【日本の未来】冨安健洋のプレースタイルを徹底解剖!

【日本の未来】冨安健洋のプレースタイルを徹底解剖!

2021年2月27日 2 投稿者: マツシタ
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長いこと日本代表は最終ラインが弱点だといわれてきた。優秀なアタッカーは輩出するものの、民族的に身長に恵まれないこともあって世界的なセンターバックがなかなか現れないといわれてきたのだ。

しかし、今は違う。

コロナウイルスの世界的パンデミックもあって2020年は代表の試合が4試合しか開催されなかったが、そのうち3試合で無失点を達成。一方で得点はわずかに2つしか挙げられていない。

いまや日本は攻撃が課題で、それを補う堅い守備がストロングポイントになった印象だ。

それもそのはず、日本代表でレギュラーを組むセンターバックはふたりとも守備の国イタリアで活躍しているのだ。こんな時代が来るなんてかつての日本人は想像だにしなかっただろう。

その中でもとりわけ高い評価を得ているのが冨安健洋だ。

アビスパ福岡の下部組織出身の冨安は中学3年でトップチームの練習に参加し、高校2年でトップデビューした早熟。高校3年時に正式にプロ契約を結ぶと、J1の舞台で10試合に出場している。

翌年、冨安はさらなる輝きを放つ。最終ラインのレギュラーに君臨し、その活躍が評価されて若干18歳にしてベルギーのシント=トロイデンに渡るのだ。

その後の飛躍ぶりは今更語るまでもないだろう。ベルギーでも不動の主力として活躍し、わずか1年で守備の国イタリアの古豪ボローニャに引き抜かれる。

それだけでなく、この名門でも不動のレギュラーの地位を築き上げ、今シーズンはここまで全試合先発フル出場。セリエAにおいてこの過密日程の中でフル出場を続けるフィールドプレーヤーは冨安ただひとり。リーグの中でただひとりだ。いかに冨安がボローニャにとって絶対的な存在かがわかる。(※2月27日昼頃、左ふくらはぎの負傷で離脱することが発表された。よってフル出場記録は途絶えることとなった。)

その活躍はイタリア国内でも非常に高く評価されており、いまやセリエA屈指の若手DFの地位を確立した。イタリア国内でその名前を知らないサッカーファンなどいないだろう。

日本のメディアは過剰に久保建英の一挙手一投足を報じているが、ここではっきり申し上げよう。いま最もワールドクラスに近い日本人選手は久保ではなく冨安だ

今回はそのことに納得してもらうために、冨安のプレースタイルを徹底的に掘り下げていこうと思う。




冨安のプレースタイル

冨安は現代サッカーでCBに求められる能力をすべて備えているモダンなプレーヤーだ。

ビルドアップに必要な安定した足元のテクニック、正確なロングフィード、それらを両足で問題なくこなせる両利きとしての特性、恵まれたフィジカルを利したデュエル・空中戦の強さ、最終ライン裏をカバーするスピード。さらに本職のCBだけでなく左右のSBに守備的MFまでこなすポリバレント性も兼ね備える。

冨安は守備的なポジション・タスクなら何でもこなせる超万能戦士なのだ。これだけ何でもできる若手DFは世界中探してもなかなかいるものではない。

それでは、以下詳しくみてみよう。

 

イタリアにきて守備者としてさらに成長

冨安がセリエAでプレーすることを選んだのは正しい判断だっただろう。守備の国イタリアで守備者として着実に成長しているからだ。

セリエA公式サイトでみられるデータだが、ここまで冨安はリーグ全体で最多のボール奪取数(235)を記録している。しかも、2位のグリク(198)に大差をつけている。守備者として冨安が優れていることはこれを見るだけで十分…というわけにもいかないので詳しくみていこう。

188cm78kgの恵まれた体格を持っている冨安はコンタクトプレーに強い選手だ。

ルカクに競り負けたシーンが話題になったこともあったが、ルカクにフィジカルコンタクトで勝てる選手など世界中を見てもほぼいない。あのフィジカルモンスターとまともに競り合ってバランスを崩させたのは私が知る限りフランク・ケシエただひとりだ。

今の冨安はほとんどの相手に負けない力強さを備えている。冨安のデュエル勝率は58%。チームメイトでDFリーダーのCBダニーロが50%を下回っていることを見れば、冨安がどれだけデュエルに勝利しているかがわかるはずだ。

身長のわりに苦手だといわれていたヘディングも今は問題ないレベルにまで改善されている

ボローニャの試合を見てもらえればわかると思うが、セットプレーでは明らかに冨安の頭がターゲットにされている。逆に守備のセットプレーで相手の最も強いと思われる選手のマークを担当するのは冨安だ。

