない。

下は19-20シーズンにおけるハキミの全10アシスト。5アシスト目以降はすべてこのエリアからのアシストになっていることがわかる。

 

さらに、ハキミはドルトムント時代のゴールの多くもこのエリアから決めている。

こちらはCLでインテルから奪ったゴール。大外から斜めにランニングしてきてスルーパスを受ける得意の形だ。

 

このように、ペナルティエリア角のエリアに侵入して決定的な場面を作り出すのがハキミがもともと得意としていた形。これに、カットインからのミドルシュートや裏への飛び出しという新たな武器が加わった。

ドルトムント時代から着実に進化しているハキミは、すでにセリエA屈指の攻撃的ウイングバックと言っていいだろう。

 




 

実はチャンスメイク力が上がっているハキミ

今シーズン、ハキミはリーグ戦でのアシストはここまで4つ。10アシストを記録したドルトムント時代と比較するとペースが落ちている。

しかし、本当にハキミのチャンスメイク力は落ちたのか。ここで、期待値についてみてみよう。

今シーズン(インテル移籍初年度)

  • 実際のアシスト 4
  • アシスト期待値 5.1

昨シーズン(ドルトムント在籍最終年)

  • 実際のアシスト 10
  • アシスト期待値 4.4

まずは今シーズンのデータを見ると、実際のアシストの数字をアシスト期待値が上回っている。これは、実際のアシスト数以上に質が高いチャンスを作り出していることを現している。

対して昨シーズンのデータを見ると、実際のアシストの数字がアシスト期待値を大幅に上回っている。これは、味方が難易度の高いシュートを多く決めたことによってハキミのアシスト数が大きくかさ増しされていることを現している。

そして、今シーズンと昨シーズンのアシスト期待値を比較してみると、今シーズンの方がすでに上回っている。つまり、ドルトムント時代よりインテル移籍後の方が作り出しているチャンスの質が高いということだ。

こうしてきちんとデータを見れば、ハキミのパフォーマンスは下がったわけではなく、むしろ上がっていることがわかるのだ。

 

このように、

  • 快足を活かしてタッチライン際を駆け上がってカウンターの急先鋒となり、
  • ペナルティエリア角からアシストやゴールを量産し、
  • カットインからのミドルシュートや裏への飛び出しといった新たな武器も身に着けた

ハキミ。ドルトムント時代から着実に進化していることがわかる。まだ22歳の彼には伸びしろもたっぷりと残されており、ここから弱点を改善していけば世界を代表するサイドバック/ウイングバックに到達できるだろう。

 




 

ハキミの弱点

それでは、ハキミが改善すべき弱点とは何なのか。

まず上げなくてはいけない弱点が守備面だろう。

守備に関するデータを見てみると、

  • 1試合平均タックル数 1.5(チーム内3位)
  • タックル勝率 43.2%
  • 1試合平均インターセプト数 0.5(チーム内11位)

となっている。タックルの数自体は多いものの、その勝率は半分を下回ってしまっていることをみると、積極的にタックルを仕掛けるものの成功率が低いことがわかる。

実際に見ていても、相手がいい状態なのに簡単に足を出してかわされたり、逆に人数がそろっているのに無理して奪いに行ってカードをもらうなど、守備技術・判断面いずれにも課題が見える。線の細さも気になり、当たり負けしない強さも欲しい。ただし、ドルトムント時代(19-20シーズン)のタックル勝率は33.8%であり、少しずつ成長してきていることは触れておきたい。

また、インターセプト数も0.5回でチーム内11位にとどまっているのを見てもわかる通り、ボールがないところでの準備力にも課題がある

おそらく自分のスピードに自信があるため、相手にボールを持たせてからでも対応できると考えているのだろう。ボールが入ったタイミングでよりタイトに寄せて相手から自由を奪うような守備対応ができればもっとボールを奪えるようになるはずだ。

 

ただ、コンテ監督はハキミの守備の弱点が見えないよう工夫を施している。ここでカギを握ってくるのが再びバレッラだ。

インテルは守備時に5-3-2で守備ブロックを作って構える。5-3-2だと中央は固くなるがサイドはがら空きになる。ここをどう埋めるかが焦点になるわけだ。

多くの場合ウイングバックが上下に動くことでそのスペースを埋めるわけだが、インテルの場合はバレッラが右斜め前に出ていくことで右サイドのスペースをカバーしている。つまり、ハキミは後方に残って目の前の相手に集中できるようになっている。

さらに、ハキミが対峙する相手にボールが入った時も、バレッラは献身的にプレスバックして挟み込んでくれる。バレッラは攻守にわたってハキミの良きサポート役となっているのだ。

 

豊富な運動量を活かして攻守にハキミを助けるバレッラとそのメカニズムを構築したコンテによってハキミはより弱点を小さく、強みを大きく見せることができている。

ハキミに限らず、今のインテルは各選手が弱みをカバーしあい、強みを引き出しあえる戦術が整備されている。コンテは本当にいいチームを作ったなと思う。

 

話をハキミの弱点に戻そう。もうひとつ指摘したいのがパス精度の低さだ。

特に相手に囲まれたり背後からプレッシャーをかけられたときに結構簡単にパスミスしている印象を受ける。

CLのレアル・マドリード戦では、ハキミのバックパスをベンゼマにさらわれて失点を喫している。メンディのプレッシャーを受けてあわててバックパスを選択したハキミだが、これを狙っているベンゼマは完全に見えていなかったようだ。

以降はこのような決定的なミスはないものの、ところどころでプレッシャーを受けてあわててしまう場面は見られている。これをいなせるくらいの余裕が欲しいところだ。

 

これらの弱点を改善し攻守万能なサイドプレーヤーになれれば、おのずと世界を代表する右SB/WBの称号が見えてくるはずだ。今後のハキミの成長に期待したい。

 




 

あとがき

ライバルたちがつまづくのをしり目に淡々と勝ち点3を重ねていくインテル。いよいよ11年ぶりのスクデットが見えてきた。

ここまでの安定した戦いぶりを見ているとここから失速するとは思えないが、チームが追われる立場に慣れていないこともまた事実。特に若手の選手にとってはメンタル面のコントロールが重要だろう。

そういう意味で、ハキミが今後も安定したパフォーマンスを発揮できるかは注目だ。すでにインテルのキーマンになっているハキミ。彼がトップフォームを維持できるかはチームにとっても重要なことだ。

このまま活躍を続け、自身初のリーグタイトルを獲得してほしいものだ。

 

 

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