【攻撃サッカーで若手が躍動】レアル・ソシエダの戦術を徹底解剖!

【攻撃サッカーで若手が躍動】レアル・ソシエダの戦術を徹底解剖!

2021年2月6日 3 投稿者: マツシタ
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日本では「レアル」といえばレアル・マドリードだが、スペインではレアル・マドリードのことを「マドリー」という。スペインで「ラ・レアル」というと、レアル・ソシエダのことを指す。

数年前までは同じバスク地方のアスレティック・ビルバオに押されていた印象だったラ・レアルだが、現在はリーグで上位につけるのはラ・レアルだ。

レアル・ソシエダの躍進は現監督のイマノル・アルグアシルが就任した19-20シーズンから始まる。

19-20シーズンはコロナウイルスによるリーグ戦中断までは優勝を争った。結果として6位まで後退してしまったが、今シーズンは開幕から勝利を重ねて11月、12月には再び首位を走った。

さらに、有能な下部組織の存在も忘れてはならない。現在のトップチームの半数以上が下部組織出身の選手だ。

アルグアシルが植え付けた攻撃サッカーと有能な育成機関から輩出される才能ある若手プレーヤーが噛み合って躍進が実現したのである。

それでは、アルグアシルが植え付けた戦術はいったいどんなものなのだろうか。今回はレアル・ソシエダの戦術について、徹底的に掘り下げていこうと思う。




フォーメーションと戦術の概観

 

基本フォーメーション

今シーズンの基本フォーメーションはこんな感じ。おそらく負傷から帰ってくればホセバ・サルドゥアが右サイドバックのファーストチョイスだろう。

過密日程が続く今シーズン、アルグアシル監督は積極的にターンオーバーを敷いている。

全試合に出場しているのはGKのレミーロと右サイドのポルトゥのみで、CBではフィジカルに優れるモディボ・サニャンや右サイドバックと兼用のアリツ・エルストンド、右サイドバックではアイヘン・ムニョスが出番を得る。

ユース登録のマルティン・スビメンディはゲバラとほぼ兼用で、長期離脱から帰ってきたアシエル・イジャラメンディも出番を得つつある。

攻撃的MFではシルバの負傷を機にハードワーカーのホン・グリディが台頭。ほぼ無名の存在だったがここにきて急速に声価を高めている。下部組織期待のロベルト・ロペスにも期待だ。

ウインガーでは超絶技巧が光るアドナン・ヤヌザイとスピード自慢の若手アンデル・バレネチェアも一定の出場機会を得ている。

ターンオーバーによって生え抜きの若手たちが出場機会を得ており、実戦経験を積むことで成長につながっている。若手がどんどん伸びることで選手層が厚くなっていることもソシエダの躍進の要因だろう。

 

戦術の概観

レアル・ソシエダは明確な戦術的アイデンティティーを持っている。攻撃はポジショナルプレーに基づくボール支配守備は即時奪回を目指したハイプレス。現代サッカーの教科書とでもいうべきチームだ。

どんな相手に対してもこのスタイルを変えず、一貫して戦うところもレアル・ソシエダの特徴。明確なプレーモデルのもとでプレーすることで若手選手も迷うことなくプレーできている印象だ。このスタイルをチームに持ち込んだアルグアシルの功績は大きいといえるだろう。




攻撃

 

キーワードはトライアングル

先述のように、レアル・ソシエダはボール支配によるポゼッションを軸に据えた攻撃的なサッカーを展開するチームだ。後方からの雑なロングボールはめったに見られず、丁寧につないでビルドアップしていく。

ビルドアップ時の陣形は低い位置と高い位置で異なってくるが、どちらにも共通するキーワードが「トライアングル」だ。

パスを回すためにはトライアングルが重要とはよく言われることだが、この基本に忠実にポジショニングを整えていくのがレアル・ソシエダのビルドアップの特徴。

ピッチ内にバランスよく布陣することでいくつもの三角形を作り、ボール保持者に常に複数の選択肢を与えることでスムーズなビルドアップを実現している

ゴールキックなど低い位置からのビルドアップにはGKのアレックス・レミーロを積極的に組み込んでビルドアップする。両CBが開いてレミーロと横並びになり、その前にボランチ二人が並ぶことで3-2のユニットを組む。