冨安がボローニャで最も空中戦に強いと評価されていることの何よりの証拠だろう。

そのセットプレーとも関連するが、マーキング技術が大きく向上したことも見逃せない。ボローニャはセットプレーだけでなく、オープンプレーでクロスが上がってくる場面でもマンツーマンディフェンスを採用している。目の前の相手に負けないことが要求されているのだ。

そのうえで、大柄な体格からは想像できないほどのアジリティの高さが重要な役割を果たしている。相手の揺さぶりにもしっかりついていき、簡単にはマークを外されないのだ。

冨安は相手との距離を詰めて自由を奪うことができており、ボールの落下地点をめぐる争いを制してクリアする。1試合当たりクリア数がチーム最多の3.4回であることを見れば、冨安が担当する相手に自由を与えていないことがよくわかるだろう。

また、常に相手との距離を詰めていることはインターセプトを決めやすいというメリットももたらしている。もちろん、パスが来るタイミングで前に出る読みの鋭さも見事だ。結果として冨安が記録する一試合平均2.1回というインターセプト数はチーム内2位の数字になっている。

距離を詰めてタイトに寄せる割にはファウルが少ないことも評価すべきポイント。冬に新加入のスマオロが一試合平均2.5回のファウルを犯しているのに対して、冨安のそれは1.0と半分以下だ。

また、現代のCBにとって重要な能力であるスピードも高水準だ。

先日のべネベント戦でも、自分たちのコーナーキックをクリアされてカプラーリに拾われ、カウンターを受けそうになった場面があった。そこへ冨安が快足を飛ばしてカプラーリに追いつきピンチの芽を摘んだのだ。

相手を押し込むことが多いためにカウンターも受けやすい強豪クラブのCBにとって相手FWとの走り合いにも負けないスプリント力は必要不可欠。これを満たしている冨安はビッグクラブでも求められるCBだといえる。




攻撃でも貢献できる

守備面で冨安がいかに優れたパフォーマンスを見せているかは理解してもらえたと思う。それだけでなく、攻撃面での貢献度も高いのが冨安の素晴らしい点だ。

今シーズンの冨安はシーズン途中まで左CB、途中から右SBでプレーしている。

下は冨安のヒートマップだ。中央ではなくサイドでボールを触っていることがわかるだろう。

ボローニャはビルドアップ時に片方のサイドバックを高い位置へ上げて3バックを形成することが多い。冨安は左CBで起用された場合は左サイドCB、右SBで起用されたときは後方に残って右サイドCBの位置に入り、ビルドアップの出口として機能している。冨安のところからMFラインへボールを前進させている場面が多いのだ。

再びデータを見てみると、冨安の一試合平均パス数は41.6でチーム最多だ。冨安はボローニャのビルドアップの中心でもあるのであるのだ。

冨安のビルドアップ能力が高いのは、ショートパスだけでなくロングフィードも高精度なこと(ロングパス成功率チーム2位)、利き足ではない左足でも右足と変わらないキックができることに起因する。

現代サッカーにおいてビルドアップ能力はCBに欠かせない能力のひとつ。冨安はそれを問題なくクリアしているばかりか、セリエA全体で見ても上位に来るといっていいほど能力値が高い。ここまで両足をスムーズに使いこなし、左右両サイドで機能できるDFはなかなかいない。

 

さらに、サイドバックとして起用された試合では駆け上がってのクロスボール供給(昨シーズン3アシストを記録)、さらにオフ・ザ・ボールの動きでフリーとなって味方からパスを引き出し、自らゴールまでも決めてしまう(シーズン前半戦終えた段階ですでに2ゴール)のだから恐ろしい。

昨シーズンにミラン相手に決めたセリエA初ゴールに代表されるように強烈なミドルシュートは冨安の持ち味のひとつだ。

今シーズン初ゴールとなったアタランタ戦での一発のように相手DFライン裏へのダイナミックな飛び出しも見られるようになってきた。その後のループシュートはDFとは思えない冷静さだった。

このように、守備だけでなく攻撃面でも貢献度が高いのが冨安の素晴らしい点だ。




世界屈指のポリバレント性と、それを活かしたボローニャでの戦術的役割「冨安ロール」

ほぼすべての能力を高水準で備えているために守備的なポジションならどこでもこなせるのも冨安の強みだ。

本職のCBに加えて、ボローニャに移籍してからは主に右のサイドバックとして起用されている。左SBで起用された試合もあった。また、アビスパでプロデビューしたときはセントラルMFだった通り中盤でも機能する。

ボローニャでの冨安は前述のようにビルドアップでは3バックの一角を担ってCBを助けた後、ボールが前進したり逆サイドにある時は中に絞って偽サイドバック的にふるまう。

こうすることで中盤の(図の赤い)スペースをカバー。セカンドボールを回収して相手のカウンターを防ぐのが冨安に任された役割だ。

もしボールが後方に戻ってきたら、またサイドCBの位置に下がってビルドアップを助ける。冨安の位置移動でチームのバランスを保っているのである。

さらに、崩しの局面では中盤の位置から縦に走り抜け(チャンネルラン)てダイナミックにゴール方向をアタックする、もしくはウインガーをオーバーラップで追い越してボールを受け、クロスを供給する。

