【ローマの新エースへ】ボルハ・マジョラルのプレースタイルを徹底解剖!

【ローマの新エースへ】ボルハ・マジョラルのプレースタイルを徹底解剖!

2021年3月3日 7 投稿者: マツシタ
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レアル・マドリードといえば、完成された選手を獲得して「銀河系軍団」を形成するというチーム作りをするクラブだった。C・ロナウドやベイル、クロースなど、すでに世界のトップレベルにある選手を巨額の移籍金で獲得してくるのだ。「各ポジションで最強レベルの選手を11人そろえたら、そりゃ強いよね」という方針である。

しかし、数年前からレアル・マドリードはその方針を転換したように思う。才能ある若手を安価で獲得し、育てていこうという方針である。ヴィニシウス、ロドリゴ、ウーデゴー、ブラヒム・ディアス…。久保建英もそのひとりで、近年獲得された若手には枚挙にいとまがない。

彼らの中にはトップチームに残る選手もいるが、出場機会を求めて他クラブへレンタルに出され、そこで武者修行を行うケースも多い。

そのひとりがボルハ・マジョラルだ。

マジョラルは外から獲得してきた選手ではなくレアルのユース出身だが、レンタルによって武者修行を行ってきたのは同じ。最初はヴォルフスブルクで、そして昨シーズンまではレバンテで経験を積み、今シーズンはローマに活躍の舞台を移した。

19-20シーズンのレバンテでキャリアハイの8ゴールを挙げてイタリアの強豪ASローマに引き抜かれたマジョラルは、ついに本格開花の兆しを見せている。

セリエAでは第24節終了時点で6ゴール3アシストを記録。132分に1ゴールというチーム最高の得点頻度を記録している。ヨーロッパリーグまで含めれば通算11ゴール4アシストであり、いずれもすでにキャリアハイの数値に達している。この11という数字はライバルのジェコよりも多く、チーム内最多タイだ。

これまでローマの最前線にはエディン・ジェコという絶対軸が存在していたが、マジョラルはジェコが負傷離脱後にその不在を感じさせないパフォーマンスを見せている。

そんなマジョラルのプレースタイルはいったいどのようなものなのだろうか。今回はジェコとの比較も交えながら、ボルハ・マジョラルのプレースタイルについて徹底的に掘り下げていこうと思う。




ボルハ・マジョラルのプレースタイル

 

安定したテクニックと機動力

ボルハ・マジョラルはジェコと同様にポストプレーを得意とする選手だ。182cm74kgのマジョラルはジェコほどではないとはいえフィジカルコンタクトに強く、また足元のテクニックも安定しているためポストプレーの成功率が高い

先発出場した試合での平均ボールロスト数を比較すると、

  • ジェコ  :10.8
  • マジョラル:8.3

となっており、マジョラルのボールロストが少ないことがわかる。

また、敵陣でのパス成功率を見てみても、

  • ジェコ  :62%
  • マジョラル:74%

とまっており、マジョラルの数値が上回っている。

実際にプレーを見ても、多少難しいボールでもしっかり足元に収め、正確に味方にボールをつなぐことができている印象だ。

ただし、1試合平均のキーパスのデータを見てみると、

  • ジェコ  :1.1
  • マジョラル:0.8

となっており、こちらはジェコが上回っている。これらをまとめてみよう。

実際のプレーを見ていると、マジョラルはしっかり相手を背負ってボールを「落とす」プレーが多い印象。自分は無理して前を向かず、前向きの味方を使うのだ。

これに対し、ジェコは自分で前を向いてスルーパスを供給するプレーを狙っている印象がある。

相手に圧力をかけられていても前を向こうとするからこそジェコの方がボールロスト数が多い。自分で難易度が高いパスを出そうとするからこそジェコの方がパスの成功率が低い反面キーパス数が多くなっているということなのだろう。

また、マジョラルがジェコよりも優れている点が機動力だ。ジェコは中央でボールを受けようとする傾向が強いのに対し、マジョラルはより広範囲に動いてボールを受けている印象だ。

サイドに流れて相手SBの裏にできたスペースを使ったり、中盤にできたスペースにタイミングよく入り込んで起点になったりと、ピッチ全体でどこにスペースがあるのかを読み取ってうまく使うことができている。マジョラルはジェコよりもダイナミックに動き回るFWだといえるだろう。




得点力の高さ

そして、ここまで公式戦通算11ゴールを挙げていることからもマジョラルの得点能力の高さは疑う余地がない。

特筆すべきは得点パターンの豊富さだろう。いかにざっとマジョラルの今シーズンの得点パターンを列挙してみたいと思う。

 

単独での仕掛けからシュート…シーズン8点目

まず、単独での仕掛けから対峙するDFをかわしてシュートまで持っていけるのは大きい。足元のテクニックに優れるマジョラルはまたぎフェイントが得意で、相手を揺さぶってシュートコースを作り出し、コースを狙って流し込む。

多くのゴールにはつながっていないが、試合を見ていると積極的に仕掛けていく姿勢は印象的だ。

ミドルシュート…シーズン6点目

さらに、マジョラルは相手をかわさずとも豪快にミドルシュートを突き刺すこともできる。右足のパワーとテクニックがなせる業だ。クロトーネ戦で決めた見事なミドルシュートを検索してみてほしい。

