
【アタランタが生んだ異端児】ロビン・ゴセンスのプレースタイルを徹底解剖!
アタランタはあらゆる意味で異端なチームだ。多くの強豪クラブがミラノやローマ、トリノなどの大きな町を本拠地とするなか、アタランタは人口約12万の小都市ベルガモを本拠地とする。日本でいえば大分県別府市や北海道小樽市くらいの規模感だ。
やっているサッカー自体も異端で、マンツーマンに近い人を意識した激しい守備と人数をかけた迫力ある攻撃はいまやアタランタの代名詞として定着した印象だ。
そんなアタランタを象徴するプレイヤーがロビン・ゴセンスだ。
ゴセンスはドイツ人選手なのだが、これまでのプロキャリアで一度もブンデスリーガでのプレー経験がないという異色の経歴を持つ。
18歳の時に受けたドルトムントのトライアルに合格できず、オランダ2部のドルトレヒトでデビューすることになった。そこから、かつて日本の平山相太もプレーしたオランダのヘラクレス・アルメロを経由してイタリアのアタランタにやってきたのが17-18シーズンだ。
加入当初はアタランタの特殊なサッカーになじむのに苦労し、絶対的な存在にはなれなかったゴセンス。それでも、シーズンを重ねるごとに出番は増えていった。そして、完全に才能が開花したのが昨シーズン(19-20シーズン)だった。
ゴセンスは絶対的なレギュラーに定着。左ウイングバックのプレーヤーながら公式戦通算10ゴール7アシストを記録したのだ。異端なアタランタを象徴する、異端なウイングバックと言っていいだろう。
さらに、続く今シーズン(20-21シーズン)は3月初旬の時点ですでに10ゴール6アシストと昨シーズンとほぼ同じ成績を記録している。特に年明け以降は6ゴール4アシストと決定的な仕事を連発中で、もはや手が付けられない状態だ。
目下絶好調、アタランタをけん引するキーマンとなっているゴセンス。彼はなぜウイングバックからそこまでゴールに絡めるのだろうか。
今回はロビン・ゴセンスのプレースタイルについて徹底的に掘り下げていこうと思う。
目次
ゴセンスのプレースタイル
すべての土台は高いフィジカル能力
ゴセンスは非常に攻撃力があるプレイヤーだ。それでは、何が彼の攻撃力の源泉になっているのだろう。
それは、彼の恵まれたフィジカル能力だ。
ゴセンスは筋骨隆々な肉体と90分間上下動を繰り返せるスタミナをあわせ持ち、ひとりで左サイドを制圧できる。
さらに、ゴセンスは重量級ながら跳躍力は驚異的で、空中戦に極めて強い。
- 空中戦勝率 70%
この数値はジムシティと並んでチーム内2位で、(1位のメーレはまだ試合数が少ないため外して考えてもいいかもしれない)リーグ全体としてみてもトップクラスの数値だ。
そして何よりも最後まで戦い続けるメンタリティーが素晴らしい。その闘魂によってもともと高いフィジカル能力がさらに際立って見える。こんなにイカツい選手がバチバチぶつかってきたらどんな選手でも嫌なものだろう。
自ら持ち運ぶドリブルも威力抜群。難しいフェイントは使わず、持ち前のフィジカルを前面に押し出して力強く突き進む。
〈ドリブル成功率〉
- ゴセンス :66%
- ハテブール:44%
- メーレ :55%
とライバルふたりと比較しても高い成功率を記録している。左サイドを力強く持ち運ぶプレーはゴセンスの武器のひとつになっている。
ドイツでのプレー経験がないにも関わらず、高いフィジカル能力とファイティングスピリットという非常にドイツ人らしい特徴を持っているのがゴセンスだ。
ダイナミックにゴール前に飛び込む
この高いフィジカル能力を活かしてゴールを量産しているのが現在のゴセンスだ。守備時には低い位置まで戻りながらも、ここぞという場面では必ずゴール前に飛び込んでくる。そのスタミナは圧巻だ。特に逆サイドからクロスが上がってくる場面ではFWさながらにゴール前にポジションし、クロスに合わせる。
空中戦の強さ、そしてゴール前に必ず飛び込む運動量。ゴセンスの得点力の土台にあるのは高いフィジカル能力なのだ。
さらに、特筆すべきなのが決定機でミスをすることが非常に少ないこと。決定力の高さもゴセンスがゴールを量産できる秘訣のひとつなのである。
また、ゴセンスのゴール前への飛び込みを許容するアタランタの戦術もまたゴセンスの得点量産に一役買っている。
アタランタは攻撃時には非常に流動的にポジションを入れ替える。その流れの中で、中央から左サイドに流れてきた選手(特にサパタやペッシーナが流れてくることが多い)と入れ替わってゴセンスが中央へ入っていく場面が多くみらる。
サパタがペナルティエリア内を深くえぐってゴセンスにクロスを供給する形はアタランタの得点パターンのひとつとして確立されている。
さらに、ただ飛び込んでくるだけでなく、相手の背後からフリーでスペースに入ってきたり、相手DFの視野の外からニアサイドにまで飛び込んだりといった駆け引きの面でも成長が感じられる。ここが伸びたことが年明け以降の得点量産につながっているのだろう。
ミドルレンジのキック精度も高い
また、ゴセンスは10のゴールだけでなく、6のアシストを記録していることも忘れてはならない。
パワーがあるゴセンスはミドルレンジのパスを得意としていて、クロスの精度も高い。
コッパ・イタリアのデータが見つからなかったのでセリエAだけに限定するが、
- アシスト期待値 3.5
- 実際のアシスト 4