このユニットの中に3つのトライアングルができていることがわかるだろう。こうなると相手がすべてのパスコースをふさぐことは困難だ。

さらに、近くのパスコースを消されたときに保険として機能するのが両サイドバックだ。ここへ正確なロブパスを通せるGKアレックス・レミーロの存在もあり、ソシエダがビルドアップで困難に陥る試合はほとんど見られない。

もう少し高い位置でビルドアップする場合でも3バックを作ることは同じ。アンカー役のゲバラが両CBの間に降りるか斜めに下りてサイドCB化するのかは試合によって異なるが、いずれにせよ後方を3枚にすることに変わりはない。

そして3バックの前に降りてきたもう1枚の中盤(シルバがこの位置まで下りてくることも多い)と協力しながら相手FWのプレッシャーを回避し、前線で待つ選手へパスを送り届けるのが狙いだ。

いずれにせよ、3バックを作ること両サイドバックに高い位置をとらせてウイングをハーフスペースへ絞らせて5レーンを埋めるという原則は変わらない。

チームとして変わらない原則があることでだれが出ても質が落ちないサッカーができる。だからこそターンオーバーを積極的に活用できているのだ。




崩しのカギはダビド・シルバ

ビルドアップによってボールを敵陣まで運んだら、相手最終ラインを攻略するフェーズに入る。

ここで絶対的な存在になっているのがダビド・シルバだ。

マンチェスター・シティから加わったボールマジシャンは瞬く間にチームの攻撃の核として定着した。テクニックに優れた選手が多いレアル・ソシエダの中でも彼は別格の存在で、狭いスペースを苦にせず決定的なパスを供給できるのは彼だけだ。

特に絶品なのが相手DFの頭の上を通すふわっとしたロブスルーパス。相手守備網を無効化する強力なウェポンとなっている。

シルバがいる試合ではほとんどのチャンスがシルバから生まれている。その存在感の大きさは格別だ。

その証拠に、シルバが11月22日のカディス戦で負傷するまでチームはリーガ首位だった。それが、シルバ離脱後にあれよあれよと順位を落として現在6位にまで後退している。

シルバ離脱までの公式戦13試合は9勝2分2敗(勝ち点29)、離脱後は公式戦17試合2勝9分6敗(勝ち点15)。彼がいるいないでその差はあまりにも明白なのだ。




シルバ離脱後はサイド攻撃が軸に

シルバの離脱で勝てなくなった理由は単純明快。点が取れなくなったからだ。シルバ離脱前までの1試合当たり平均得点は1.77だったのに対し、離脱後のそれは1.06まで低下している。

事実、攻撃の起点もシルバ離脱後に中央からサイドに移っている。現状シルバのように中央の狭いスペースでもボールを失わずに循環させ、なおかつ前を向いて決定的なパスを通せるプレイヤーはいない。サイド攻撃が多くなったのは自然な流れといえる。

特に多くなったのがサイドバックからのクロスボールという形。しかし、これでは限界があることは結果が証明している。

ソシエダには足元のテクニックに優れた選手は多い反面、空中戦に強い選手は多くない。強いて挙げるならミケル・メリーノくらいか。

1トップで起用されているアレクサンダー・イサクは192cmの長身ながら、地上戦を好むタイプでヘディングが得意ではないのだ。

空中戦が得意ではないことが分かっているにもかかわらず、中央で違いを作れるタレントがいないからクロスを放り込むしかなくなっているのが今のソシエダだ。だからこそ冬の移籍市場で最前線にカルロス・フェルナンデスを加えたのだろう。

ビルドアップはしっかりしていて前線まではボールを運べるレアル・ソシエダだが、最後の崩しはタレントに頼らざるを得ない部分があり、特別な選手が必要なのだ。それが昨シーズンのウーデゴーであり、今のシルバなのである。




守備

 

前線からのプレッシング

レアル・ソシエダの守備の基本姿勢は高い位置からのプレッシングだ。たとえ相手がレアルやバルサでも低い位置で構えるような守り方はしない。あくまで1秒でも早く相手からボールを奪い返そうと相手に襲い掛かる

相手のビルドアップの形に合わせて陣形こそ変わるものの、その姿勢は不変だ。

ソシエダのプレッシングの強度を高めている要因が最終ラインの押し上げだ。

前からボールを奪いに行けば、当然最終ラインとの距離が延びるため陣形がコンパクトさを欠いてしまう。できるだけ相手からスペースを奪うためには、勇気をもって最終ラインも前へ出ていく必要がある。

