【創設115年目のドリーム】スペツィア・カルチョのメンバーを徹底解剖!

【創設115年目のドリーム】スペツィア・カルチョのメンバーを徹底解剖!

2021年3月2日 2 投稿者: マツシタ
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アンダードッグ効果という心理学の用語がある。弱い立場にあるものに寄り添い、応援したくなる人間の心理を表す言葉らしい。思えば、自分も劣勢に立たされているチームをつい応援してしまった経験がある。これのことを言うようだ。

ちなみに、このアンダードッグ効果は日本人に特に強くみられるそうだ。3年前の甲子園で金足農業旋風が吹き荒れたのはそういうことだろう。

実際、ジャイアント・キリング(強者喰い)はスポーツの最大の楽しみであり続けている。そして、サッカーでは特にジャイアントキリングが起こりやすいといわれている。2年前のCLでアヤックスが躍進したように。

当時は無名の若者ばかりだったチームがレアルやユーベといった並み居る強豪を倒していく様は爽快だった。しかも、しっかり引いて守るという「弱者の戦略」ではなく、リスク上等の攻撃サッカーで、だ。多くのサッカーファンの応援を受けたのもうなずける。

そして今シーズン、同じく攻撃的なスタイルで多くのジャイアントキリングを起こしているチームがイタリアにある。クラブ創設115年目にして初のセリエA昇格を成し遂げたスペツィアカルチョである。

昨シーズンのセリエBで3位に入っていたスペツィアは、純粋な順位だけを見れば今季のセリエAの中で最も下になる。移籍市場でセリエA経験者を多く加えられたわけでもなく、各クラブで出番に恵まれない若手を加えるのが精一杯。結果としてセリエAで3番目に平均年齢が低く、A代表戦士がひとりしかいないチームの苦戦は必至かに思われた。

ところが、ふたを開けてみれば現在14位と大健闘。しかも、リーグでナポリを倒し、コッパ・イタリアではローマを倒した。そして昨年から10か月にわたって無敗の記録を打ち立てた首位ミランにも勝ってしまった。

若い弱小クラブが攻撃的なスタイルでビッグクラブを次々と破る。その様は、躍進したアヤックスを思い起こさせる。

指揮官ヴィンチェンツォ・イタリアーノも監督としては若手の部類に入る。しかし、彼が構築する緻密な戦術、そして的確な交代で試合の流れを変える様子は名将の予感を漂わせている。

戦術が機能して若手が躍動し、ポジティブなプレーを見せているスペツィア。今回は、主なメンバーとその特徴、そしてイタリアーノが採用する緻密な戦術について徹底的に掘り下げていこうと思う。




基本フォーメーション

イタリアーノ監督はここ3、4試合はほぼこの11人を固定して採用している。

フォーメーションは4-3-3を採用。両サイドバックは攻撃的で、CBも二人とも配球能力に優れる。

アンカーのリッチはレジスタで、長短のパスで攻撃を組み立てる。その両脇にいるエステベスとマッジョーレはともにハードワーカーだ。

右ウイングのギャシはポジショニングで、左ウイングのサポナーラはテクニックで勝負する。最前線のアグデロは攻守に走って体を張れる好プレイヤーだ。

ここに、本来ならミランからレンタル中のポベガと現在9得点でチーム内得点王のエンゾラがいる。




主力選手の紹介

ここからは、主力選手に絞ってその特徴を紹介しよう。

 

エマニュエル・ギャシはこのチームで最も出番を得ている選手。イタリアーノ監督が絶大な信頼を置くアタッカーである。

彼を見ていると、特別なテクニックを持っているわけでもなければめちゃくちゃなフィジカルがあるわけでもない。何がすごいのかと言えばそのポジショニングのうまさだ。内に絞ったり外に張ったり、裏に飛び出したり引いて受けたりと、とにかく相手に的を絞らせない。クロスが入ってくるタイミングで中央に飛び込む嗅覚も素晴らしいものがある。

守備にも献身的でよくプレスバックするし、左右両サイドをこなせて点も取れ(昨シーズンのチーム内最多得点者)、味方にチャンスを提供することもできる(現在のアシスト数はチーム内トップタイの4)。

直近1か月はエムバラ・エンゾラというチーム内得点王が負傷していたものの、エンゾラ離脱後はギャシが4ゴールを挙げてその不在を感じさせなかった。現在のスペツィアは彼が中心選手と言っていいだろう。

 

