【セリエ最強ファイター】クリスティアン・ロメロのプレースタイルを徹底解剖!

【セリエ最強ファイター】クリスティアン・ロメロのプレースタイルを徹底解剖!

2021年3月22日 7 投稿者: マツシタ
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深海魚はこぞって不思議な姿をしている。目がないもの、口が異常に大きいもの、体が透明なもの。私たち陸上の世界の常識では考えられないような生き物ばかりだ。

でも、よくよく考えてみればこれは当然の成り行きともいえる。地上での生活に適応した生き物がそのまま深海に潜って生活していけないのはある意味当たり前。特殊な環境に適応するためには、自らも特殊化しなければならないのだ。

セリエAで最も特殊な環境にあるチームと言えば、アタランタなのではないだろうか。人に強い意識を置いた守備と、強烈な攻撃力。こんなサッカーをやっているチームはなかなかない。

マンツーマンを採用するということは、ひとりひとりに球際で負けない強さが求められる。特に最後方のCBが1対1で負けてしまえば、即決定機につながる。だから、アタランタのCBには絶対に球際で負けない強さが求められるのだ。

その特殊な条件をぴったり満たし、アタランタに欠かせない選手となっているのがクリスティアン・ロメロだ。

 

母国アルゼンチンのクラブ、ベルグラーノでデビューしたロメロはイタリアのジェノアに引き抜かれる。移籍初年度から活躍したロメロは、イタリア王者ユベントスに買い取られることになった。翌シーズンもレンタルの形でジェノアに残って活躍したロメロは、20-21シーズンをユベントスで戦うか、それとも出場機会を得られる他クラブで戦うかを迷う。

ローマやアーセナルも興味を示す中、ロメロはジェノア時代の恩師イバン・ユリッチ(現ヴェローナ監督)に相談したうえで、ユリッチの師匠にあたるガスペリーニが率いるアタランタに加入することを決断したのだった。

ユリッチのもとで同じようなサッカーを経験していたロメロはすぐさまアタランタのサッカーにもフィットしてレギュラーに定着。センセーショナルなプレーを見せている。

そんなロメロのプレースタイルはどのようなものなのか。

今回はクリスティアン・ロメロのプレースタイルについて徹底的に掘り下げていこうと思う。

 




 

ロメロのプレースタイル

 

激しい対人守備

ロメロの最大の武器、それはやはり対人守備の強さだ。

3バックの中央を担当するロメロは相手のエースストライカーと対峙することになる。こことの1対1に絶対に負けないことがロメロに求められている最大の役割だ。

ロメロは自分が担当するFWが引いて行っても後方を空けるリスクを承知でついていく。そしてFWにボールが入れば、ファウル覚悟の激しいタックルをぶちかます。

  • 1試合平均タックル数 2.2(チーム内2位)
  • 1試合平均クリア数 2.2(チーム内2位)

というデータを見ても、ロメロが球際で激しくファイトしていることがわかる。

 

問題はその成功率だが、

  • 合計ボール奪取数 228(セリエA3位)

というデータを見れば、高い確率でボール奪取を成功させていることがわかる。

ちなみに、ロメロよりもボール奪取数が多い冨安とグリクはリーグ戦全試合フル出場記録を争っていたふたりで、出場時間がそもそもリーグトップクラスで多い。一方、ロメロは27試合のうち出場したのは21試合で、先発は19試合。1試合平均で見れば、ロメロがセリエAで最もボールを奪っていることになる。

ロメロのボール奪取数が多いのは強烈なタックルだけによるものではない。

  • 1試合平均インターセプト数 3.6(欧州5大リーグトップ)

となっており、5大リーグで最もインターセプトを決めてもいるのだ。戦術的な要請から相手との距離を常に詰めているからこそインターセプトを狙える。もちろん、そのタイミングの感覚や読みの鋭さも兼ね備えてのことだ。

ちなみに、ロメロは昨シーズンにもインターセプト数でリーグ1位になっている。アタランタの戦術とは関係なく、ロメロがインターセプトの達人であることの証だ。

 

また、ロメロは地上戦だけでなく空中戦にも極めて強い

  • 空中戦勝率 68%

これはセリエA上位7チームのCBの中ではリーグで6位タイの数字だ。ちなみにトップ10を示すと、

  1. アチェルビ(74%)
  2. デリフト(72%)
  3. ジムシティ(71%)
  4. マクシモビッチ(70%)
  5. デミラル(69%)
  6. ロメロ(68%)
  7. ボヌッチ(68%)
  8. バストーニ(68%)
  9. ロマニョーリ(66%)
  10. ラドゥ(66%)

となっている。

ちなみに、ロメロよりも上位の5名はデリフト以外が全員190cm以上、デリフトも189cmでほぼ190cmである。対して、ロメロの身長は185cmで現代のCBとしては特別大柄なタイプではない。それでもロメロが空中戦に強いのは、跳躍力を含めた身体能力の高さはもちろん、早めにジャンプして相手の上から叩く技術を備えているからだ。

ロメロはここまで公式戦3ゴールを挙げているが、これはいずれも頭で決めたもの、ヘディングの強さは得点力にも活かされている。

 

このように、地空問わず人に対して非常に強いのがロメロの特徴だ。

 




 