となっており、両数値の差が小さい。これは味方が難しいチャンスを決めているのではなく、ゴセンスがしっかりと数字に見合うチャンスを作り出していることを現している。
また、
- キーパス数 1.1(チーム内4位タイ)
というデータからも、ゴセンスがチャンスメーカーとしても貢献度が高いことがわかる。
このように、自分がクロスボールに合わせる側になるだけでなく、自分がクロスボールを供給する側に回っても質が高いプレーができるのがゴセンスだ。
まあ、ウイングバックの選手ならふつうは順序が逆なはずなのだけれど、ゴセンスが異端児なのだから仕方がない。
また、ミドルレンジのキックはシュートにも活かされる。
ゴセンスは多少の距離はあっても積極的にミドルシュートを狙っている。
- 1試合平均シュート数 1.7(チーム内4位)
となっており、データもこのことを裏付けてくれている。ゴールに対して貪欲なところにもゴセンスのメンタルの強さが表れているといえるのではないだろうか。
高い守備力も特筆もの
さらに、ゴセンスは守備力も十分以上に備えている。
相手のドリブルに対してしつこくついて行って激しいタックルをぶちかます。デュエルでの激しさはゴセンスを語る上で欠かせないの魅力のひとつだ。
- 1試合平均タックル数 1.5
- 1試合平均インターセプト数 1.5
というデータは全体としてみれば非常に高いものだ。
アタランタというチーム自体が激しい球際でのファイトを求めるスタイルであるため、チーム内で見ればゴセンスの数字が特別高いというわけではない。
だが、たとえば現在セリエAで首位を快走するインテルの中に当てはめてみれば、タックル数ではチーム内3位タイ、インターセプト数ではチーム内トップに相当する数字だ。
守備面でもアグレッシブにファイトしていることがわかるのではないだろうか。
まとめると、
- ゴール前に飛び込んでクロスに合わせて得点を量産
- 空中戦に極めて強い
- 強引なドリブル突破もできる
- 自ら供給するクロスボールの質も高い
- 守備時の激しさも魅力
- すべての土台にあるフィジカル能力の高さとファイティングスピリット
ひとことでまとめるなら「ダイナミックな万能戦士」。リーグを代表する左ウイングバックと言っていいだろう。
ゴセンスの弱点
ゴセンスの弱点は2つ考えられる。
①左サイド専業
まず、ゴセンスは(現状)左サイド専業だということだ。
ハテブールが負傷したあとの第21節トリノ戦、ゴセンスは珍しく右のウイングバックで起用された。しかし、この試合のゴセンスはとてもやりづらそうにしていて、少なくとも左サイドでやっていた時のようなスムーズなプレーは見られなかった。まあ、点は取ってしまったんだけど。
カットインして仕掛けていくようなタイプではないこともあって、左利きのゴセンスを右サイドで起用するのは難しい印象を受けた。実際、ガスペリーニ監督がゴセンスを右サイドで起用した試合は後にも先にもトリノ戦のみだ。
ずっと起用され続ければフィットする可能性もなくはないけれど、今のところゴセンスは左サイドでのみ起用できる選手だと考えていいだろう。
②組み立て能力は高くない
さきほどゴセンスはミドルレンジのキックは正確だと説明した。一方、低い位置で細かいパスをつなぎながら試合を組み立てたり、決定的なスルーパスを供給するようなプレーは得意ではない。
そこまでの細かいコントロールを可能にする繊細さ、視野の広さやタイミングの感覚などは持っていないように見える。
〈パス成功率〉
- ゴセンス :80%
- ハテブール:87%
- メーレ :81%
というデータを見ても、ゴセンスが細かいパスワークがあまり得意ではないことがわかる。そういう意味で、現在移籍が噂されているマンCで偽サイドバックのような役割をやらせてもなじまないだろう。
クロスボールやミドルシュートなど、あくまでゴールに向かうダイナミックなプレーがゴセンスの持ち味なのだ。
あとがき
アタランタを象徴する異端児ゴセンスは、昨シーズンから続く好調を買われて昨年9月に念願のドイツ代表デビューを飾った。さらに年明け以降にパフォーマンスを上げていることは前述した通り。そのパフォーマンスは各方面から高く評価されており、最近はマンチェスター・シティが獲得に動くのではないかという報道が盛んになっている。
もしゴセンスがペップのもとでプレーすることになったらどうなるだろう。先ほども説明した通り、偽サイドバックとしての適性はないので、カンセロのようなプレーを求めるのは酷だろう。ゴセンスは中盤よりも前でプレーさせたほうがその持ち味が活きる。このことを考えれば、守備時サイドバック、攻撃時FWのような「新しい偽サイドバック」としてサッカー界に革命を起こす可能性も考えられるのではないだろうか。
しかしながら、ゴセンスの希望はあくまでもブンデスリーガでのプレーのようだ。あこがれのシャルケはゴセンスのようなファイターを好むクラブであり、一度プレーしているところを見てみたいものだが、今シーズンは成績不振が続いており降格が濃厚。今後の身の振り方は全く読めない。
ゴセンスの能力の高さを考えればバイエルンでも十分プレーできるように思うが、彼の未来はどこにあるのだろうか。
攻守に万能なゴセンスは数年後には世界を代表するサイドバックと呼ばれていてもおかしくないように思う。この夏の動向も含めて目が離せないプレイヤーだ。
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