【EURO優勝候補】イタリア代表の戦術を徹底解剖!

【EURO優勝候補】イタリア代表の戦術を徹底解剖!

2021年4月4日 6 投稿者: マツシタ
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サッカーイタリア代表、通称アッズーリ。「カテナチオ」と呼ばれる堅い守備を武器に、世界で2番目に多いワールドカップ優勝4回を誇る強豪だ。

しかし、2006年の世界制覇を境に徐々に国際大会での結果が振るわなくなっていったアッズーリは、2018年ロシアワールドカップでついに出場機会を逃してしまう。それは実に60年ぶりの失態だった。

この暗黒期を抜け出すために再建を託されたのが現監督のロベルト・マンチーニだった。

 

マンチーニは若手を積極的に起用しながらチームの若返りを図り、同時に戦術面の改革にも着手。それまでの「カテナチオ」と呼ばれる堅い守備を重視した戦術から攻撃的でモダンなスタイルへと大胆に舵を切った。

この荒治療が成功したアッズーリは現在25試合連続無敗歴代2位タイの無敗記録を継続中。2018年9月以来2年半負けなしだ。

しかも、その間63得点7失点。いや、強すぎる。

しかも、マンチーニは毎回30人近い選手を召集し、その多くを積極的に起用しつつチームを作ってきた。メンバーを変えてもチームとしてレベルが落ちないのはしっかりと戦術が浸透している証拠だろう。

マンチーニが錬成した強すぎるアッズーリは一体どんなサッカーをするのか。最新の3試合、北アイルランド戦・ブルガリア戦・リトアニア戦からその戦術について徹底的に掘り下げていきたい。




攻撃

 

テンポのいいパスサッカー

アッズーリの攻撃の特徴を端的に表してしまえば、テンポのいいパスサッカーだ。

下は北アイルランド戦のデータ(左がアッズーリのもの)。相手の倍以上のパスを成功させている。

 

今のアッズーリはとにかくよくボールが動く。しかもそのテンポがいい。アッズーリのパスワークの最大の特徴が素早さで、同じパスサッカーでも黄金期のスペイン代表のパスワークはもっとゆったりしていた。

ワンタッチ、ツータッチでのパスが多くてどんどんボールが動くから、相手はだんだんボールウォッチャーになっていく。そうして空いた場所へどんどん人が飛び出し、そこへどんどんボールが出てくる。

スペインのように安全な場所へ安全な場所へというパスワークとは一線を画していて、前が空いていればビシバシくさびが入ってくるし、裏に飛び出す選手とタイミングが合えばどんどんスルーパスが出てくる。特にボヌッチは積極的に縦パスを狙っていて、「最終ラインのレジスタ」としての能力を存分に発揮している。正直ユベントスよりもイタリア代表でのほうが生き生きしているくらいだ。

さらに、相手がボールサイドに寄ってくればサイドチェンジも多用する。何度も何度も左右にボールを動かし、相手の守備ブロックに揺さぶりをかける。

こうして前後左右に相手のブロックを動かしてほころびを生じさせ、そこへ人とボールを侵入させていとも簡単に崩壊させてしまう。

今のイタリア代表はパスサッカーの手本のようなきれいな攻撃をする、見ていて気持ちいいチームである。サッカーに興味がある人にはぜひ一度見てほしいチームだ。




 

左のトライアングル

そのパスワークの中心になるのが左サイドだ。

下は北アイルランド戦のヒートマップ。左サイドが濃くなっていることがわかる。

この左サイドで攻撃の中心になっているのがナポリの象徴ロレンツォ・インシーニェ。そして、彼と抜群のコンビネーションを構築し、補佐役として機能していたのがマルコ・ヴェッラッティ。このふたりが中心となって左サイドでパスを回す。

下はブルガリア戦の2点目。インシーニェとヴェッラッティが細かい切り返しとパスワークで相手の目をくぎ付けにし、空いたバイタルエリアに入ってきたロカテッリが決めた。まさに今のイタリアらしいゴールだ。

 

このふたりをさらにサポートするのがエメルソン・パルミエリ

イタリア代表は攻撃時にインシーニェを中央に絞らせる。そして、空いたスペースに出てくるのが左サイドバックのエメルソンだ。

イタリア代表は基本フォーメーションは4-3-3だが、攻撃時にはエメルトンを前線へ送り出して最終ラインがスライド、3バックを形成するメカニズムになっている。こうしてインシーニェ、ヴェッラッティ、エメルソンの三角形を形成し、ここを中心に崩していく

 

この3人は流動的にポジションを変えていく。特に多くみられたのが下のような連携。インシーニェが内に絞って相手サイドバックを、エメルソンが上がっていって相手ウイングを引き付け、空いたスペースに斜めに下りてきたヴェッラッティにスペースを提供する形。こうして自由にボールを持ったヴェッラッティが的確にパスを散らして攻撃を組み立てていた。

 

