【ゴメス退団?むしろ好調!】アタランタの戦術を徹底解剖!

【ゴメス退団?むしろ好調!】アタランタの戦術を徹底解剖!

2021年1月4日 5 投稿者: マツシタ
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昨年末、アタランタに衝撃的なニュースが走った。クラブの象徴、パプ・ゴメスが1月での退団を希望しているというのだ。

事の発端は2020年12月1日、チャンピオンズリーグのグループステージ第5節ミッティラン戦でゴメスとガスペリーニ監督が衝突し、前半限りで交代を命じられたのだ。

これ以降両者の溝は深まり、ゴメスはほとんど試合に出場していない。このまま退団することが確実視されており、あとは移籍先がインテルかミランのミラノ勢になるのか、中東やMSLになるのかの問題だと言われている。

クラブの象徴を失おうとしているアタランタ。しかし、ピッチ内の結果は上向いてきており、とりわけ12月以降は負けなし。セリエAではユーベ、ローマ、サッスオーロといった上位陣との戦いの連続だったものの見事に結果を残し、ここから反撃に出ようかという情勢だ。

ガスペリーニ監督が根付かせてきた戦術はゴメスがいようがいまいが変わらない。そのことが安定した成績につながっている。

そのアタランタの戦術とはどのようなものなのか。徹底的に掘り下げていきたい。

 




 

基本フォーメーション

昨シーズンから変化した点はゴメスに代わってペッシーナがトップ下に定着した点とロメロがCBの主軸に定着した点。基本的には大きな変化はない。

とはいえ、控え選手の貢献度は決して低くない。特に、途中出場がメインながらここまでチーム最多の12ゴールを挙げているルイス・ムリエルの活躍なしに今のアタランタはなかっただろう。

6シーズン目を迎えるガスペリーニ体制で目指していく方向性は明確になっており、控え選手にまでその戦術が浸透している。そのため、だれが出ても変わらない戦いが実現しているのである。

アタランタのメンバー一覧は下記リンクを参照してほしい。

【メンバー紹介】アタランタの全選手一覧・簡単なプレースタイルの紹介

 




 

攻撃

 

縦に速いビルドアップでまずは相手を押し込む

アタランタのビルドアップの狙いはまず相手を押し込んでしまうこと。縦に素早く展開し、敵陣深くにボールを入れることが狙いだ。

 

アタランタのビルドアップ時の形は5-1-4(1枚目)もしくは4-1-5(2枚目)。「1」にフロイラーが入るかペッシーナが降りてくるかの違いはあるが、デローンが3バックの中央に入って4バックを形成するという原則は変わらない。

2つの形に共通するのは中盤にひとりしかいないことだ。「1」以外の9人で大きな円を描き、円周を順番に経由して前線へボールを送る。

 

アタランタのビルドアップが丁寧に見えるのは飛ばすパスをしないからだ。4バックの中央からサイドCBへ、サイドCBからウイングバックへと順番に渡していくためショートパスが多くなるのがアタランタの特徴。これを素早く行う。

そうしてウイングバックにボールが渡ったら、敵陣ペナルティエリア角を取りにFWが斜めに抜け出す。

そのままクロスを上げられるのが理想だろうが、たいていはここでサパタかイリチッチがボールをキープして起点になり、ボールを戻して打開の糸口をうかがっていくことになる。態勢が整っていなければ無理をせずに攻撃をやり直すのもアタランタの特徴だ。

ゴメスがいたときには彼が「1」、すなわち円の中心にいてビルドアップの核だった。中心であるゴメスと円周の9人の選手がパスを出し入れしながら前進していくというのがアタランタの形だった。

ゴメスは小柄だが体を使ってボールを隠すのがうまく、多少のプレッシャーなら単独で突破しボールを運ぶことができる稀有な存在だった。

しかし、代役のペッシーナにはそれほどの能力がない。ゴメスがいなくなったことががアタランタが中央を避けて外回りでビルドアップするようになった原因だ。

ビルドアップ時の4バックの中で最もテクニックに優れるデローンが右寄りにポジショニングしている関係で、アタランタのビルドアップでは右サイドからの前進が多くなっている

これを阻止しようと相手が右サイドに寄ってきたときに用いるのが、サパタへの斜めのロングボールだ。これで一気に逆サイドの敵陣ペナルティエリア角を取りに行く。アタランタのビルドアップで唯一みられるロングボールだ。

