地政学的リスクとは?【地政学講義】

地政学的リスクとは?【地政学講義】

2021年1月3日 3 投稿者: マツシタ
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前回の講義では地政学とは何かについて解説した。この講義によって地政学とはどのような学問かについては理解してもらえたと思う。

しかし、「地政学」という単語そのもの以上に多用されるのが「地政学的リスク」という言葉だろう。いったい地政学的リスクとは何なのか。

今回は地政学的リスクについて掘り下げていきたい。

 

 

地政学的リスクとは?

地政学的リスクを難しい言葉で定義すると、以下のようになる。

  • 地政学的リスクとは、地理的な位置関係に起因する政治的・軍事的・社会的な緊張の高まりがその他の地域や経済に与える悪影響のことである。

多くのサイトや本での地政学的リスクの定義はこんな感じ。といっても、これだと少しわかりにくい。

正確性を犠牲にしてもっと簡単に、ざっくりとまとめてしまってしまいたい。というわけでこれならどうだろうか。

  • 地政学的リスクとは、国際関係の悪化がもたらす悪影響である

これならわかりやすいのではないだろうか。あくまでも正確性を無視し、私が勝手にまとめたものだということは強調しておくけれども、このくらいのとらえ方でいいと思う。

というのも、地政学では国際関係は地理的条件によって発生するととらえる。そのため、「地理的な位置関係に起因する政治的・軍事的・社会的な緊張感の高まり」という部分は「国際関係の悪化」とイコールで結んでしまっていいだろう。

 

 

具体例:日本の地政学的リスク

国際関係の悪化が地理的要因と絡んでいるということを、日本の地政学的リスクを例にとって見てみよう。

日本の地政学的リスクには次のようなものがある。

  • 北朝鮮の核ミサイル開発
  • 中国の海洋進出
  • 原油市場の不安定化
  • 米中貿易摩擦

順に見ていこう。

北朝鮮の核ミサイル開発が日本にとって脅威であることに異論をはさむ余地はないだろう。一方、南アフリカにとっては北朝鮮が核ミサイルを開発したところで優先順位が低い問題だろう。

北朝鮮は地理的に日本と非常に近い距離にあり、しかも日本に友好的とは言えない国だ。このような国が核ミサイルを開発するからこそ、日本にとって喫緊の地政学的リスクになるのだ。

中国の海洋進出も同じこと。日本と南アフリカでは持つ意味が全く違う。中国が海洋に進出することは、領海を接する日本にとって安全が脅かされる事態なのだ。

それでは、原油市場の不安定化はどうだろうか。日本は産油国ではないし、多くの産油国が集まる中東とは一定の距離がある。実際には原油価格の不安定化が日本に与える影響は非常に大きいものの、地理的要因とは関係なさそうに見える。

そもそも、原油価格の動向が日本に大きな影響を与えるのはなぜだろうか。日本でほとんど原油が採れないからだ。だからこそ原油価格の動向は日本にとって重要なのである。

実は、高校の地理の教科書を見てみると、この「資源・エネルギー」という分野が含まれている。資源・エネルギーは地理の範中なのである。つまり、日本で原油が採れないということもまた地理的要因なのだ。

このことは米中貿易摩擦でもいえる。日本の貿易相手国トップ2か国の争いが日本に大きな影響を与えることは明確であるものの、それが地理的要因に起因するようには見えない。

しかし、再び地理の教科書を見てみると「貿易」という項目が確かに存在している。

アメリカと中国の間にある「貿易」という地理的要因に起因する対立が、日本を含め世界中に悪影響を及ぼしているのである。

 

このように、地理という学問の範囲は非常に幅広い。地図的な地形のみならず、気候、農業、工業、資源・エネルギー、人口、民族・文化、宗教、貿易までありとあらゆる項目が含まれる。

こうして見ていくと、地理的要因に起因しない国際関係などありえないことがわかるだろう。

だからこそ、地政学的リスク=国際関係の悪化による悪影響と定義できるのだ。

地政学的リスクを知ることは、国際関係を知ること。グローバル化が進展しきった現代社会において、地政学的な観点から考えることは非常に重要なのだ。

次回からは地政学の根幹をなす基礎理論についてまとめていこうと思う。

 

 

  • 次回の講義

地政学の基礎概念 バランス・オブ・パワーとは?【地政学講義】

 

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地政学とは何か?についてまとめたら、必須な理由が見えてきた【地政学講義】

 

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