エメルソンはチェルシーではほとんど出場機会がなく、半ば戦力外状態。にも関わらずマンチーニがエメルソンにこだわるのは、ヴェッラッティとインシーニェという二人の主役を引き立てるのがとてもうまいから。的確なポジショニングやランニングで二人をフリーにしたり、逆に自分がスペースを突いたりといった頭脳的なプレーができる。

さらに、逆サイドからクロスが上がってくるときにはFWさながらにゴール前に飛び込むダイナミックさも持っている。総じて相手や味方の変化を見ながら適切なポジションを取るのがうまい選手だ。

左サイドバックのポジションを争うスピナッツォーラもいい選手だが、彼は引き立て役ではなくむしろ主役になってこそ輝くタイプ。しかも、左ワイド高い位置という特定のポジションでボールを持たせないと良さが引き出せないため、三角形の流動性という面で見てもどうしても落ちる

だからこそマンチーニはエメルソンにこだわるのだろう。




 

インモービレvsベロッティ

そうして左の三角形への警戒が強まると、今度は1トップの選手がDFラインと駆け引きしてボールを引き出す

現在、アッズーリではインモービレとベロッティが熾烈なエース争いを繰り広げているわけだが、マンチーニが求める仕事への適性でいえばインモービレの方が上回っている印象がある。

マンチーニはおそらく1トップの選手に裏への飛び出しとライン間に引いてくさびを引き出す動きの両方を使い分け、相手のブロックに揺さぶりをかけることを求めている。これを実現するダイナミックさをよりハイレベルに持っているのがインモービレだ。

ベロッティも裏への飛び出しは得意だが、こと中盤に引いてきてのポストプレーはそこまで得意ではない印象。引くタイミングの感覚も、ボールを受けたあと周囲と連携するためのテクニックもインモービレの方が上回っているように思える。

ただ、純粋なゴール数でいうとベロッティが上回っていて、どちらをとるのかは非常に悩ましい問題。EURO本番でも2人を状況に応じて使い分けていくのではないだろうか。

 




 

右の序列争い、ベラルディvsキエーザ

左のトライアングルに1トップまでが加勢して左から崩そうとするアッズーリ。そうして相手のブロックが偏ってきたところで入れる右へのサイドチェンジがまたいやらしい

ここで肝になってくるのがサイドバックのフロレンツィ。3バックの右のような立ち位置になる彼は、最終ラインでボールを受けたときには高精度のパスをウイングに通し、攻撃を一気に加速させる。

下は北アイルランド戦の先制点。この場面の前に左からのパスを受けていたフロレンツィは、1列前のベラルディの動き出しを見逃さず正確なスルーパスを通し、ゴールをアシストした。

 

さらに、サイドチェンジのボールが直接ウイングに入った時のサポートのタイミングも素晴らしい。走るコースやポジショニングも的確だ。

右サイドバックはディ・ロレンツォラッザリラファエウ・トロイ、カラブリアなどタレントがひしめく激戦区だが、フロレンツィが確固たる地位を築いているのもうなずけるパフォーマンスを見せていた。

彼とペアを組むウイングの争いもまた熾烈だが、キエーザとのポジション争いをベラルディがリードしている印象だ。

これもスピナッツォーラvsエメルソンと同様で、周囲と連携する能力を重視しての起用だと思う(ちなみに右のインサイドハーフでバレッラよりもペッレグリーニが重用されるのも同様の基準だ)。

ベラルディが出場した北アイルランド戦ではフロレンツィ経由で少し時間をかけながら前進し、ペッレグリーニも含めた3人のトライアングルで連携しながら崩そうとしていた。一方、キエーザが出場したブルガリア戦ではフロレンツィを経由せず、ロングボールを直接キエーザに届けて素早く勝負させようとしていた。

起用される選手によって戦術を微調整して機能させており、どちらも悪かったわけではない。が、スムーズに回っていたのはベラルディだったといわざるを得ない。キエーザがひとりでどんどん仕掛けていくので、後ろから上がってきたフロレンツィのランニングが効果的でなくなっている場面も見られたからだ。

ただ、キエーザもスピナッツォーラも連係プレーではライバルに見劣りする反面、個人技での打開力は大きな魅力。破壊力抜群の飛び道具でああることには間違いなく、流れを変えたい場面では頼りになる切り札だ。彼らのをどこで使って攻め方に変化をつけるかはEURO本番で重要になってくるだろう。

 

このように、

  • 左サイドのインシーニェ、ヴェッラッティ、エメルソンの三角形を中心に
  • 右サイドへのサイドチェンジも効果的に織り交ぜながら
  • テンポよくボールを回して相手のブロックを前後左右に揺さぶり
  • できた隙を素早く突く

これがイタリア代表の攻撃だ。

それが最もよく表れたのが2020年11月に行われたポーランド戦の2点目。左サイドを中心に30本ものパスを回しながら、最後は右サイドにできたスペースを使ってベラルディがゴールを決めている。

