地政学の基礎概念 バランス・オブ・パワーとは?【地政学講義】

地政学の基礎概念 バランス・オブ・パワーとは?【地政学講義】

2021年1月6日 2 投稿者: マツシタ
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今回は地政学の基礎概念の講義第3回。取り扱うのはバランス・オブ・パワーだ。

戦争が起こる理論から強国の戦略にまで応用が利く基礎的かつ重要な概念である。

それでは、さっそく見ていこう。

 

 

バランス・オブ・パワーとは?

バランス・オブ・パワーは以下のように定義される。

  • バランス・オブ・パワーとは、突出した強国を作らず、各国の勢力を均衡化することで緊張感を含みつつ秩序・平和を維持する国際関係のメカニズムのことである。

どういうことか説明しよう。

皆が同等の軍事力を持っている状況を考えたい。このような状態で国家間の戦争が発生すると、お互いの国が強烈な打撃をこうむることは言うまでもないだろう。お互いに同じ力を持った者同士が戦うと、両者が極限にまで消耗するまで戦いが続くからだ。

これはスポーツで考えるとわかりやすい。ライバルといわれる選手同士がぶつかると非常に激しい好ゲームになる。そして、どちらが勝つかわからない。

自分たちが勝てるかどうかわからないのに相手からの手痛い反撃を食らうことは確定している状況でわざわざ攻撃するのは賢くない。スポーツの試合なら戦いを避けるわけにはいかないが、国際関係には戦わないという選択肢がある。

そのため、両者の勢力が均衡しているときには相手からの反撃を恐れるがために攻撃をためらい、その結果として緊張感を保ちながらも平和が維持される。これがバランス・オブ・パワーだ。

これは「抑止力が働いている状態」とも言い換えられる。核の抑止力という言葉を聞いたことがあるだろう。あれだ。こちらが核攻撃を仕掛けたら、相手からも核攻撃が飛んでくることがわかり切っている。だから核戦力を持っている国同士では戦争できない。

これも相手からの反撃を恐れるがために自ら攻撃できないという意味でバランス・オブ・パワーが保たれた状態だといえる。

 

 

バランス・オブ・パワーが崩れたとき、戦争が起こる

前述のように、国家間の力が均衡しているときは緊張感によって平和・秩序が守られる。これをひっくりかえすと、どこかの国の力が他国よりも抜きんでたとき、すなわちバランス・オブ・パワーが崩れたときには戦争が起こるということを意味する。

両者の力が均衡しているからこそ反撃を恐れるのであって、自分たちが絶対に勝てるのであれば戦いを挑み領土を拡大しようとする。国家戦略としてそれで正しいと考える。これがバランス・オブ・パワーが崩れたときに戦争が起こるということの意味だ。

歴史を振り返ってみても、バランス・オブ・パワーが崩れたときに戦争や地域間紛争が発生している事例はたくさんある。

我が国と韓国との竹島問題がそうだ。日本は第二次大戦に負けて武装解除されてから1954年に自衛隊が発足するまでのあいだ自国を防衛する手段を持たなかった。この丸腰な期間を狙って竹島を占領してしまったのが韓国なのだ。

竹島はもともと日本の領土であり、韓国の竹島占領は明確な違法行為だ。日本が丸腰の常態を狙って違法占拠するなど卑怯な手だが、韓国の戦略は地政学的に考えると理にかなっているといえる。

同じようなことは中国も行っている。冷戦終結後にフィリピンから米軍が撤退したすきを見計らって南沙諸島(スプラトリー諸島)を占領してしまった。現在でも南沙諸島は中国、フィリピン、ベトナム、マレーシア、ブルネイが領有を主張する複雑な領土問題と化している。

第ニ次世界大戦の発生もバランス・オブ・パワーの崩壊が原因だ。第一次大戦で焼け野原となったヨーロッパでは、二度と戦争はしたくないという機運が高まり、ほとんどの国が軍縮へ向かった。ナチスドイツを除いて。

ドイツだけが軍備を増強し、他のヨーロッパの国々が軍縮を行ったためにバランス・オブ・パワーが崩れ、ドイツのポーランド侵攻・オーストリア併合から第二次大戦へと発展したのだ。

このとき、イギリスやフランスの国民はナチスドイツの軍拡を見ても、ポーランド侵攻を見ても、自分たちは戦争に巻き込まれないだろうとタカをくくっていたという。いわゆる平和ボケだ。

中国が積極的に海洋進出する現代に生きる我々日本人にとって、教訓にしなければならない話だろう。

 

 

大国のバランス・オブ・パワー戦略

バランス・オブ・パワーは大国の戦略を読み解くカギにもなる。というのも、世界の覇権国はその時々のナンバーツーの国を、ナンバースリー以下の国と協力しながら弱体化させようとするからである。

この戦略を一貫して取ってきたのがアメリカだ。冷戦時にはナンバーツーのソ連に対し、西側諸国とともに対抗した。日本が急速な経済成長で世界ナンバーツーの経済大国になったときには、中国を支援するなどしてその勢いを削ごうとした。そして現在、その標的は中国へと移っている。

このように見ていくと、世界の覇権国アメリカが取りそうな戦略が見えてくる。彼らは自国の優位性を保ちつつ、2位以下の国々のあいだでバランス・オブ・パワーを維持させようとする基本戦略を持っているということだ。

このあたりの考え方はオフショア・バランシングという考え方につながってくる。オフショア・バランシングについては、次回以降の宿題としたい。

 

 

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