 

裏への抜け出し…シーズン3点目

また、機動力があるマジョラルは相手DFラインの裏に飛び出して味方のスルーパスを引き出すプレーも得意。いわゆるラインブレイクだ。これはジェコにはあまり見られない得点パターンで、マジョラル独自のつよみといっていいだろう。

 

クロスボールに対してファーサイドで合わせる…シーズン2点目、5点目、7点目、10点目、11点目

クロスボールに対してはファーアサイドで待っていることが多い。そうして上がってきたグラウンダーのクロスを流し込むのだ。

マジョラルはこの形から5つのゴールを挙げており、メインの得点パターンといえる。この形が多く表れていることは、ローマの縦に速い攻撃の成功率が非常に高く、DFラインとGKの間のスペースに多くのグラウンダーのクロスボールを供給できていることの裏返しとも言えるだろう。

 

こぼれ球のプッシュ…シーズン1点目、4点目、9点目

さらに、こぼれ球への反応が速いことも注目すべき特徴だ。このかたちから3つのゴールを挙げていることからもわかる通り、味方が打ったシュートのこぼれ球を拾ってプッシュする形はマジョラルの主な得点パターンのひとつになっているのだ。

相手DFが止まっている間に一人セカンドボールに反応する嗅覚は素晴らしい。これはなかなかトレーニングで鍛えられるものではなく、マジョラルは生まれながらにしてストライカーとしての嗅覚を持っているのだろう。

 

このように、マジョラルは非常に多彩な得点パターンを持っており、どのような形からでも得点を奪える。さらに、ピッチの中央だけでなくサイドや中盤にもダイナミックに動いてボールに絡める万能型のフォワードだ。フォンセカ監督の戦術への適正でいえば、ジェコをも上回っているかもしれない。




マジョラルの弱点

万能な能力を持っているマジョラルだが、彼の弱点は何なのだろうか。

ここで空中戦のデータを見てみよう。

  • ジェコの空中戦勝率は60%
  • マジョラルの空中戦勝率は23%

ジェコがヘディングに強いことはよく知られていることだが、それはデータにも表れている。しかし、そのことを差し引いて考えても勝率が23%しかないというの差がありすぎるし、4回に1回も勝てていないのは勝率が低すぎるといっていい。つまり、ボルハ・マジョラルは非常に空中戦に弱いということだ。

事実、ここまでの11ゴールの中にヘディングで奪ったゴールはひとつしかない。これはこぼれ球を押し込んだもので、クロスボールに競り合ってねじ込むようなゴールは決めていないのだ。これはFWとしては珍しいことだ。

マジョラルは身長182cmと決して低身長なわけではないため、体の使い方やジャンプのタイミング、落下地点の予測力などを改善すればもっとヘディングに強くなれるはずだ。すでに多彩なゴールパターンを持っているマジョラルだが、これにヘディングで豪快に叩き込むプレーが加われば鬼に金棒だろう。

ここはジェコから学び、伸ばしていくべき部分なのではないだろうか。




あとがき

マジョラルはレアルのユース時代から将来を嘱望されてきた。しかし、世界最高のクラブの選手層は厚く、出場機会は得られなかった。また、レンタル先でも絶対的な地位を築くには至らず、ゴールも散発的なものにとどまっていた。

だが、U-21欧州選手権で5試合3得点で得点王を獲得、チームを優勝に導いたという経歴からも持っている資質には疑いの余地はなかった。あとはその能力を活かせるチームに巡り合うだけだったのだ。

振り返れば、16-17シーズンのヴォルフスブルクはブンデスリーガで16位。レバンテも18-19シーズンが15位、19-20シーズンが12位。いずれもリーグの中でも下位にあたるチームであったため、マジョラルがいくらボールをキープしても味方からのサポートは少なかった。空中戦に強くないマジョラルはターゲットマンとしては機能できないため、押し込まれることが多いチームで活躍することは難しかっただろう。

そう考えると、攻撃マインドの強いローマで出番をつかんだ途端にゴールを量産し始めたのも納得がいく。ローマはチームとして攻撃のメカニズムが確立されており、ジェコにくさびが入ればすぐさまサポートするという約束事がすでにあった。さらに、縦に素早い攻撃からストライカーにグラウンダーのクロスを供給するというパターンも確立されていた。

だからマジョラルも問題なく適応できたし、彼が持つゴール前でのポジション取りの嗅覚が存分に発揮されるようになったのだ。

久保も同じように攻撃的で戦術が整備されたチームに移籍すれば状況が変わるような気がするが…

話をマジョラルに戻そう。マジョラルは現在2年間のレンタル契約でローマに加入しており、ローマ側には買取オプションが付与されている。今夏に行使すれば1500万€、来夏なら2000万€になるようで、ローマ側は今夏に買い取りオプションを行使する意向のようだ。

すでにマジョラルはチームの戦術の中で適応できており、その中で結果も残している。ちょうど2週間後に35歳になるジェコの後継者として期待してもいいのではないだろうか。

ローマに新たなエースの誕生か。そんな予感を漂わせているボルハ・マジョラルの活躍に注目だ。

 

 

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