【エレガントなハードワーカー】アドリアン・ラビオのプレースタイルを徹底解剖!

【エレガントなハードワーカー】アドリアン・ラビオのプレースタイルを徹底解剖!

2021年3月4日 5 投稿者: マツシタ
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今シーズン、ユベントスは大きな決断を下した、監督経験がなかったピルロを招聘したのだ。

ピルロは攻撃時には非常に流動的にポジションチェンジを行い、守備時には激しくプレッシングを行うモダンな戦術を採用した。結果として、選手たちには攻守に運動量が求められている。特に、中盤の選手たちには常に変わる状況を読み取りながら的確なポジショニングをとり、攻守に貢献することが求められている。

その中盤で主力となっているのがアドリアン・ラビオである。

188cm71kgとスタイル抜群で、その髪型からもいかにもエレガントな雰囲気を醸し出しているラビオだが、実際のプレーはガッツにあふれたダイナミックさが売りだ。

今回はそんなラビオのプレースタイルについて徹底的に掘り下げていこうと思う。




ラビオのプレースタイル

 

豊富な運動量

ラビオの最大の武器が豊富な運動量だ。

下の図は今シーズンのラビオのヒートマップである。左サイドを中心に広範囲に動き回っていることがわかる。

この豊富な運動量が、攻守に貢献できるプレイヤーとしてのラビオの土台となっている。

まずは攻撃から見ていこう。攻撃時のラビオの移動方向は主に4つある。

3と4については主にビルドアップ時の動きだ。左サイドバックの場所に斜めに下りてサポートすることもあれば(3)、両CBの前に入ってアンカーのようなポジションをとり、的確な散らしでビルドアップすることもできる(4)。

ラビオは相手と味方のポジショニングを見ながら、常に的確に判断してこれらを使い分ける。ラビオは自分がアクションを起こしてスペースを作り出す選手ではなく、どちらかと言えば味方が動いてできたスペースを使う側なのだ。

ポジションチェンジが激しいユベントスにおいて、ラビオのような気が利いたプレイヤーは必要不可欠だ。彼のように的確にスペースを把握して埋められる選手がいなければチームはバランスを崩してしまう。いわばチームの陣形を保つバランサーなのだ。

さらに、ボールを受けた後の配球についても的確だ。それはデータを見ても明らかで、

  • パス成功率 91%

という非常に優れた数値をたたき出している。ほとんどボールを失っていないことがわかるだろう。

中盤低い位置でボールを失うことは相手にビッグチャンスを与えることを意味する。ラビオはそのような凡ミスを犯すことが非常に少ない印象だ。これは中盤を務める選手として非常に重要な能力だといえ、ラビオはそれを持っているのだ。




推進力あるドリブルと裏への抜け出し

1と2はよりゴールに迫ろうとするアクションだ。

1はタッチライン際に張った味方アタッカー(図ではキエーザ)にボールが入ったタイミングで縦へ抜け出す動き。いわゆるチャンネルランだ。

このサポートランニングのタイミングが非常にいいのがラビオの特徴だ。彼が縦へ走り抜けることで中央へのドリブルコースを提供することもできるし、自分がパスを受ければ相手を自陣に押し込むこともできる。このランニングは非常に効果的だ。

また、2はカウンター時のドリブルでの持ち上がりを示している。ラビオの攻撃時の最大の持ち味がこの推進力あふれるドリブルで、彼が長距離を持ち運んで一気に相手ゴールに迫る形はカウンター攻撃を得意とするユベントスにとって欠かせないパターンとなっている。ぐいぐいと持っていく迫力、長距離を持ち運べる持久力は見事だ。

ドリブルについてのデータを見ても、ラビオは

  • 1試合あたりドリブル成功数 1.2
  • 1試合当たりドリブル成功率 77%

となっている。同じ中盤のポジションを争うふたりの数値を見てみると、

となっている。

そう、いずれもラビオがトップとなっているのだ。ことドリブルに関してはユベントスの中盤の中で最も優れたプレイヤーだといっていいだろう。

さらに、そこから強烈な左足ミドルを突き刺すこともできるのがラビオの長所。特に印象的だったのが19-20シーズンに決めたミラン戦でのミドルシュートだ。

このように、

  • 豊富な運動量を活かして的確なポジションを取って味方をサポートし、
  • 的確な配球で味方につなぎ、
  • 自らドリブルで持ち運んで局面を打開できる

これがラビオの攻撃時の特徴だ。




広範囲をカバーしつつボールを奪取

さらに、彼の豊富な運動量は攻撃だけでなく守備でも生かされる。

ラビオは広範囲を動き回りながらボールを回収しまくる優秀なボールハンターでもあるのだ。

守備に関するスタッツを見てみても、

  • 1試合平均タックル数 2.0(チーム内2位タイ)
  • 1試合平均インターセプト数 1.3(チーム内5位)
  • 1試合平均デュエル勝率 60%(中盤の選手で1位)

と軒並み高い数値を記録している。

チーム内で2番目のタックル数を見ても、彼が運動量を活かしてボールハントを行いまくっているのがよくわかるし、ただタックルを仕掛けているだけでなくその勝率も非常に高いことがデータからわかる。例のごとく、ベンタンクールとアルトゥールというライバルふたりよりも高い数値を記録しているのである。