フィジカルに優れるサパタにシンプルに預ける形は相手を押し込むというアタランタのビルドアップの狙いを実現する最も簡単な方法であり、この形は多用されている。右から前進→左へ展開はよく見られるパターンだ。

アタランタのビルドアップをまとめると、

  • 円形の配置から「円周」に沿って前進
  • そこから敵陣ペナルティエリア角へボールを入れて起点にする

となる。

 




 

相手を押し込んでからはじっくり攻める

先ほども書いたが、アタランタはゴール前に人数がそろっていなければ無理をせずにやり直すことが多い。

相手を敵陣に押し込むまでは素早くボールを運ぶものの、いったん相手を押し込んでしまえばそこからはじっくりパスを回しながらフィニッシュへの形を狙う。

サイド経由でボールを運ぶためそのままクロスを上げてしまうことも多いが、中央に人数がそろうまではクロスを上げない。最低でも3人、通常は4人がゴール前に走りこむ。

後述するが、アタランタはフィールドプレーヤー全員が180cmを超えるため、シンプルな放り込みでも抜群の破壊力を発揮する。

スーパーなフィジカルを持つサパタを含め、引いた相手に対してもパワーでこじ開けられるのはアタランタの強みだといえる。

それ以外にも、2トップ+トップ下の3人はともにテクニックに優れるため、中央を連携で崩していく形も持っている。

特にヨシプ・イリチッチは190cmの長身ながら足元が柔軟で自ら仕掛けて得点することもパスで決定機を演出することもできるスーパーなタレント。ゴメスなき後は彼が攻撃の全権を握るだろう。

 




 

激しいポジションチェンジで相手をかく乱

アタランタの攻撃時の特徴はポジションチェンジの激しさだ。

しかも、ポジションチェンジに加勢する選手の数が多い。サイドCBも自分のサイドにボールがあるときは攻撃要員なので、3バックの中央の選手以外は全員攻撃に参加する。

サイドCBが幅を取り、ウイングバックが中。

ボランチが幅を取り、ウイングバックが中央へ、中央にいるシャドーが降りてくる。

激しいポジションチェンジが成立しているのは、守備時にマンツーマンを採用していることとも関係しているだろう。

組織的なゾーンディフェンスを採用する場合、ポジションチェンジをしたままだと全員が不慣れな場所での守備を強いられる。かといって自分の持ち場に戻っていては移動距離が長すぎて時間がかかる。

ところが、マンツーマンなら目の前の相手を捕まえればいいので簡単なのだ。ピッチ上のどこであれ、「目の前の相手に負けない」という原則は変わらないわけだから。

アタランタの激しいポジションチェンジはマンツーマンの守備があってこそ成立しているといえる。

 




 

「3バックの中央」に求められる特殊な動き

アタランタで多く見られるポジションチェンジのなかでも特徴的なのが3バック中央の選手のビルドアップ時の「前進」だ。

前述のように、アタランタは中盤に選手を一人しか置かない。そのため、相手フォワードにうまくパスコースを切られてしまうと手詰まりになりやすい。

そこで、3CBの中央の選手が1列前に移動する。こうすることで前方に新たなパスコースを作り出し、逆サイドにボールを逃がすことでプレッシングを回避できるというわけだ。

アタランタが多用する「CBの1列前方への移動」というソリューションは、なかなか見られない独特なメカニズムだ。

 




 

ゴール前にかける人数がとにかく多い

アタランタの破壊的な攻撃力を引き出す秘訣が、ゴール前にかける人数の多さだ。特にクロスボールが上がってくる場面ではボックスの中に4人入ってくることも少なくない。

クロスボールでターゲットになることが多いのが逆サイドのウイングバックだ。ハテブール、ゴゼンスの二人はともに長身かつ屈強で空中戦に強い。彼らめがけてフォアサイドにクロスボールを送り、それを中央に折り返すパターンプレーは多用される。

 

 

守備

 

マンツーマンでの激しい守備

アタランタの戦術の代名詞といっていいのがマンツーマンによる激しいプレッシングだ。高い位置から相手を捕まえ、選択肢を削っていく。

マンツーマンは10個の1対1を作る戦術であるため、各選手にはデュエルの強さが求められる。そのため、アタランタは180cmを超える屈強な選手をそろえている。現在の主力で身長が180cmを下回っているのは途中出場がメインのムリエルだけ。彼も179cmとほぼ180cmだ。これは、アタランタ独特の強化方針だろう。

