【新フェノーメノ】ロメル・ルカクのプレースタイルを徹底解剖!

【新フェノーメノ】ロメル・ルカクのプレースタイルを徹底解剖!

2021年3月13日 7 投稿者: マツシタ
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サッカーでしばしば使われるフェノーメノという言葉がある。辞書で引いてみると、第一義は「現象」だそうだ。その中でも特に超常現象など、普通でない物事に対して使っていたのが転じて「非凡な人」のことを現すようになったそうだ。

サッカーで「元祖フェノーメノ」といえば元ブラジル代表FWロナウドだ。パワー、スピード、テクニックのすべてを高次元で兼ね備え、得点を量産した伝説的なストライカーで、イタリアではインテルで活躍したプレーヤーとして知られる。

 

そして今、同じくインテルに新たなフェノーメノが君臨している。ロメル・ルカクだ。

母国ベルギーの名門アンデルレヒトでデビューしたルカクは弱冠16歳でプロデビュー、32試合に出場し14ゴール5アシストというまさにフェノーメノな活躍を披露してチームを国内リーグ制覇に導いた。もう一度言うが、当時16歳だ。

華々しいデビューを飾ったルカクは翌シーズンにさらに成績を伸ばして11-12シーズンにチェルシーに引き抜かれる。しかし、イングランド屈指の名門では出番を得られず、レンタルに出される。レンタル先のWBA(17ゴール5アシスト)とエバートン(15ゴール7アシスト)で活躍したものの、結局チェルシーでプレーする機会はほとんどないままエバートンへ完全移籍することに。

そこからの3シーズン、ルカクは年々ゴール数を増やし(10→18→25)てマンチェスター・ユナイテッドへの移籍を勝ち取る。しかし、マンUではしりすぼみに終わり(ゴール数は16→12)、2シーズンでマンチェスターを後にすることに。

失意のルカクが向かったのがイタリアだった。クラブ史上最高額で迎えられたルカクはインテルで息を吹き返し、初年度から公式戦合計34ゴールをマーク。偶然なのかどうなのか、これは「元祖フェノーメノ」ロナウドの移籍初年度と同じ数字だ。

元祖がロナウドなら、ルカクは「フェノーメノ」といっていいだろう。元祖にも引けを取らないパワーとスピードを兼ね備え、得点力も非常に高い。

今シーズンもここまでセリエA2位の18ゴールとトップタイの8アシストを記録しており、首位を快走するインテルの大黒柱として君臨しているのだ。

そんなルカクはどのようなプレースタイルなのか。今回はロメル・ルカクのプレースタイルについて徹底的に掘り下げていこうと思う。




ルカクのプレースタイル

 

異次元のフィジカル

ルカクの最大の特徴がその圧倒的なフィジカルだ。ぱっと見ただけでも彼が尋常ならざるフィジカルを持っていることはだれの目にも明らかだろう。ひとりだけ体の厚みが違う。

190cm94kgの強靭な肉体は、かなり激しくぶつかられてもびくともしない。彼とまともにコンタクトしてバランスを崩させたのは、私が知る限りフランク・ケシエだけだ。

この圧倒的なフィジカルを活かしたポストプレーは安定感抜群。ルカクはフィジカルだけでなく足技も十分で、彼の足元にボールが入ってしまえばDFがボールを奪うことは不可能だ。

 

さらに、そこから強引に前を向いて自ら仕掛けることができるのもルカクの強み。

普通、これだけ重量級な選手は動きが重くなってしまうものだ。しかし、ルカクはその大柄な見た目からは想像もできないくらい速い。爆発的なダッシュ力で相手DFを置き去りにしてしまうのだ。いつも「こんな怪獣みたいなやつがそんなに速く走るのは反則だろ…」と思ってしまう。

フィジカルコンタクトの強さと圧倒的なスピードという、普通なら相反する能力を異次元で兼ね備えている点がルカクのフェノーメノたるゆえんだ。

そんな戦車のような選手を止めるのはどんなDFにとっても至難の業だ。特にカウンターの局面ではルカクの爆発的なスピードを活かしやすく、オープンスペースで前を向いてしまえばほぼ確実に目の前のDFを突破してしまう。

  • 1試合平均ドリブル成功数 1.7(チーム内1位)
  • ドリブル成功率 66%

というデータを見ても、彼のドリブルを止めることがいかに難しいかがわかる。




ゴール前で決定的な仕事を連発

圧巻のドリブルで突破した後は、それこそ何でもできる。強烈なシュートでゴールネットを揺らすことも、冷静に味方を使ってアシストすることもできる。

ルカクの得点能力が高いことは今更言うまでもない。フィジカルがとんでもないので、シュートの威力もとんでもない。多少コースが甘くてもGKをぶち抜いてしまう。

クロスに合わせてヘディングから奪うゴールも多く、個人のドリブルで持ち込んでからの強烈なミドルも持っている。またPKの成功率も非常に多い。インテルにきてから失敗していないはずだ。非常に多彩な得点パターンを持っているといえる。