前述のエンゾラが離脱してから1トップに収まったケビン・アグデロもいい選手だ。長身ではないが体に厚みがあり、相手を背負っての安定したポストプレーと弾丸のように突き進むドリブルが魅力。リバプールのシャキリや元ユベントスのカルロス・テベスを彷彿とさせる。

守備での貢献度の高さも見逃せない。ミラン戦では彼のプレスバックで何度もテオの突進を止めた。その試合のスペツィアの先制点もアグデロがプレスバックしてテオからボールを奪ったところから始まっている。

なお、直近のパルマ戦でエンゾラが復帰しており、今後アグデロとどう共存させていくのかは注目。パルマ戦では1点ビハインドしていたこともあってエンゾラとアグデロの2トップを採用していたが、今後はどうなるだろうか。

 

アンカーに入るマッテオ・リッチも戦術の中核を担う重要人物。フィールドプレーヤーではギャシの次に出場時間が長い。

プレースタイルをひとことで言ってしまえばレジスタで、ロングボールを左右に散らして攻撃を指揮する様子はピルロを思い起こさせる。

ただ、詳しくは後編で述べるが守備力には不安がある。だからこそ両インサイドハーフにハードワーカーのナウエル・エステベスとジュリオ・マッジョーレを起用して左右を固めているのだろう。

 

左サイドバックのシモーネ・バストーニはアシスト数トップタイのチャンスメーカー。左足のキック精度が高く、クロスボールが正確なだけでなく中に入っていって強烈なミドルシュートも打てる。ミラン戦の2点目がハイライトだ。

一方で守備面はまだまだ未熟。特にアジリティが不足している印象で、相手の切り返しについていけない場面が目立つ。守備者としてはもうひと伸びしてほしいところだ。




イタリアーノ監督の評価

イタリアーノ監督を評価できるポイントは3つある。

 

的確な選手起用

イタリアーノ監督は主力を完全に固定することはなく、対戦相手や戦況に応じて柔軟な選手起用を行っている印象だ。

リーグ戦で計19人が10試合以上に出場しているものの、20試合以上に出場している選手は3人だけ。多くの選手を起用していることがわかる。

必要だと思えば大胆な采配を行えるのもイタリアーノの強み。昨年まではテルツィとシャボーのコンビが鉄板だったが、ここにきてコンビごと替えて現在はエルリッチとイスマイリが主戦。これによって最終ラインの裏を取られる場面が減った(詳しくは後編で触れる)。また、直近のパルマ戦では前半27分でサポナーラを下げてヴェルディを投入、試合を好転させている。

かと思えばうまくいっていたミラン戦は交代枠5つのうち1つしか使わないなど、柔軟な采配が光る。

これは各選手の特徴をしっかり把握し、何ができるかを理解しているからこそできることだろう。采配の巧みさという面では、すでに高く評価していいはずだ。

2021に入ってからある程度チームの型が固まってきた印象があるが、負傷から戻ってきた得点王エンゾラ、ミラン復帰が噂される逸材ポベガをここにどう組み込むのかも注目だ。

 

若手の成長を促す

このような柔軟かつ的確な選手起用は若手選手の成長ももたらしている。

チームにはポベガ、マッジョーレ、エルリッチ、シャボー、アグメなど各国でアンダーカテゴリーの代表に名を連ねる選手が多く所属しており、彼らが主力として起用されることで急速に成長している。

10試合以上に出場した19人のうち30代の選手はふたりだけ。若手を中心に起用しながら、調子がいい選手を優先で起用することでチーム内に競争を生んでいることが若手の成長につながっていると考えられる。戦術家としてだけでなく若手育成の能力も見せているのだ。

今後、スペツィアはイタリアーノ監督のもとで、成績を上げながらも若手選手が成長し次のステップを踏むための育成クラブ、たとえばサッスオーロやアタランタのような立ち位置を築いていけるかもしれない。

 

緻密な戦術でスカッドの質以上の順位を演出

前述のように、スペツィアは純粋な戦力面で見れば今季のセリエAでも最下位レベルだ。選手の質が劣るチームが勝つためには、戦術の助けを借り、チームとして、組織として戦うしかない。それを地で行ったのが今季のスペツィアだ。

ここまで14位と大健闘を見せているスペツィア。それをもたらしたイタリアーノ監督の戦術については、高く評価されてしかるべきだろう。

その詳しい戦術については、後編で詳しく紹介しようとおもう。

【イタリアーノの緻密な攻撃サッカー】スペツィア・カルチョの戦術を徹底解剖!