
【トルコの司令塔】ハカン・チャルハノールのプレースタイルを徹底解剖!
ミランの勢いはどこまで続くのだろう。ミラノの名門は今シーズン開幕から無敗を継続して2020年を終えた。ここまで無敗なのは5大リーグ全体で見てもミランだけだ。
この無敗記録は今シーズンに始まったわけではない。最後に負けたのは3月8日のジェノア戦で、昨シーズンの後半戦も含めると9か月間にわたって無敗が続いている。
そんな絶好調なミランの攻撃の中心になっているのが26歳のトルコ人MF、ハカン・チャルハノールである。
ミラン加入後は本領発揮に至らないシーズンが続いていたものの、昨シーズン後半からパフォーマンスを上げ今シーズンは覚醒状態だ。
今夏で契約が切れるという事情はあるものの、欧州中のビッグクラブが獲得を狙うのも納得のパフォーマンスを見せている。
そんなチャルハノールのプレースタイルはいったいどのようなものなのだろうか。徹底的に掘り下げていきたい。
目次
チャルハノールのプレースタイル
トップ下からパスを配給して攻撃を組み立てる
ドイツのハンブルガーSV、レバークーゼンを経て2017年にミランにやってきたチャルハノール。ドイツ時代には継続してトップ下でプレーしたものの、ミランでは長くトップ下を置かない4-3-3が採用されたため左ウイングでの起用が多かった。しかし、サイドでは持てるポテンシャルを発揮しきれず、ドイツ時代と比べると活躍が散発的になってしまっていた。
潮目が変わったのは昨シーズンのピオーリ監督就任。4-2-3-1にシステムが変更され、チャルハノールはトップ下に配置された。これが奏功し、チャルハノールは息を吹き返した。彼はピッチ中央で自由を享受してこそ持ち味を最大限に発揮できるようだ。
特にイブラが加入した昨冬以降は継続してハイパフォーマンスを披露。今シーズンはさらに一段パフォーマンスレベルを上げ、いよいよ本格的に覚醒したのだ。
ここまでリーグ戦で記録したアシスト数は6で、リーグトップだ。特に直近4試合連続アシストを記録中と、もはや手が付けられない。
ピッチ中央、もしくは左のハーフスペースを主戦場とし、ここから前線の選手にパスを配給して決定機を作り出す。ピッチ中央の狭いエリアでもボールを失わずに相手をかわすことができるテクニックレベルの高さも見事だ。
イブラヒモビッチが離脱してからはチャルハノールへの依存度がさらに高まっている印象だが、見事に期待に応えている。
精度とパワーを兼ね備える右足
チャルハノールの右足は正確で繊細なだけでなくパワーを兼ね備えている。
左寄りでプレーすることの多いチャルハノールは右足でライナー性のサイドチェンジを入れることが多い。このボールを受けたカラブリアが攻撃を加速させるパターンはミランの攻撃の形のひとつだ。
右足のパワーはミドルシュートにも生かされる。よほど自信があるのだろう、チャルハノールは非常に積極的にミドルシュートを狙っていく。ここまでの1試合平均シュート数はチーム内最多だ。
大きく枠を外すことも少なくない一方で、何度もポストやバーに嫌われるシュートを放って相手ゴールを脅かしている。
さらに特筆すべきはプレースキックの質の高さだ。ここまでの6つのアシストのうち3つはコーナーキックからのもの。スペツィア戦のフリーキックからのそれも含めれば、セットプレーからのアシストが3分の2を占める。
彼の右足から供給される高質のボールはミランの得点源になっているのだ。
ドイツ時代には直接フリーキックの名手として鳴らしただけに、本来の実力からすればフリーキックからはアシストだけでなくゴールももっとあっていいはず。これがズバズバ決まり始めたら相手への脅威はより大きくなるだろう。
ポジショニングがよく、セカンドボール回収率が高い
チャルハノールをトップ下に起用するメリットは決定機の創出にとどまらない。チャルハノールは予測力に基づくポジショニングがよく、1トップの選手が競ってこぼれたボールを回収する回数がとても多い。
ロングボールを最前線の選手へ放り込むことが多い今のミランにおいて、この能力は非常に重要だ。チャルハノール以外の選手がトップ下に入った試合と比べると彼がいかにボールを回収してチャンスにつなげているかが一目瞭然だろう。
イブラと最も連携が取れたプレーを見せているのがチャルハノールであり、「絶対王」の周りを衛生的に動くことで助けている。イブラが競ったイーブンなボールをマイボールにしてくれるチャルハノールがいるからこそ、ミランの攻撃回数は高まっているといえる。
推進力あるドリブルも持つ
さらに、チャルハノールは自らドリブルで持ち運ぶことができる選手だ。華奢な見た目だが想像以上の推進力があり、ぐいぐいと持ち運んでいく。
