
【超万能ダイナモ】ディエゴ・デンメのプレースタイルを徹底解剖!
ガットゥーゾ監督の身辺が騒がしくなっている。今シーズンのナポリは4位~6位あたりをさまよっており、成績面での不振からかガットゥーゾの解任が噂されているのだ。バレンタインデーに行われたユベントス戦で勝利して一時は噂が沈静化したものの、ELとコッパ・イタリアで連続で敗退した影響で再び解任論が噴出している。
ここまではケガにもたたられ、フルメンバーで戦えた試合が少ないため不運ではあると思う。幸い、まだCL出場権から大きく離されたわけではないし、試合数も残っている。ここからガットゥーゾには挽回を見せてほしいところだ。
そのガットゥーゾにプレースタイルがよく似ているといわれている選手がナポリにいる。ディエゴ・デンメだ。
いまではドイツ屈指の強豪となっているライプツィヒだが、7年前にはまだ3部にいた。その3部時代から所属していたのがこのデンメで、クラブを成長させた功労者の一人である。
クラブの成長とともに自身も成長してきたデンメは、やがて「ライプツィヒのガットゥーゾ」と呼ばれるようになっていく。
そんな中、19-20シーズンの冬の移籍市場であこがれのガットゥーゾからの誘いを受ける。デンメは快諾し、ナポリへの加入が決まった。
適応が難しい冬からの加入ながら、デンメは着実に出番を得ながらチームになじんでいった。そして、けが人が続出している今シーズンはさらに出番を増やしている。
そんな「ガットゥーゾ2世」デンメはいったいどのような選手なのか。今回はディエゴ・デンメのプレースタイルについて徹底的に掘り下げていこうと思う。
目次
デンメのプレースタイル
豊富な運動量が最大の武器
デンメの最大の武器が豊富な運動量だ。
ピッチの全域をカバーできる持久力を持ち、常にボールの近くでプレーできる稀有な存在だ。
ガットゥーゾとプレースタイルが似ているといわれる通り、運動量を活かしたボールハントはデンメの武器のひとつ。
- 1試合平均のタックル数 1.8(チーム内3位)
というデータが示す通り、デンメが豊富な運動量でピッチ内を動き回り、ボールハントを敢行していることがわかる。
ちなみに、ドイツ時代の16-17シーズンにはタックル勝利数がブンデスリーガ全選手中1位に輝いたという実績も持っている。デンメのボール奪取力が高いことに疑いの余地はない。
このボール奪取力に注目が集まるデンメだが、彼の運動量はむしろ攻撃で生かされているように見える。
デンメは常に足を止めずに味方の近くに動いてパスコースを作り出し、チャンスと見るや前線へ飛び出してフィニッシュにも絡める。もちろん広範囲に動いてボールを刈り取る守備もお手の物だ。まさにボックス・トゥ・ボックスのプレイヤーで、攻守両局面で大きな存在感を発揮する。
2ボランチで起用されたときには特に積極的に前線に飛び出している印象で、するすると上がっていってペナルティエリアの中にまで侵入してくる。その後のプレーにはまだ改善の余地があるものの、それでもここまで2ゴール3アシストを記録している。今シーズンは以前にもまして積極的に攻撃に絡んでいる印象だ。
アンカーに起用されればレジスタとしてもふるまえる
このように、豊富な運動量を持つボックス・トゥ・ボックスのMFであるデンメだが、彼のすごいところはレジスタとしてもふるまえることだ。
ファビアンの離脱後、ガットゥーゾ監督はデンメをアンカーに、インサイドハーフにジエリンスキとエルマスを並べる形を多用していた。
アンカーで起用されたデンメは、途端にレジスタに変貌する。難しいパスを通したりサイドチェンジで局面を打開するタイプではないが、常に味方の近くにパスコースを提供しつつ、ボールを受ければ少ないタッチでシンプルにボールを散らしてリズムを生み出す。
特に注目すべきなのが常に味方の近くでサポートしていること。常に足を止めずに味方に近づいて行ってパスコースを提供し、チームの潤滑油として機能している。この味方からパスを引き出す動きを90分間続けられるのはデンメの無尽蔵のスタミナがあってこそだ。
ある試合ではサイドチェンジをした後、そのままボールを追いかけるようにピッチを横断し、次のパスを再びデンメが受けるような場面もあった。運動量が圧倒的なデンメだからこそできる芸当だ。
さらに、デンメは相手に寄せられても冷静にキープしてファウルを誘う。パスミスの少なさも含めて、非常にボールロストが少ない選手だ。
それはデータにも表れている。
〈1試合平均ボールロスト数〉
- デンメ :6.5
- バカヨコ :7.2
- ファビアン:8.1
となっており、中盤の主力3人の中で最もボールロストが少なくなっている。さらに、
〈自陣でのパス成功率〉
- デンメ :95%
- ファビアン:93%
- バカヨコ :92%
というデータになっており、デンメが自陣でほとんどパスミスをしていないことがわかる。データの範囲をピッチ全体でのパス成功率に広げても、その数字は91%でファビアンと並んで中盤の選手としてはトップタイだ。彼がレジスタとしていかに優秀かがわかるのではないだろうか。