 

これだけ得点能力が高いルカクなので、相手DFは警戒してくる。そうなったときは、強引に突破するのではなく冷静に味方を使うこともできる。利他のメンタリティーも持っているのがルカクだ。

  • 1試合平均キーパス数 1.4

という数字はチーム内で2番目に多い数字になっており、味方にチャンスを提供する能力も非常に高いことがわかるだろう。

特に、8つのアシストのうち6つは1月30日べネベント戦以降に記録している。ここにきてパスを出すべきか自らシュートを打つべきかの判断が研ぎ澄まされてきている印象だ。

ルカクの8アシストの内訳を見てみると、

となっており、2トップでコンビを組む二人へ多くのアシストを供給していることがわかる。

自分がゴールを決めるだけでなく、味方を引き立てる能力にも長けるルカク。ラウタロの覚醒も、サンチェスの復活も、ルカクの存在がなければなしえなかったのではないだろうか。

特筆すべきは、ルカクがさらに進化を続けている点だ。

つい数か月ほど前まで、ルカクはシュートを打つときにほぼ必ずと言っていいほど左足に持ち直していた。なので、相手に持ち直しを読まれてしまい、シュートをブロックされることが増えた時期があった。

ところが、ここ最近のルカクは左足に持ち替えずに右足で積極的にシュートを放っている印象だ。相手の対策を受けて、すぐさまその上を行ったのだ。この対応力には感服である。

また、データを見てみても今シーズンのルカクの成長ぶりがうかがえる。

〈90分あたりゴール数〉

  • 昨シーズン 0.69
  • 今シーズン 0.83

〈1試合平均ゴール期待値〉

  • 昨シーズン 0.61
  • 今シーズン 0.80

〈90分あたりアシスト数〉

  • 昨シーズン 0.06
  • 今シーズン 0.37

〈1試合平均アシスト期待値〉

  • 昨シーズン 0.16
  • 今シーズン 0.29

〈枠内シュート率〉

  • 昨シーズン 43.2%
  • 今シーズン 49.3%

このように、ゴールやアシストに関するすべてのデータで今シーズンの方が上回っている。ルカクは着実に進化しているのだ。

これは見方を変えれば「インテルがチームとしてより多くのチャンスをルカクに提供できるようになった」ともいえるだろう。なぜなのか。ここからはインテルの変化について考察してみたい。




ルカクを軸にしたインテルの戦術の変化とは

ルカクは1月31日べネベント戦以降のおよそ1か月の間に6ゴール6アシストと得点に関与するさらにペースを上げた。現在の彼は絶好調で、もはや手が付けられない。

ここまでパフォーマンスが上がったのはなぜか。もちろん彼自身のコンディションもあるだろうし、チームの好調によってメンタル的に乗っていることもあるだろう。だが、それだけではない。実はこの1か月の間、インテルの戦い方自体に変化があったのだ。

前述のべネベント戦以降、インテルはリーグ戦7試合で全勝、18ゴールを挙げる一方で失点はわずかに2という圧倒的なパフォーマンスを見せている。

節目となったべネベント戦と言えば、エリクセンを初めてアンカーで起用した試合だ。この試合から、コンテ監督はエリクセンを活用できる形を試行錯誤していた。そして、その答えが出たのがラツィオ戦だった。この試合を境に、インテルは戦い方を変えている。

前半戦と後半戦のラツィオ戦を比較してみよう。

 

こちらが前半戦のラツィオ戦。インテルがボールを支配してラツィオを押し込み、敵陣で試合を進めていることがわかる。しかし、結果は1-1の引き分けだった。

一方、3-1で快勝した後半戦のラツィオ戦のデータを見てみよう。

 

このように、関係性が完全に逆転。ラツィオがボールを握って試合を進め、インテルは自陣に押し込まれる時間が長くなっていることがわかる。

つまり、インテルはポゼッションを重視する路線から、自陣に守備ブロックを作って引いて守るようになったのだ。

これは続くミラン戦を見ても同様だ。

 

これが前半戦のミラン戦。どちらかといえばインテルがボールを握って戦っているが、結果は1-2での敗北だった。

 

こちらが3-0で快勝した後半戦だ。やっぱりインテルはボール保持を放棄し、自陣でしっかりと守りに徹していることがわかる。

今シーズンのインテルの平均ボール支配率は52.3%だが、ラツィオ戦以降の5試合の平均支配率は43.4%と非常に低くなっている。現在19位のパルマ相手でさえインテルのボール支配率が下回った。

つまり、コンテはエリクセンという攻撃的な選手を中盤で起用しながら、堅守速攻へと舵を切ったのだ。これは一見噛み合っていないように見えて効果抜群だった。守備を意識して自陣でしっかり守ることによって失点が明確に減少したのだ。エリクセンの守備面の不安もしっかりクリアしているといえる。

