
【サイドを切り裂く高速サイドバック】テオ・エルナンデスのプレースタイルを徹底解剖!
セリエAもリーグ戦の半分を消化し、次節から後半戦へと折り返す。「冬の王者」に輝いたのはACミランだ。
ちょうど10年前にスクデットを獲得して以来は低迷が続いていた名門がついに復活したのだ。
その躍進に多大なる貢献を果たしているのが左サイドバックのレギュラーとして活躍する24歳のフランス人、テオ・エルナンデスだ。
現在はバイエルンに所属するリュカ・エルナンデスの弟で、兄と同じアトレティコ・マドリードのユース出身。レンタル先のアラベスでの活躍が認められてレアル・マドリードに禁断の移籍で加入するもマルセロの牙城を崩せず、翌シーズンにレンタル加入したレアル・ソシエダでも目立った結果は残せなかった。
そんなテオの獲得に乗り出したのがミランだった。移籍初年度となった昨シーズンにいきなり33試合に出場して6ゴール3アシストを記録してブレイク。今シーズンはその勢いを継続、いやさらに勢いを増して前半戦だけで4ゴール3アシストを記録している。
しかもその内訳を見てみると、クロトーネ戦で初ゴールを挙げると0-2でビハインドだったパルマ戦ではロスタイムの劇的同点弾を含む2ゴール、ラツィオ戦では2-2で迎えたロスタイムの劇的決勝弾と、決定的なゴールを連発しているのだ。ミランはテオのゴールで勝ち点4を拾っている計算になる。テオがいなければミランが冬の王者に輝くことはなかっただろう。
サイドバックながら高い得点能力でチームを救うゴールを量産し、ミランに不可欠な中心選手の一人になっているテオ・エルナンデス。今回は、そんなテオのプレースタイルについて徹底的に掘り下げていこうと思う。
目次
テオ・エルナンデスのプレースタイル
最大の武器はパワーあふれる高速ドリブル
テオ・エルナンデスの最大の武器は低い位置から一気に相手ゴール前まで迫るドリブル突破だ。
相手にとってはたとえミラン陣深い位置であってもテオにボールを持って前を向かれると脅威だ。テオはスピードがあるのに加え、胸板の厚さからもわかる通りパワーも並外れている。
一度スピードに乗せてしまったらファウル以外では止めようがない。相手をなぎ倒すがごとく、力強く突き進んでいく。
その様は若き日のガレス・ベイルを彷彿とさせる。ちょうどミランのライバルクラブであるインテルを相手に無双した、全盛期のマイコンをぶち抜いたあの試合のベイルそっくりだ。
ミランの戦術は縦に速い攻撃を志向しており、カウンターアタックが主な攻撃手段になっている。このスタイルとテオのドリブルは相性抜群。テオが一気に持ち運ぶことでカウンターアタックを一人で成立させてしまう場面は多くみられる。
テオが上がったあとに空くスペースを埋めるメカニズムが確立されているのも大きい。左CBのロマニョーリとセントラルMFのケシエが協力してテオが上がったスペースを埋めてくれるため、テオが思う存分攻めあがれるのだ。
スペイン時代にはチームからの助けを得られない場面が多かったが、戦術大国イタリアではテオの穴を埋める戦術がしっかり用意されている。これもテオがイタリアに来てから輝き始めた要因のひとつなのではないだろうか。
左足のキックは高精度
さらに、テオはドリブルだけの選手ではない。左足から繰り出すキックの精度も非常に高い。
低い位置で持てば前線のアタッカーに鋭いくさびを差し込んで一気に局面を打開する。高い位置でボールを持てば高精度のクロスボールを供給できる。
テオはパワーにあふれた選手であり、キックにもパワーが乗るため基本的にパススピードは速い。だが、味方が合わせやすいふわっとしたクロスボールも問題なく蹴ることができるのがテオの素晴らしいところだ。
テオのクロスボールにイブラヒモビッチが合わせるシーンはミランの試合でよくみられる形になっている。
パワフルな左足と空中戦から得点を量産
そしてその左足が最大限に生かされるのがフィニッシュの場面だ。パワーと精度を兼備したキックはペナルティエリアの外からでも易々と相手ゴールを打ち抜くことができる。
何の偽りもなくストレートボールでゴールの隅を打ち抜くテオのミドルシュートは見ていて爽快だ。