この流れの中で最もボールを触ったのはインシーニェで、30本のパスのうち4分の1以上の8本が彼のパス。最終的にはアシストもインシーニェで、完全にイタリアの攻撃の中心として君臨していることがわかる。

 




 

守備

 

アグレッシブな守備

ここまで見てきたように、モダンで攻撃的なスタイルが浸透したアッズーリ。しかし、伝統の堅守が無くなったわけでは決してない。ここ25試合で失点はわずかに7しかなく、3.5試合に1失点という驚異的な守備力も誇っているのだ。特に直近5試合は無失点が続いている。

守備が固いことは伝統どおり。しかし、その方法はゴールにがっちりとカギをかける「カテナチオ」とは異なる。

今のイタリア代表は前線から激しいプレッシングを行い、後方で守備を行うことは決してない。ボールを失ったら1秒でも早く奪い返すことを狙っているのだ。

特にボールを失った時の切り替えの速さ、寄せの激しさはすさまじく、それが全員に徹底されている。もちろんボール保持者に対して厳しくプレスすることはもちろん、その周辺のパスコースを消す周囲の連動性も含めて素晴らしい。

直近3試合でも、アッズーリの鬼気迫るプレッシングにビビった相手がボールを捨ててしまう場面は多々見られた。

どう自分たちのゴールを守るのかというアプローチが180度変化していながらも、堅守という伝統は変わっていない。これも新星アッズーリの素晴らしいところだ。

 




 

失点するなら2パターン?

このように守備が固いアッズーリだが、今回の3試合の中でも相手に決定機を作られる場面は少なからずあった。最後に、どのような形から相手にチャンスを与えたかについてみておこう。

1番多かったのはビルドアップのミスを相手にさらわれる形。今のアッズーリは相手にプレスをかけられても雑に蹴りだすことはほぼない。そのため、パスカットされてピンチを迎える場面が出てきてしまうことはある程度仕方がない。

北アイルランド戦ではロカテッリが、リトアニア戦ではドンナルンマがパスをカットされて決定的なピンチを招いている。

特にロカテッリのミスが目立ったのは気になる部分。意外とパスカットを狙っている相手が見えていなくて、感覚でパスを出すことが多い。結果としてサッスオーロでは絶対しないようなミスがところどころで見られた。それだけサッスオーロのやり方が整理されていることの裏返しでもあるのだろうけど。

今回は招集外となったジョルジーニョが本来はアンカーに入るはずで、そうなればよりビルドアップは安定するだろう。

 

もうひとつは前線からのハイプレスをかいくぐられた場合。こうなると、広大なスペースで相手にボールを持たれるため、ピンチになりやすい。しかし、リスクを背負って前線からの守備を行う以上1試合に何度かこういう場面が訪れるのは仕方がないだろう。

こうなった時に求められるのが最終ラインの選手たちの個々の対人能力。今回の3試合を見ても、ピンチになりかける場面でDFの個人技でねじ伏せてしまう場面が何度もあった。

イタリアが優れたDFに恵まれていることは間違いないが、たとえばEUROのベスト4くらいまで行けば、今回対戦した北アイルランド、ブルガリア、リトアニアよりも強烈なアタッカーに対して個人で守らなければいけない。そのレベルに対してどこまでやれるのかで、イタリアがEUROを制覇できるかどうかが分かれるだろう。

また、プレスをくぐられた後の帰陣が若干遅いのも気になる。ひとつ目の守備アクションが失敗しても、そのあと素早く陣形を整えてしまえばもっと落ち着いて対応できると思う。しかし、今回の3試合でのイタリア代表は守をが乱されたときの修正が遅く、危険なスペースを空けてしまっている場面が散見された。混乱した状態からいかに早く回復できるかも今後に向けた課題になるだろう。

 




 

あとがき

このように、アッズーリは「カテナチオ」から現代的なスタイルに大転換した。

ちなみに、攻撃的に変貌しているのは国内リーグも一緒。現在、5大リーグの中で総得点数が最も多いのはイタリア国内リーグ、セリエAだ。もはやイタリア=守備の国という認識は時代遅れもいいところ。リーグも含めて攻撃的でスペクタクルなサッカーへと転換したのが今のイタリアの姿だ。

しかし、アプローチは変わりながらも25試合で7失点と堅守は不変。堅い守備に攻撃力を上乗せすることに成功したアッズーリは隙が無いチームに仕上がりつつある。

ワールドカップは4度制覇しているものの、実はEUROは1度しか優勝経験がないイタリア代表。しかし、今回の3試合を見ていると1968年以来53年ぶりの欧州制覇は現実的な目標に見える。間違いなく優勝候補だ。

人もボールもよく動き、アグレッシブでエネルギッシュな新生アッズーリ。EUROで特に応援したいチームがないのなら、ぜひイタリアの試合を見てみてほしい。きっと楽しいサッカーを見せてくれるはずだ。

 

 

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