日本の少子化の正体

日本の少子化の正体

2021年1月7日 0 投稿者: マツシタ
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日本では少子高齢化が問題だと言われて久しい。誰もが知っている少子高齢化だけど、今日と明日で何が変わっているのか、どんな影響があるのかと問われれば答えに詰まってしまう。

だからといって放置したままでいれば確実にまずいことになる。こういう問題は解決がとても難しい。地球温暖化であれ、砂漠化であれ。

こうしたつかみにくい問題を解決するためには、問題の「正体」を知らなければならない。どういった原因で、どのように進行しているのか。それがわかれば、原因を潰すことで対処できる。

今回は日本の少子化問題についてそのからくりを明らかにし、私なりに考えた解決策をまとめてみたい。

 




 

若者を吸い上げられる地方の窮状

なぜ日本では人口が減っていくのだろう。この疑問に答えるためには、地方から大都市への人口移動、俗にいう東京一極集中について考えなければいけない。少子化と東京一極集中は実に深くかかわっているからだ。

地方と大都市との間で人口の移動が起こるのは、

  • 大学や専門学校への入学
  • 最初の就職
  • 40歳代の転職・再出発
  • 定年

の4つとされている。この中でも特に人数が多いボリュームゾーンが上ふたつ。しかも、大学進学や就職を機に都市部へ出ることはあっても地方へやってくる例はあまりない。

つまり、地方から都市部へと移動するのは若者だということ。子供を産むのも若者なので、地方からはどんどん子供を産む世代がいなくなっていくことになる。その結果として、地方では加速度的に人口減少が進んでいるのだ。

これが地方で人口減少が進み、しかもそのスピードが非常に速い理由だ。

 




 

「問題児」化する大都市

一方、若者が入ってくる大都市圏でどんどん子供が生まれているかというと、決してそうではない。地方から都市圏に流入した若年層の出生率は低い水準にとどまっている。

都市部はそもそも結婚しづらい環境であるだけでなく、地方から出てきた人にとっては親戚からの助けを借りることもできない。地方と比べると隣近所との付き合いも希薄なので、近所同士で助け合うこともできない。都市部という環境は子育てがしづらい環境なのだ。

だから、都市部では未婚率が高く、出生率も低い。特に東京の出生率は全国最低で、埼玉、千葉、神奈川の首都圏1都3県、日本第2の都市大阪も平均以下の出生率となっている。

つまり、東京のような大都市は地方から若者を吸い上げるだけ吸い上げて自分たちは全く数を増やさない。残念なことに、都市部は若者を食い散らかすモンスター状態。日本の人口減少の根本的な原因となってしまっているのだ。

東京の名誉のために行っておくと、大都市圏の出生率が低いのは日本に限った話ではない。シンガポールや香港といったメガシティでは総じて出生率が低くなっている。大都市が子育てに向かない環境であるということは間違いない事実だともいえる。

以上の内容をまとめると、地方ではそもそも子供を産む人がおらず、都市部では出生率が低いこのダブルパンチによって急速に少子化が進んでいるというのが日本の現状だ。

 




 

「東京にいれば安泰」は幻想

といっても、東京圏で生まれ東京圏で育った人たちには全く実感がわかないことだろう。生まれたときからずっと東京にいると、街に出れば高齢者だらけ、人がどんどんいなくなるという感覚などまず理解不能だろう。

東京は一貫して人口が増え続けてきた。若者も地方からどんどんやってくる。少子高齢化なんて信じられないのではないかと想像する。

だが、東京に人口を集めて東京を成長させていけば問題ないという考えは今すぐ捨てなければいけない。東京にいても決して安泰ではないのだ。

東京で子供が生まれないにもかかわらず人口が増えているということは、地方からの流入、いわゆる「社会増」が東京の人口増加のエンジンになっているということ。東京の人口増加は地方あってのことなのだ。

つまり、地方に若者がいなくなれば、東京でも人口が減る。他地域から若者が入ってこなくなれば、東京は大量の高齢者が密集して住む街になるだろう。

東京一極集中がもたらすのはそういう社会だということ。決して地方の人口減少を他人事としてとらえていてはいけない。

 




 

地方に人を呼び戻すために

少子化問題を解決するためには、子育てがしやすい地方に若者をとどまらせるしかないだろう。

とはいっても、地方と都市部では都市部の方が魅力的に映るのは紛れもない事実だ。いったいどうすれば若者は地方にとどまってくれるだろうか。

解決策として考えられるのが、地方のキャラクター化である。

例えば、欧米では有名大学のほとんどは地方にあり、そこに学生が集まることで「大学都市」が成立している。イギリスのオックスフォード大学もケンブリッジ大学もロンドンから車で2時間半ほどの距離にある人口10万そこそこの地方都市にある。

日本でいえば筑波大学を中心に学園都市化しているつくば市がいい例だ。つくば市といえば筑波大学。ほとんどの人がそう答えるだろう。

そうやって都市にキャラクターを持たせていくということ。つくば市といえば筑波大学、豊田市といえば車、浦安市といえばディズニーランドみたいに。

地方に魅力あふれるキャラクターを持つ都市がたくさんあれば、それに興味を持っている人が移住してきて集積し、相乗効果を発揮してさらに成長していくのではないだろうか。

秋葉原みたいな町が徳島にあって、住民みんなアイドル好きとか。流行の最先端を発信するのは富山で、ファッション好きがみんな富山を目指すみたいな。

とにかく、一番いいものがみんな東京にあるという状態を打破しないと東京への集中は止まらない。いろいろな機能を徐々に地方に分散し、人も分散させていくしかない。

まず最初に分散させるべきは大学だろう。有名大学を中心に地方へと移転し、海外の有名大学を手本として学園都市を築くのだ。若者を中心に活気にあふれた都市が生まれるはずだ。

多少不便でもやるしかない。人が減って高齢者しかいなくなり、人手が足りない、病院も足りない、年金まで足りないような状態の方がとてつもなく不便だ。目先の利益を取るか、今後数十年の発展を取るか。選択の時間はあまり残されていない。

 




 

今回の参考図書

今回参考にしたのは増田寛也氏の著書『地方消滅』(中公新書)である。

地方が文字通り消滅する危機的状況にあることを説明し、その解決策を模索する本書は地方の人口減少を知るための必読書だといえる。いや、人口減少が日本全体に差し迫った問題である以上全国民に読んでもらいたい本だ。

今回紹介できたのは本書の内容のほんの一部でしかない。

もし気になったという方がいれば、ぜひ実際に手に取ってみてほしい。