【アルゼンチン次世代のエース】ラウタロ・マルティネスのプレースタイルを徹底解剖!

【アルゼンチン次世代のエース】ラウタロ・マルティネスのプレースタイルを徹底解剖!

2021年2月25日 10 投稿者: マツシタ
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アルゼンチンはストライカー大国として知られている。ディエゴ・マラドーナやリオネル・メッシ、カルロス・テベスといったセカンドトップ型の選手はもちろん、セルヒオ・アグエロやゴンサロ・イグアイン、ディエゴ・ミリート、エルナン・クレスポ、ガブリエル・バティストゥータなどセンターフォワードタイプでもワールドクラスの選手を絶えず輩出してきた。

そして、その系譜に連なる次世代のアルゼンチン代表のエースがラウタロ・マルティネスである。

母国のラシン・クラブで頭角を現したラウタロはイタリアの名門インテルに引き抜かれる。移籍初年度となった18-19シーズンこそ同郷の先輩マウロ・イカルディに阻まれて出場機会は伸びなかったものの、そのイカルディが移籍した昨シーズンから一気に才能が開花。今シーズンはさらに成績を伸ばしており、いまやアルゼンチン代表でもスタメンを張り、昨年夏にはバルセロナへの移籍がさかんに報じらるまでになった。

いまや世界屈指の若手FWとしての立場を確立したラウタロは、今後10年近くアルゼンチン代表のエースとして活躍していくことになるだろう。

そのラウタロはセカンドトップタイプでもなければ純粋なセンターフォワードタイプでもなく、そのどちらも合わせたようなプレースタイルを持つ。

同じラシン・クラブ出身でインテルでも活躍したディエゴ・ミリートと比較する声もあるが、プレースタイルはそこまで近くはない。近年活躍した選手で例えるならカルロス・テベスとセルヒオ・アグエロを足して2で割った感じだろうか。

今回は、そんなラウタロ・マルティネスのプレースタイルについて徹底的に掘り下げていこうと思う。




ラウタロ・マルティネスのプレースタイル

 

プレーエリアが広いダイナミックなFW

ラウタロのプレースタイルをひとことで言い表してしまえば「ダイナミックなFW」だ。

ゴール前にとどまってボールを待っているような場面は少なく、相手DFにつかまらないように広範囲に動き回りながら味方からのパスを引き出す。

特に多いのがタイミングよく中盤にひいてきて起点になる形だ。174cmと大柄ではないラウタロだが、72kgの体重を見ればわかる通り体格はがっしりとしている。そのため、うしろから相手DFに押されてもバランスを崩すことなくボールをキープすることができる

それだけでなく、そこから前を向いてボールを持ち運ぶことができるのもラウタロの持ち味のひとつ。相手が過剰に食いついてくれば、その重心の逆をとって置き去りにし、独力で局面を前に進めることもできるのだ。

よりゴールに近い位置でボールを受ければ自ら仕掛けることもできる。特にボールに触らずにステップワークだけで相手を揺さぶるのが得意で、複数のDFに囲まれればその間を割って突破する。

さらに、突破した後は自分でシュートを打つだけでなく、より可能性が高いと判断すれば味方を冷静に使うこともできる。

こうした特徴は純粋なセンターフォワードというよりもセカンドトップのそれだ。

だが、ラウタロは純粋なセンターフォワードとしての一面も併せ持っている。得点能力の高さとストライカーらしい駆け引きの巧みさ、狡猾さだ。




得点能力の高さの秘訣は?