また、テオのもう一つの得点パターンがヘディングによるゴールだ。ここまでミドルシュートとヘディングでそれぞれ2点ずつを奪っている。
テオはサイドバックとしては大柄な184cmで、空中戦は非常に強い。驚異的な跳躍力と当たり負けしないフィジカルの強さで相手に競り勝ち、強烈なヘッドをお見舞いする。
ラツィオ戦の決勝ゴールがまさに典型的な場面なので、ぜひ検索してみてみてほしい。
ゴール方向へのランニング
テオがゴールを奪えるようになったのはミランに来てからだ。スペイン時代を通じてのゴール数はわずかに2つだったが、ミランに来てからの1年半ですでに10ゴールだ。
秘訣はゴールへ向かうランニングを身に着けたことだろう。
ミランに来てからのテオは左サイドを一直線に切り裂くだけでなく、敵陣に入ってからは相手ゴール方向へ向けて斜めにランニングのコースをとることが多い。左のハーフスペースに突進するイメージだ。
そうしてペナルティアークの付け根あたりから得意のミドルシュートを繰り出す。これが定番の形になっている。
これを助ける動きもパターン化されている。左サイドアタッカーに起用された選手がテオのランニングコースをあけるように中央からサイドに流れるのだ。
こうすることで相手サイドバックがサイドアタッカーに引き付けられてハーフスペースが空き、テオの突撃のためのルートが開くのである。
ここでもまたミランの整備された戦術がテオのポテンシャルを引き出しているといえるだろう。
イタリアで戦術的な助けを受けたことがテオのブレイクの大きな助けとなっていることは間違いない。
守備力も日進月歩で進化
イタリアに来てからのテオは守備面でも長足の進化を遂げている。
本来は守備に課題があるといわれていたが、ミランに来てからのテオは守備力がどんどん伸びている。
かつては足を出して簡単に入れ替わられる場面も多かったのが、いまでは粘り強くついていく守備ができるようになった。タッチライン際で相手のアタッカーに対してしつこくついていき、クロスボールをブロックする場面は多くなっている。
逆サイドにボールがある場面でのポジショニングも格段に良くなった。クロスボールをヘディングでクリアしたり、CBの裏のスペースをカバーする能力も見違えるほど向上している。
守備の国イタリアで鍛え上げられたことにより、攻守に隙が無い選手になった印象だ。
テオ・エルナンデスの弱点
トップスピードでのプレー精度
攻守ともに能力値が高いサイドバックに成長しつつあるテオだが、そんな彼に弱点はあるのだろうか。
強いて挙げるならばトップスピードでのボールの処理だろう。トップスピードに乗った状態ではキック精度が大きく落ちてしまう傾向が見受けられる。
そのままミドルシュートを打つ場面ではいいのだが、味方にパスを出そうとすると途端にミスが多くなるのだ。キックが強くなりすぎ、チャンスをふいにしてしまう場面はちょくちょく散見される。
ミドルシュートを警戒させて相手を引き付け、味方に流してアシストするといったプレーができるようになればなお相手にとっては脅威だろう。
とはいえ、トップスピードに乗っている状態ではボールコントロールが乱れるのが普通であり、非常にハードルが高い要求だと思う。そのような部分をあげつらわなければ大きな穴が見当たらないということだと思ってほしい。それくらいテオは完成度が高い選手なのだ。
あとがき
テオ・エルナンデスの市場価値は昨年1月の2500万€から1年間で倍増、現在5000万€と推定され、左サイドバックとしては世界3位タイにまで上昇している。名実ともに今や世界を代表する左サイドバックだといっていいだろう。
フランス代表の異常な選手層の厚さによりいまだ代表招集経験がないテオだが、このまま活躍を続ければ逆転でのEUROメンバー入りも狙えるのではないだろうか。それほど説得力のあるパフォーマンスを見せた前半戦だった。勝負は後半戦だ。
ミランが最後に冬の王者に輝いたのは、ちょうど前回スクデットを獲得した10年前だ。10年前の再現なるか。そのためにはテオの活躍が欠かせないだろう。
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