そして、堅守速攻スタイルへ転換する上でキーマンになったのがルカクであり、この戦術変更で最も恩恵を受けたのがルカクなのだ。

しっかり自陣で構えて守るということは、ボールを奪う位置が相手ゴールから遠くなるということ。そこから押し返していくためには、攻撃の起点になれる選手が必要だ。それが安定したポストプレーを持つルカクである。

ここで、昨シーズンと今シーズンのルカクのヒートマップを比較してみよう。

昨シーズン

今シーズン

こうしてみると、ルカクが最も頻繁にプレーしているエリアが変化していることがわかる。昨シーズンはペナルティエリア内でのボールタッチが多いのに対し、今シーズンはペナルティエリアの外でのボールタッチが大幅に増加している。つまり、それだけ攻撃の起点としてポストプレーを行う場面が増えたということだ。

昨シーズン

今シーズン

 

自陣に引くという選択は、絶対に起点になってくれるルカクの存在を前提にしているのだ。

 

さらに、ルカクが爆発的なダッシュ力を生かしたドリブル突破を得意とすることは説明した通り。インテルが自陣で守るということは、敵陣に広大なスペースが広がるということ。ルカクが勝負するためのスペースがより手に入りやすくなったのだ。

つまり、重心を低くする新たな戦術は、守備を安定させただけでなく、ルカクというモンスターのポテンシャルを最大限に引き出したのだ。

しっかりとした守備と、ルカクを軸にした速攻が今のインテルのスタイルだ。

この新機軸が機能していることがルカクがここ最近パフォーマンスを上げている理由であり、インテルがここ最近パフォーマンスを上げている理由だ。

「元祖フェノーメノ」ロナウドがバルセロナに在籍していた当時、ロブソン監督は「私の戦術はロナウドだ」と言ったそうだ。今のインテルもまさに「戦術ルカク」なのである。




ルカクの弱点

それでは、最後にルカクの弱点について軽く触れておこう。

 

①ヘディングの精度

まずはヘディングの精度だ。圧倒的なフィジカルがあるルカクは当然空中戦に強く、競り勝ってシュートまでいける確率は高いのだが、その精度という点では課題があるように見える。

実際に試合を見ていても、ルカクのヘディングシュートがバーを越えていくシーンは多い。

ルカクがヘディングするシーンを見てると、少しぎこちなさがある。これは想像だが、苦手意識もあるんじゃないだろうか。

  • 空中戦勝率 38%

と意外に低い数字が出ているのは、自分の状態が悪ければヘディングでの競り合いを避けているからだろう。

今でもヘディングでのゴールはそこそこ決めているルカクだが、ヘディングを叩きつけて枠内に収められるようになれば得点ペースをもう1段階上げることができるのではないだろうか。

 

②守備での貢献度

もう一つの弱点が守備での貢献度の低さだ。

守備に関する基本的なデータを2トップでコンビを組むラウタロ・マルティネスと比較してみよう。

〈インターセプト数〉

〈タックル数〉

このように、いずれもルカクが少なくなっている。

ただ、これはチームとしては許容範囲内だろう。今のインテルはルカク以外の9人で守り、ルカクには攻撃時に最大限のパワーを発揮してもらうことを優先している。それでちゃんとチームとして機能しているし、ルカクは攻撃面で十分に貢献してくれているのであまり気にする必要はないのかもしれない。




あとがき

ベルギーで鮮烈なデビューを飾り、チェルシーで挫折。エバートンで評価を高め、マンUで挫折。浮き沈みを繰り返しながら成長してきたルカクは今、イタリアの地でキャリア最高の輝きを見せている。

自身がゴールを量産することはもちろん、相方のパフォーマンスも向上させ、攻撃の起点にもなれる。間違いなく超ワールドクラスのタレントだ。

そんな彼のことだ、当然他国のビッグクラブも放っておかない。マンチェスター勢をはじめ、海外のメガクラブがこぞって獲得に興味を示している。

現在の自陣で守備ブロックを構築するインテルの戦術は絶対に攻撃の起点になってくれるルカクの存在を前提にしている。だから、彼を引き抜かれることにでもなれば、たとえスクデットを獲得したとしてもチームを根本から作り変える必要に迫られるだろう。それだけインテルにとってルカクの存在は大きい。

ピッチ外は騒がしくなっているが、来シーズンの話は来シーズンの話。今はスクデットに集中しなければならない。

インテルは現在2位ミランに勝ち点6差をつけて首位を快走中。05-06シーズンから5連覇を達成して以来11年ぶりのスクデットが現実味を帯びている。

このまま走り抜けられるか。その命運は、ロメル・ルカクが握っているといっても過言ではないだろう。

 

 

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