ラウタロ・マルティネスは今シーズンここまで13ゴールを記録しており、早くも昨シーズンの14ゴールという数字に迫っている。得点能力は着実に成長しているといっていいだろう。

それでは、ラウタロがゴールを量産できる秘訣は何なのだろうか。

ひとつはシュート技術の高さだ。

あまりスピードがないラウタロは裏に飛び出して独走して決めるようなシーンは少ない。インテルでの3シーズンを通してシュートを打った場所の平均的な距離は14.4m。ペナルティエリアの16.5mに近い数値になっている。

ちなみに、センターフォワードタイプの代表格といえるローマのエディン・ジェコは平均して11.2mの距離からシュートを放っている(今シーズンの平均値)。ラウタロが比較的遠めの位置からシュートを打っていることがわかるだろう。

裏に抜け出すよりも相手を前に置いた状態から、ミドルシュートに近い形で得点することが多いのだ。最も得意とするのは左斜めから右足でファーサイドに巻くシュートだが、左足も遜色なく使いこなす。さらに反転しながらのシュートやボレーシュートも得意とするなどバリエーションの豊富さも魅力。移籍初年度にはPKキッカーも任されていた。

得点力の秘訣としてもうひとつ挙げられるのが駆け引きの巧みさだ。ラウタロはとにかくスペースを見つけるのがうまいし、そこに入ってくるタイミングも完璧だ。

第23節のミラノダービーでの2点目がまさに象徴的だった。エリクセンがひとつタメをつくった瞬間にペリシッチへパスが出ることを予測したラウタロはパスが出る方向とは反対へ向けて走り出した。そうしてボールに目を奪われたミランDFの視界から消え、ゴール前の小さなスペースにポジションをとり、折り返しのボールにまんまとフリーで合わせたのだ。

こうしたスペースとタイミングの感覚が存分に発揮されるのはクロスが上がってくる時だ。先程のミラノダービーでの先制点に代表されるように、ラウタロは相手のDFとDFの隙間に入り込むのが非常にうまい。ゴール前の人が密集している中でも極小スペースを見つけ出してそこに潜り込むのが非常にうまいのだ。

そのラウタロを警戒して相手がついてくれば、クロスが入ってくる瞬間に急加速して相手の前に入り、コースを変えるようなシュートを見せる。第14節ヴェローナ戦でのゴールが象徴的だ。

このように、ラウタロは競り合わずしてクロスに合わせるテクニックが非常に高いのである。

174cmとFWとしては小柄なラウタロはまともに競り合ったら負けてしまうだろう。それでもヘディングでのゴールが多いのはこうした駆け引きの巧みさがあるからなのだ。

  • ヘディングでのゴール数 4(セリエ2位タイ)

となっているのは驚くべきことだ。

 

ここまで見てきたように、ラウタロは本来持っているストライカーとしての能力が非常に高い。

だが、それ以上に大きいのが周囲のサポートであるように感じる。

まず大きかったのがイカルディと入れ替わりでやってきたロメル・ルカクだ。圧倒的なフィジカルと得点能力だけでなく周囲を活かす能力にも長けたルカクと2トップを形成したことがラウタロの覚醒を導いたことは間違いない。

結成2年目を迎えた今季はさらに連携が熟成されている。ラウタロはすでに昨シーズンの3を上回る4つのアシストを記録しており、その半分がルカクへのアシストだ。逆にラウタロはルカクから4つのアシストを受けている。ともに万能なふたりは互いを活かしあっているのだ。

インテルの「ラウカク」がイタリア最高の2トップであることに異論はないだろう。

そして、もうひとつ大きいのがニコロ・バレッラの覚醒だろう。

昨シーズンまでのインテルは攻撃時にラウカクと両ウイングバックで4トップを形成する戦術を採用していた。また、ブロゾビッチがCBの位置に下がって4バック気味になるため、中盤には2人しかおらず比較的広めのスペースができていた。ラウタロがこの中盤にのスペースに降りてきて攻撃の起点となる場面が多かったのだ。