特に注目すべきなのが空中戦の勝率の高さだ。1試合平均の空中戦勝率は

低身長なアルトゥールはまだしも、身長がほとんど変わらないベンタンクールよりも1割ほど勝率が高いというデータは、ラビオが空中戦を得意としていることを証明しているのではないだろうか。

イエローカードの数を見ると、こちらもチーム最多の5を頂戴している。しかしながら、カードが出るかどうかは審判の裁量によるところも大きい。なので、カードの数も球際で戦えている証拠としてとらえていいのではないだろうか。

実際に試合を見ていても、ユベントスがカウンターを受けそうなときにでラビオが止める場面は少なくない。必要ならばカード覚悟でピンチの芽を摘む、狡猾なプレーの裏返しなのではないだろうか。

このように、ラビオは攻守で貢献出来る万能なMFだ。そして、それを支えているのが彼の豊富な運動量なのである。




ラビオの弱点

それでは、ラビオの改善点はどこにあるだろうか。

ひとつあげるとすれば、よりゴールに関与する頻度を増やすことだろう。

先ほどラビオのパス成功率は91%と非常に高いことを示したが、キーパス(シュートにつながったパス)のデータを見てみると、

  • ラビオの1試合平均キーパス数 0.4
  • アルトゥールの同データは 0.9
  • ベンタンクールの同データは 0.8

となっている。つまり、ラビオはライバルのふたりの半分以下しかキーパスを出せていないのである。これでは、アシスト数がまだ1にとどまっているのも当然だ。

またロングパスに関するデータを見てみても

  • ラビオの1試合平均ロングパス成功数 1.5
  • アルトゥールの同データは 3.1
  • ベンタンクールの同データは 3.5

となっており、こちらもライバルのふたりの半分以下になっている。

これらをつなぎ合わせると、ラビオはパスの成功率は高いものの、それはフリーの味方に安全につなぐことが多いからだということが見えてくる。

実際にラビオのプレーを見ていても、的確な配球はできているものの、ロングパスで局面を変えたり決定的なスルーパスを出して味方にシュートチャンスを提供したりといった、いわゆる司令塔的なプレーは少ない印象だ。

自陣では安全第一が優先されるものの、敵陣ではよりリスクを取ってゴールに向かうプレー選択をしてもいいのではないだろうか

また、シュートに関しても同様で、ラビオはまだユベントスにきてからの2年間で2ゴールしか挙げられていない。

先ほど挙げた動画を見てもらえればわかる通り、正確かつ強烈な左足を持っていることは間違いない。資質は十分あるのだ。

事実、パリ・サンジェルマン時代には

  • 14-15シーズンに4ゴール
  • 15-16シーズンに6ゴール
  • 17-18シーズンに5ゴール

を記録している。

これらを見ても、ラビオの問題は能力値自体ではなく、積極性を出せていないメンタリティーにあるといえる。

その左足のクオリティーに関してはたしかなものがある。それはパスに関してもシュートに関してもそうだ。空中戦が強いのだからゴール前に入っていってクロスに合わせることもできるだろう。

それらのクオリティーを存分に発揮するためには、ゴールに絡んでいこうとする積極性を出していく必要がある

ロナウドに文句を言われてもサラっと受け流すくらいの余裕と積極性が出てくれば、真のワールドクラスのMFとして大成できるだろう。そのためには、もう一皮むける必要がありそうだ。




あとがき

ラビオのメンタル面の不安定さは今に始まったことではない。パリ・サンジェルマン在籍時からピッチ外では問題があったのだ。

2018年W杯、フランス代表は優勝を果たすわけだが、ラビオはそのメンバー23人に名を連ねることはできず、予備登録メンバー入りを命じられる。しかし、これに不満を抱いたラビオは予備登録メンバー入りを拒否、チームに帯同しなかったのだ。これにはデシャン監督に苦言を呈され、2年間代表に召集されることもなかった。

また、ユベントス移籍に至る経緯についてもひと悶着あった。2019年夏に切れる契約の延長を拒否したラビオは構想外とされチームから外されることになる。その後に開催されたチャンピオンズリーグのマンチェスター・ユナイテッド戦第2レグでチームが逆転負けを喫したときにはラビオはナイト・クラブにいたところを発見されている。さらに、そのタイミングで元マンUのパトリス・エブラが投稿した逆転勝利を祝うSNSの投稿に「いいね」をつけていたことも発覚。これらを受けてクラブから謹慎・減給処分を受けているのだ。

このように、もともとピッチ外ではトラブルがあったラビオ。これもメンタル面の未熟さからくるものだろう。

持っているポテンシャルに関しては間違いなくワールドクラスなものを持っている。それを発揮できるかどうかは、テクニックやフィジカルなどの能力よりもむしろ安定したメンタルと強いパーソナリティによるということはキエーザやバレッラの記事で見てきた通りだ。

現状でもチームに大きく貢献していることは間違いない。昨年には2年ぶりに代表復帰を果たしているし、徐々に良くなってきてはいる。しかし、もっとやれると思うのだ。このままで終わってはもったいないと思えるほど、ラビオからはスケールの大きさを感じるのだ。

もう一皮むけて、真のワールドクラスに上り詰めてほしい。そうなれば、ユベントスはもう一度黄金期を築くことができるだろう。

 

 

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