- インサイドハーフや2ボランチの一角で起用されれば豊富な運動量で攻守に絡むボックス・トゥ・ボックスとしてふるまう
- アンカーで起用されればシンプルに徹する堅実なレジスタに変貌する
このプレーの幅の広さがデンメの魅力なのだ。
デンメの弱点
それでは、次はデンメの弱点を見てみよう。
デンメの弱点は大きく3つに分けられると思う。それぞれ順に説明していこう。
ポジショニングの調整
ひとつめが、ときおりビルドアップ時のポジショニングが不適切な場面があることだ。
デンメが常に味方の近くにポジショニングしてボールを受けていることは先ほど書いたとおり。しかし、デンメがマークにつかれている状態で近づいてしまうとどうなるだろう。一緒に相手も引き連れてきてしまい、味方がプレーするためのスペースを狭めてしまう。場合によってはデンメをマークしていた相手がボールホルダーへのプレッシャーにスイッチし、囲い込まれてしまうことも考えられる。
これはバカヨコにも見られる傾向であるため、もしかしたらガットゥーゾ監督の指示なのかもしれない。デンメはそれを忠実に守っているだけかもしれないのだ。このことは注記しておかなければいけない。しかしながら、状況によっては戦術の縛りから外れてでも柔軟な判断が欲しい。
味方の近くにポジションすることによって円滑なパス回しを実現しているデンメだが、マークにつかれている場面ではあえて離れるような動きをして相手を迷わせたいところだ。
キックのバリエーションの少なさ
もうひとつがキックのバリエーションの少なさだ。
デンメは非常にパスの成功率が高い選手だということをデータを用いて説明した。しかし、ほかのデータを見るとイメージが変わってくる。
- ロングパスの成功率 65%
- 浮き球のパスの成功率 53%
このように、ロングパスや浮き球のパスになると成功率がガクッと落ち込むのだ。つまり、これらのデータを組み合わせてみるとデンメのパスのほとんどはグラウンダーのショートパスであることが見えてくる。
実際に見ていても、デンメは正確に味方につなぐ優秀な潤滑油である反面、ロングパスで局面を打開したり、相手の頭を超すようなパスでプレスを無効化したりといった技術までは備えていない印象。
シンプルなプレーを正確にこなせる反面、難しいことはできないということは頭に入れておいてもいいのではないだろうか。
ファウルの多さ
デンメはボール奪取力に優れた選手であることは説明した通り。しかし、ファウルが多いこともまた事実なのだ。
先ほど16-17シーズンにブンデスリーガ全選手の中で最も多いタックル勝利数を記録したことを紹介したが、実は同じシーズンにブンデスリーガ全選手の中で最もファウル数が多かったのもデンメなのだ。
今シーズンのデータを見ても、デュエル勝率が46%と半分以下になっており、イエローカードの数もチーム内2位タイの4枚を頂戴している。つまり、デンメはめっちゃボールを奪えるけど、それはタックルの数自体が多いからであって成功率でみるとそこまで高くはないということになる。
なぜだろうか。試合を見ていて感じたのはアジリティの不足だ。
デンメは相手に切り返されると意外とあっさりかわされてしまうことが多い。それは体を入れるのではなく、足を出してボールをつつこうとしているからだ。
おそらく、デンメはアジリティが不足しているがゆえに相手の切り返しについてくのが難しいことを自分で理解している。だから、ボールをつついて早めに勝負を決めてしまいたいのだろう。そうして自分が出した足が相手の体に入ってしまい、ファウルを取られる。こういうことなのではないだろうか。
フィジカル的な限界があるのなら仕方ないことかもしれないが、ファウルを犯さずクリーンにボールを奪うためには相手とボールの間に体を入れるという守備方法を体得しなければならない。これができるようになれば、デンメはより確実にボールを奪えるようになれるはずだ。カードの数も減り、デュエルの勝率も改善されるのではないだろうか。
あとがき
開幕当初は快進撃を見せ、30年ぶりのリーグ制覇をも期待させるような戦いぶりを見せていたナポリ。しかし、離脱者が続出してリズムを崩し、現在は6位に後退してしまった。
そんな苦しい時期を支えた一人がデンメだった。開幕当初はバカヨコとファビアンのコンビが鉄板だったものの、徐々にデンメが出番を増やしていき、今は開幕時ほど明確にバカヨコの方が序列で上回っているようには思えない。
デンメがこのまま完全にスタメンを奪取することも不可能ではないはず。そのためには、これまでコンビを組む機会が少なかったファビアンとの連携を熟成させていく必要があるだろう。
ライプツィヒを導いたように、ナポリも復調させられるか。デンメのプレーがカギを握っている。
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