攻撃時の積極的な姿勢

ここからはロメロの攻撃面を見てみよう。

ビルドアップ時のロメロはシンプルに徹する。フリーな味方へのパスを選択することが多く、グラウンダーで丁寧に味方につなぐ。

1試合平均チップパス成功数

  • ロメロ  :0.5
  • トロイ  :2.2
  • ジムシティ:2.0

となっており、このデータからもロメロがシンプルに徹していることがわかる。

しかし、アタランタのCBとしてはただシンプルに回しているだけでは不合格。アグレッシブな攻撃を得意とするアタランタでは、CBにも特殊な役割を求められる。

ここで、ロメロのCLでのヒートマップを見てほしい。最終ラインの前にも色が濃くなっているエリアがあることがわかる。

 

これはアタランタが採用しているあるメカニズムと関係してくる。アタランタはビルドアップに詰まったら3CBの中央に入っている選手を中盤に1列上げることでパスコースを作り出すというメカニズムを採用しているのだ。

 

 

CBが前に出ると後方にカバーする選手がいないため、この動きはかなりリスキーだ。アグレッシブなアタランタらしいメカニズムだといえるだろう。そして、先ほどのヒートマップを見てもらえればロメロがこの動きを習得していることもわかる。アタランタのビルドアップが詰まりかけた場面で、ロメロのところから局面を打開することが意外と多い。ビルドアップを円滑にするという面でも、ロメロの貢献度は高いのだ。

さらに、アタランタのCBには積極的な攻撃参加も求められる。それはサイドCBだけでなく、3バック中央のロメロもしかりだ。

ロメロは得意のインターセプトを決めた勢いそのままにゴール前まで駆け上がるプレーを得意としている。シーズン序盤ではこうした攻め上がりはほとんど見られなかったが、試合を重ねるごとに積極性が出てきていまでは一試合に何度も攻撃参加がみられる。ここまで公式戦通算4アシストを記録している通り、攻撃面での貢献度も高いCBとして成長しつつある。

 

このように、

  • 対人守備の強さ・ボール奪取力の高さ
  • 攻撃面での貢献度の高さ 

を兼ね備えるロメロは、まさにアタランタが求めるCBの理想像を体現した選手なのだ。

 




 

ロメロの弱点

それでは、ロメロの弱点は何だろうか。

よく挙げられるのはカードの多さだ。ロメロはここまで公式戦通算13枚のイエローカードを提示されており、ジェノアでの2シーズンでも23枚のイエローカードと3枚のレッドカードを頂戴している。

ただし、先ほど説明したようにロメロが1対1で負けでば、相手に即決定的なチャンスを与えてしまう。戦術的な構造上、完全に入れ替わられてしまいそうな場面でカード覚悟のファウルで止めるのは仕方がないといえる。

ロメロのカードが多いのは、守備時の激しさの裏返しでもある。そう思えば、ここまではレッドカードをもらわずにうまくやりくりしているともとれる。

私があげるならロングボールによる展開力が不足しているところではないだろうか。

アタランタはロングボールでサパタを裏に走らせるプレーを多用する。しかし、ロメロが基本的にシンプルに味方にパスをつなぐことは前述した通り。それでは誰が配球役になるのかと言えば、ボランチの位置から斜めに下りてくるデローンだ。

 

この役割をロメロもできるようになれば、チームとしてより選択肢の幅が広がるのは間違いない。

 




 

あとがき ~ある先輩の話~

特殊な環境で生きていける深海魚はわたしたちからしたらすごい生き物に思える。でも、深海魚は地上では生きられない。そればかりか、浅い海でも生きていくことはできない。特殊な環境に適応すればするほど、生きていける環境も狭まる。だから、特殊な環境に適応することが必ずしもいいことだとは限らない。

セリエAは他国のリーグと比較してフィジカルコンタクトに対して厳しいジャッジをしているように感じられる。そうしたセリエAという環境に最適化されてしまうと、ヨーロッパの舞台で戦うときによくないのではないかというツイートを以前にした。このツイートにはそこそこ反響があった。どのチームのサポーターも薄々感じているのだろう。とても難しい問題だ。

 

アタランタという特殊な環境にどんどん最適化されていくロメロも、それがいい道なのかどうかはわからない側面がある。

現在のチームメイトに、マッティア・カルダーラという選手がいる。彼もガスペリーニ式3バックの中央に最適化されてブレイクを果たした選手だった。

16-17シーズンには

  • 1試合平均インターセプト数 3.4
  • 空中戦勝率 62%

とロメロと似たようなスタッツを残してブレイク、翌々シーズンにミランに引き抜かれた。

しかし、カルダーラは4バックを採用するミランへの適応に苦しんだ。ケガに泣かされた部分もあったとはいえ、ミランでの1年半でリーグ戦出場ゼロという屈辱的な結果を受けてアタランタに帰還することになってしまった。

ロメロは現在ユベントスからのレンタルという形でアタランタでプレーしおり、今夏の動向が注目されている。アタランタ側には買取オプションが付与されているため基本的にはアタランタに残ると思われるが、どのような決断を下すだろうか。

ちなみに、カルダーラもアタランタ最終年はユベントスからのレンタルという形でプレーしていて、ユベントスではプレーせずにミランへ移籍している。ロメロとカルダーラにはどこか共通点があるような気がしてしまう。

ロメロは現在22歳で伸びしろも十分。ポテンシャルは間違いなくワールドクラスだ。同じように言われていたカルダーラのような失敗をしないために考えられる道はふたつ。ひとつはアタランタでプレーし続けるか、早めにほかの環境に移って力を試すかだ。

進化論を唱えたダーウィンは言った。「生き残るのは強いものではなく、変化に適応できるものだ。」

ロメロは強さだけでなく適応力も備えているのだろうか。それが、彼がワールドクラスのCBとして大成するために問われていることだろう。

 

 

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