ソシエダのセンターバックは特別スピードに優れた選手がいるわけではないので、背後に広大なスペースが生じるリスクを承知で最終ラインを押し上げるのには勇気がいるはずだ。

それを実践できているのはアルグアシル監督がアグレッシブな姿勢をチームに落とし込めている証拠だろう。

ラ・レアルの最終ラインの設定は極めて高く、ハーフウェイラインにまで上がっていることも多い。それだけ高い位置から積極的にボールを奪いに行っているということだ。

レアル・ソシエダはリーガの中でも最もアグレッシブな守備を見せるチームだといっていいだろう。




アンカーの特殊な役割

自分たちのプレッシングを外され、押し込まれてしまったら守備ブロックを整える。

陣形は試合によってさまざまなのだが、中でも多く見られるのがアンカーの選手が最終ラインの中央に吸収されて5バック化する形だ。

これはほかのチームにはなかなか見られない形で、ソシエダ特有のメカニズムだといえる。

おそらくだが、中盤から前線へ飛び出す選手をアンカーに監視させているのだと思う。普通のチームならセンターバックに任せるのだが、レアル・ソシエダはそうではなくアンカーがそのままついていくようにしているのだ。

アンカーの立ち位置によって4-1-4-1と5-4-1の陣形を可変させるという守備も現代的で興味深い試みだ。




トランジション

 

ポジティブトランジションではカウンターを狙う

レアル・ソシエダはボール保持を志向するチームだが、ボールを奪えばできる限り早くフィニッシュまでもっていこうとするのも特徴だ。

高い位置からのプレッシングでボールをひっかけたときにショートカウンターを狙うのはもちろん、自陣低い位置でボールを奪ってもできるだけ早く攻め切ろうとする。特にGKのレミーロがボールをキャッチしたときは彼のスローを起点にカウンターを発動する。

最前線のイサクと右サイドのポルトゥはともに爆発的なスピードを持っており、カウンターのような速い攻撃で最も持ち味を発揮するタイプ。彼らとの相性の良さも相まってレアル・ソシエダのカウンターには一定の破壊力がある。

シルバ離脱後は遅攻のクオリティーがガクンと落ちてしまっていることもあり、カウンターがより重要な攻撃手段となっている印象だ。




ネガティブトランジションでは即時奪回を目指して激しくプレス

ボールを失ったらすぐに奪い返す。その原則は先述した通りだ。

特にボールを失った瞬間は相手の陣形が崩れており、奪い返すチャンス。ボールの周辺の選手たちはすぐさま切り替えてプレッシングを行う。

攻撃時に自分たちのポジショニングのバランスを整えているのは守備のためでもある。これを忠実に行っているため、相手が完全にフリーになるような場面はあまり見られない。

失ってもすぐさま奪い返す守備は成功率がまずまず高く、ボールロスト直後のプレッシングは一定のレベルにあるといえるだろう。




あとがき

レアル・ソシエダの躍進を支える背景には、優秀な育成機関の存在がある。

現在、トップチームに登録されている25人の選手のうち実に15人が下部組織出身なのだ。まだユース登録のスビメンディやロベルト・ロペスも継続的に出番を得ていることを考えると、27人中17人といってもいいだろう。

選手の移籍が活発な現代においてこれだけカンテラーノが活躍するチームは世界中を探してもほとんどないだろう。

ボール保持を基本とする攻撃的サッカーに、その中で躍進するカンテラーノ。ペップ時代のバルサに重なるものがないだろうか。

選手が引き抜かれてもどんどん若手が出てきて穴を埋めるというサイクルが回っていけば、ソシエダはより強くなっていくだろう。スペインの中でも未来への展望が最も明るいクラブのひとつだ。

ひとつ課題があるとすれば攻撃のメカニズムだ。ビルドアップは非常にデザインされていて成功率が高い反面、崩しの局面では絶対的なタレントに頼っている印象だ。

今シーズン、シルバがいるいないで全く成績が違うことは前述した通り。さらに、昨シーズンでいえばウーデゴーがいるいないでも全く違うチームだった。

崩しにおいても特定の選手に頼る形から脱却できるか。シルバももう35歳で将来が長い選手とは言えない。アルグアシル監督のさらなる手腕に期待である。

 

 

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