カウンターを主な攻撃手段とするミランにおいて、チャルハノールの「運ぶドリブル」は大きな武器だ。彼が20~30mを持ち運ぶことで、一気に相手ゴールに迫る場面は多い。
チャルハノールはボールを受けては捌いてを繰り返すような旧式のトップ下ではない。ダイナミズムも併せ持った現代的なトップ下だといえる。
守備にも献身的
チャルハノールのダイナミズムは守備時にも生かされる。彼は非常に守備にも献身的で、さかんにプレスバックして味方を助けている。
攻守の切り替えも速く、ボールを失った瞬間に相手に襲い掛かる。
攻撃だけでなく守備でも貢献できるという面から見ても現代的なプレイヤーだと評価できる。とても完成度が高い選手だ。
チャルハノールの弱点
決定力にさらに磨きをかけたい
攻守万能なチャルハノールだが、彼に弱点はあるのだろうか。
セリエAにおけるここまでの1試合平均シュート数はチーム内最多の1.9本。シーズン通して25本以上のシュートを放っている。にも関わらず、ここまではPKで奪った1点のみ。これではさみしいところだ。
たしかにポストに何度も嫌われている不運はあるものの、シュートの数からすればもっとゴールが欲しいところ。決定力の向上が今後に向けた課題だといえるだろう。
得意の直接フリーキックに関しても、ドイツ時代はほとんどを決めていたのと比べると精度が落ちてしまっている印象は否めない。
アシストに加えてゴールの数も増えてくれば、さらに相手にとって脅威になれるだろう。
あとがき 最適な移籍先は?
冒頭で書いたように、さかんに移籍の噂が取り沙汰されるチャルハノール。ユベントス、インテルのセリエA勢にマンU、ここにきてアトレティコ・マドリードも獲得レースに参戦したようだ。
この4チームの中から最適な移籍先を探すとしたらどこになるだろうか。
これも先述した内容だが、チャルハノールはトップ下で起用されてピッチ中央で自由を享受してこそ活きるタイプだ。戦術的な相性に加えてトップ下での起用が見込まれるかどうかも重要なポイントだろう。
アトレティコ・マドリードは戦術的にはチャルハノールのプレースタイルとぴったりだ。高い攻撃性能を持ちながら守備でもハードワークできるチャルハノールはシメオネが求める選手像にぴったりと当てはまるだろう。
しかし、チャルハノールがアトレティコに加入した際に起用が見込まれる左シャドーにはジョアン・フェリックスがいる。彼もまた今シーズン絶好調であり、チャルハノールといえど容易にポジションは奪えないだろう。
同じことはマンUにも言える。マンUはミランと同じ4-2-3-1を採用することが多いが、トップ下の位置にはチームの大黒柱であるブルーノ・フェルナンデスが君臨する。
最重要戦力であるブルーノを外してまでチャルハノールをトップ下で起用するとは考えられず、また左ウイングに関してもラッシュフォードの独壇場だ。移籍してもファン・デ・ベークのようにベンチで飼い殺しにされないか心配だ。
インテルに関しては3-5-2を採用しており、そもそもトップ下というポジションが存在しない。シーズン開幕当初はエリクセンを生かすために3-4-1-2の導入を模索したもののバランスを見出せずに挫折、昨シーズンからの3-5-2に回帰している。
チェルシー時代にコンテ監督が用いた3-4-2-1を採用する手もあるが、そこまでしてうまくいっているチームに手を加えるだろうか。
最もチャルハノールが活躍できそうなのがユベントスだ。守備時には激しさが、攻撃時にはテクニックが求められる新生ユーベにとってチャルハノールは理想的な選手だろう。
いまのスカッドにはトップ下タイプの選手がおらず、セントラルMFが本職のラムジーをトップ下的に起用している。チャルハノールが加入すれば新たな戦術オプションになるだろう。
とはいえ、チャルハノールの最適な選択はミランとの契約延長なのではないだろうか。
今のミランの勢いは冒頭で説明した通り。今シーズンはスクデット獲得の最大のチャンスである。もしスクデットを獲ることができればチャルハノールにとってはキャリア初のタイトルであり、これを移籍によってみすみす逃すのはあまりにももったいない。
さらに、チャルハノールはミランの攻撃の中心であり、彼を中心とした連携は完成の域に近づいている。シーズン途中からチームを移して新たな連携を構築するよりも勝手知ったるミランの中心としてタクトを振るうほうが良いと考える。
移籍するにしても、もう一度契約を結びなおしてイタリアの頂点に立ってからでも遅くないのではないだろうか。シーズン後半も継続して活躍すれば、さらに大きなクラブへの移籍の道も開けてくるはずだ。
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