しかし、コンテ監督は今シーズン途中からここにバレッラを組み込んだ5トップ型の陣形に変更。最終ラインと中盤をつなぐ役割をバレッラと分担するよう変更したのだ。

いや、新加入のハキミとCBのシュクルニアルを中心に右サイドからボールを前に運ぶ場面が多くなったため、実質的にこの役割はバレッラにスイッチされたといっていい。

これによってラウタロはよりゴール前での仕事に集中できるようになった

さきほどのシュートを打った場所のデータをみてみよう。昨シーズンには平均してゴールから15.2m離れた位置からだったのに対し、今シーズンは13.6mとおよそ1.5mも短縮している。ラウタロがよりゴール前でシュートを打っていることがわかるのだ。

万能ゆえにゴール以外の仕事も引き受けていたラウタロだが、バレッラと役割を分担したことでよりその得点能力を発揮できるようになったのである。

ラウタロの得点能力がさらに伸びている要因は戦術がより洗練されたこと、つまりチーム全体の助けを受けたことだといっていいいだろう。




極めて高い守備力

ここまで見てきたように、ラウタロは攻撃全般の能力が高い。しかし、彼はそれだけの選手ではない。実は守備がめちゃくちゃうまいのだ。

球際の強さやセカンドボールへの反応、攻守の切り替えの早さといった基本的な部分はもちろんなのだが、より目を引くのは戦術的な守備技術を体得していることだ。

ラウタロのプレッシングはコース取りが非常に的確で、うまくパスコースを消しながら相手にプレッシャーをかける(これをカバーシャドウという)。こうすることで、実質ひとりでふたりを見ている状態を作り出せる。ラウタロはこれを常に的確に行えるのだ。

言葉でいうのは簡単だが、これを常に的確に行えるFWはなかなかいない。

8番のパスコースをさえぎるようにプレスすることでひとりでふたり見ることができる。

逆にあえてパスコースを空けておいて相手のパスを誘っておいて、キックモーションに入った瞬間にパスコースに入ってカットしてしまう狡猾な守備もお手の物。ラウタロの一試合平均のインターセプト数は0.8で、ルカクの0.09と比較するとその数の多さがわかる。

ここまで守備がうまいFWはイタリアの中でもいないんじゃないだろうか。

FWの守備は数字にこそ残らないものの、後方からのビルドアップが浸透した現代サッカーにおいては非常に重要なスキルだ。これを体得しているという点非常に現代的なストライカーだといえる。

インテルが公式戦ここ9試合でわずか4失点しかしていないのも、ラウタロのプレッシングがにらみを利かせていることが大きいのではないだろうか。

このように、攻撃だけでなく守備での貢献度も高いラウタロはすでに世界屈指の万能FWだといっていいだろう。




ラウタロ・マルティネスの弱点

それでは、ラウタロの弱点は何だろうか。

ここまでに書いたように、スピードがあまりないことがひとつとして挙げられるだろう。裏へ抜け出し、独走してフィニッシュという形はラウタロの得意とするところではない。

また、174cmの低身長ゆえ、最終ラインからフォワードめがけてロングボールを蹴るようなチームでは機能しないだろう。

ゴール前での競り合いは得意なラウタロだが、攻撃の起点となるための空中戦での競り合いは得意ではない。ラウタロには足元にボールを届けてやる必要があるだろう。

このように、フィジカルに起因する細かい弱点こそあるものの、ラウタロが本当に何でもできる万能FWであることは見てきた通り。目立った弱点はないと評価してよいのではないだろうか。




あとがき

攻撃の起点になれ、自ら仕掛けることもでき、点をとれるばかりか守備もうまい。ここまで何でもできるフォワードはそうそういない。これでまだ23歳。伸びしろもたっぷりと残されている。

本文中で見てきたように、今シーズンも着実に成長しているラウタロは世界屈指の若手FWと言ってよく、今後のサッカー界を担う選手の一人であることは間違いないだろう。アルゼンチン代表のエースストライカーの系譜に名を連ねることもしかりだ。

ラウタロはキャリアを通じていくつのゴールを積み上げるのだろうか。今後の活躍にも期待したい。

 

 

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