特に強さが求められるのが3CBの中央である。ここで1対1に負けることは、失点に直結する。カバーできる選手がいないからだ。

このアタランタの戦術上の肝のポジションに起用されているのが、クリスティアン・ロメロである。今季ユベントスからレンタルで加入した22歳の若きセンターバックは強さ、速さ、高さの3拍子がそろっており、アタランタの3CB中央にまさにうってつけ。マッチアップした相手に激しくアプローチして前を向かせない守備を習得し、チームに欠かせないキーマンに成長している。

 




 

ときおり見られるマンツーマンディフェンスの弱点とは

アタランタの守備における弱点をひとつ紹介しよう。

アタランタは基本的に外側に開いた相手のサイドアタッカーに対してはウイングバックが対応する。ここまではいいのだが、問題は相手サイドバックがオーバーラップを仕掛けてきたときだ。

このとき、アタランタはウイングバックが上がってくるサイドバックにマークをスイッチし、サイドアタッカーをサイドCBに受け渡すという原則を採用している。

問題はこの受け渡しがうまくいっていないことだ。マンツーマンを原則にしているため、サイドCBにももともと受け持っていたマークがいるわけだ。サイドアタッカーとは遠いところにいることも多く、寄せるのに時間がかかって自由を与えてしまう場面が散見されるのだ。

この一瞬の自由から決定機につなげられる場面は少なくない。マンツーマンを採用するが故のデメリットだろう。

 




 

トランジション

 

ポジティブトランジションでは分厚いカウンターを仕掛ける

アタランタの攻撃の原則は相手を押し込むまで縦に速く。それはカウンターでも変わらない。ボールを奪ったのが低い位置でも、そこから素早く縦に展開し速攻を狙う。

起点となるのはフィジカルモンスター・サパタ。彼がボールをキープしている間に後方からどんどん選手が湧き出してきて厚みあるカウンターを仕掛ける。攻撃に欠ける人数の多さはカウンター時も同じだ。

チーム全員が走力と持久力を併せ持ち、縦に速い攻撃を何度も繰り返すことができる。これがアタランタが人数をかけた破壊的な攻撃を繰り出せる秘密だ。

 




 

ネガティブトランジションでは即時奪回を目指して激しいプレス

ボールを失った後即座に奪い返すべく激しいプレスをかける。これは守備時には常にいえることだが、ボールロスト直後は特に激しい。

アタランタが中央を使わずサイド経由で攻撃を組み立てるのはサイドなら相手を追い込むのが簡単だからという側面もあるのではないか。サイドにはタッチラインがあるため相手がプレーできる方向は限られていおり、中央より逃げられにくい。

縦に素早く持ち運び、奪われたら激しいプレス、奪い返して素早いショートカウンター。このスパイラルに相手をはめ込むことがアタランタの狙いのひとつだろう。

 




 

あとがき

直近のサッスオーロ戦はアタランタの真骨頂が発揮されたゲームだった。

後方からのビルドアップを試みるサッスオーロに対し、アタランタはマンツーマンでパスコースを消しながら激しくプレッシング。何度も高い位置でボールを奪っては素早いショートカウンターを繰り出し、大量5得点で圧勝して見せた。

サッスオーロはイタリアのクラブの中でも最もビルドアップの完成度に優れるチーム。そのサッスオーロがアタランタのプレッシングに対しては何もできなかった。アタランタの守備の完成度の高さを物語るゲームだといえる。

セリエAでは現在7位だが、消化試合がひとつ少ない。この試合に勝つと想定すると、アタランタは5位にまでジャンプアップする。まだまだリーグはこれからで、チャンピオンズリーグの出場権争いに絡んでくるだろう。

そして注目はチャンピオンズリーグ。ラウンド16ではレアル・マドリードとの対戦が決まっている。

マドリードダービーではアトレティコのプレッシングを華麗なパスワークで翻弄したレアルと、イタリア屈指のハイプレス戦術を誇るアタランタ。どちらが勝るか。この矛盾対決はCL屈指の好カードになるはずだ。

昨年のCLではベスト4まであと一歩のところでPSGに逆転負けを食らった。その悔しさを晴らせるか。

イタリアでも、そしてヨーロッパでも、アタランタから目が離せない。

 

 

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