これがボローニャにおける冨安の一連のプレーの流れだ。ビルドアップから崩しまで、すべての局面に関与していることがわかる。

しかも、その過程で

  • ビルドアップ時はCB
  • ボールが前進した後はセントラルMF
  • 崩しの局面ではサイドバック

としてふるまっていることがわかるだろう。攻撃の流れの中で一人三役を演じているのだ。冨安の世界屈指のポリバレント性をフルに活用してこそ実現する唯一無二の「冨安ロール」である。

だからこそ今のボローニャに冨安の代役は不在だし、ミハイロビッチ監督は冨安を外せない。これまで冨安がすべての試合にフル出場している理由が理解してもらえたのではないだろうか。




冨安の弱点

ここまで褒めちぎってきたので冨安の弱点、改善点も挙げておこう。

ひとつ挙げるとすれば統率力の不足ではないだろうか。これは選手の性格にも左右されるので一概には言い切れない部分があるが、それでもDFとして重要な資質であることは間違いない。

冨安は自ら最終ラインを仕切って統率し、周囲に指示を与えたりチームを鼓舞したりするような場面が今のところ見られない。

ボローニャではサイドバックで起用されることが多いためそうした能力が育っていない側面はあるかもしれない。

しかし、日本代表の将来を考えてみても、吉田なき後の日本の最終ラインを統率すべき選手が冨安なのは誰の目にも明らかだ。そうなった時、冨安がリーダーシップを発揮しなければ吉田の不在を感じざるを得ないかもしれない。

冨安に欠けているとしたらリーダーシップの一点のみではないだろうか。ここが伸びれば、本気で世界のトップクラスを狙えるだけのタレントだと、私は信じている。




あとがき 冨安の理想的な移籍先は?

前述のように、冨安はすでにセリエA屈指の若手CBとの評価を確立している。イタリアの強豪で冨安を狙っていないクラブはない

昨年夏にもラツィオやローマなど複数のクラブが獲得の可能性を探ったが、特に熱心だったのがミランだ。

クラブとイタリア代表で活躍したレジェンドDF、パオロ・マルディーニが気に入って獲得を熱望していたようだ。なんとも光栄な話だ。しかし、冨安はボローニャに絶対不可欠な最重要戦力。当然放出を拒否した。

今のミランの躍進を見ていると、ここに冨安がいたらどうなったのだろうか…と考えずにはいられない。だが、ロマニョーリ&ケアが盤石のコンビを形成し、冬から加入したトモリも好パフォーマンスを見せていることから次の移籍市場では冨安から手を引くようだ。

かわってインテルとユベントスが夏に冨安を狙うという情報も出ている。ここにきてイングランドのチェルシーという声も上がっている。

このように、イタリア国内であれば冨安の意思次第でどこへでも行ける状態だ。これだけ何でもできる冨安のことだから、どのクラブに行っても活躍できるだろう。それを前提としたうえで、クラブ側から見て冨安を必要とする「緊急度が高い」クラブがどこかを考えてみたいと思う。

結論から言ってしまうと、最も冨安を必要としているクラブはユベントスだと思う。

多くの選手を複数のポジションで起用し、また試合中にも流動的にポジションを入れ替えるユベントスの戦術にポリバレントな冨安はぴったりはまるだろう。

冨安側から見てもメリットはある。ピルロはスタメンをあまり固定せず、22人でひとつのチームにまとめ上げようとするため新加入選手でも一定の出場機会が望めるのだ。

その中でも唯一代役がいないのがダニーロだ。そして、このポジションに冨安がぴったりハマると思うのだ。

ダニーロはビルドアップ時3バックのサイド、守備時4バックのSBという役割を担っており、チームのバランスを担保するうえで欠かせない選手となっている。

 

ここまで読んでくださったあなたなら、ダニーロの役割と冨安がボローニャで担っている役割が似ていることに気づくだろう。

世界広しといえど、この役割をハイレベルにこなせるプレーヤーなそそういるものではない。しかも、左右両サイドでとなればなおさらだ。マンCのカンセロやシティのメンディなどは高すぎてユーベには手が出ないだろう。金銭的にも獲得の可能性があってかつこのポジションをこなせるのは冨安しかいないのではないだろうか。

ビルドアップ能力の高さ・高い攻撃性能・裏のスペースをカバーするスピードなどの冨安の能力はむしろビッグクラブ向きで、イタリア王者に加入すれば更なる活躍が見込めるはずだ。

そうなれば、いよいよ冨安が世界的な名声を手に入れることも現実味を帯びてくるだろう。

「日本の未来」から目が離せない。